●前回のおさらい●
眞子がおかしな言動をし始めてるのに危機感を感じ。
『これは不味い』を感じた崇秀は、今まで隠していた『倉津真琴のクローン創造』を2人に提案するが……矢張り、人道外れた行為なので賛成を得るには至らなかった。
「そぉかぁ……幾ら向井さんと言えども、この話は、倫理的にも、矢張り無理だったか。……まぁ、そりゃあそうだよな。これを受け入れろって方が、どうかしてるよな」
崇秀……本気で凹んじゃってる。
……だったら奈緒ネェには悪いけど、ほんの少しだけ崇秀に肩入れさせて貰おうかな。
多分、これ自体、崇秀自身が必至に考えた上での苦肉の策だったと思うからね。
それに、私が賛成すれば、崇秀1人に責任を背負わすんじゃなく、私も『同罪になる』事が出来る。
こうすれば、崇秀の罪の意識も薄らぐ筈。
人として落ちるなら、親友なんだからトコトン最後まで一緒に落ちて行こう。
それぐらいの覚悟は持たなきゃね。
「あの、奈緒ネェ」
「うん?どうしたの眞子?そんな神妙な顔して」
「あの、あの……この話、ヤッパリ、どうあっても無理ですかね?考え直す、余地って無いですか?」
「へっ?ちょ!!眞子!!……なんで当事者のアンタまで、そんな事を言うの?本当のクラは、君の中にしか居ないんだよ。だったら眞子が、これを否定しないで、どうするのよ」
「あぁはい、そうなんですけどね。私も、少し、今の崇秀の話を聞いて、私なりに考えてみたんですけど。その崇秀の言う真琴ちゃんは、きっと、奈緒ネェが大好きだった真琴ちゃんだと思うんですよ。……私と、なんら変わらない真琴ちゃんだと思うんです。きっと……いや、きっとじゃなくて、寧ろ、確実に本物の筈ですよ」
「眞子……でも、眞子には悪いんだけど。私には、そんなの割り切れないよ。この話自体が無茶苦茶だよ」
「いや、なにも割り切らなくて良いんですよ、奈緒ネェ。私より、その真琴ちゃんの方が、きっと奈緒ネェの事を幸せに出来る本物の筈ですから。馬鹿でも一生懸命に、奈緒ネェだけを見てる本物ですから。だから奈緒ネェの元に、真琴ちゃんを帰らせてあげて欲しいんですよ」
本音を言えば、この計画自体は出来れば反対なんだよ。
これを行う事によって、崇秀は人の道を踏み外す事になるし。
奈緒ネェが、その真琴ちゃんに慣れるまでの一定期間は、精神的な負担を増えるだけだからね。
本来、こんな事に賛成なんてしちゃいけない。
でもね、ここで1つだけ断言出来る事があるとするならば。
きっと女である私では、その真琴ちゃんより、本当の意味で、奈緒ネェの女の幸せは掴ませて上げられない。
だから、ヤッパリ奈緒ネェの横に居るのは、男の真琴ちゃんであるべきだとは思う。
それが例え『作り物だ』って言われても、その真琴ちゃんは、私なんかより本物の筈だから。
だから……心底嫌だけど、お願いしたい。
真琴ちゃんは欠片になっても、本当に奈緒ネェだけを見てる子だから……
「解らない、解らないよ、眞子。どうしてなの?どうして、そんな事が言えるの?」
「そっ、それは……」
「それに、今さっき君は、私に『付き合おう』って言ったところだよね?なのに、この話が出た途端、掌を返した様に、偽物のクラを私に宛がおうとする。……じゃあ、さっきのあれはなんだったの?」
「それに関しては、嘘偽りの無い本当の気持ちです。今でも、奈緒ネェの事を愛し続けたいとは思っています」
「だったら!!」
「……でも、奈緒ネェの女としての幸せを考えたら、私なんかより、その本物の真琴ちゃんの方が圧倒的に幸せにしてくれる可能性は高い。恐らくだけど、絶対の絶対に幸せにしてくれると思ってます。私の中に居る真琴ちゃんじゃ対抗出来無いぐらいに……この気持ちをね。全面的に押し出せるのは、ヤッパリ、男の体のある真琴ちゃんが一番強いんじゃないかって。……だから、お願いします。私の中の倉津真琴からの、最後の我儘を聞いて下さい」
ごめんなさい。
もう少し私が、自分の中の真琴ちゃんを大事にしていれば、こんな事を言わずに済んだんですけど。
もぉ男女の精神が入り混じりすぎて、私自身、本当の真琴ちゃんが、どんな存在だったのかすら見えない部分が多いんですよ。
どうやら私は、崇秀の言う通り、もぉ『眞子でしかない』様なんです。
