第二十三話『除外』始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ
023【除外】
……うん?
なんか知らんが、此処数日、奈緒さん、なんか怒ってないか?
勿論、こんな物は、絶対、口には出しては言えないセリフではあるんだが、本当に此処数日、俺は心の中でズッとそう思い続けていた。
俺にハッキリとそう思わせる程、兎に角、此処最近の彼女は頗る機嫌が悪い。
……っとは言ってもだ。
突然起こった、この奈緒さんの不機嫌現象。
全く、原因の解明が出来ていない訳でもないんだな、これが。
っと言うか寧ろ、彼女の機嫌の悪い原因になり得ている、大凡の部分の予想は付いてる。
その奈緒さんの機嫌を悪くしている要因……それは『氷村龍斗』とか言う、あの楽器屋で知り合った、例の小生意気なガキが原因だ。
……って言うのもな。
最近、素直のシンセの練習をする序に、あのガキがチョクチョクこのスタジオに顔を出す様になったのは良いんだが。
奴は、なにを勘違いしたのか。
楽器屋及び、喫茶店での俺の態度から、素直と、俺が付き合ってると思い込んだらしく。
奈緒さんと俺が普通に話しているだけでも、必ずと言っていい程、話に割って入って来るんだよな。
その証拠に、この間もな。
練習中、少し時間が空いたから、奈緒さんと今後の話をしようとしたら……
なんの用事もないのに、強引に俺と奈緒さんの間に入って来て。
『おにぃちゃん、また素直おねぇちゃんが上手く弾けたよ。早く来て』
……とか言って、強引に俺を素直の元に連れ去るんだよ。
まぁそんで、アイツが、こんな風だから。
奈緒さんは、俺と、素直の『恋仲を邪魔してる女』みたいな扱いを受けている。
これじゃあ、奈緒さんの機嫌が悪く成るのも頷けるってもんだ。
まぁ実際の話で言えばだな。
この問題の解決方法としては、俺がハッキリとガキの誘いを断れば済むだけの話ではあるんだが……これが、どうにも上手く出来無い。
勿論、奴の誘い方が巧みなのも有るんだが。
素直の奴が、妙にソワソワした態度を取りながらコチラを見て、練習の成果を見て欲しくて仕方がないっと言う様な姿を見てると、どうにも断り切れないんだよな。
―――早い話、俺の優柔不断な態度が一番問題な訳だ。
勿論、こんな間抜けな俺の事を、奈緒さんが信じて変な風に感じさえしなければ、何も問題はないのだが……これもまた、此処も難しい問題だ。
彼女は、自称『嫉妬深い』だし、なによりも俺には『心の浮気をした』っと言う情けない前科がある。
これ等のマイナス要素を踏まえてしまえば、簡単に奈緒さんが、俺を信じてくれると思う方がド厚かましいってもんだ。
でもな。
それが解っていても、辞められないのが男の悲しい性。
今日も、結局、あの餓鬼の誘いに乗ってしまい素直の元に行ってしまった。
そんな訳で、本日も奈緒さんの機嫌は、かなり悪く。
練習終了と共に、この場に居る事を拒絶するが如く、早々と帰り支度をしている。
そんな彼女に対して、俺は無駄と解りつつも、弁解をする為に、急いで彼女の下に駆け寄って行った。
因みにだが、嶋田さんは、今日バイトで欠席。
素直は練習終了と共に、あのガキに連れられて、別の部屋で特訓をする為に、早くも此処を出て行っていない。
そんな訳だから、一応は、奈緒さんに声を掛けるには、絶好のチャンスと言う訳だ。
まぁ、こんな状況じゃあ、所詮は一応でしかないけどな。
「なっ、奈緒さん、聞いて下さいよ」
「なに?」
声を聞く限り、矢張り、機嫌が悪い。
俺の大好きな奈緒さんの『なに?』って言葉の中にさえ、俺に対する明らかなまでの不愉快さが詰まっている。
言葉に棘が有ると言うのは、正に、この事だ。
しかも、睨んでるし……
まぁまぁ兎に角だ。
この場を和ませる為にも、兎に角、なにか話題を振らなきゃな。
「いっ、いやね。素直の奴、日に日にシンセ上手くなってんッスよ。あの調子だったら8月のライブには、本番で使える様になるんじゃねぇッスかね」
……アホだ。
今一番振っちゃいけないネタを、ワザワザ自分の口から、不用意に振ってしまった。
こんな話、どう考えても、奈緒さんに取っちゃあ一番聞きたくもない話題なのによぉ。
もぉなにを言ってんだよ俺は?
