●前回までのあらすじ●
どうやら嶋田さんが、質の悪い街金から借金をしていた様なので、それを撃退した倉津君。
そして、その後、対立している組の組長の息子である遠藤さんに電話を掛けている様子。
なにをする気なんでしょうね?(笑)
『プルルルル……プルルルル……ガチャ』
「はい、遠藤でやす」
あぁ思った通り、康弘が出ずに、やっぱりヤクザが出た。
ヤクザの組だから当たり前なんだが……それが解ってても、面倒臭ぇなオイ。
どうにかして誤魔化すか。
「あっ、ども。大学で、お世話になっている真琴って申しますけど。康弘さん居られますか?」
「坊ちゃんのご学友さんですかい?」
「あぁ、そうです」
「わかりやした。少々お待ち下さい」
おっ……ヤクザの癖に物分かりが良いのか、アッサリ承諾しやがった。
なら、思った以上に上手く事が運んでるぞ。
……にしてもだなぁ。
このご時勢に『~ですかい』なんて言う奴が、まだ居るんもんなんだな。
うちの組じゃ、年配の玄さん位のもんだぞ。
そんな事を考えながら待ってると、バタバタと廊下を走る音がして、直ぐに康弘が電話口に出る。
「お電話替わりました。康弘ですけど、えぇっと、どちらの真琴さんですか?」
「俺だよ俺……倉津真琴だよ」
「あぁ、倉津君かぁ。久しぶりだね」
「馬鹿!!テメェ、ワザワザ倉津を名乗らなかったのに、デッケェ声で『倉津』とか言ってんじゃねぇよ!!チョットは、自分の立場ってもんを弁えろよな」
「あぁ、ごめん、ごめん……あぁ、そうそう、そう言えば、こないだのライブ見たよ。凄かったね」
なんともまぁコイツだけは、毎度の事ながらマイペースな奴だな。
人が注意してるって言う時に、自分勝手に話題を変えてきやがったよ。
まぁこう言う類の人間は、基本的に話を聞かないのは解っていたから、此処は1つ、これ以上、本筋を外す前に話を止めないとな。
「いやいや、ちょっと待てな遠藤。俺はな、オマエと軽口叩く為に、わざわざ電話した訳じゃねぇんだ」
「って言うと?」
「イヤな。別に、そんな大した話じゃねぇんだがな。……ひょっとして、オマエんとこの島で、スマイル・カンパニーって会社で困ってねぇかなっと思ってよ」
「スマイル・カンパニーねぇ。まぁなんにしても、また急な話だね。……なんでそう思ったの?」
「イヤな。ホントに大した話じゃねぇんだがよぉ。俺ん家でも最近、そう言う無所属の闇金会社の乱立に困っててよぉ。ひょっとして、オマエん所も同じ様に困ってんじゃねぇかなぁとか思ってよ」
「あぁ、そう言う事……まぁ、確かにうちでも、そう言う闇金会社には困ってるね。その中でも倉津君の言うスマイル・カンパニーって奴等は一番性質が悪い手合いでね。上手く隠れ蓑を作って、中々姿を表に表さない会社なんだよ。……けど、なんでまた倉津君が、そんな事を知ってるんだい?」
「イヤな。ソイツに対しての、ちょっとした良い情報があんだよ」
「情報?」
声の様子からして、遠藤は、この話に乗り気満々の様だ。
どうやら俺の横で気絶している馬鹿が所属してる会社ってのは、相当性質が悪いらしい。
「あぁ今よぉ、その会社の借金取りとやらが、何故か、俺の手元に居やがるんだよな。しかも、全く動けねぇ状況でよ」
「本当かい?」
「あぁマジだ。気絶してるし、両手両足も折ってある。これじゃあ、どうやっても逃げ様がねぇだろうな」
「チョット待って倉津君。現状が良く理解出来無いな。……また、なんでそんな状態になってるんだい?」
「別に意味なんてねぇよ。街金の借金取りのクセによぉ。テメェのバックが『遠藤組』だとか抜かしやがるからボコッただけだ」
「ソレって、ウチの人間だと知っててボコったと?」
「馬鹿言うなよな。普通に考えても、誰が喜んで、テメェの組と事を構える馬鹿が居るんだよ。それによぉ、自分の事務所のバックの組をペラペラ言う馬鹿なんぞ、早々居ねぇ。あんなもんは、漫画の世界だけのもんだ。だからよぉ、そんなもんをペラペラ言う奴は、相当な馬鹿か、漫画の見過ぎ。……それに第一、そう言うって事は、バックが居ねぇ証拠だ。違うか?」
「まぁそうだね。……っで、倉津君は、僕にどうしろって言うんだい?」
あぁヤッパ、頭良いなコイツ。
俺が言いたい事を、直ぐに理解してくれる。
それどころか、どこかの美容室の底意地の悪い息子と違って、自分が話を理解したからと言っても、嫌味の1つも言わねぇしな。
遠藤はヤクザだけど、ホント良い奴だな。
ヤクザだけど……
