最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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390 矢張り真上さんはストイック(笑)

公開日時: 2022年3月3日(木) 00:21
更新日時: 2023年9月9日(土) 13:40
文字数:2,844

●前回のおさらい●


 由佳ちゃんとの恋愛話も一段落……っと見せかけて!!


此処で間髪入れずに、ちょっと気不味くなっている真上さんからの連絡が入る(笑)

「あっ、はい、もしもし……」

「あっ、倉津さん。お世話になってます。王家です」


あっ、あれ?

予想していた声のトーンとは、全く違う声のトーンだな。


俺としては、もっと暗い声で電話をして来てるもんだと思っていたが……その予想に反して、思った以上に明るい声だ。


って事は、あれか。

前回の話に踏ん切りがついたから、連絡をくれたと……んで、追加注文の詳細を確認しようって事か。


ふむ、なら、特に問題無いか。



「あぁ、真上さんッスか。お疲れ様ッス。どうかしたんッスか?」

「あっ、はい。先日ご注文を頂いた商品が出来上がりましたので、コチラの校門までお届けさせて頂きました。この後は、倉津さんのクラスの方に、お持ちすれば宜しいですか?」


はい?



「へっ?」

「えっ?」

「いや、あの真上さん……今、なんか『出来た』って言葉が聞こえた様な気がするんですが……まっ、まさか、そっ、それって追加注文の衣装の話ッスか?」

「はい、そうですよ」


……この人、マジか?

崇秀同様の『時間の魔術師』だとしか思えないぐらい、時間の経過が変だぞ!!


だって仮によぉ。

布の仕入れを半日で終わらせたとしてもだ。

衣装作りの要である裁縫部分を、誰の手伝いもなく、たった1人で……しかも2日間で、5着全部作り終わったって、明らかにおかしいだろ。


……有り得ねぇ人だな。


けど、この人の場合、なにがあっても、絶対に嘘を付かない人だから、これは、まごう事無き現実なんだろうな。


なら、そう言う対応をしなきゃな。


……にしても有り得ねぇ~~~!!



「あっ、あぁ、そうなんッスか。だったら、今直ぐに、俺が校門まで取りに行きますから、絶対、そこを動いちゃダメですよ」

「どうして……でしょうか?」

「いや、真上さん衣装作りで疲れてるんだから、そんな重たい荷物なんか持っちゃダメっすよ。少しは体を労わって下さい」

「くすっ、お気遣いなく。今、そちらに向かっておりますので、少々お待ち下さいね」

「ちょ!!だから……」

「では、後ほど」


聞かない。

ヤッパリ、言う事を聞かない。


どうせ真上さんのこったから、前回俺が手伝ったのを懸念して……『電話を肩と耳で挟んで、移動しながら電話してるんじゃないかな』とは、正直、電話をしながら思ってたんだよな。


それが丸々正解とは……疲れてるって言うのに、どこまでストィックに行動する人なんだよ。


ったくもぉ。



「誰から?」

「あぁっと由佳、悪ぃ。事情は、後でちゃんと説明するからよ。ちょっと、さっきの話は待っててくれな」

「えっ?あっ、うん。別に良いけど。倉津君は……」

「真上さ~~~ん!!ダメっすよぉ~~~!!」

「えっ?へっ?あっ、あれ?くっ、倉津君?」


由佳の疑問系にも似た素っ頓狂な声が聞こえたが。

俺は、それを無視して廊下を走り抜け、階段を2つ飛ばしに降り、残り6段ぐらいでジャンプ。

その階段を降り終えると、手摺を使ってターン。

後は、これを繰り返し、校舎の出入り口付近までダッシュした。


『ハァハァ』っと、息を切らしながら周りを見廻すと、案の定、真上さんは、重そうな荷物をエッチラホッチラ運んで、此処までやって来ていた。


もぉ……早いッスよ!!



「ちょ、真上さん、待っててくれさえすれば、直ぐに、校門まで取りに行きましたのに」

「ご心配には及びませんよ。これぐらいヘッチャラですから」

「けど、疲れてるんでしょ」

「いえ、左程疲れてませんよ。寧ろ、今日は元気がありましたので、フリースクールにも顔を出してきましたしね」


あっ、ホントだ。

真上さんが、珍しく学校の制服を着てる。


ヤバイ……マジで可愛いな。


しかしまぁ、この人、以前からズッと思ってたんだが、なに着ても似合う人だよな。

デザイナーだから、服の着こなしが上手いんだろうか?

