最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
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370 真上さんは癒しで出来ている(笑)

公開日時: 2022年2月11日(金) 00:21
更新日時: 2022年12月26日(月) 13:55
文字数:3,572

●前回のおさらい●


 真上さんに対して精一杯の恩返しをした倉津君だが、彼女は頑固なので一筋縄ではいかない。

なので手伝う為に、駄々っ子にまで身を窶する事によって、とうとう真上さんの手伝いの了承を得る事に成功した(笑)

 明日の分に用意された最後のTシャツのディスプレイが終了した。


真上さんの指示もあって、我ながら良い配置に出来たと思う。



「よし、これで最後ッスね」

「ご苦労様です。倉津さん、本当に助かりました」

「いえいえ、こんな程度、真上さんに手伝って貰った事に比べれば1/1000000も返せてない状況ッスよ」

「くすっ、そんな事はありませんよ。私も楽しく明日の準備をさせて頂きましたので、感謝致しております」

「まぁ、そう言って貰えれば、俺も嬉しいッスね」


人の満足の度合いなんて、個人差が有るから、なんとも言えないけどな。

俺にとっちゃあ、この程度じゃ、まだまだ借りは返せてない。


故にだ。



「……ところで真上さん。今日は、これで全部終わりッスか?」

「はい。店内は、これでおしまいですよ」

「『店内』?って事は、まだ、なにか用事が有るって事ッスよね」

「いえいえ、そんな大した用事ではないんです。注文しておいた商品が、香港経由で到着したので、それを取りに行くだけなんですよ。これは、私1人でも十分出来る仕事なんですよ」


そんな筈は無いんだがな。

どれだけの注文品が有るのかは知らないが、そんな荷物を女の子1人で運べるものでは無い。


なんと言っても、『衣服』ってのは結構重いもんだからな。

それに付け加えて真上さんは、俺が物凄く気になる言葉を今言っていた。


『香港経由で到着した』って言う、これだ!!


海外……しかも、香港経由からの輸入って言われると、なんか『キナ臭い』んだよな。

俺みたいなヤクザ者が、この言葉を聞いて、まず連想してしまうのは『薬物』や『銃器類』と言った悪い方向に考えてしまう。


特に香港経由は、そう言った黒いルートが多いから、より疑ってしまう。


勿論、真上さんが依頼したものが、この場合『衣服』だとわかっていても。

それ以外のややこしい物が、衣服に混じって一緒に輸入されていたとしたら、色々と問題が出るからな。


なので、その辺を理解しているのか?を、一応、真上さんに確認の為に聞いておこう。



「香港経由……って、なにが届いたんッスか?」

「えぇっとですね。アチラで作って頂いている無地のTシャツなんですよ」

「『作って頂いてる』って、真上さんの処のブランドって、全部、手作りなんじゃないんッスか?」

「あぁっと、流石に全行程までは1人では無理なので、縫製は外注させて戴いていますね」


まぁ、そらそうだわな。

幾ら、真上さんの手が早いと言っても、人間としての限界はある。

縫製・デザイン・アイロン付け・ディスプレイ・販売、それ等全ての行程を1人で一手に引き受ける事は不可能だよな。


それにだ、この人の性格から言って、交通事故で入院されているご両親も放っては置けないだろうしな。


なら、どうやらこれで、もう少し手伝える事が有りそうだな。

それに、その手伝いをしていれば『輸入元』も解りそうだしな。


まさに、一挙両得だ。



「あぁなるほど。確かにそうッスね。……っで、どこまで取りに行くんッスか?」

「あぁっと、一応、この間、倉津さんとお逢いした喫茶店ですけど。……どうして、そんな事をお聞きになるんですか?」

「ハハッ、そこは空気を読んで下さい」

「えっ?……あっ、ダメです、ダメです。これは私の仕事なんですから、そこまでご迷惑をお掛けする訳にはいきません」

「迷惑じゃないッス。それに手伝いたいッス」

「そんなぁ……困らせないで下さい。困らされると哀しいです」


まただ。

また始ったよ。

真上さんの『人に頼りたがらない悪いクセ』が。



「断られたら、俺が困るッス。なんか頼りない男みたいじゃないッスか」

「いえ、そう言う訳では無いんですよ。倉津さんも文化祭の準備とかでお疲れだと思いますし。これぐらいなら自分1人で出来ますので」

「嫌ッスよ。手伝いますよ。真上さんに、まだそんな重労働が残ってるのに、このまま引き下がれる訳ないじゃないッスか。お願いッスから、手伝わさせて下さいよ」

「ですが……」


頑固だな。


ひょっとして、星一徹の血縁ですか?



