最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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730 心強き人

公開日時: 2023年2月6日(月) 00:21
文字数:2,833

●前回のおさらい●


 みんなから求められる存在である、眞子のままで居たい気持ちが抑えられなくなって、それを崇秀に漏らしてしまい。

その件について話し合う為に、ホテルに移動した2人だったが……

 到着したホテルは、なにか凄く豪華なホテルだった。


なにやら色々な施設が盛り沢山にある様だけど……でも今は、そんな子供染みた些細な事はどうでも良かった。

私にとって今一番大切な事は、この話を、崇秀に、どう切り出した物かを考えるのが一番重要。


それ以外の思考は、今は、全てカットすべきだと思えた。


そんな中、崇秀は、今までの事が何事も無い様に平静を装い、冷静にチェックインを済ませる。

それが終わると、エレベーターに私と一緒に乗り、一気に最上階の11階まで昇っていった。


***


 ……ノンストップで11階に到着すると。

エレベータから少し離れた端の部屋『1111号室』まで連れて行かれる。


崇秀がフロントで貰ったカードキーを差込む。

当然、扉が開くと同時に、私を連れて部屋に入って行く。


すると……


此処に来るまでに、少しだけ『そうじゃないかなぁ』って、思っていた人物が部屋の中で待っていた。



「ハァ、漸く来たみたいだね。……45箇所ライブ、お疲れ、眞子」


待っていた人物は、矢張り、奈緒さんだった……


彼女は、私達が来るまで、相当、泣いていたのか、目の下が少し腫れている。


普段の奈緒さんなら、絶対に他人には見せない姿だ。


此処から想像するに、崇秀がライブハウスで電話していた相手は、奈緒さん。

それで奈緒さんには、ある程度の話を付けてから、此処に私を連れて来たのが、よくわかった。



「あっ、はい。……お疲れ様です」

「早速で悪いんですけど。仲居間さん……少し席を外して貰えますか」

「あぁ、そうだな。俺が居たんじゃ、話もし難いだろ。……ただ、1つだけ言わして貰って良いか?」

「あぁ、大丈夫です。その件に関しては以前にも聞いていますので。今、言って頂かなくても、重々承知しています。大丈夫です」

「そうか。なら、廊下で待っているから、話が終り次第呼んでくれ。……いつまででも待ってる」

「すみません。また、お世話になります」

「あぁ、気にしなくて良い。……それと、ゴメンな、向井さん。この件についても、後でキッチリ謝罪させて貰う」

「はい。わかりました」


奈緒さんと、崇秀の間では、矢張り、話が付いてる様だ。

まるで決められた言葉を、お互いが交わしてるだけの様にみえる。


それだけでも奈緒さんと、崇秀には嫌な想いをさせている事だけは、なにも変わらない。


……ごめんなさい。



「じゃあ……また後でな」


私が、2人に対して心の中で謝罪を述べていると。

崇秀は、その言葉だけを残して、後はなにも言わず廊下に出て行った。


私は、その姿が見えなくなるまで追い駆けたが『パタン』っと言う音と同時に、その扉が閉り。


再び扉が開く事はなかった。



「さて……眞子。疲れてる所で悪いんだけど。まずは、そこに座ってくれる」

「あっ、はい。……失礼します」


言われるがまま、奈緒さんを真正面に捉えて、椅子に座る。


此処から、どう切り出すべきだろうか?

私は、そんな得も言えぬ様な緊張感に包まれながら、奈緒さんの正面に座った。


それだけで、大量の冷や汗が体中に滴り落ち始めていた。



「眞子」

「あっ、はい」

「私は回りくどい事が嫌だから、ストレートに聞くわね。……アナタは、どうして眞子のままで居たいの?その理由はなに?」

「ごっ……ごめんなさい。……ごめんなさい」


色々考えていたけど。


結局は、こうだ。


言いたい事も言えず、謝罪するしか言葉が出なかった。



「フフッ。謝らなくて良いから、正直に言って。この件に関して私は、なにも怒ってる訳じゃないの。どうして眞子が、そう言う気持ちになったのか教えて欲しいだけだから」

「あの……あの……」

「うん。慌てなくて良いよ。落ち着いてからで良いから。今回は、ゆっくり話そ」


奈緒さんは、いつも冷静だ。

本人の言う通り、本当に怒っている様子は、どこにも見当たらないんだけど。


さっき泣いていた事だけは、間違いなく確かだ。


私は、奈緒さんに質問をされている立場なのに、そこを聞いてしまう。



「あの、奈緒さん……どうして怒らないんですか?……私、奈緒さんを裏切ろうとしてるんですよ。……なのに、どうして許せるんですか?」

「此処で質問返しか。……でも、それは答えられないね」

「どうして……ですか?」

「さぁね。私も、自分自身が、なんで眞子を許せてるのかなんて解らない。……でもね。眞子の中のクラが幸せなら『それで良いのかな』っとは思ってるみたい。ホント、自分でも呆れる位、クラが好きなんだろうね」