それとも、基本的に、なにを着ても似合う性質なんだろうか?


特に、この制服姿は堪らない。

違う学校の制服とは言え、此処の学校に居る誰よりも『郡を抜いて可愛い』


……ってか、イカンイカン、マジでジロジロと見蕩れてる場合じゃないな。


荷物、荷物。


ところで……真上さんの言った『フリースクール』ってなんだろうな?

直訳したら『無料学校』若しくは『自由学校』なんだがな。


なんなんだろうな、そりゃ?


此処は、まぁ良いか……



「いやいや、そう言う問題じゃなくてッスね。兎に角、此処まで来たんッスから、荷物ぐらい持ちますよ。じゃなきゃ、俺が必死に走ってきた意味がなくなりますからね」

「あぁっと、この場合って言うのは、ご好意を受けて良いものなのでしょうか?」

「勿論ッスよ。友達ですから、此処は甘えてOKです」

「友達……。そうですか。では、お言葉に甘えて」


そう言って真上さんは、やけに素直に、俺に荷物を渡すんだが……『ズシッ!!』とした、重さを感じる。

その重さは『荷物重ッ!!なにが入っとんじゃ、これ!!』って、山中バリのツッコミを入れたいぐらい手渡された荷物は重い。


……ってか、なんでこの人、こんな涼しげな顔で、こんなもんを持てるんだ?



「・・・・・・」

「あっ、あの、ひょっとして重いですか?重い様でしたら、私がお持ちますよ」

「いっ、いや、ぜっ、全然……こんな程度、全然軽いッスよ。ヘッチャラっすよ。ヘッチャラ」

「あの、本当に宜しいのでしょうか?宜しければ、私が、教室までお持ちしますが」

「なに言ってんッスか。こんなもん屁でも無いッスよ。……けど、これって、何が入ってるんッスかね?衣装だけの重さじゃないですよね」

「あぁっと、えぇっと『倉津さんのクラスの出し物で、なにか使えるものが有るかな』っと思いまして。ご迷惑だとは知りつつも、少し紅茶の器具を見繕ってまいりました」


なるほどなぁ。

どんな器具を用意してくれたのかまでは知りませんが、道理で重たい筈ですね。


けど、俺も男だ。

段ボール内に梱包してある内容がわかった以上、尚更、彼女には渡せねぇな。


それに壊したら申し訳が立たないから、大事に持って行こ。



「そうだったんッスか。すんませんね。わざわざ」

「あぁっと、お気に召して頂けるか、どうかまではわかりませんが……」

「いやいやいやいや、あんな美味しい紅茶を淹れる器具ですから、きっと真上さんのチョイスは完璧ッスよ。まぁ勿論、それを使って真上さんが淹れるから、紅茶の味が引き立つんですけどね」

「くすっ、そんなに褒めないで下さい。あれは、ただの趣味なんですから」

「いやいやいやいや、お世辞なんかじゃないッスよ。マジっすよマジ」

「そうですか。気に入って頂けて、光栄です」


『ピカァ~~~~!!』


にゃあぁあぁぁぁぁ~~~。


こう言っちゃなんなんだがな。

この人、ウチのクラスの女子達とは、明らかに女子力オーラが違い過ぎるな。


なんなんだよ、この眩し過ぎる笑顔は……


ってか、最近な。

この笑顔には『癒される』どころかな。

俺には、この人の笑顔の後ろに『後光』が見え隠れして来てんだよな。


マジでハンパねぇな!!


奈緒さんに引き続き『女子力マイスター』の称号を与えますよ。

(↑今思いついた『マイスター』だけど、奈緒さんが一番)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


真上さん……相変わらずのストイックさですね(笑)


まぁただ、少し彼女の言動から「不安に成る様な言葉」がチラホラ聞こえてきましたね。


さてさて、この辺りを踏まえて。

この後、何事もなく、教室まで出来上がった衣装を運び込む事が出来るのか?


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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