●前回のおさらい●
崇秀に対して、倉津君の頼みで始まった『奈緒さんの想いで計画』
なのに、奈緒さんの少しおかしな発言で、まるで崇秀が、みんなに頼まなければいけない様な状況になる。
それを見た倉津君は『流石にこれは違うだろ』っと感じ、発言しようとする。
「えぇ~~っと、じゃあ……」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て、オマエは、此処で頭を下げちゃイカン!!みんなに頭を下げるべき人間は俺だ」
「クラ?」
「ほぉ、そう来たか……それも、また面白い展開だな」
ヤッパリ、崇秀に頭を下げさせるのは、どう考えてもイカンだろ!!
此処は俺自身が、キッチリと、みんなに示しを付けとかないと、纏まるものも纏まらないし……後味も悪い。
だから俺は、みんなの前で頭を垂れた。
「頼むみんな。奈緒さんと一緒に、思い出を作ってやってくれ」
「真琴君……」
「えぇっと、じゃあ、私からもお願い。一緒にやって」
「奈緒……」
「みなさん。言いたい事は多々あるでしょうが。再度、自分のやるべき事をお考え下さい。これは、なんの為に始めた事でしたか?」
「ステラ……」
「みんな、やろうよぉ。後輩さんも、奈緒ちゃんも困ってるよ」
「椿さんまで……」
漫画みたいな展開だが、この調子で行けば、上手く纏まりそうだな。
「ぷっ……おいおい、なんだそれ?茶番にもなってねぇ様な酷い演出だな。悪いけどさぁ『キン肉マンの友情ゴッコ』とかがやりたいんなら、公園か、どっかでやってくんない?……オマエ等さぁ、いい加減、マジ勘違いしてんじゃねぇぞ。大体にして、俺がサブの女も用意せずに、こんな事するとでも思ってるのか?テメェ等の代わりなんぞ、幾らでも居るんだよ。……ド素人集団が調子に乗って、何様になったつもりだよ」
なっ……なんでだ?
全員が1つの方向を見て、上手く纏まりかけたものを、何故オマエが、それを崩す必要性がある?
この行動だけは、真意が全く見えねぇぞ。
「アンタ……なに言ってんの?」
「んあ?事実だよ事実。隠し様の無い事実」
「折角、真琴が無い頭を絞って纏め様としたのに……」
「馬鹿じゃねぇのか、オマエ?自分自身の為じゃなくて、他人の思い出作りに協力だと?ハッ!!アホ臭ぇ。なんでソンナモンの為に、俺が身銭を切らなきゃならねぇんだ?馬鹿じゃねぇのか?頭大丈夫か?」
「あぁっそ。じゃあ、やらない」
「あっそ。だったら……すみません、運転手さん。コイツ、此処で降りるらしいから、ちょっと車を停めて貰って良いですか」
「えっ?」
「なんだよ?やらねぇんだろ。……だったら、なんで此処に居る必要があるんだ?やらないなら、サッサとバスから降りるのが常識ってもんだろ」
崇秀の指示通り、車は急停車する。
それを確認すると崇秀は、扉の方をクイクイっと親指で差し。
千尋に対して、時間が無いから、早く出て行けと言わんばかりだ。
樫田も頭に血が上ってるのか、その場を、直ぐに立ち上がる。
「わかったわよ!!こんな胸糞の悪い奴の所なんか、サッサと出ってやるわよ!!見損なったわよ、ヒデ!!」
「私も降りる!!千尋だけを行かせる訳には行かないから」
「あっそ、ご自由に」
「最悪だよ、仲居間君」
「さいどすか。……さぁ、後は、どうすんだ?自分の為にやる奴以外は、全員バスから降りてくれ」
「ごめん、奈緒……だったら、あたしも降りる」
「そっか」
「また……どこかで逢おうね」
「うん、じゃあね」
奈緒さんは手を振りながら、先に降り様としている千尋や、咲さん、それに美樹さんを止める様子が無い。
なんでだ?
「奈緒、ごめん。私も……リーダー不在じゃ『Fish-Queen』は成り立たないから」
「うん」
「私も……理子行くよ」
そう言って元香さんが立ち上がり、真美さんも、それに倣う様に立ち上がった。
けど、理子さんだけは違った。
真美さんの引っ張った手を振り解いた。
「ごめん、真美。……悪いんだけど、私は此処に残る」
「えっ?」
「だって、こんなチャンス滅多に無いよ。私、悪いけど、これを棒に振るつもりはない……だから、ごめん、真美」
「理子。アンタ、なに言ってんの?私達を裏切るって言うの?」
「そうじゃなくて……」
「聞きたくない!!友達を裏切ってまで、アンタは自分の成功に賭けるって言ってるんでしょ!!だったら、仲間なんて、どうでも良いって事じゃない……アンタ最低だよ!!」
「ごめん。でも……」
『Fish-Queen』で、唯一残る事を選択した理子さんは、真美さんによってボロカスに言われてる。
理子さんの行為自体は、そう捕らえられても仕方がないし、真美さんの気持ちが解らないでもない……けど、此処まで言う必要が有るんだろうか?
