●前回のおさらい●
奈緒さんに余計な事を言って、ポコポコにされ撃退された山中君。
その後、倉津君と奈緒さんが2人でイチャイチャしながら食事をしていたら……山中君は「やっとれんわ!!」の言葉と同時に復帰。
そぉ……山中君は「死んだふり」っと言う壮大なボケをかましていたのだった!!(どうでも良い話(笑))
復活した後、山中が勢い良く飯を平らげていき、あっと言う間に食事の時間が終わった。
そんで全ての皿が空っぽになった事に満足した奈緒さんは、食後のお茶を淹れに台所に行く。
そこで、満腹感を存分に満喫した山中が、毎度の事ながら爪楊枝を咥えて、話を切り出してきた。
相変わらずの『おっさん・ライク』なスタイルだ。
「あぁ、そや、マコ。そう言やぁ、さっき、なんぞドラムの事を聞いとったみたいやけど、あれ、なんの話やな?」
矢張り、山中は満腹になると機嫌が良くなる。
どこまでも解り易い性格だ。
故に、折角、山中から話を振ってくれた事だし、山口の件を少し聞いてみるか。
「いや、実に大した話じゃねぇんだけどよぉ。ほら、ウチのクラスに山口って居るだろ」
「あぁ、山口なぁ。おんなぁ。あのイケメンのイケ好かん奴やろ」
「あぁ、そいつだそいつ」
「ソイツが、どないしてんな?」
「いやな。この間、ソイツから、ちょっとした申し出があってな。今、アイツと、梶原と、俺とで歌謡コンテストに出る事になったんだよ」
「ほぉ~、またオマエも、豪い奇特な真似するもんやな」
「まぁな。その辺は偶然の産物ではあるんだが、自覚はしてる」
貧乏な山口家で、TVが爆発すると言う生々しい事情が有ってな。
断れんかったのだ。
「ほんで、それがどないしてん?」
「それでよぉ。まぁそうやってコンテストに出るのは吝かじゃねぇんだがよ。山口のドラムが、正直ド素人過ぎて、完全に足を引っ張ってんだよな。んで、どうすりゃ良いかわかんねぇから、現役ドラマーのオマエに、この話を振ったって訳だ」
「なるほど。話しからしたら、そのド下手糞を、どないかしてレベルアップさせたいって事やな」
「まぁ、簡潔に言やぁ、そういうこったな」
おぉ、今回は、なんの脱線もせず、思った以上に早く説明がついたな。
けど、それに反して、山中は少し悩んでいる様子だな……
まぁ、事が事だけに、ドラマーとしては安易に回答は出来ねぇか。
さて、この難問、どう言う解答が返って来る事やら。
「まぁ、レベルアップするぐらいやったら、そないに難しい話やあらへんけどな。期間が短い言うのは、流石に頂けんな」
「だよなぁ。ドラムって、キッチリ叩ける様になるまで、結構、時間掛かりそうだもんな」
「まぁなぁ。そないに簡単に上手なんねやったら、ドラム人口が、もうちょっとは増えてもおかしくはないやろうからな。ドラムちゅ~のは、難しいからこその人口の低さやからなぁ」
「だな。ヤッパ、簡単にレベルアップさせる事は難しいよな」
楽器の演奏は、どれも甘くねぇよな。
その中でも、特にドラムって楽器は厄介だ。
勿論、楽器演奏に貴賎はねぇんだがな。
ドラムって楽器は、兎に角、両手、両足が違う動きが出来て初めて演奏が成立する。
勿論、山口も最低レベルではあるが、そこの部分だけはギリギリではあるが出来ているんだが。
ただ、それが出来ただけでは、決っして『良い演奏』にはならないのも事実。
矢張り、ドラムの演奏にはリズム感が一番モノを言うからだ。
このリズム感と、手足の動きが均一化されてこそ、初めてドラムの演奏が上手く噛みあって成立する。
これだけを聞いても解る様に、兎に角、このドラムって楽器は、本当に厄介な楽器だ。
「まぁ、そないに真剣に落ち込むなって。さっきも言うたけど、一応、方法は無くも無いねんから」
「なんか良い方法があんのか?」
「ある事はある。そやけどやな。多分、体力の無いド素人がこれをやったら、間違いなく1日でブッ潰れてまうぞ」
「因みにだが、どうやるんだ?」
この後、山中の口から出た言葉は、極当たり前の言葉が紡がれただけだった。