そんなぁ……


私は……奈緒さんを裏切ってるんですよ。


なんで?なんで、まだそんな風に想って貰えるの?



「奈緒さん……」

「あのね、眞子。私は別にね。今の君が望むなら、そのままの眞子のままでも良いと思ってるよ。それに、私の事を同性と見るのも別に構わない。でもね。……私を嫌いに成るのだけはヤメテ。……それだけは、どうしても耐えられないの。……クラでも、眞子でも良いから、私の味方で居て欲しい。……私が、君に望む事はそれだけ。……お願いだから、私を見捨てる様な真似だけはしないでね。今の私にとっては、君の居ない生活なんて考えられないのよ。君が全てなんだよ」


そこまで想って貰って良いものなの……

それに奈緒さんは、そこまで受け入れる準備をしていてくれたの?


なのに私は……なんて浅墓な事を思ってたんだろ?


この人の事を、一瞬でも『煩わしく思う』なんて……なんて最低な事を考えてたんだろ。


結局、私は、いつも自分の事しか考えてなかったんだ。


なんなんだろ……もぉ死んでしまいたい。



「奈緒さん、そんな事を言わないで。……私は、絶対に奈緒さんを見捨てたりしない。でも、でもね、奈緒さん。奈緒さんに嘘を付くのは、もぉ嫌だから、正直に言うね。……此処最近、私、奈緒さんを『同性』としか見れなくなって来てる自分が居るんですよ。そんな私でも良いですか?……嫌じゃないでしょうか?」

「ハァ、ヤッパリね。……だと思ったよ」

「へっ?」

「ふふ~~ん、眞子。私が、君の『心理的な動向』に気付いてないとでも思ってたの?そんな訳ないでしょ」

「えっ?じゃあ、今のは、全部嘘なんですか?」

「うぅん。これは私の本音だよ。……今回の話は、話が話なだけに、眞子からは切り出し難いかなぁっと思ってね。私が、先に本音を言ってあげただけ。君はドン臭い女なんだから、話し出すのを待ってたんじゃ夜が明けちゃいそうだったからね」

「奈緒さん……」


なんて、この人は強い人なんだ。

この状況下にあっても、私を責めるどころか、気遣う余裕すらあるなんて……凄すぎるよ。


でもね、いっぱい我慢してくれてるのは解ってるんだよ。


そこが解らない程、馬鹿じゃないよ。



「ほ~~らぁ、眞子。サッサと女の子で居たい理由を言ってみ。今の話で、ちょっとぐらいは言い易くはなったでしょ」

「あぁ、はい。……じゃあ、もぉ全部、綺麗サッパリ、正直に言いますね。最後まで聞いて貰えますか?」

「うん、全部聞いてあげるから言ってみ。……なに?」


こうして私は、自身の想いを奈緒さんに伝える事にした。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


普通ならヒステリーを起こしてもおかしくない状況の中。

奈緒さんは、何処までも冷静な態度で、今の眞子と言う存在を受け入れようとしていますね。


こんな事、ぶっちゃけて言えば、普通の人間には到底出来ない真似なのですが。

それ程までに倉津君の事が大好きだからこそ、まだ高校生でしかない奈緒さんでも、こんな真似が出来たのかもしれません。


それこそが、彼女の持つ【愛情の深さ】


奈緒さんは、倉津君であろうと眞子であろうと、自身にとって掛け替えのない存在だと認識してるんでしょうね。


さてさて、そんな奈緒さんの態度を見せ付けられた眞子は。

此処で自分だけ卑怯な真似をする訳にはイカナイと思い、正直な自分の気持ちを奈緒さんにぶちまける訳なのですが。


次回はその辺の様子を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


あっ、序に、この『最音』の毎日更新も3年目に突入しましたぁ~~~♪

イエエェ~~~イ(*'ω'*)人(*'ω'*)

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