最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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182 不良さん、ある意味、伝説に……(笑)

公開日時: 2021年8月7日(土) 00:21
更新日時: 2022年12月2日(金) 17:58
文字数:2,435

●前回までのあらすじ●


 奈緒さんの熱烈なファンである鮫島君は。

演出で、奈緒さんをステージ上でスカート捲りをした嶋田さんに対して逆上。


ナイフまで出して、嶋田さんに襲い掛かるが、倉津君が、これに対応して事なきを得た様に見えたが……


倉津君の足には、ナイフが突き刺さっていた(笑)


それを見て、心配する奈緒さんとアリスちゃん。

「あっ、あの、真琴君、ナッ、ナイフを抜いた方が良いんじゃないですか?」

「アカン、アカン。そんなもん抜いてもたら、なんぼ血の気の多いマコでも、ライブの最後まで持てへんで」


確かにな。

小さいとは言えどもナイフはナイフ。

この場でナイフなんざ引き抜いたら、血が一気に噴出して、多分、出血多量で死んじまうだろうな。


けど、逆に言えばだな。

この程度の大きさナイフなら、抜きさえしなきゃ、ライブを最後までやる位は出来んじゃねぇかな?



「ライブの最後って……なに言ってるの、山中君!!足にナイフが刺さって、真琴君、怪我してるですよ!!」

「だからなんやな?そんなもんぐらい、怪我の内にも入るかいな。高々、足にナイフが刺さっただけやろ。腕に刺さってへんねんやったら、演奏ぐらい出来るやろうに」

「酷い……酷いよ、山中君!!真琴君は怪我してるのに、まだ演奏させる気なの?」

「その通りやけど」

「酷い……」

「あのなぁアリス。あんま、そのアホを見縊るもんやないで。そいつはなぁ、どうしょうもないボンクラで、アホやけど。物事を途中で投げ出す様な無様な真似だけはせぇへん。そこら辺の雑魚とはちゃうで」

「だけど、怪我してるんですよ!!」


オイオイ山中……俺の事を評価してくれるのは有り難いがな。


そこ、ちょっと違くねぇか?


大体にして、此処で俺の株価を上げて、どうすんだよ?

そこは、ちょっとぐらい偽善者ぶってでも、素直の中のオマエへの好感度を上げる処だろうに。

俺を心配したフリの1つでもすりゃ、素直の中のオマエの株が上がるって言うのによぉ……そこを敢えて、素直を怒らせる方向ってどうよ?


ホント、オマエって、自分の事になると馬鹿なんだな。


好感度を上げるのは『恋愛ゲームの基本』だぞ!!

(↑本物の馬鹿)


まぁ、やっちまったもんはしゃあねぇな。


今まで山中のアホには、散々、借りを作ってた事だし。

そろそろ、この辺で、大きく利子をつけて返しておいてやるとするか。



「なぁ、素直……」

「あっ、はい」

「俺、さっき、自分で『大丈夫』って言ったよな。なのに、奈緒さんですら、なにも言ってないのに、なんでオマエが、そこまで俺に干渉するんだよ?オマエ、俺の彼女かなんかか?」

「違いますけど……」

「なら、俺の事なんか気にせずに、黙って演奏しろよ。オマエのツマンネェ話を、いつまでも聞きてたんじゃ。本気で、俺が最後まで演奏出来なくなっちまうぞ」


そう言いながら、不意に、足に刺さったショボイナイフを掴む。



「えっ?真琴君ダメ!!」

「やるやんけマコ。そうでなくちゃな」


俺は、素直の静止を聞かず、一気に自分の足に刺さったナイフを抜き、床に投げつける。


勿論、血がドクドクと音を立てて、大量に流れ始める。


これによって俺は、このライブに時間制限を設けた。

俺達のツマラナイ諍いを、いつまでも客に見せてる訳にもいかないからな。


……にしても、ナイフを抜く時って、刺さった時より痛ぇな。



「クハァ~~~。こりゃあ、流石にイテェな。さてさて、これでタイムリミット付きのライブに早代わりした訳だ。俺が出血多量でブッ倒れるのが先か、それとも最後まで演奏し切れるのか……楽しくなってきただろ。さぁ時間がねぇ、さっさと始めるぜ!!『Troubling』」


♪---♪♪♪-♪---♪♪♪-♪---♪♪♪-----♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪-♪♪♪♪♪♪……


強引に10曲目の『Troubling』をスタートさせた。


勿論、ライブ慣れした嶋田さんは、こう言った事態にも度々遭遇しているだろうから、なんの動揺もない。

寧ろ、俺の身を案じたり、心配する様子も一切無い。


どこまでもクールに、観客にギターの演奏を振舞っている。


それと、俺に演奏の継続を促した山中も。

当然そのつもりだったのだろうから、いつも以上にキレのある良い演奏をしている。


当然、問題はない。


だが、残りの女子2名は、かなり問題が有るかも知れない。

先程、素直は、この程度の事で、恐ろしい程に動揺していたし。

奈緒さんは、なにも言わないが、俺の彼女だから心配していても、なにもおかしくはない。


それどころか、下手をすれば彼女達のどちらかがライブを止めて、中断も有り得る状態だ。


現に素直は、動揺が隠せないまま、シンセに触れてすらいない。


それでも俺は、血の気がドンドン失せて行く中、ベースをかき鳴らした。

この2人には、俺の必死さを伝える必要があるからだ。


そんな中、イントロが終わる。


不安を持ったまま、いよいよ声が入るパートに入った。


素直は、今の現状、とても歌を唄える状態にはない。

なので、これで奈緒さんが声を出さなきゃ、このライブは終わりだ。



「♪~~~~」

「「「「「おおおぉぉおぉぉおぉぉおぉおぉぉぉ!!」」」」」


……やっぱりな。


奈緒さんなら、この状態にあっても、きっと唄ってくれると信じてたよ。

この辺は素直より、俺の性格を、よく理解してくれている。


ライブ中にアクシデントが起こった場合、下手に中止にするより、強引にでも演奏を継続した方が、今まで以上に盛り上がる可能性が高い。

特に今回の様な『刃傷沙汰』なら、無茶をした方が、尚更、観客は喜ぶ。


奈緒さんは、その辺を、よく理解して上で歌を唄ってくれている。


例え、それが無謀な事と解ってても……


そう言ってしまえば、まるで彼女が、俺の事を心配していない『冷血人間』だと思われがちだが、それは決してそうじゃない。

彼女は、自分の感情を抑えてでも、俺の意思を尊重してくれている。

此処は、そう解釈すべきだと思える。


だからせめて、そのお礼として、俺も、その彼女の強い意思に精一杯応えるつもりだ。

自分の彼女が此処まで我慢してくれているなら、俺なんかがブッ倒れ様が、大量出血しようが、んなもん関係ねぇ!!


最後まで全力で行ってやらぁ!!



そうやって俺の意識は、再び真っ白くなっていく。



……奈緒さんとの意思疎通が出来た演奏、これもまた悪くないもんだ。


まぁ今回の場合は、出血により血の気が失せているから、少し気持ち悪いがな(笑)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>

これにて第三十三話『アクシデント』は終了に成ります。


……にしても、倉津君、やりますね。

馬鹿だからこそ出来る所業なのでしょうが、出血多量で倒れるか否かを明白にして、ライブの時間に制限を設け。

血ダルマに成りながら演奏するなんて、メチャクチャで楽しそうなライブです。


まぁ、この後、どうなったのかは次回の講釈。


次回、倉津君とは生きて会えるのか?


また良かったら、遊びに来て下さい~~~(*'ω'*)ノ

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