●前回のおさらい●
『ステラさんに学校の制服を着せてみたい』っと言う自身の欲望丸出しの願望を叶えた上で、奈緒さんからM-80(ギター)を借り、これでコンクールに向けての準備は万端!!
さぁ、此処から始まる歌謡コンクール!!
キッチリと優勝を決めて『グチ君の家にTVをプレゼント』する事が出来るのか!!
TV番組の素人歌謡コンテスト等で使われる。
『キンコンカンコン・キンコンカンコン・キンコンカン』
……っと言う、まさかまさかの、この大型ステージで『誰もこんな音を間抜けな音鳴らす』なんて思わない程の間抜けな音が響き渡って、歌謡コンテストが始る。
これは驚愕だ!!
これだけ若い連中や、観客や、出場者として集まってるのにも拘らず、普通なら、絶対に使いそうにもない様な音を平然と鳴らしてきやがるんだもんよ。
そりゃあビックリもするわな。
けど、この大間抜けな鐘の音は、間違いなく鳴り響いた。
どうやらこの様子からして、町内会のオッサンやオバハンが『これだけは外せない』っと言って、強引にねじ込んだ様子だ。
それにしても……酷いセンスだな、オイ。
そんな間抜けな音に苦笑いを浮かべながらだな。
このコンテストのMCを勤める人気漫才師のケン・山本と、素直がステージに入ってくる。
今度こそ、漸く、歌謡コンクールがスタートするみたいだな。
「はい、ど~~もぉ。今回、司会進行を勤めさせて貰う、ケン・山本で~~~す。今日は、最後の最後まで楽しく行っちゃおうなぁ」
「こんにちは、ケンさんのアシスタントを勤めさせて頂きます、有野素直です。宜しく、お願いしま~す」
「「「「「素直ちゃ~~~ん!!素直ちゃ~~~ん!!」」」」」
「ご声援ありがとうございます」
「あれ?俺は?」
「「「「「イラネェぞぉ!!引っ込めケン!!素直ちゃん一人にやらせろぉ!!」」」」」
「なに、この差?素直ちゃん、俺が、幾ら芸人だからって、これは酷いよね」
「そうですね。けど、ケンさんに対する声援も、沢山ありましたよ」
「へっ?いつ?どこでぇ?俺には、それらしきものは、なんにも聞こえなかったけど?」
「えぇっと……今さっきですかね」
「ヒドッ!!あれは、声援じゃなくて、罵声って言うんだよ」
「そうなんですか?でも、芸人さんなら、これは美味しいシュチュエーションだと思いますけど。僕の知り合いの関西の人は、ハッキリそう言ってましたよ」
「いやいや、関西と関東じゃ、美味しいと思うシュチュエーションが違うからね」
「じゃあ、今から思っちゃって下さい」
「素直ちゃんって、何気に酷い子なんだね……」
「じゃあ、ケンさんは無視して、一人目の方、どうぞぉ」
「普通、無視を宣言するか?」
素直のコール通り、ケン山本を無視して、一人目のオバハンが気合の入った着物姿で登場する。
しかもオバハンは、なんの遠慮も無しに、カラオケで、ド演歌らしきものを歌い始める。
当然、歌が始った瞬間、会場は凍りつき、完全に白けきった空気が流れる。
……が、オバハンは強かった。
それを『なにするものぞ』っと言わんばかりに、観客の反応など一切無視して、自己陶酔に浸りながら熱唱を続ける。
これはある意味、ステージに立つ者として見習うべき心臓の強さだ。
意外と侮りがたいな(笑)。
……にしても、素直さん。
いつの間にやら、そんなやり取りまで上手く出来る様になる程、MCが成長したんでゲスね。
若手漫才師相手とは言え、山中でも及第点をくれる程、良い掛け合いでしたぜ。
それに……このコンテストのアシスタントをやってるって事は、それだけでもコンテストでの評価が高くなる。
これは、中々手強い戦略を立ててきたな。
やるな素直。
***
……っで、この後もだ。
次々とこのコンテストにエントリーした。
『ただカラオケを唄いたいだけのオッサンやオバハン』
『此処で一発当てて、メジャーデビューを目指そうとする者』
『明らかに優勝商品や、副賞のみを目指したド素人』
『ノリで飛び入り参加しただけの奴』
……等の様々な思惑を持ったユニークな人間が、各々ステージに上がり。
自分の持ち歌や演奏を披露し、出来る限り、必死に自己アピールして行く。
けど、大型のステージに変更してまでやってるとは言え。
所詮は、歌謡コンテストの域。
その域を超える奴など誰一人いなく、精々『良い音出してるなぁ』って思うのが限界値。
全員が全員、素人に毛が生えた程度が精一杯と言ったレベルだった。
故に、観客の反応は冷たく拍手はあるものの、盛り上がりの欠片も見当たらない。
俺の思った通り、この歌謡コンテストのレベルは恐ろしく低い。
だが、これは仕方がない事だ。
多くの観客の目的は『素直の声』を聞く為だけに集まってる訳だし、ステージの移動を敢行させたのも、同じく素直の為だからな。
故にだ、この時点では、俺達の優勝を妨げるのは『2-Bユニット』だけだと確信せざるを得なかった。