救いの様の無いアホの極地としか言い様がないな。
「あっそ。それは良かったね」
帰ってきた答えは、案の定、粗悪な反応。
しかも、奈緒さんは睨むのを辞め。
そのまま鞄を持って、この場から立ち去ろうとする。
最悪だ。
「あっ、あれ?はっ、反応悪いッスね」
言葉の無意識さを装って誤魔化そうとしたが、まったく誤魔化しきれていない。
寧ろ、この言葉……悪化一途を辿っていると言っても過言では無い。
ホント俺は救いが無いな。
「別にぃ……それより君さぁ。他人の事に一喜一憂してる余裕なんて有るの?此処最近、アリスの事にかまけて、自分のベースの方がお留守なんじゃない?音は狂ってるし、全然上達してない様な気がするんだけど。それって気のせい?」
「うっ」
「『うっ』じゃないよ。自覚が有るなら、せめてもぅ少し気を入れて練習したらどうなの?今日の練習だって、何回も音を外してたし。……このままだったら、君の言う通り、アリスが使える様になって、君がライブのメンバーから外される羽目になるんじゃないの?その辺は大丈夫?」
「がっ……」
奈緒さんは、此処ぞとばかりに、強烈な嫌味を連発で放って来る。
けど、この件については、自分が招いた事だから反省するしか方法はないな。
彼女の言う事は、一言一句、何も間違っちゃいない。
現に俺は、此処最近、なにも成長してないからな。
けどよぉ。
言い訳をする訳じゃないが。
あのガキが来て以来、何かにつけて俺を素直の元に呼ぶもんだから、そのせいで少々練習が疎かになっているのも事実なんだけどなぁ。
その辺を加味して、少しだけ譲歩して欲しいもんだ。
それによぉ。
此処で出来なかった分の練習は、これでも結構、家で必死こいて練習してんだぜ。
まぁそれが結果に繋がって無いんだから、こう言われても仕方が無いか……謝ろ。
「すっ、すんません」
「なに、私に謝ってるのよ?別に謝らなくても良いんじゃない。これは君の問題なんだから。私には、なにも関係ないし」
冷たい……ひたすら冷たい。
「ちょ……奈緒さん。それは、あんまりにも冷た過ぎませんか?」
「そぉ。じゃあ、謝るゴメン……っで、君の用事はそれだけ?これ以上、用が無いんだったら、私、帰りたいんだけど。そこどいてくれない」
マジか……この人、適当に謝って御仕舞いか?
しかも、話の途中で帰る気満々。
ちょっとは俺の話も聞いてくださいよ。
「あっ、そっ、そうなんッスか?じゃ、じゃあ、俺も上がりますから一緒に帰りましょう」
「あのねぇ、私は、この後、用事が有るの。……帰りたければ、君1人で帰れば良いじゃない?」
「そっ、そうなんッスか……じゃ、じゃあ、せめて駅まででも」
「来んな。……此処で1人居残り練習しろ」
「……ッス。そうッスね」
奈緒さんは、鬱陶しい犬を、どこかにあしらう様に『しっしっ』っとやり。
その後は、俺を完全に無視して出て行く。
ダメだ。
これ以上、付き纏うのは辞めとこ……どうやら今日は、限度を越えて機嫌が悪いみたいだ。
そこに……
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
うん……まさに、出だしからアホですね。
そりゃあ普通に考えても、これは女の子が怒っても当然ですよね(笑)
(まぁ本当は、奈緒さんの機嫌が悪い理由は、別なんですけどね)
さて、そんな風に奈緒さんに、冷たくあしらわれた倉津君の前に、誰かが来たみたいですが……
一体、誰でしょうね?
それはまた、次回の講釈。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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