●前回のおさらい●
湘南のビーチに到着した後。
またロクデモナイ事ばかり考えている倉津君でした(笑)
知らぬ間に、その不幸を引き摺る影は、今、ゆっくりと近付いて来ていた。
しかも、息を潜めたまま、俺が気付かぬ内に、既に、俺の背後まで近付いていた。
この人に此処で遭遇するとは、本当に、まさかの存在だった……
「あれ?後輩さん?」
「うん?」
どこかで聞いた様な声に反応して、不意に振り返る。
そこには……
「あぁ~~~っ!!ヤッパリ、後輩さんだぁ!!」
「あっ、あれ?つっ、椿さん?」
膨大な良からぬ妄想を膨らませていた俺の元に、最初に現れた女の子は、予想に反して、あの3人娘じゃなく。
何故か、シックな黒のビキニに身を包んだ椿さんだった。
どうやら彼女は遠くから俺を発見し、無邪気な笑顔で子供の様にはしゃいでやって来たらしい。
オイオイ、なんだこれ?
豪く予定外な事が起こったもんだな。
一体、なにがどうなって、こんな事になってんだ?
なんで、奈緒さんや素直やステラじゃなく、敢えて此処で、椿さんが現れるんだ?
まっ、まぁ、予定外では有るが、椿さんも立派な美人さん。
俺の元に来てくれる綺麗な女の子が4人になったと思えば、優越感は4倍以上になる。
考え様によっちゃあ悪くない!!
悪くないぞ椿さん!!
寧ろ、歓迎しますよ!!
(↑嶋田さんの彼女(一瞬レンタル))
あぁ、けど、一言だけ言いたいんだが……例の下着の件もあるんだが、この人って、全般的に、凄い黒って色が好きだよな。
しかも、性格が子供っぽいくせに、妙に黒が似合うんだよな。
要は、顔の造りで騙されてるのかも知れないけどな。
でも、それだけに他の3人の女子とは、違うパターンだからOKOK!!
ドンと来いッス!!
「えっ?えっ?えっ?椿さん、こんな所で、なにやってんッスか?それに今日は、嶋田さんと一緒じゃないんッスか?嶋田さんの姿が見えないッスけど」
「ダメだよ、後輩さん。人に逢ったら、まず最初に挨拶しなきゃ……こんにちわ」
口を尖らせてプンスカ怒りながら、人差し指を立てて、俺の無作法を指摘。
だから俺は、彼女の言葉に従う。
椿さんの言う通り、人に会ったらまずは挨拶するのが、人として常識な事だからな。
「えっ?あぁ、あの……、すんません。こっ、こんにちわッス」
「うん、良く出来ました。偉い偉い」
「あぁうっす」
相変わらずだな。
この人の、恐ろしい程のマイペースは崩れる様子はない。
俺が馬鹿正直に、椿さんに挨拶を返すと、彼女は何を思ったのか、俺の頭を撫でてきた。
うんうん、だが、これはこれで、また悪くないぞ。
傍から見たら、椿さんって、おねぇさんキャラだもんな。
まぁ中身が子供だから、見た目だけだけどな。
いや……じゃなくてだな。
なんで突然、湘南の海に、椿さんが現れたのかが不明瞭なままじゃないか。
気持ちが悪いので、先持って確認する事にした。
さっき聞いた時は完全にスルーされたけど、嶋田さんの存在も、ちゃんと確認しとかなきゃな。
まぁ、嶋田さんが一緒に居る事だけは確実だろうけどな。
確認な確認。
「あっ、あの、椿さん」
「なぁ~にぃ?」
「ところで嶋田さんは、どこ行っちゃったんッスか?その辺の海の家にでも、買い物に行ってるんッスか?」
「浩ちゃん?浩ちゃんなら、まだ仕事中だから来てないよ」
おかしな事を言う。
嶋田さんが来てないと言う事は、一体、椿さんは、誰と一緒に来てるって言うんだ?
「あぁそうなんッスか。じゃあ、椿さんは、お友達か、誰かかと一緒に来たんッスね」
「うぅん、違うよ。椿1人だよ。なんで?」
「ぶっ!!……いやいや、椿さん、なんで、またそんな無茶な事をしてるんッスか?此処の海岸に、女の子が1人で来ちゃ危ないッスよ」
「えぇ、だっ~てぇ。浩ちゃん、仕事が忙しいから、帰って来るの夕方なんだもん。一緒に来たかったけど。待ってる間、1人でお留守番してるのも嫌だったし。浩ちゃん待ってたら、折角、海に来ても、椿、泳げなくなっちゃうんだもん」
ブッ!!
いやな、言い分もわからなくもないが……
たった……たったそれだけの理由で、無防備の代名詞とも言えるアナタが、ナンパのメッカで有名な、この湘南海岸に単独で来たって言うんッスか?
もしこれが事実なら、それは余りにも無謀過ぎるでしょうに。
良いですか椿さん?
アナタの今している行為はですね。
『狼の群れの中を、美味しそうな羊が、ご丁寧にバーべキューセットを持ってウロウロしてる』のと、全く同じ意味なんですよ。
ナンパされて、ホイホイ付いて行っちゃったら最後。
絶対、ナンダカンダ上手く言いくるめられて、人の良いアナタは、最終的に見知らぬ男とHする羽目になっちゃいますよ。
大体にしてアナタは、黙ってさえいれば100%綺麗な人なんですから……そんなの、ナンパ師達の格好の的じゃないですか。
それに第一アナタは、直ぐ、人に騙されるんだから、1人で、そんな無茶はしちゃいけません!!