可哀想な気がする。
そんな中、2人の会話に崇秀が口を挟む。
「はいはい、良く出来ました。理子さん、君は利口な人だ。何時、成功するかわからない様な不明瞭な奴と組むより、俺と手を組んだ方が、人生を楽しめるって判断したんだろ。……それで良いんだよ、理子さん。アンタが、一番この状況を理解している。綺麗事なんて、最初から必要ねぇしな」
「部外者が勝手に話に入ってこないでよ!!これは、私達のユニットとしての問題!!アンタは関係ないでしょ!!黙っててよ!!」
「黙んのは瀬川真美、アンタの方じゃねぇのか?……悪いけどなぁ、自分がやらないって決めたからって、成功し様としてる人間の足を引っ張んのは止めてくれねぇかな。……それに『残る』を選択した時点で、理子さんは既にコチラ側の人間。部外者さんはアンタだよ、瀬川真美さん」
「なっ!!」
「序に、他の降りる奴にも言って置くが。こんなチャンスはな。一般人のアンタ等にとっちゃあ、人生で1回ありゃ上等だ。それを棒に振るって言うんなら、俺は、もぅ何も言わねぇ……ただ数年後。理子さんと、真美さんじゃ、どれだけ生活レベルに差が出てるんだろうな?その時になって、きっと『あの時……』とか思うんだろうな。……ははっ、それはそれでおもしれぇか」
確かにそうだ。
芸能人と一般人では、社長や重役にでもならない限り、基本的に給料として貰う金額が違う。
それに幸せと言うカテゴリーで見ても、芸能人と言うだけで、周りが簡単にチヤホヤしてくれて比較的『優遇』される面も多い。
更に言えば、今回の件は崇秀が絡んでる。
コイツがバックに付く事で、努力次第ではあるが、飛躍的に芸能界で成功する確率が高くなる。
崇秀の言ってる言葉自体は、誰が聞いても『悪党そのままの言葉』だが、現実は、そう言う奴等が世の中を支配しているのだから、これに従うのは得策だと言えよう。
「ふざけんな!!3人で『Fish-Queen』を続けてたら、チャンスなんて∞に出来るんだから!!」
「甘いね。笑えるほど大甘だよ。……ソレって、どんな夢を見たら、そんな馬鹿げた寝言が言えるんだ、瀬川真美さん?」
「私の、なにが甘いって言うのよ!!」
「あのねぇ、真美さん。俺って人間はね。昔っから、自分の思い通りにならない事が一番嫌いなんだよな。そんな俺が、今後、アンタ等にチャンスを与えるとでも思ってるのか?今日中にでも各プロダクションに連絡を取って、全力でアンタ等の成功を阻止してやるよ。……アンタ等の後悔する姿を見るだけの為にな」
「なによそれ?……アンタのやろうとしてる事は、人として最低だよ」
「自分の持ってる力をフルに行使しちゃいけないか?それにアンタ等は、自ら、それを選択したんだろ?テメェの言葉ぐらい、テメェで責任を取れって話だな。……まぁ俺を敵に廻すって事は、そういうこった。一生、芸能界に入れないってのだけは確実な話だな」
「クッ……」
「……っと言いたい所なんだが。俺も鬼じゃねぇ。こんな話、最初から理解出来る奴は、早々居ないのも現実だ。だから、今の俺の話を聞いた上で、もぅ1度だけチャンスをやる。2度と言わねぇからシッカリ考えてから選択しろよ」
「関係ない!!」
「いい加減、黙れな、瀬川真美。オマエは、それで良いかも知れないがな。他の奴には、まだ選択権が残ってるんだから、ちょっと黙ってろな」
「わかったわよ!!黙れば良いんでしょ黙れば!!」
「まっ、そう言う事。んで、此処での選択肢は2択。……①甘い考えを捨てて、自らにスポットライトが当たる様な人生を目指す。②このままバスを降りて、蛍光灯が最高のスポットライトの普通の生活を送る。……さぁ、アンタ等は、どっちだ?感情に任せたら、人生損するぜ」
バス内が、ザワザワとざわめき立つ。
これはなにも、真美さんを個人的に狙って言ってる訳ではないからだ。
崇秀を敵に廻した以上『Fish-Queen』は絶望的な立ち位置になる。
それ=美樹さん・元香さん・真美さんの芸能界入りは、ほぼ不可能になる可能性は高い。
悩み処だろうな。
そんな折、一番最初に崇秀と揉めた千尋が、なにやら発言をする様だ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
綺麗事じゃなくて、本気で自分の為に欲を出せと言う崇秀。
それは、ぬるい気持ちでは芸能界を渡って行けない、っと言う暗示。
ちゃんとした【覚悟】がないとダメだと言う話。
此処を、女性陣は、どう捉えるのか?
そこは次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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