●前回までのあらすじ●
山中君の話をキッチリ聞いて、漸く、目が覚めた倉津君。
この後2人は、その対応策を話し始めます。
「確かにのぉ。オマエの揺れる気持ちも良ぉ解るで……オマエ自身、生まれて初めてのモテ期や、しかも、奈緒ちゃんにアリス。あんな可愛い娘2人に迫られて、悪い気がせぇへんのもよぉわかる。男やったら誰でもそうやろうしな。……そやけどのぉ、それはプライベートの話やないんか?バンドに持ち込んでえぇ話やないやろ」
「……だな」
「それにのぉ。俺が、オマエに一番聞きたいのは『奈緒ちゃんの事が、ほんまに好きなんか?』って事や。好きな子に、平気であないな仕打ちするのは許されへん行為やぞ。俺も秀も大概女誑しで最低な男やけどな。オマエと違って、女を泣かす様な真似だけは一回もしてへんで」
「けどよぉ。だったら、どうすりゃ良いんだよ?俺には、そう言う体験がねぇから、その辺が良く解らねぇんだよ」
弱気な事を言ってるのは、自分でも良く解っているんだが。
本当に俺は、こういう経験をした事がないから、どう対応していいのかサッパリわからない。
寧ろ解らないからこそ、こう言うあやふやな態度を2人取ってしまっているのかもしれないしな。
マジで、どうすりゃいいんだよ?
「心配すな、手はある。決めきられへんねやったら、どっちも手懐けてしまえばえぇねん。オマエが、あの2人のバランスを取ったら、なんの問題もない。もし、それが出来へん言うねやったら、どっちかをスッパリ諦めろ。……それしかない」
「手懐けるなんて出来ねぇよ……かと言って、ハッキリ言ってしまえば、奈緒さんと、素直を比較してしまえば、奈緒さんが大事なのは間違いない。けど、そうなると、オマエの話じゃ、自ずと素直を追い出す結果になる。これは、あまりにも理不尽だろ」
「はぁ~~~、やっぱな。そう言う思とったわ。……しゃないやっちゃな。これがホンマに最後の手段やぞ」
100%の呆れ顔を俺に向ける。
恐らく、俺の口から出たセリフは予想の範疇だったのだろうな。
「2人を上手くいかせる、なんか良い手が有るのか?」
「1つだけな」
「なっ、なんだよ、それ?もったいぶらずに教えてくれよ」
「不本意やけど秀の言うてた、バンドをに分割する言う『あれ』や……胸糞悪いけど、あの方法を取るのが、取り敢えずは、今ん所ベストなんちゃうか?これやったら、あの2人が、オマエ争奪に躍起になるかも知れへんから、恋愛云々だけを言うてられへんやろ」
あの話の事か……
確かに、あんまり良い気分のする話じゃないが。
この状況じゃあ、あまり多くを望んでもいられない訳みたいだし、なら、どうにも、それしか方法はないかも知れないな。
「あぁその手か……確かに、そうかも知れんな」
「……しかしまぁ、あの糞ガキ。結成当時から、多分こうなる事を、先もって予測してたんやろうな。そやからオマエに、この方法を伝えたんやろうな」
「かもな。確かに、あの馬鹿も、俺に説明した時、そんな事を言ってたしな……けどよぉ山中、メンバーの選出はどうすんだよ?2班に分けるつっても、他にメンバーなんていねぇぞ」
「心配すんな。その辺は、ちゃんと考えてある。……メインの楽器演奏者は、嶋田さん・オマエ・俺で変更なし。奈緒ちゃんと、アリスにはボーカルに専念して貰う事にして、この2人がチェンジするだけのバンドを成立させる」
「ならよぉ。そのボーカルは、どうやて決めんだよ?」
「オマエなぁ。質問ばっかりしてやんと、ちょっとは自分で考えろや」
あぁ、また思考が停止していた様だ。
俺って、こうやって、直ぐに人に頼っちまうんだよな。
ホントにダメな思考だな。
こんな事バッカリしてたら『真琴王子は、また脳味噌がお留守なの?』とか言われて、樫田に、また怒られそうだ。
「まぁえぇ。オマエの思考レベルを考えたら、そんなもんや。……それに、オマエが行き付くのを待ってたら2~3日経ってまう」
「脳タリンで悪かったな」
「ホンマ迷惑やわ。まぁえぇわ、ウダウダ言うても始まらん。説明したるわ」
「頼む」
「これを決めんのに、そんな大層な話やない。決め方は至って簡単や。贔屓目なしに、そのライブ会場にあったボーカルを、調子の良し悪しも含めて俺等が3人が選ぶ。ボーカルの2人には悪いけど、一切の反論は無しや」
「強引だな、オイ。……まぁけど、それが順当なんだろうがな。……ただ、そうなったら問題が1つだけ残るな。俺等2人が納得しても、最終的に、あの2人が納得するかどうかだよな」
「心配せんでも、あの2人は簡単に乗る。特に奈緒ちゃんは、間違いなく乗るやろうな」
「なんでだ?」
「あの子、自分で言うてたやんけ。嫉妬深いってな」
「いや……多分、あれ、演技だぞ」
いつも奈緒さんはそうは言ってるが、どうにもそうは見えない。
あの人は、何事に対しても、冷静に物事を対処する。
そんな人が、嫉妬深いとは到底思えない。
「流石、自分の彼女やな。その辺だけは、よぅわかっとるやんけ。……そやけど、そう言ってしもうた以上、奈緒ちゃんは『嫉妬深い女を演じ続けなアカン』様になってしもうとる。なら、これだけでも十分な確証や。奈緒ちゃんは確実に受ける」
「なるほどな。……後は、片方が受けた以上、断れないって寸法か」
「そういうこっちゃな」
「くくく……なんだよ。俺のシラネェ所で、またなんかオモシレェ事になってるみたいだな」
「秀?……ちょう待て!!なんでオマエが、こんな所におんねん?」
崇秀だと……
2人しか居ないスタジオ内で、他の誰が声を上げたのかと思ったら、また余計な奴が湧いて来た。
ってか、なんでオマエは、そうやって、直ぐに人の話に入ってくるんだよ。
迷惑だから、どっか行け!!
……ってオイ!!オマエ、アメリカに居たんじゃなかったのかよ?
しかも1年間は『何があっても絶対帰って来ない』って言ってなかったか?
どうなってんだよ、これ?
俺の嫌な予感と共に、崇秀は口を開き始めた。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
これにて、第二十三話『除外』は終了でございます。
いや、それにしても、あれですね。
結構、リアルでも、この『バンド内の揉め事』って言うのは起こるんですが、本当に面倒くさいですよ(笑)
まぁまぁそれでも、最終的には、今回の様に和解する事が多いんですけどね。
それが上手く嵌らないと、バンドは、簡単にポシャっちゃいます。
しかし、まだ、この物語は続きます。
一番ややこしい男【崇秀】が、この場に現れた事により、事態は更に……(ФωФ)フフフ
って事で、次回からは第二十四話『納得出来ねぇな』が始まります。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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