●前回までのあらすじ●
奈緒さんからの課題であった『アレンジ』も出来。
スタジオで朝まで練習をしていた倉津君達は、皆それぞれの学校や職場に向かう。
学校には、特に何事もなく到着する。
時間としては、かなりギリギリになったが、遅刻するまでには至らなかった。
「よっしゃ!!セーフ、セーフ……危ない、危ない。危うく皆勤賞を逃す所やったわ」
そうなんだよなぁ。
この馬鹿な。
喧嘩ばっかりするロクデモナイ不良の癖に、変な所が不良っぽくないんだよな。
毎日休まず学校に来て『皆勤賞を狙ってる不良』って、どうよ?
そんな目で山中を見ながら、校庭を横断して、教室に入っていく。
***
教室に入ると、先公が、まだ来ておらず。
教室内は、毎度の事ながら無意味にザワついている。
学園ドラマなんかである、普通のよくある早朝の光景だ。
だが、既に予鈴が鳴っていたので、休み時間の様に、まばらな場所で喋ってるのではなく。
殆どの奴等は、自分の席近くでペチャクチャと喋っている。
けどなぁ、席に向かいながら、その話の内容に耳を傾けてたら解る事なんだがな。
その内容って言うのが、結構、悲惨なものでな。
『昨日のドラマ見た?』とか『○○滅茶苦茶面白いよな』とか、なんとも幼稚臭い、ガキみてぇなツマンネェ話ばかりしてやがるんだよな。
もぉな、余りにも聞くに堪えない内容だったので。
俺は、それらを無視して、一番後ろの窓側の自分の席にある机の上に足を『ドカッ!!』っと置いて、『ドカッ』っと音を立てて座る。
この行為に、教室内が一瞬凍りついた様に静まり返った。
俺が、いつもこんな調子なもんだから、相も変らず、誰も俺の所には話し掛けては来ない。
……素直を除いては。
「おはよう、真琴君」
「うっす」
「今日は豪く遅かったんですね。スタジオから、学校に、そのまま来たんですか?」
「あぁ、そうだな。今さっき練習が終わった所だから、今日も、昨日に引き続き、ヒデェ目に遭ったよ」
「あの後、どうかしたの?」
「いや、特に、コレと言って代わり映えは無いんだけどな。必死に弾き過ぎて、性も根も使い果てしちまって、もうクタクタな訳だ。……本来なら、学校も休みたいぐらいの勢いだな」
「そうなんですか。昨日も、みんな、大変だったんですね」
「まぁよ」
こうやって、素直は心配そうにしてくれているが。
この行為に対して俺は、以前の様に変な感情を素直には抱いたりはしない。
もぉ奈緒さんを悲しませるのも嫌だし、これ以上、バンドのみんなに迷惑を掛けるのもゴメンだからな。
故に此処6日間、素直に対しては、いつもこんな調子だ。
まぁ素直の方も、崇秀に言われた事が、相当堪えたのか、あまり積極的な行動はしなくなったしな。
彼女も、普通に接してくれている。
実に有り難いこった。
「あっ、そう言えば真琴君、昨日の期末テ……」
「はい、先生がもう来てますよ。有野さんも自分の席に戻ってぇ」
「あっ、はい。すみません」
地獄の副担任『島田千夜』の奴が、いつの間にか教室内に入って来てやがった。
コレにより、ザワザワしていた教室が、一応、朝のホームルームを始める体勢に入る。
それにしても素直の奴、自分の席に戻る前に、一体、俺になにを言い掛けてたんだろうな?
なんか言いたそうだったんだけどな。
まぁ良いか……別にバンドに支障の有る様な事じゃねぇだろうしな。
だが、これが間違いの始まりだった。
***
島田の雛鳥は、黙々とホームルームをこなして行く。
いつもながらコイツの話は、全然面白くもないし、淡々として事務的だ。
ただなぁ、淡々と事務的に話をしてる割には、毎度毎度、的を得ない話し方をするんだよなぁ。
話がアッチへ行ったり、コッチへ行ったり、結局、何が言いたいのか、全く持って、なにも伝わって来ない。
……ったくもぉ、なにが言いてぇんだ、この女だけわ?
等と、いつも通り、島田嫌いの俺は、文句ばかり脳裏を過ぎる。
「……っと言う事です。何か質問は有りますか?」
『ねぇよ。つぅか、誰1人として内容が伝わってねぇから、質問のしようもねぇわ』
頭の中の文句は、止めどなく流れる。
「ないですね。じゃあ、ちょっと早いけど、ホームルームを終わります。……あっ、そうそう、山中君と、あっ、あの、倉津……君は、この後、少し先生の所に来て下さい」
「あぁ?」
なんだぁ?
