●前回のおさらい●
何故か、ヒナちゃんの世界が『夢』だとは思えなくなってしまった倉津君。
そしてそんな彼に、ヒナちゃんに由来する『あるもの』を探すチャンスが巡って来たのだが……
スタジオの扉を開けてから、誰も居ないスタジオに明かりを灯す。
勿論、スタジオ全体の電気を灯す必要性などはなく。
電気を点けるとは言っても、昨晩2人で飲んでいた場所であるカウンターだけを灯す。
スタジオ全体をショウアップする必要性なんて、何所にもないからな。
それにチェックして置きたいと言った物に関しても、カウンターに並んでる多種多様な『酒瓶』
もし此処に『ある酒』があれば、なにかの手掛かりになるかも知れない。
……って言うのもな。
どうにも今の俺は、さっき鍵を貰った瞬間よりも。
何故だか解らないんだが『今朝のヒナと言う女との出逢いが、夢とは思い切れなく成っちまってんだよな』って言うのが色濃く出始めている。
なんて言うか、今にして思えば。
あの夢の中で訪れたウチの実家、通い慣れた学校、ジジィババァの店。
それに、このスタジオ。
全ての記憶がリアルで、生々しすぎて、とても偽りの世界だったとは思えなく成って来たんだよな。
本当に自分でも馬鹿げているとは思うんだが。
もし、あれが虚構の世界じゃないとすれば、あんな無責任なまま、ヒナを放置してしまった事には後悔がある。
あれじゃあ、マジで義理も人情もあったもんじゃないからな。
だから俺は、もしその手立てが有るなら。
ヒナが最後に持っていた『あの瓶』しかないと踏んで、それを探し始めたと言う訳だ。
ホント、3文スペースオペラにも成らない様な馬鹿げてる話なんだけどな。
***
例の酒瓶を探し始めて5分。
『ウィスキー』『ウォッカ』『ブランデー』『ジン』『ラム』『テキーラ』『その他のリキュール類』
それらの置かれている酒の量が多過ぎて、未だに、その例のヒナの持っていた瓶を発見出来ずにいた。
冬場だと言うのに、少々汗すら掻くほど必至に探しているのだが、矢張り、何所をどう探しても見付からない。
いや、寧ろ、そんな物は、最初から存在しなかったのかも知れない。
『俺は……突然の思い付きで、おかしな幻想に囚われていただけなのだろうか?』
だが、それでも尚、俺は、何故か、そうは思えなかった。
なので、時間の許す限り、酒瓶を探し続ける。
なにが、俺を此処まで、こうさせるのだろうか?
……そう思って居たら、スタジオの扉が開き、とうとう崇秀が姿を現してしまった。
どうやら、宝探しの時間はタイムアップの様だ。
「おぅ、遅くなって悪か……って、なにを散らかしてやがんだ、オマエは?」
そりゃあ、こんな状況じゃ、そうも言いたくなるし、怪しまれるわな。
「いや、なんか高そうで珍しい酒でもねぇかなぁって思ってよ。酒を漁ってたら、こんな事に成っちまってた」
「最悪の極みだな、オマエ」
「いやいやいやいや、そうでもないぞ。そのお陰でだな。1946年のザ・マッカランを発見したぞ」
「オイオイ、マジで最悪だな、オマエ。……それ、二度と手に入らない様な代物だぞ」
「なんでだよ?別にマッカランなら、普通に売ってるじゃん」
「ハァ……そっかよ。んじゃあまぁ飲みたきゃ飲めよ。但し、せめて味わって飲めよ」
誤魔化す為に、密かに手元に置いておいただけの酒瓶なんだが……これは、かなりやばい物に手を出しちまったかも知んねぇな。
なんと言っても鍵の付いた木箱に入ってる上に、外の紙箱すら綺麗に保存している状態。
まぁ崇秀の性格上、こうやって綺麗に保存してあるのは、特別珍しい事ではないんだが。
『二度と手に入らない』とかぬかしてやがるので、そこにはなんか有りそうな雰囲気だから、此処は辞めて置くのが順当ってもんだろ。
これは危険な香りしかしねぇ。
「いや、だったら辞めとくわ。なんか代わりに暖かい物をくれよ」
「あぁッそ、そりゃあ賢明だ。じゃあ、ちょっと待ってろな」
そう言った直後、崇秀は、何故かコンロでお湯を温め始め。
その鍋の中に固形スープを放り込んだ。
そんでその後、ウォッカと、ウスターソースと、胡椒を少々入れたみたいなんだが、なんじゃそりゃあ?
