最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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058 不良さん 無様を晒す

公開日時: 2021年4月4日(日) 19:51
更新日時: 2022年11月10日(木) 22:19
文字数:2,213

●前回のおさらい●


 急遽、奈緒さんによるベースの地獄の特訓が始まりました。


倉津君は、もぉそれだけでフラフラです(笑)

「どぉクラ?わかった?」


奈緒さんは、俺の横からヒョコッと顔を出し、そう尋ねた。

それ故に、直ぐに良い返答しようと思って横を向いたら、奈緒さんの顔が真近にあった。


その思いも寄らない近さに俺は吃驚仰天。

直ぐに奈緒さんと距離を取ろうとしたんだが、俺は、ある理由から離れられなかった。


緊張と、脳味噌の極度の疲労で判断が鈍り、命令系統の混乱。

早い話、体が思う様に動いてくれない。


それに、なにか奈緒さんからは良い臭いがする。

この臭いの正体を確認する為に、眼だけで奈緒さんをチラッと見る。


……すると。

彼女が俺なんかの為に、必死に頑張ってくれていた事を証明する事実が、そこにはあった。


彼女の全身が汗ばんでいる事に気付く。


故に、この香りの正体は、彼女の汗の臭いだ。


たださっきも言ったが、奈緒さんの汗は良い臭いがする。

何故か、柑橘系の良い香りがして、俺の鼻腔を悪戯にくすぐってきた。


それに結構な汗を全身に掻いてるみたいで……ブラウスの下にあるブラが薄っすらと透けている。


これを見せられたら、自分の非力さと、彼女が常に全力だった事を再確認させられる。



―――けど此処で俺は、そんな奈緒さんに勃起した。


最悪だ。



「・・・・・・」


必死に教えてくれている人に対して、男の生理現象とは言え、この無様な有様。

恥ずかしさのあまり……いや、人間として最低な自分の情けなさから一言も声が出せない。


今すぐにでも、自分のチンコを殴り潰したい心境だ。



「どうしたの?疲れた?」

「疲れてはいないッスよ。……ただ、自分の不甲斐無さだけにはウンザリしてるッス」

「どうして?……クラ、この短時間で上手くなってるよ」

「いや、俺が言いたいのは、そう言う事じゃないんッスよ」


正直に言える様な話じゃないが、いつも通り正直に言ってしまいそうだ。


俺には、どうやら隠すと言う、人間にとって大事な機能が欠落しているらしい。



「どうしたのよ、クラ?私、なんか気に障る様な事した?」

「違うッスよ。奈緒さんは……親切ッス」

「じゃあ、尚更、どうして?」

「親切して貰ってるのに……俺は最低ッス。最低なんッス」

「だからなにが?どうしたの?」

「俺、必死に教えて貰ってるのにも拘らず……そんな奈緒さんに勃起してるんッスよ……もぉ最悪ッスよ」


結局、なんの捻りもなしに言ってしまった。


ドン引きで済めば良いが……


だってよぉ。

俺みたいな無駄に体のデカく厳つい容姿の奴に、女子が、こんな卑猥な事を言われたら、どう思うと思う?


当然この容姿だ。

『襲われる!!』と思われても、それは仕方がない事だ。

なので奈緒さんが身の危険を感じて、直ぐに逃げ帰っても、別段おかしな事ではない。


いや寧ろ、そうしない方が、どうかしている。


俺みたいな節操のない勃起野郎は逃げられて当然だし、彼女の親切丁寧な指導を受ける資格すらない。


だから今は、彼女が、そうしてくれた方が楽だ。



「そっか……ありがと」

「!!」


奈緒さんの口からは『ありがとう』なんて思いも寄らなかった言葉が返ってきた。


何故なんだよ、奈緒さん?

俺は、アンタにモノを教わってるのにも関わらず、勃起する様な色情魔なんだぞ。


最悪な男なんだぞ。



「……同情ッスか?」

「うん、そうだよ。同情だよ」

「そうッスよね」

「クスッ、クスッ」


今度は笑い始めた……


そりゃそうだよな。

俺は人間失格確定な事を平然とやってのけたんだから、此処は笑われても仕方がない。


けど、そうは言っても、心の中では、かなりキツイものがある。

厚かましい話だが……こんな時に奈緒さんに笑われるのは、死ぬほど恥ずかしいし、辛い。



「なに笑ってんッスか……もぉ辞めて下さいよ」

「クスッ、また勘違いしてる。クラ、私が同情したのは男の生理現象にだよ。……クラ自身にじゃないよ」

「へっ?」

「『へっ?』じゃないよ。男の子なんだから女子に、そう言う感情を持っても、別におかしい事じゃないんじゃないの?」

「けど俺……」

「それにね……そう言う風に見て貰えない方が、女子としては、よっぽど悲しいよ。それってクラが、私には、なにも魅力を感じてないって事でしょ。なら私は、そっちの方が断然悲しい。……だから、そう言う風に見てくれてるクラに『ありがと』って言ったの……変?」

「奈緒さん」


優しいな、この人は……

意地悪な態度を取ったり、俺にとってキツイ事を言ったり、気紛れを起こしたりするけど、この人の本質は誰よりも優しい。


本来、女の子なら、こんな本心みたいな事は言いたくなかっただろうに……



「第一クラは、女子に幻想を持ち過ぎだよ。……女子にだって性欲は有るんだよ。例えば、必死に頑張ってる男の子を見たら『ドキドキ』するもんだし『この人に抱かれてみたいなぁ』とかも思うのものなのよ……あっと、ごめん、私、ちょっと羞恥心が無さ過ぎたね」


俺だって、女の子に性欲が有る事ぐらい知ってますよ。

学校で女子とかの話を聞いてたら、あまりのモラルの低さにウンザリする事も沢山有りますからね。


だからこそ俺は、今までリアルな女子に恋愛を求めるのではなく。

漫画や、アニメの幻想的で、理想的な女の子に逃げていたのかも知れない。


けど、それは間違っていた。


別に奈緒さんを特別視する訳じゃないんだけど……アナタは自然に、男に幻想を抱かさせる。


奈緒さんはマンガに出て来る女の子より、リアルで現実的な女の子なのに。

男の幻想を集約した漫画のキャラクターなんかより、ズッと……魅力的なんです。


アナタは、ホントに怖い人だ。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


奈緒さんの優しさが炸裂しましたね(笑)

こんな風に、男性を導いて上げれる女の子って、皆様はどう感じましたか?


でも本来、奈緒さんは『他人に興味はなく』こういう事を言うタイプの人間ではないのですが。

倉津君が、彼女の心に響く様な楔を打ち込んだからこそ、奈緒さんも、こういう風に言える様に成ったのだと思います。


まぁ将来、絶対に『尻に敷かれる』でしょうけどね(笑)


さて、そんな状況の中、次回。

かなり短い文章になるとは思うのですが、ある衝撃的な事が起こります!!


こうご期待ください(*'ω'*)ノ



倉津君→( ゚Д゚)〈なんか嫌な予感しかしねぇんだけど……気のせいか?

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