最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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636 温度差

公開日時: 2022年11月4日(金) 00:21
更新日時: 2023年1月18日(水) 18:13
文字数:2,644

●前回のおさらい●


 ライブが終わった後、眞子はトイレに駆け込み。

余りの気分の悪さに嘔吐を繰り返す程、最悪な状態に成っていた。


では、何故、眞子はそんな状態に成ってしまったのか?の一部始終を、これから紹介しよう。

 向井奈緒IN横浜アリーナ♪


なんて……テンションを上げて、奈緒さんの初アリーナライブを祝って見たものの。

現実の心理的状態は、とある事情から、それとは真逆の状態に成っており。


今は、そんな奈緒さんの初アリーナを祝う処か、完全に逆境に立たされている。


問題なのは、言わずと知れた……


『密かに崇秀が昨晩アレンジして、私に渡して行った奈緒さんのアレンジ曲』


開演まで後10分と差し迫った、この時間に。

私と、奈緒さん、それに山中君は、曲を構成する基本のラインだけは解っていたので、なんとか崇秀のアレンジした奈緒さんの新曲2曲を演奏する事が出来る様になっていたのだが。

ただそれは……演奏出来ると言うだけのものであって、完成度は著しく低く。

とても、お金を払って来て頂いている観客の皆さんに、お聞かせ出来る様な代物ではない。


寧ろ、演奏する事すら、おこがましいと思うべき酷いレベル。


……それでもこの新曲3曲は、どうしても、今日のライブで、演奏しなければならない宿命を背負っている。


何故なら奈緒さんは、このライブで新曲を3曲発表する事を、マスコミを通じて自らの口で全国に向って公言してしまっているからだ。


故に、どう足掻いても、もう後には引けないのが現状。


だから、此処で用意されている決断すべき選択肢は、もぉ2つしかない。


①奈緒さんが、最初に作ったままの曲を、そのまま演奏する。

②無謀だと知りつつも、崇秀がアレンジした曲を、なんとか演奏する。


『演奏しない』っと言う選択肢が無い以上、この究極とも言える2択しか、私達には残されていない。


故に、3人で顔を突き合わせ。

先程の諍いなど忘れて、この選択肢に頭を悩ませていた。



そこに、この件に関しての問題児が姿を現せる。



「よぉ。調子はどうだよ?少しは演奏出来る様に成ったかぁ?」

「崇秀」

「仲居間さん」

「秀」


矢張り、期待通り、時間ギリギリではあったが、姿をちゃんと現した。

のは良いんだけど……なに、この温度差?


私達が必死になってるって言うのに対して、崇秀は、この程度の事は、全く意に介して無い様な表情なんだけど……



「なんだよ?揃いも揃って、その時化た面は?どうかしたのか?」

「ちょ、秀!!オマエなぁ、あの曲なんやねん?難しすぎんぞ!!難易度高すぎや!!時間が無いねんから、ちょっとは、その辺を考慮して作ったれや!!」

「そっかぁ?……まぁつぅっても、思い付いたまま書き殴っただけだからな。確かに、完成度としては低いかも知れねぇな」


えぇ~~~。

あんなエゲツナイ曲を、たった一晩だけでアレンジしただけでも驚きの事実なのに。


あれ、感覚だけで作ったんだ……


どういう手法よ、それ?



「いやいやいやいや、全然低ないから。寧ろ、出来が良ぇからな」

「あっそ。そりゃあ良かったな」

「だから、それが良うないんねんて!!それが一番の困りもんなんや!!」

「なんでぇ?出来が良いと思えるなら、それはそれで良いじゃんかよ。なんの問題がある?」

「いやいや、だからやな。曲の構成自体もそうやねんけど、技術的にも難しすぎんねんって」

「あぁっそ。そりゃあ、ご愁傷様。……でも、頑張れ。あの程度の曲、オマエなら、なんとかなるだろ」

「いや、それ、買い被りやから。あんなムズイ曲、早々には叩かれへんて」


うん、全然、簡単じゃないから。


全然、上手く弾けない。

全体的にヤナ感じの曲ですね。



「知らね。叩けねぇのは、オマエの技量の問題だろ。俺、関係ねぇし」

「う~~わっ、冷たっ」


あぁ……アッサリ切り捨てちゃった。


でも、本当の所、この問題って、どうしたら良いんだろ?