ロシアのスープかなんかか?
あっ、因みになんだが。
それを作りながらも崇秀は、俺の散らかした酒瓶を、さっさと戻していってやがる。
あの調子じゃあ、元にあった位置を憶えてやがるな……
「はいよ」
「なんだそれ?それって、カクテルなのか?」
「あぁ、ブルショットってカクテルだ。暖まるぞ」
「へぇ~~~っ、それって、マジでカクテルなんだな」
「まぁな。1953年アメリカのレスター・グルーバーの作品って言われてるな」
「ほぉ。しかしまぁ、オマエって、ホントなんでも良く知ってるよな」
「まぁ、なんでもは知らねぇけどな。話のネタには、そう言う知識も必要だって話だ。……つっても、プロみたいには良い味は出せないけどな」
ケッ!!
そんな事を言いながら、どうせ、ガッツリ美味いクセに!!
……等と、訳の分からない文句を言いつつも飲む俺。
「おぉ、思ってた以上に美味いな。それに、意外とウォッカが効いてるから、体の芯から暖かくなりやがる」
「そっか。まぁ『祭日と日曜日が禁酒日』なんて国もあるから。これをスープとして出す店とかも有る位だからな。……けど、ベースがウォッカだから飲み過ぎには注意だぞ」
「おぉ。……けど、そんな国もあるんだな」
「あぁっと、確かフィンランドだっけかな」
ホント、呆れる位、余計な事まで良く知ってやがるな。
「ふ~~~ん。……っで、崇秀よぉ。酒の話も良いけど、俺に用事ってなんだよ?」
「あぁ悪ぃ。それな。……つぅか、用事って程のもんじゃねぇんだけどな。【無名】の移籍の件なんだけどよぉ」
「オイオイ、その件に触れるのは解ってたけどよぉ。十分重要な用事じゃんかよ」
「まぁな」
「……っで、移籍の真意はなんなんだよ?」
結局、俺の聞きたい事なんか全てお見通しって訳か。
まぁその分、無駄がなく、話が早いから、それはそれで良いんだけどな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
完全にアチラの世界があるものとして、なにかを必死に探してる様なのですが。
結局は見つかりませんでしたね(笑)
なのでまぁ、あれ自体、所詮は夢物語だったのかもしれませんね。
因みになのですが。
倉津君の探し物である『Brew Space-M……』とは、一体、なんなんでしょうか?
それが見えてくれば、ある意味、納得できる回答が出てくるかもしれませんよ(笑)
さてさて、そんな中。
取り敢えずはヒナちゃんの話は保留にしながら【無名】の件に流れて行ったみたいなのですが。
あの真相も、如何なるものだったのでしょうね?
次回は、それをまず解決していきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
【オマケ話コーナー】
倉津君が誤魔化す為に手元に置いて置いたお酒『THEマッカラン』についてお話させて頂きますと。
このお酒『シングルモルトのロールスロイス』っと言われる高級なお酒でしてね。
手に入りやすい通常の物でも、最低約1万ぐらいしますです♪
ただまぁ『これじゃあ、そこまで高級品じゃないじゃん』っと思われるかもしれませんがね。
この1946年って言うのが曲者でしてね。
この年代に作られたオリジナルものなら……余裕で一本500万ぐらいします(笑)
そして、その理由は、通常の物とは製法が違うからなんですよ。
その時期って言うのは、第二次大戦直後でして、戦争直後の時期に蒸留されたモルト原酒が、いつものマッカランとは違い蒸留の際にピート(泥炭)が多く使用されていたことがわかっています。
当時は戦争の影響で石炭が足りておらず、その代替としてピートが採用されていたのでしょう。
蒸留方法そのものが異なることから、味わいもいつものマッカランとはガラリと異なった雰囲気に仕上がっています。
そんな特殊な製法で作られたものが故に、希少価値が高く値段も高くなる訳です。
因みにですが、偽物も多いお酒なので購入の際はお気を付け下さい(笑)
どうでも良いですね。
はい、すみません。
(*'ω'*)b
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