「いや、別にどうこうしろって訳じゃねぇんだがよ。『この馬鹿を、オマエが要るかな?』って思って電話しただけだ。それ以外に他意はねぇ」
「なるほどね。けど、それじゃあ、また僕が、倉津君に借りを作る事になるね」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。んなもん、なんもイラネェよ」
「本気で……言ってるのかい?」
「あぁ、至って本気で言ってるぞ。この件に関しては、前回同様、偶然の産物だ。オマエに貸しを作って利益を求める話じゃねぇ」
「なるほどねぇ。……ハァ、しかしまぁ、僕が、他人に2つも借りを作るなんてね。高くつきそうだ」
聞け。
人の話を。
「だからよぉ。オマエ、ホント、人の話を聞いてるか?さっきから、何もイラネェって言ってんだろ。ちゃんと人の話を聞けな」
「ホント、君は無欲な人だね。まぁ兎に角、その社員とやらは、ウチで引き取らせて貰うよ。その後は、成否が出たら連絡するって事で良いかい?」
「おうよ。んじゃま、そう言う事で……あぁそうだ。ソイツは、マンションの屋上にでも捨てて置くから、勝手に持って行ってくれ。オマエん所も、お抱えの病院ぐらいあんだろ?」
大体のヤクザの組は、人には言えない様な怪我人を囲う事が多いので、お抱えの病院って奴を必ず持っている。
特に遠藤組は、関東で、うちの組と2分する様な大きな組みだし。
康弘が居るのは『本家』だから、余計に、そんなものを持ってない筈が無い。
……とは言ってもだ。
病院だからと言って、必ずしも怪我人を治療するって訳でもない。
ソレは時と場合と『相手』にもよる。
特に組に敵対する人間が、そこに行ったら最後。
碌な治療もして貰えずに、後は『拷問』されるだけだろうからな。
まぁその辺の処遇に関しては、遠藤の処遇次第。
コイツの生き死になんざ、俺の知ったこっちゃねぇがな。
「うん、わかった。じゃあ、また後で連絡する」
「おう、じゃあな。……って、いやいやいや、ちょっと待て」
おっといけねぇ。
この話で、一番重要な事を頼むのを忘れてた。
「なんだい?」
「あぁ悪ぃんだがな。もし、そいつ等のアジトが見つかったら『嶋田浩輔』って名義の借用書だけは破棄してくれ。それ以外は、テメェん所で、どう扱ってくれても構わねぇからよ」
「あぁ、なるほどね。今回のこの件は、そう言う事か、嶋田さん絡みだったんだね」
「まぁ、そう言うこったな」
遠藤との電話のやり取りは、これで御仕舞い。
この後、遠藤が電話を切って、この話しは終わりなんだが……
……やったぞ俺!!
なんか知らんが、万事上手くいったじゃねぇか。
こんなもん、奇跡と言って良いほどの出来栄えだ。
すげぇ~~~。
……等と、交渉の成功に歓喜していた。
……いや、待てよ。
ひょっとして、遠藤が気を使ってくれて、俺に合わせてただけだったりしてな。
まぁ、それならそれで良いんだけどな。
……等と、変に上手く言った事を邪推してみたりもする。
飛んだ1人遊びだ。
***
さてさて、事も終わった事だし。
取り敢えず、血で汚れた床を綺麗に雑巾で拭き取って、この馬鹿に貴重品を返した上で、コイツを屋上にでも捨ててくるか。
(とか言いながら、財布からは全額抜き取る俺)
それから部屋に帰って来たら、手ぇでも洗うか。
んな訳で、無造作に屋上にポイッと……んで部屋に戻って、洗面所でジャブジャブッと!!
そうしている内に、周辺が、なんだか騒がしくなってきた。
しかしまぁ、遠藤の奴、なんとも早い対応だな。
もぉ表に救急車が来やがったよ。
けどまぁ、此処からは遠藤の領分だ。
俺には、もぉ一切関係ない話なんだがな。
んな事よりだ。
椿さんは、どうしてるだろうか?
まさかとは思うが、あれからズッと耳を塞いでるなんて事は無いよな。
一抹の不安を過ぎらせながら、部屋の扉を開けてみる。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>
しかしまぁ、こう言う関連に成ると、急に頭の回転が速くなるんですね。
矢張り、現役組長の息子なだけに、よく心得ている(笑)
さて、そんな中、次回は椿さんとの二人きりの時間が来る訳ですが……今度は大丈夫なんですかね?
コッチは妙に心配な様な気がします(笑)
なので少しでも気に成ったら、また読みにし来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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