最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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017 不良さん とうとう更生の切欠らしきものを得る

公開日時: 2021年2月22日(月) 20:55
更新日時: 2022年11月1日(火) 20:58
文字数:1,711

●前回のおさらい●

向井さんの言動に、ドンドン嵌まっていく真琴。


そして緊張のあまり。

空気も読まず、ベースを弾いてなかった向井さんに対し『ベース弾かないんっスか?』などと言う馬鹿な発言をしてしまう。

 向井さんとの会話の中で、彼女に萌を感じてしまったオタクな俺は。

言葉に詰まって、こんな空気の中『ベースを弾かないのか?』っと聞いてしまう失態を演じてしまった訳なんだが……


こりゃあ、一体、どうしたもんだ?



「くすっ、そうだね。当初の目的を忘れるなんて、おかしい」


えっ?此処でまさかのフォロー?


こんな空気を読めなかった俺を、向井さんはフォローしてくれるような、そんな言葉を言った。



「……じゃあ、折角だし。ZEMAITISを弾くチャンスなんて早々無いから、お言葉に甘えさせて貰って、弾かせて貰うね」

「あぁはい。もぅ弾いて下さい。ジャンジャンいっちゃって下さい」

「ありがと」


GUWAッ!!これはもぉトドメの一撃だな。

あんな失言に対してのフォローをしてくれた上に、此処での、ありがとうと言う一言は大きすぎる。


あぁもぅ、ダメだわ俺。

完全に向井さんに嵌ちゃたよ。


だってよぉ。

今の状況じゃ『なにそれ?』っとか、言われる覚悟もしてたのによぉ。

此処でまさかの『ありがと』なんて言葉が出て来るなんて思ってもみなかったからな。


そういうのってズル過ぎゃしませんか、向井さん。

既に清水さんの事がスッカリ頭の中から消えてるぐらい、向井さんに嵌ってる俺。


っと、此処までは冗談みたいな話なんだが……ベースを持った途端、向井さんの顔つきが変わった。

チューニングが終わってるのか、いきなりアンプにコードを差し込み。

ベースを構えたと思ったら、一気に弦をかき鳴らし始め、室内に爆音を響かせる。


♪♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪♪・♪・・・・・・


えっ?


あっ、あれ?なっ、なんだよ、これ?

ベースって、地味にベンベカ弾くだけのツマラネェ楽器じゃねぇのか?


こんなに自由に、音をコントロール出来るものなのか?


やべぇ!!

これはマジでやべぇよ!!


マジでカッコ良過ぎるぞ!!


***


 そんな事を考えていたら、あっと言う間に3曲ほど向井さんは弾き終えていた。


俺は、ただ只管、聞き入って、マジで感動するしか出来なかった。



「うん?どうかしたの?」

「スゲェ……まじカッコイイよ、向井さん……ヤベェ、ヤベェよ」

「そぉ?ありがと」

「いや、マジで、どうやったら、そんな風に出来んの?凄過ぎる」

「んっ?これぐらいだったら、直ぐに出来るよ。そんな難しい事じゃないし」

「マジで?」

「倉津君もやってみる?」

「無理無理無理……俺、手先が器用じゃないし、指太ぇし」

「クスッ、そんなの関係無いよ。最初から上手く弾ける人なんて居ないんだから」


イヤ、無理ッしょ。

指が太いのは弦楽器に向かないって、誰かが言ってましたよ。


その時点だけでも、無理な注文なのに。

更に悪い事に、俺は喧嘩ばっかりしてたから、指の感覚が繊細じゃなくなってる。


……要は致命的。



「イヤ、無理ッしょ。俺、指まともに動かねぇし」

「大丈夫だよ。別に慌ててやる事じゃないんだし。動かないなら、動かないで、じっくりリハビリしながらやれば、出来ると思うよ」

「そっ、そうッスかねぇ?」

「そうだよ。なんなら私が教えてあげるよ」


マジで?


もしマジなら。

はぁ~~~、なんと言う甘美なお誘い。

これって、良い様に解釈すれば、向井さんと、また逢えるって事だよな。


よっしゃぁ~~~!!なら、そこまでの好条件を逃す手はねぇ。


折角の機会だし、向井さんにベースの弾き方って奴を習ってみようじゃねぇか!!



まぁ、それでベースが弾けたら御の字って事で……


***


―――今の俺(オマケ)


これが俺が音楽を始めた切欠な訳だ。

そして、更生に関わる第一歩を踏み出した瞬間でもあるな。


まぁ、誰が聞いてもなんともダセェ話なんだが、この当初、俺は、まだ中学2年生。

だったら、女の色香に惑わされて音楽を始めたって言っても、おかしな話じゃないだろ。


男なんだからモテたい一心で楽器始めた奴なんて五万と居る筈だしな。


まぁ俺も、その1人だったって事だな(笑)


でもな。

こうやって上手くなった奴って、結構な数で居るんだぞ。

女にモテたいって目的がハッキリしてるから、なにも考えず一心不乱に出来たんだろうしな。


だからもし楽器に興味が有るんだったら、試しにやってみたらどうだ?



結構、君の人生にも面白い事が起こるかもしれねぇぞ。


はい、第三話『コンパ編』は、これにてお仕舞です。

此処までお付き合い、ありがとうございました<(_ _)>

彼も漸く、更生の道を歩み出す事が出来ます(笑)


さて、次回から始まる第四話なのですが。

今回、倉津君が、みんな(向井さん、山中君、清水さん等々)から受けた影響は、どんな風に彼に反映されるのでしょうね?


良い方向に転がる事を望みながら……それは次回の講釈で(笑)


また、お時間があったら遊びに来てくださいね( ´Д`)ノ~バイバイ


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