どうしたら、この曲を上手く弾いて、奈緒さんの大切なライブを成功に導いてあげられるんだろうか?


事がどうあれ、此処だけは、なにがなんでも、なんとかしなきゃね。



「あの、仲居間さん。……本当に、この曲、かなり難しい曲ですよ」

「あぁ、そうなんだ。まぁ俺も、そんなに弾き込んでる訳じゃないから、なんとも言えねぇけど。そんなに言う程、難しいか?」

「あぁ、うん、凄い難しい。私なんて、ロクに弾けないもん」

「んあ?……って事はなにか?『ロクに弾けない』って事は。罷り也にも、一旦は此処に居る全員が弾ける様には成ったって事だよな」

「あぁ、まぁ、ホント、一応程度にもなってないレベルなんですけど。鳴らすだけなら、なんとか」

「ほぉ。じゃあ、そんだけ出来んだったら、そのままライブでも弾きゃあ良いじゃん。今更、ミスなんて恐れてても、しょうがないだろ。やるだけやって、ダメなら、それはそれで良いんじゃねぇの」


まぁ、そうなんだろうけどもね。

出来れば、人前で失敗したくないってのも人情ってものじゃない?


失敗する可能性が高い以上、誰だって恥なんて掻きたくないよ。



「いやいやいやいや、それは、なんぼなんでもアカンやろ。客は、金払ろて新曲を聴きに来てんねんで。流石にアカンやろ、それ」


うん、結論的には、そこだよね。


……そりゃあね。

学校の文化祭みたいな、チケットを購入するのにお金が発生してないなら、この場合でも好き勝手やっても全然OKだとは思うよ。


けど今回に至っては。

此処に来ているお客さんは、みんながみんな、それに期待して、この横浜アリーナにお金を払ってまで来ている訳だから、そう言う『当たって砕けろの精神』ってのは、ちょっと違うと思う。


だってね、今まで、こっちの問題が気になって、お客さんの方を、あまり見てなかったけど。

既に此処横浜アリーナは満員御礼で17,000人の観客の皆さんから、凄い熱気が伝わってきてるんだよ。


だから出来れば、その期待に応えてあげたいんだけどなぁ。


勿論、奈緒さんの件も含めてだけど……



「じゃあ、どうすんだよ?弾けないって言うんなら、さっき渡した、MDをそのまま流すか?まぁ、MDを流したとしても、俺は、ちゃんと自分で弾くけどな」

「いや、秀。確かにな、叩き込みの時間が2・3日有ったら、どないかは出来ん事もないねんけどやな。たった30分やったら、ロクなもん出来へんて」

「あぁ、そっか。オマエと、向井さんって、確かに、そのパターンの練習系だから、この状況は、かなり辛いだろうな。……となると、まいったなぁ……どうすっかな?」


崇秀まで困っちゃったか。


でも、崇秀の場合は、多分、自分が弾けても、他の人間が弾けないジレンマ的なものなんだろうなぁ……


根本的に『悩みの格』が違うや。


けどなぁ、折角、奈緒さんの初横浜アリーナだから、なんとしても成功を掴ませてあげたいしなぁ。


なんか良い方法ないかなぁ?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


 今回から、前話(635話)で、眞子が酷い状態で終わった経緯を書いて行く感じなのですが。

まず、そこに至るまでの問題に成っているのが『演奏の実力差』


ぶっちゃけ言ってしまえば。

今現在の状態の演奏レベルは、奈緒さん、眞子、山中君と、崇秀とでは、もぉ既に天と地ほどの差があるんですね。


では、この天と地ほどもある差を埋める為には、一体、どうすれば良いのか?


その辺を次回は書いて行こうと思いますので。

どうなるのか?っと言う興味が、少しでも湧きましたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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