最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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063 不良さん 彼女としたいシュチュエーションをして貰える(笑)

公開日時: 2021年4月9日(金) 21:49
更新日時: 2022年11月11日(金) 18:05
文字数:3,319

●前回のおさらい●


 爆弾処理(手淫)をしようとした倉津君だが。

奈緒さんとの約束を守る為に、その行為を破棄して、ベースの練習をしていた。


そこに奈緒さんが帰って来て……

「なっ、奈緒さん」

「なに?」


此処までは、恒例になりつつあるいつものパターン。

だが、それは此処までの話であって、この後、会話を続けるのは相当に難しい。


こうやって奈緒さんが返答してくれたのは良いが。

今現在、彼女の怒りのパラメーターがどれほどのものなのか、俺の経験値不足からして全く判ってはいないからな。


困った。

……が、話し掛けたのに、此処でなにも言葉を発しないのは変なので、無理やり口を開く。



「あっ、あの……」

「だからなに?」


手を上げて彼女を呼ぼうとしたが、相当、機嫌が悪い様でこの言い様。


上がった手だけが、虚しくヘナヘナと力なく下りて行く。



「・・・・・・」


それにしても、矢張り、この言い方って『意地の悪い言い方』だよな。

約束破らずに、奈緒さんの言いつけ通り、必死に練習していたんだから、良く良く考えたら、流石に、この扱いはないよな。


彼女の指示に従ったって言うのに……


そんな風に意識が変な方向に行き。

一瞬、積もった怒りが爆発してカッと怒りそうになるんだが……矢張り俺は、この程度(奈緒さん限定)の事では怒らない。


なんだかんだ言っても、そんな奈緒さんも好きだからだ。


それに冷静になって、この原因となった事象を質せば。

矢張り、俺の責任でしかないなのだから、此処で奈緒さんを怒る権利なんて俺にはない。


こうやって考えてみたら、女の子の扱い方を知らな過ぎるのも問題だな。



「うん?何もないの?だったら、朝ごはんにする?」

「はっ?へっ?えっ?……ウッ、ウッス」


袋からゴソゴソと幾つかの食べ物と、烏龍茶のペットボトル及び紙コップを出す。


そして彼女の表情は、何故かニッコリ微笑んでいる。



「ねぇクラ、なに食べる?色々有るよ」

「あっ、あのッスね。そんな事よりも、もぅ怒ってないんッスか?」

「此処に帰って来るまでは怒ってたよ。でもね、もぅ怒ってない。……って言うか、君が、あの状況下でベースの練習してるとは思いもしなかったよ」

「へっ?なっ、なんで奈緒さんには、俺が練習してたって解ったんッスか?俺、まだ何も言ってないッスよ」


まさか、この人もエスパーなのか?


崇秀みたいなややこしい人間は、アイツ1人で十分ですよ。



「……クラ、指から、また血が出てるよ。気付いてる?」

「えっ?あっ、ホントッスね」


アホだ俺は。

あまり痛みを感じなかったから、指から血が出ている事にすら気付かなかった。


どんな無痛症だよ。



「ごめん……ね」

「えっ?なに謝ってんッスか。謝んなくて良いッスよ」

「怒って……ない?」

「怒ってないッス、怒ってないッス。大好きな奈緒さんを怒る理由なんてないッスよ」

「そっか……ふふっ、いつも、そうやって気を使ってくれて、ありがと」


少し照れくさそうに俯いて、小さく感謝の念を伝えてくれた。


これだけでも、約束を破らず、辛い想いまでして練習した甲斐が有った。

俺の株も、これで、ちょっとは上がったんじゃないか?