俺は、オマエになんぞ用はないんだけどなぁ。
それとオマエさぁ、また俺を呼ぶ時だけ『倉津……君』って、間を開けやがったな。
オマエは一体、俺に対して、何をそんなにいつもビビッてんだよ?
学校の先公なんだから、もっとビシッと言え、ビシッと!!
ホント、まどろっこしい奴。
少しはふてぶてしくなる為に、一回、風呂(ソープ)にでも行って研修して来たら、どうだ?
そうやって、男と裸の付き合いでもしたら、少しは度胸も付くだろうし、金も貯まるだろうからよぉ。
もしそこでNo.1にでもなりゃ、その頃には、そのウザイ性格も、完全に治ってるんじゃねぇか?
だから教師なんぞツマンネェ職業は辞めて、さっさと風呂で人生やり直して来い。
「んだよ?用が有るなら此処で言えよ。なんで俺が、いちいちテメェん所になんぞ行かなきゃなんねぇんだ。面倒臭ぇ。……オラ、用が有るんなら、サッサと此処で言え」
「えっ?いや、此処では、ちょっと言……」
「聞こえねぇな。俺は、此処で言えっつってんだろ。俺は、職員室に行く気なんぞ更々ねぇんだから、はよ言え」
「でも……」
あぁこの野郎、また泣きそうに成ってやがる。
なんでオマエは、そぉポロポロ涙が出るんだ?
テメェは、涙製造工場の工場長か!!
それによぉ、オマエさぁ、大学出てる大人なんだろ?
大人なんだったら、子供みたいに、なにも考えずピィピィ直ぐに泣くな!!
雛鳥か、駄々っ子かテメェは?
鬱陶しい!!
「泣きな、泣きな。このウルサイのは、俺が職員室まで連れて行ったるさかい。もう泣きなや、千夜ちゃん」
「ほん……と、山中君?」
「ホンマやちゅうねん。ドンと任したらんかい」
「オイオイ、山中。先に言っとくが、俺は、絶対に職員室なんぞには行かねぇぞ」
「オマエはアホか?此処で千夜ちゃんが泣かした方が、職員室に行くより、もっと面倒な事に成るぞ。ホンマに面倒臭い思うんやったら、此処は大人しく折れろ」
うわぁぁあぁぁ~~~!!
その話、もぉ想像しただけで、本当に面倒臭そうだな。
・・・・・・
……もぉしゃあねぇなぁ。
これ以上、面倒になるのは御免だ。
今回だけは、山中の顔を立てて特別、職員室には行ってやるよ。
但し、今回だけだぞ。
「あぁ、もぉ面倒臭ぇなぁ……わぁかったよ、後で行ってやるからピィピィ泣くな」
「ほんと?」
「あぁ、嘘つかねぇから、さっさと職員室に帰れ。鬱陶しい」
「うん」
『うん』って、オマエねぇ……ホント幾つだよ?
そんなんだから、全校生徒に『千夜ちゃん』なんてナメた呼ばれ方すんだよ。
ガキになめられてんじゃねぇよ。
……ちょっとは自覚しろ。
「なんや知らんが、ほな行こか」
「あぁあぁぁぁ~~~、もぉ、死ぬほど面倒臭ぇ~~。アイツに係わると、息をするのも面倒臭くなる」
こうやって、渋々山中に連れられて職員室に向かう。
けどな、島田、これも先に言って置くぞ。
約束した以上、職員質に行くのは結構だがな。
俺は、昨日のオールでベースの練習をしてて疲れて眠い。
だから、あんまり睡眠時間(授業時間)を削ってくれるなよ。
……マジで頼むぞ。
夜にはまた、あの地獄の様な練習があるんだからな。
ホントに頼むぞ!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
素直ちゃんが言いかけた『期末テ……』っと言う言葉に呼応するが如く。
なにやら嶋田先生から『職員室に呼び出しをされる』と言う不穏な空気が流れて来ましたね。
これは一体、何を暗示するのか?
そして、一体、何が起ころうとしているのか?
いやまぁ、普通にあれなんですけどね(笑)
良かったら、その確認をしに来てくださいです。
次回、特大級の困り事が倉津君に投下されますので(*'ω'*)ノ
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