……だが、残す所3組になった時点で、事態は急転直下を迎える事になる。
矢張り、変態ギターリスト・仲居間崇秀を輩出する県だけあって。
こんな地元主催のヘチョイコンテストにも、とんでもない化け物が潜んでやがったんだよ。
そのバンドの名は『Junk・Science』
名前の通り、一聞すると『Junk(ゴミ)=使い古されたフレーズ』を使った古臭いロックを鳴らしてるだけの音楽と感じるのだが。
その実『Science(科学)=電子的な音』を上手く使い。
古臭い音楽と、電子音を上手くフュージョンさせて、今までにない新感覚的な、非常に奇妙で面白いアレンジがされている。
だから、曲調自体は古臭くても、それを余り感じさせない様な仕上がりになっている。
勿論、これだけの面白いアレンジを考え付くだけの事は有って、ボーカル・ギター・ベース・シンセサイザーっと言った演奏者のレベルも非常に高く。
自ずとバンドとしての完成度も高くなっている。
兎に角、驚きの手法を繰り出してきたバンドだ。
それでだな。
その中にあっても、かなりの異彩を放つ男が1人居るんだよな。
俺に化物と言わしめるのは『シンセサイザーを弾いている男』だ。
奴だけは、他の演奏者とは、全く異なった次元でシンセを演奏している。
―――『なにが違うんだ?』……と問われても。
正直言ってしまえば、シンセの扱いを良く知らない俺には、これを上手く説明する事は出来無いんだが、演奏を聞いているだけの感想を言わせて貰うとだな。
まず……どうやったら、あんな変幻自在な音が出せるのかが、不明だ。
曲全体に、俺が体験した事が無い様な多彩な音を盛り込まれているんだよな。
中でも、極稀になんだが『これは人が出す音なのか?』と思うぐらい奇妙で、それでいて、観客を魅了する様な音を出してくる。
これについては、シンセど素人の俺なんかじゃ、完全に不明瞭な部分なんだが、兎に角、その音で人を魅了する奇妙な音だ。
それに付け加えて、奴の演奏の正確さ及びスピードは、まるで鍵盤の上を蜘蛛が這って行く様な感じだ。
2匹の蜘蛛の様な広くて大きな手は、異常なまでの広がりを見せ。
まるで1つ1つの手が自分の意思を持ち、自由自在に鍵盤を滑走して、人々を魅了する様な奇妙な音を、曲の後半になるにつれ多く構成して行く。
こんな凄い演奏の仕方をする奴は、俺は見た事が無い。
そして観客も、その音に呼応する様に、自然と盛り上がって行く。
今までオッサンやオバハンの下手糞なカラオケを聞かされて、白けきった顔をしていた奴等は、もうどこにも居ない。
一気にボルテージが最高潮まで上げて行った感じだ。
しかも、その盛り上がってる連中の中には、さっきカラオケを唄っていたオッサンや、オバハンの姿もある。
この奇妙な現象も、少し考えてみれば解る事なんだがな。
曲調自体が、かなり古い年代の設定をしてあるから、オッサンや、オバハンが盛り上がるのは、なにもおかしな事では無い。
要するに、自分達の青春時代とやらを思い出して、若さでも取り戻した気分にでもなっているのだろう。
故に、これも、ありえない光景では無いな。
しかしまぁ、もし、そこまで計算して、このコンテストに出場してるなら、このバンドのブレーンは、相当なキレ者なんだろうな。
普通は、此処まで計算なんか出来たもんじゃない。
こんな化物染みた奴を平気に輩出して来る神奈川県は、本当に侮れない県だ。
こんな奴が、町内会の歌謡コンテストに出て来るなんざ、矢張り……『化け物を生むファクトリーでも有るんじゃないか?』って思う程だ。
最後の最後になって、とんでもない化物クラスを出してきやがった。
まいったな、こりゃあ。
この様子じゃ、どうやら、叩き潰さなきゃならないのは『素直』だけじゃないみたいだな。
俺は、そんな事を考えながらも、奴等の演奏を最後まで聞き入っていた。
そんで曲の終了後には、観客からの鳴り止まぬ拍手と、歓声が、少しの間、続いた……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
どこにでもある様な歌謡コンクールだと言うのに、またなにやらヤバいバンドが出て来たみたいですね(笑)
まぁでも、倉津君達がアッサリと優勝してしまったのはツマラナイので。
素直ちゃん達以外にも、強力なライバルを出してみました。
因みにですが、このシンセを演奏している男は……かなりヤバい男です(笑)
さてさて、そんな中。
次回は『Junk・Science』のリーダーであるシンセの男が、素直ちゃん達MCと、ちょっとしたやり取りをするみたいですね。
どうなるのかな?
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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