まぁ世の中、そんなに甘くはないだろうがな。



「ところで奈緒さん、豪く時間が掛かりましたね。なにやってたんッスか?」

「ハァ……また、そうやって余計な事を聞くでしょ。……そう言う事は、疑問に思っても口に出さないの」

「えっ?あっ、あぁ……そうッスね。そうっスよね」


ほらな。

俺って、所詮は、こんなもんなんだって。

親父譲りで、嫌になるほどデリカシーってもんが欠落してやがるからな。


親子って変な所とか、絶対にイラナイ所ばっかり似るよな。


まったくもって迷惑な話だよ。



「あっ、そうだ。……クラ、山中君も、ご飯に呼んであげないと。向こうの部屋で1人で頑張ってるから、お腹空いてるだろうしね」


言葉と共に立ち上がり。

奈緒さんは、身を翻して山中を呼びに行こうとする。


だが俺は、ある事情から彼女を必死に止めた。



「あっ!!奈緒さん、ちょ、ちょっとだけ良いッスか?」

「うん?……なに?」

「あの、山中を呼びに行くのは良いんッスけど、その前に、一応、練習の成果だけでも聞いて貰えませんかね?……どうッスかね?」


奈緒さんを呼び留めた理由は、これだ。


って言うのもな。

山中のボケに、俺の拙い演奏を聞かれるのは、結構、恥ずかしい。


勿論、あの糞ボケに馬鹿にされるのも嫌なのは、言うまでもない。



「あぁそう言えば、そうだったね。クラが、ワザワザ私に逢いに来た一番最初の理由って、それだったのにね。色々有り過ぎて忘れてた。ごめんね」

「あぁ良いんッスよ。良いんッスよ。気にしないで下さい」

「そぅ?」

「ッス」

「うん。じゃあ、色々詰め込んじゃった後だけど。最初は『運指運動』の基本から見せて貰おうかな」


そうか。

そう言えば『運指運動』を見て貰おうと思って、昨日は、奈緒さんに逢いに行ったんだったっけな。


だから彼女が、そう言っても変ではないな。



「あっ、あの」

「んっ?なに?どうかした?」

「はぁ。実は、それなんですがね。さっき奈緒さんが弾いた『Master Of Puppets』を、ちょっとコピーしてみたんッスよ。……だから、良かったらなんッスけど。そっちの方を聞いて貰って良いッスか?」

「えっ?ちょ、私の弾いたMaster Of Puppetsをコピー……したって言うの?」


メッチャ怪訝な顔をしている。


これって、また変な事を言っちまったのか?

だとしても、これが原因になって、揉め事以前に、奈緒さんを不機嫌にするのは嫌だぞ。


取り敢えず、最低限度の言葉には気を付けよう。



「まっ、まぁ、一応と言うか……実際は、先に、この録音を自分で聞こうと思った時に、奈緒さんがコンビニから帰って来たもんだから、俺もまだ聞いてない状態なんで『出来』は、なんとも言えないんッスけどね」

「そっか……でも、そう言うって事は、罷り也にも出来たんだ」

「いやいやいや、あんまり期待しないで下さいよ。多分、聞くも無惨な酷い出来の筈ですから」

「いや、あの、うん。こう言う場合なんて言えば良いのかなぁ?クラ……言葉に困るよ」

「そうッスよね」

「うん。じゃあ、こんな事ゴチャゴチャ言ってても仕方ないし。取り敢えず、音源、聞かせて貰って良い?」

「ウッス。お願いします」

「クスッ、なにそれ……改まって」

「ッスね」


奈緒さんは体を密接させて、俺の横にチョコンと座る。


その瞬間、彼女の二の腕が触れて。

相変わらずヘタレな俺は、咄嗟に、体を少し離そうとする。



「こら、クラ。そんなに離れたら一緒に聞けないでしょ」

「はぁ。まぁそうなんッスけど」

「ほぉらぁ」


そう言って、再び体を寄せ。

自分の耳に俺のMDのイヤホンを片一方だけつけて、残りの一方を俺の耳につける。


えっ?なんですか?

この2人で1つのイヤホンを使うと言う、なんとも言えない様な幸せな構図は?


俺の中で、恋人とやってみたい事『Best5』に入るシュチュエーションですぞ。



「ねっ♪こうやって聞けば、クラも一緒に聞けるでしょ」

「ウッ、ウッス、ッスね。ッスね。そうッスね」


更に彼女の髪から流れてくるシャンプーと、石鹸の香りがヤバ過ぎる。


この人の体からは、フェロモン系の分泌物しか出ない様に出来てるのか?

それに触れ合ってる腕も体温も、さっきより少し高い様な気がするぞ。


あっ……まさか、この人……


例の事が気になって。

あの怒った状態まま24時間オープンの銭湯を探しに行ってたのか?


それで、強引に風呂を見つけ出して、風呂にサッと入って帰って来るまでに1時間。

もしこれが事実だとしたら、女の子の清潔好きは、ある意味、凄い行動力を齎すんだな。


感心する。


でも、そんな香りは、俺にとって天国の様な地獄。

奈緒さんに対しての意識が高まるだけ……マジで、天使と悪魔が同居している状態だ。


勘弁してくれ。

俺、さっき爆発物の処理を我慢したから、本当に爆発するぞ。


此処に来て再度、例のモノの暴発の危険が迫る。


それでも奈緒さんは、いつも通りの行動を起こす。



「じゃあ、スィッチ入れるね」

「・・・・・・」


諦めた俺は彼女に従い、コクッと頷くだけ。


恐らくは、人が聞くに耐えない酷い音が流れるであろう自分のPLAYを、此処からは大人しく聞く事にした。


少し合間があってから、音が流れ始めた。


-♪--♪-♪-♪-------♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


自らの手で爆弾処理をせずに、約束を守って良かったですね。

そのお陰で『自分の彼女としたいシュチュエーションの五本の指に入る行為』をして貰っちゃえましたしね。


良かったね(笑)


さて、そんな幸せな中、次回は。

倉津君が奏でたベースの音が注目に成ってきます。


どんな評価が下されるのかは……次回の講釈と言う事で(笑)


また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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