●前回のおさらい●
急遽、奈緒さんによるベースの地獄の特訓が始まりました。
倉津君は、もぉそれだけでフラフラです(笑)
「どぉクラ?わかった?」
奈緒さんは、俺の横からヒョコッと顔を出し、そう尋ねた。
それ故に、直ぐに良い返答しようと思って横を向いたら、奈緒さんの顔が真近にあった。
その思いも寄らない近さに俺は吃驚仰天。
直ぐに奈緒さんと距離を取ろうとしたんだが、俺は、ある理由から離れられなかった。
緊張と、脳味噌の極度の疲労で判断が鈍り、命令系統の混乱。
早い話、体が思う様に動いてくれない。
それに、なにか奈緒さんからは良い臭いがする。
この臭いの正体を確認する為に、眼だけで奈緒さんをチラッと見る。
……すると。
彼女が俺なんかの為に、必死に頑張ってくれていた事を証明する事実が、そこにはあった。
彼女の全身が汗ばんでいる事に気付く。
故に、この香りの正体は、彼女の汗の臭いだ。
たださっきも言ったが、奈緒さんの汗は良い臭いがする。
何故か、柑橘系の良い香りがして、俺の鼻腔を悪戯にくすぐってきた。
それに結構な汗を全身に掻いてるみたいで……ブラウスの下にあるブラが薄っすらと透けている。
これを見せられたら、自分の非力さと、彼女が常に全力だった事を再確認させられる。
―――けど此処で俺は、そんな奈緒さんに勃起した。
最悪だ。
「・・・・・・」
必死に教えてくれている人に対して、男の生理現象とは言え、この無様な有様。
恥ずかしさのあまり……いや、人間として最低な自分の情けなさから一言も声が出せない。
今すぐにでも、自分のチンコを殴り潰したい心境だ。
「どうしたの?疲れた?」
「疲れてはいないッスよ。……ただ、自分の不甲斐無さだけにはウンザリしてるッス」
「どうして?……クラ、この短時間で上手くなってるよ」
「いや、俺が言いたいのは、そう言う事じゃないんッスよ」
正直に言える様な話じゃないが、いつも通り正直に言ってしまいそうだ。
俺には、どうやら隠すと言う、人間にとって大事な機能が欠落しているらしい。
「どうしたのよ、クラ?私、なんか気に障る様な事した?」
「違うッスよ。奈緒さんは……親切ッス」
「じゃあ、尚更、どうして?」
「親切して貰ってるのに……俺は最低ッス。最低なんッス」
「だからなにが?どうしたの?」
「俺、必死に教えて貰ってるのにも拘らず……そんな奈緒さんに勃起してるんッスよ……もぉ最悪ッスよ」
結局、なんの捻りもなしに言ってしまった。
ドン引きで済めば良いが……
だってよぉ。
俺みたいな無駄に体のデカく厳つい容姿の奴に、女子が、こんな卑猥な事を言われたら、どう思うと思う?
当然この容姿だ。
『襲われる!!』と思われても、それは仕方がない事だ。
なので奈緒さんが身の危険を感じて、直ぐに逃げ帰っても、別段おかしな事ではない。
いや寧ろ、そうしない方が、どうかしている。
俺みたいな節操のない勃起野郎は逃げられて当然だし、彼女の親切丁寧な指導を受ける資格すらない。
だから今は、彼女が、そうしてくれた方が楽だ。
「そっか……ありがと」
「!!」
奈緒さんの口からは『ありがとう』なんて思いも寄らなかった言葉が返ってきた。
何故なんだよ、奈緒さん?
俺は、アンタにモノを教わってるのにも関わらず、勃起する様な色情魔なんだぞ。
最悪な男なんだぞ。
「……同情ッスか?」
「うん、そうだよ。同情だよ」
「そうッスよね」
「クスッ、クスッ」
今度は笑い始めた……
そりゃそうだよな。
俺は人間失格確定な事を平然とやってのけたんだから、此処は笑われても仕方がない。
けど、そうは言っても、心の中では、かなりキツイものがある。
厚かましい話だが……こんな時に奈緒さんに笑われるのは、死ぬほど恥ずかしいし、辛い。
「なに笑ってんッスか……もぉ辞めて下さいよ」
「クスッ、また勘違いしてる。クラ、私が同情したのは男の生理現象にだよ。……クラ自身にじゃないよ」
「へっ?」
「『へっ?』じゃないよ。男の子なんだから女子に、そう言う感情を持っても、別におかしい事じゃないんじゃないの?」
「けど俺……」
「それにね……そう言う風に見て貰えない方が、女子としては、よっぽど悲しいよ。それってクラが、私には、なにも魅力を感じてないって事でしょ。なら私は、そっちの方が断然悲しい。……だから、そう言う風に見てくれてるクラに『ありがと』って言ったの……変?」
「奈緒さん」
優しいな、この人は……
意地悪な態度を取ったり、俺にとってキツイ事を言ったり、気紛れを起こしたりするけど、この人の本質は誰よりも優しい。
本来、女の子なら、こんな本心みたいな事は言いたくなかっただろうに……
「第一クラは、女子に幻想を持ち過ぎだよ。……女子にだって性欲は有るんだよ。例えば、必死に頑張ってる男の子を見たら『ドキドキ』するもんだし『この人に抱かれてみたいなぁ』とかも思うのものなのよ……あっと、ごめん、私、ちょっと羞恥心が無さ過ぎたね」
俺だって、女の子に性欲が有る事ぐらい知ってますよ。
学校で女子とかの話を聞いてたら、あまりのモラルの低さにウンザリする事も沢山有りますからね。
だからこそ俺は、今までリアルな女子に恋愛を求めるのではなく。
漫画や、アニメの幻想的で、理想的な女の子に逃げていたのかも知れない。
けど、それは間違っていた。
別に奈緒さんを特別視する訳じゃないんだけど……アナタは自然に、男に幻想を抱かさせる。
奈緒さんはマンガに出て来る女の子より、リアルで現実的な女の子なのに。
男の幻想を集約した漫画のキャラクターなんかより、ズッと……魅力的なんです。
アナタは、ホントに怖い人だ。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
奈緒さんの優しさが炸裂しましたね(笑)
こんな風に、男性を導いて上げれる女の子って、皆様はどう感じましたか?
でも本来、奈緒さんは『他人に興味はなく』こういう事を言うタイプの人間ではないのですが。
倉津君が、彼女の心に響く様な楔を打ち込んだからこそ、奈緒さんも、こういう風に言える様に成ったのだと思います。
まぁ将来、絶対に『尻に敷かれる』でしょうけどね(笑)
さて、そんな状況の中、次回。
かなり短い文章になるとは思うのですが、ある衝撃的な事が起こります!!
こうご期待ください(*'ω'*)ノ
倉津君→( ゚Д゚)〈なんか嫌な予感しかしねぇんだけど……気のせいか?
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