「そぉ……君の中のクラは、私に、クラの人形と付き合えって言うんだね?一応、聞くけど。それ、本気で言ってるの?」
あぁ奈緒ネェ。
そう言う風に捉えないで……
「その子は人形なんかじゃないんですよ。人形だなんて言わないであげて下さい。それは、正真正銘、本物の真琴ちゃんなんです。……言うなれば、私が、もぉ偽者なんです。この世には、別れを切り出して、奈緒ネェを泣かす様な真似をする真琴ちゃんなんて居ませんからね。……私が偽者なんです。偽りの倉津真琴なんです。そう思って貰っても結構ですから。どうか認めてあげて下さい。……奈緒ネェの心を弄んだ、最低の偽者は私ですから」
「眞子……」
きっと……これで良いんですよ。
最愛の奈緒ネェを泣かせる様な真似をする真琴なんか、生きてる価値も無い真琴なんです。
そんな、奈緒ネェに酷い事をする様な奴は『偽者』の扱いで十分なんです。
だから……
「はぁ、待て待て……偽者や、本物なんてものは、最初から存在しねぇぞ、2人共本物なんじゃねぇの?」
「違うんだよ崇秀。私は偽者だよ」
「なにが偽者なんだ?オマエは、正真正銘本物の向井眞子だろ。だったら、偽者以前に倉津真琴な訳ねぇだろ。なに自分に浸ってやがるんだ、オマエは?」
「そう言う割り切った話をしてるんじゃないだよ。もっと精神的な話」
「なら、尚更だ。オマエは、倉津真琴から、自ら選んで向井眞子になったんだろ。なら、なんで今更、テメェの中の倉津真琴を引っ張り出そうとする?いい加減なぁ。そう言う自分の都合だけで、倉津の名前を使うのをヤメテくれねぇかなぁ?オマエは、もぉ何所まで行っても向井眞子でしかなく、倉津真琴には成り得ねぇんだよ。……いつまでも気分の悪い鬱陶しい事ばっかり言ってんじゃねぇぞ」
「そうだけど……」
「……おい、オマエ、もぉいい加減にしろよ」
「えっ?」
「確かに、こんな状況にオマエを追い込んじまったのは俺だ。そこは幾ら詫びても、許される事じゃねぇだろう。……だがな、それでも、次にテメェが倉津の名前を語ったら承知しねぇからな。良いな、向井眞子?テメェは、もぉ何処まで言っても向井眞子でしかねぇんだ。だから2度と倉津真琴の名前を口にするな。マジで次は、ねぇからな」
だって……
私の中にも、まだ倉津真琴であった時の欠片が……
「待ってよ。でも、私の中には、倉津真琴の心が……」
『バシッ!!』
そう言った瞬間、私の頬には痛烈な衝撃が走った。
この頬の痛みは……なに?
今、一体、なにが起きたの?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
自らの意志で向井眞子として生きる事を選んだ筈の眞子。
されど、あの例の混乱した脳内会議にて『自分の中には、まだ倉津真琴が存在する』と履き違えてしまったが為に、今回の一件は起きてしまった悲劇なのですが。
そうなんですよ。
実は崇秀の言う通り、向井眞子の中には、もう既に、倉津真琴と言う存在は微塵も存在していない状態なんですよ。
ハッキリ言えば、もう体だけではなく、脳味噌の中まで『完全に女性化』してしまってるが故に。
【本気で奈緒さんを愛していた頃の倉津真琴の存在は、記憶でしかなくなってしまっている】
これが本当の女体化の怖い所。
今の眞子は、女性の体が持つ本能に、自身の精神を引っ張られ、男性的な精神を完全に上書きされてしまっている状態なんですよ。
非常に悲しい状況ですが、これがTSの現実と言うものです。
あれ程好きだった奈緒さんに対して、また知らず知らずの内に、こんな無理な我儘を通そうとしている訳ですしね。
さてさて、そんな眞子を嗜める為に、崇秀が注意を促したのですが。
矢張り、まだ自身では、どこか納得しきれていないのか、反論の声を上げた眞子なのですが。
次回、頬の痛みと共に、もっと自分の状態を思い知らされる事に成ります。
ですので、もし、その辺の動向を気にして頂けましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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