最低限として嶋田さんの引率がないと、こんな危ない所に来ちゃいけないんです。
どう考えても『無理』『無茶』『無策』『無謀』でしょ!!
嶋田さんが心配するから、そんな無茶な事をしちゃダメです!!
ハァ~~~、しかしまぁ……偶然とは言え、今日、俺が海に来てて良かったよ。
以前同様、椿さんは、ホント、果てしなく無警戒な人みたいだから、こんな所に1人で来たら、ナンパ師共に何をされるか解ったもんじゃない。
こりゃあ、嶋田さんが来るまで、綱木さんを俺が保護しとかなきゃ大変な事になるな。
嶋田さんには追試の時に大きな借りも有る事だし、返せる時に借りは返しておこう。
それに、多分、あれって、今日の為の布石だったんだろうしな。
椿さんの面倒見よ。
……はい、決定。
「あぁ事情は、なんとなく飲み込めました。じゃあ取り敢えずは、嶋田さんが来るまでは、俺と一緒に居て下さい。此処は、椿さんみたいな良い人には危ない所なんですよ」
「は~い」
「じゃあ約束ですよ。勝手に、どこかにフラフラ行っちゃダメですよ。どこかに行く時は、必ず、俺に一言言ってから行って下さいよ」
「は~い、後輩さん」
ホントに素直な人だから、こう言う時は、椿さんって扱い易いんだよな。
直ぐに、ナンデモカンデモ、平気で言う事を聞いてくれるからな。
けどな、この人、実は、こう見えて、滅茶苦茶頭が良いんだよな。
俺も、この間、初めて知ったんだけど、この人って『現役東大生』なんだって……
椿さんの正体を知ってたら、全然そんな感じじゃないんだけどな。
「うん?……あの、ところで椿さん、荷物が見当たらないんッスけど。どこに置いてるんッスか?荷物が重い様なら、俺が取って来てあげますよ」
「あっ……そう言えば、置きっ放しだね」
なにかを思い出した様に『ぽん』っと手を叩いて、ロクデモナイ事を言った。
もぉ……早速やってくれたよ、この人は。
流石に、イキナリこの展開は、あまりにも予想外だった。
……いや、嘘。
ホントは、心の中で、そうじゃないかとは思ってたんだよな。
だって俺の所にフラフラとやって来た時、完全に、なにも持っていない手ぶら状態だったもんな。
ハァ~~~……
あぁ因みにですが、再確認の為に言って置きます。
この人、日本の最高学府の『現役東大生』です。
……アナタは信じますか?
信じられませんね。
俺もです。
「もぉこの人は……一体、どこに置いて来たんッスか?それと、どんなバック持って来たんッスか?」
「えぇっとねぇ、確かねぇ、大体、あそこら辺に置いたよ。それでねぇ、椿のバックは、とっても、とっても大きなボストンバックなの。後輩さん、こぉ~~~んなにこぉ~~~んなに大きいんだよ。こぉ~~~んなに」
目一杯、手を広げて、必死に自分のバックの大きさを表現してくれるんだが……そんなデカイバックは、世の中に、早々存在しない。
どれぐらい存在しないかって言うとだな。
『オマエの様なデカイババァが居るか』って、北斗の拳のケンシロウが言い放った偽者のババァぐらい存在確率は低い。
仮に、その鞄が、本当に彼女の言う大きさだったら、完全に椿さん(身長:165cm以上)が入ってしまう様な大きさだ。
海水浴に来るぐらいで、普通、そんなバックは持ってこない。
早い話……有り得ねぇんだよな!!
「またアバウトな。……まぁ、良いッスよ。取り敢えず、少し探して来ますんで、俺が帰って来るまで、絶対、そこを動いちゃダメですよ。良いですね。一歩も動いちゃダメですよ」
「ねぇ、後輩さん。椿、おトイレに行きたくなったら、どうしよう?」
「あぁ、その時は、自己判断で動いて良いです。それ以外は、危険なんで此処に居て下さい。良いですね?」
「は~い」
椿さんは、俺の立てたテントの中に入り『大人バージョンの座敷わらし』みたいに、チョコンと真ん中に座り。
元気良く手を上げて『お返事』をする。
もぉ……素直な返事は、とても良い事なんですが、もうちょっとだけで良いんで、シッカリした大人になって下さいよ。
以前、ゆっくりでも、自分で進歩するって言ってたの、椿さんの方ですよ。
前に逢った時と、なにも変わってないじゃないですか!!
そんな風に心で文句を言いながら、結局は、椿さんの鞄を探しに行く俺。
以前と一緒で、椿さんは、どうやら放って置けないらしい。
まぁ椿さんだから仕方ない、仕方ない。
テストの恩返し、恩返し。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
はい、倉津君の前にイキナリ登場したのは、嶋田さんの彼女である椿さんでしたね(笑)
さて、この時点で男女火が1:4に成ったのですが、本当に倉津君は大丈夫なのでしょうか?
そんな不安を抱えながらも。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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