「じゃあ、あれッスね。勝手に付いて行って、勝手に手伝うんで、気にしないで下さい」

「……あの、それでは、正式にお手伝いを依頼したいんですが……宜しいですか?」

「えっ?それって、バイトって事ッスか?」

「あっ、はい。県の最低賃金しか出せませんが、それでも宜しかったら、お願いさせて頂きたいのですが」


なるほどなぁ。

自己の主張を貫き通す為だけに、面白い思考に持って行く人だな。


まぁけど、真上さんの性格を考えたら、此処が妥協ラインだな。

俺がここで、これ以上ゴチャゴチャ言ったら、また変な方向に捉えられかねないもんな。


それに、ここで金が動いたとしても、また今度、そのお金で、真上さんにお土産なんかを買ってくれば還元してあげる事も出来る。


……っとは言え、金が動くとなると、早めに片付けないとな。

じゃなきゃ、真上さんに必要の無い負担を掛ける事になるのも事実だからな。


迅速かつ、丁寧、これこそが俺の今回のコンセプトだな。



「あぁ、じゃあ、それで……但し、店に着いてからがバイトスタートっすよ」

「えっ?ですが、それでは……」

「ダメっすよ。そこだけは譲れないッス。友達の真上さんに、予定外の出費はさせたくないッスからね。それに、友達同士が歩くのに、お金はいらないッス」

「お友達……ですか?」


これって俺……ひょっとして、やんわりと否定されてる?


そらまぁ、普通に考えても、一般人はヤクザとは関わりたくないもんだから、真上さんの反応は当然なんだけどな。



「あの、勿論、嫌じゃなきゃの話ですけど。……やっぱ、パスっすかね?」

「いいえ、とんでもありません。私を、そう言う風に見て頂いていたなんて、凄く光栄です」


どうやら、この様子からして、真上さんは『俺がヤクザの息子』って最も重要な事が、わかってない様な気がするなぁ。


なら、こんなものを公表したくはないが、確認しとこ。



「あのッスね。一応、確認して置きますけど、俺、ヤクザの息子ッスよ。それでもOKッスか?」

「倉津さんは、ヤクザの息子なんですか?」

「はい。残念な事に、そう言う生まれッスね」


言ったまでは良かったが、引いたかな?


つぅか、考えるまでもなく、普通ドンで引くわな。



「そうですか。倉津さんは正直な方なんですね」

「はぁ、まぁ正直と言いますか、なんと言いますか。後々、この事実を知られて嫌がられる方が、心理的に数倍キツイんッスよね。だから、いつも先に言ってるだけッスよ」

「そう言う事でしたか。……ですが、ご心配には及びません。働かれている職業に貴賤はありませんので」

「えっ?貴賤無しって言っても、社会の屑のヤクザですよ。そんなんでも、本当に大丈夫なんッスか?」

「はい、勿論です。第一ヤクザの方が居られなくなったら、困る方も沢山居られます。特に金銭面では、社会の役に立っておられると思いますよ」


良い様に言えば、そうなんッスけどねぇ。


『金利』がねぇ……


それに貧乏人に暴利で金を貸し付けて、殆どのケースが『破産』ッスからねぇ。

俺等ヤクザは、基本的にそう言う所は容赦無いッスからね。


これ、本当に社会貢献してますか?



「そうなんッスけどね。やってる事は、結構、無茶苦茶ッスよ」

「生きて行く上では仕方有りませんよ。私は、そう言う生き方も有ると思いますよ」

「その言葉、馬鹿な組員に聞かせてやりたいッスよ」

「『組員』っと言われると言う事は、倉津さんのお父様は『組長さん』なんですか?」

「あぁはい。一応『倉津組』って組を抱えております」

「えっ?倉津組ですか……倉津組と言えば、確か……」

「そうッスね。遠藤組と、関東を二分する性質の悪い広域ヤクザの組ッス」


あぁ……本当は、そこまで言うつもりは無かったなんだけどな。

『ヤクザの息子』って話で止めておこうとは思っていたんだが、流れに乗って全部喋っちまったよ。


って言ってもだ、この嫌な事実は、どこまで行っても事実なんだからしょうがねぇ。


いづれバレるかもしれないなら、今バレても同じだしな。



「そうでしたか。ですが、特別、私の気持ちに変化はありませんよ。倉津さんは、倉津さんですから」

「それって……俺なんかを友達だって思ってくれるんッスか?」

「はい、勿論です。……倉津さんが、私の事を嫌だと思わなければですけどね」

「めっ、めっ、めっ、滅相もないッス」

「はい。では、お友達として、これからも宜しくお願い致します。……序になってしまいますが、バイトの件も、お願いしますね」

「あっ、はいッス」


そう言って真上さんが握手を求めてきたので、俺はその手をソッと握った。


真上さんの手は、少し冷たい感じがしたが。

体温の高い俺にとっては、非常に心地の良いものでもあった。


彼女は、どこまで『癒し』で出来ているのだろうか?



ホントこの人だけは、どこまでも神仏の類だとしか思えない様な人だな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


色々なタイプの女性を物語に出させて頂いていますが。

この真上さんは、かなり男性の理想を実現化した女性だと思います。


ただ、この子、めっちゃ頑固なんですよね。

後、これは後の話に出て来るんですが、めっちゃ負けず嫌いなんですよ。


まぁ、そんな欠点もありますので。

倉津君が言う程、全てが完璧と言う訳ではありませんので、ご安心ください♪


さてさて、そんな中。

今度は、なにやら運搬を手伝う様なのですが。

此処で出てきた問題としては『商品が香港経由で届く』っと言う所。


此処に倉津君は、何を感じたんでしょうね?


その辺は、次回のお話で書いて行きたいと思いますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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