だが、コイツの言う通り、それをやりきれば上手くなると、納得出来るものでもあった。
「ドラムを上手く叩くなんて、実際は、そないに大層な問題やないんや。ただ単に、ドラムと真正面から向き合わせて、エンドレスに叩き続けるだけで十分やからな。それこそ、気ぃ狂ったみたいに叩いとったら、嫌でも上手なるわ」
「オイオイ、そりゃあまた豪く原始的な方法だな」
「まぁな。そやかて、これが一番効果が抜群なんやから、しゃあないやろ」
「なんでだ?」
「そら、オマエ、考えてもみいや。ドラムの基本は、まずリズム感やで、そこさえ良ぅなったら、最低でも聞ける様なもんにはなるわな」
矢張り、そこか。
俺もベース弾きだから、リズム隊としては同意見だ。
「確かにそうだな」
「そやけどな。先言うとくけど、これ、メッチャキツイ練習やで。同じ事をズッと繰り返す訳やから、相当な音楽好きやないと、確実に途中で挫折する。それにな……」
「それに?」
「ドラムは、滅茶苦茶場所をとる。練習する場所が有る場合はえぇけど。無かったら、無かったで、早々にスタジオを借りなあかんやろ。それだけでも、金がメッチャ掛かんねん」
困ったな。
別に俺自身が金銭的に困ってる訳では無いんだが……これは違った意味で、金銭的に困る。
一見、おかしな事を言ってる様に聞こえるかも知れないが、事実、山中の意見からは厄介な問題が浮上している。
『なにか?』って言うとだな。
これは、例え話になるんだが……
前までのメンバーが、この様な問題に直面した場合『バンドを仕事にする』って音楽に対する高い目的意識を持っていたので、金を使ってでもスタジオを借りて練習をしたいって意識が生じる。
だが……山口や梶原の場合。
最終目標は、あくまで『コンテストの優勝』=『TVとDVDが欲しいだけ』であって、それ以降のバンドをやる気持ちは未知数だ。
これだけでも目的意識や、ヤル気が段違いに違いすぎる。
そうなった場合、アイツ等に『金を使ってまで練習をするか?』って質問したら……恐らく返って来る答えは、間違いなく『NO』だ。
何故なら、仮に目的を達成したとしても、スタジオ代・その他諸々に掛かった経費を差し引いたら、TVや、DVDの料金を割引で購入したに等しくなっちまうからな。
これじゃあ『無料で手に入る』って言い難くなる。
しかも、そうやって優勝出来れば、まだ御の字なのだが、優勝出来なかった場合は、使った金の分だけ損をし、マイナスになるだけで全てが水泡に帰す。
まぁこう言う考えって、都合の悪い事を排除しているだけなのかも知れないが、アイツ等が、こんなリスクを犯すとは余り考えられない。
故に、山中の言う『スタジオを借りる金』って言うのは、結構、深刻な問題だ。
ほんと困ったもんだな。
山中の奴も、俺の表情から、なにかを感じ取って真剣な顔をしている。
この表情からして、恐らくは、俺と同じ考えだと思っても間違いは無いだろう。
そんな事があって、2人の間には沈黙が訪れた。
そこに……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
漸く本題である、ドラムについての話が出来た様なのですが。
ドラムの演奏をレベルアップさせるのも去る事ながら。
練習をするだけでも、ドラムと言うのは厄介で。
その大きさから、練習場所がかなり限定されてしまうんですよね。
まぁ今の時代ですと、比較的小さい電子ドラムなんて言う物がありますので、これを買って練習する人も多いのですが。
この時代ですと、まだまだ値段が高い上に性能が悪く。
ただ練習させたいが為だけに買える様な代物じゃなかったんですよね。
さてさて、そんな色んな問題を抱えたまま。
恐らくは、奈緒さんが、この場に戻って来たと思われるのですが……彼女のドラマーとしての意見は、どういう物なのか?
次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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