最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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359 真上さんの持つ奉仕と慈愛の心

公開日時: 2022年1月31日(月) 00:21
更新日時: 2023年9月8日(金) 23:58
文字数:2,007

●前回のおさらい●


 教える相手がいない倉津君は、サボって屋上に。

すると、武藤さん経由で知り合った真上さんからの電話が鳴る。


その内容は……『納期の10日前にも関わらず、頼んでいた衣装が完成した』との報告だった!!


倉津君、そんな真上さんの仕事の鬼っぷりに唖然とし。

そして、そんな真面目な彼女に深く興味を持ってしまう。

「真上さん。今からって、逢う事は可能か?」

「今からですか?私は大丈夫ですけど。倉津さんは、あの、お忙しいのでは……」

「あぁ、すまん。さっきのあれは嘘だ」

「そうなんですか?……ですが、何故、そんな嘘を付かれたんですか?」

「悪ぃ。ちょっとコチラで俺の置かれてる状況が、余りにも芳しくなかったもんでな」

「あぁっと、そう言う事情ですか。それは気付かずに申し訳ありません。……ですが、少し残念です。嘘を付かれるのは哀しいです」


ウグッ!!

この人に言われると、他の奴に言われるよりも、数十倍の罪悪感を感じるな。


言葉が丁寧なのもそうなんだが、なんか、その言葉を聞くだけで、ホントにそう言った『哀しい』感情が伝わって来るんだよな。


そんな真上さんに引き換え俺と来たら、嘘は言うは、言葉は汚いわ。


もぉマジで最悪だよ。

少しは真上さんを見習って、せめて言葉だけでも気をつけねぇとな。



「あぁっと真上さん、すみません。流石に気分を害されましたか?」

「いいえ、平気ですよ。私も、倉津さんの気持ちを察して上げられませんでしたから、此処は、おあいこですね」


この言葉一つとっても、この人、かなり自分に厳しい人だって事が十分にわかる。

それに相手の気持ちを、自分の事の様に考える。


これはまさに『出来る人間の典型的なパターン』だ。



「あの、おあいこって言うより、一方的に俺が悪かったんですよ。申し訳ありませんでした」

「あぁっと、そんなに畏まらないで下さい。……ですが、なんで、急に逢う気になられたのですか?」


こう言うタイプの人には、ある程度の名目が必要だな。

藪から棒に『逢いたい』じゃ、絶対に話が通じねぇからな。


そんな真上さんが求める様な理由って、なんだろうか?

どう言えば、納得するだろう?


俺は自分でも気付かぬ間に、王家真上と言う人間の心を探り始めていた。



「いや、早目に商品チェックをしようと思って」

「そう……ですか」

「あの、今度のは嘘じゃないッスよ」

「えぇっと、失礼かも知れませんが、どうやってチェックされるんですか?倉津さん、あの日以来、一度も電話をして来られなかったので、デザインすら全く解ってない状態なのでは……あぁっと、えぇっと、大丈夫ですか?」


彼女の言ってる事は、全てが正論だ。


俺自身も嘘を言った訳では無いんだが……矢張り、どこまで行っても『言い訳臭いだけの思い付き』で言った言葉。

そんな自ら招いた適当過ぎる言葉が、彼女に対する罪悪感になって上乗せされていく。


けど何故か、真上さんに逢いたいと言う衝動だけが止まらない。



「あっ、逢って話しながら、チェックしようと思ってたんだが、それじゃあダメか?」

「あっ、そう言う事でしたか。すみません。勝手に変な方向に思い込んじゃって」

「えぇっと」


ダメだ。

この人、ただ単に真面目なだけじゃなく。

性分的にも、絶対に他人のせいにしない人でもあるみたいだな。


……って言うか、なんなんだ、この真上さんの思い遣りや、奉仕や、慈愛に満ち溢れた精神は?


ひょっとしてこの人、人間じゃなく、神か仏の類なんじゃねぇのか?



「あの、では、お詫びと言ってはなんですが。今から、そちらに商品をお持ちしましょうか?」


もぉ無理だ!!

こんなセリフを次々と言われたら、俺の罪悪感が脳内に鬱積して耐えられたもんじゃねぇぞ!!


俺も色々な変った人と付き合いをしてきたけど……この人は、今までにない新しいパターンの人だ。


今の俺じゃあ、全く理解出来ねぇよ。



「・・・・・・」

「あの、倉津さん、なにか不都合な点でも?」

「あぁいや、不都合はないッス」

「そうですか。良かった。また私、そちらの事情も考えずに、倉津さんに無理な事を言ってしまったのかと思いました」

「いや、全然、全然。寧ろ、全然大丈夫だから」

「あっ、はい。では、今からコチラを出ますので。到着する少し前に、お電話を入れさせて頂きますね。あの、ですから、出来れば電話番号を登録しておいて下さいね」

「おっ、おぅ」

「ありがとうございます。では後ほど、学校の方にお届けさせて頂きますね。……あと倉津さん」

「あっ、はい。宜しくお願い致します。っで、なっ、なんッスか?」

「あまり無理をせずに、バンドの練習を頑張って下さいね。でわ」

「へっ?」


『プツッ』


えっ?えっ?えっ?


用事が済んだから、電話を切られたのは良いんだけどよぉ。

なんで真上さんが、今、この時点で、俺がバンドの練習してる事を知ってるんだよ?


ひょっとして彼女も、奈緒さんや崇秀同様の心理分析家なのか?


あぁダメだ。

真上さんの精神攻撃を多大に喰らって、変な方向に精神が向いちまった。

それになんか、この分じゃ、奈緒さんや、山中にもサボってタバコを吸ってたのがバレてそうな気がしてならない。


なら、これはもぉ早急に第二音楽室に戻って練習しよ。



俺は、急ぎ第二音楽室に向ってダッシュを敢行した。


あぁっと、その前に『真上さんの電話番号を登録』っと……此処を忘れちゃいかんからな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


真上さん……優しい子ですね(*'ω'*)

美人で、気が利いて、性格が良くて、それでいて芯が強い。

こんな子、まぁ漫画でもない限りいないですよね(笑)


でも実際に、こんな出来た子が存在するから、世の中恐ろしいです(((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル


さてさて、そんな真上さんに少々感化された倉津君。

第二音楽室に戻った彼は、少しは成長しているのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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