第二十八話『ライブ前の試練・勉強編』が始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ
028【ライブ当日の試練・勉強編】
相鉄(相模鉄道)に揺られて『横浜』から6個目の駅『上星川』へ移動する。
此処は一見すると、何所の駅とも変わらない様な何の変哲もない駅なんだが。
実際は……
その、なんだ……
あれ?特に目立ったものは何も無いな。
奈緒さんが住んでるから少し変わった所があるかと期待したんだが……なんもねぇな。
まっ……まぁ、そんな極平凡な駅だ。
そんで、そんな駅から、徒歩で蔵王神社なる神社を横切り。
更に、少し歩いた所にある古びた一軒家の前で、奈緒さんは立ち止まった。
どうやら此処が、奈緒さんが1人暮らしをしている場所らしい。
まぁ、お世辞にも綺麗な家とは言えないが。
二階も無い平屋な所が、なんとも言えない情緒が有る。
しかもよく見ると、昔なにかの店をしていた名残が、何所や彼処に見え隠れしている。
奈緒さんは、そんな、なにやら古めかしい家に、ゴソゴソと鞄から鍵を取り出して、扉に突っ込み、戸を開いた。
『ガラッ』
「ボロッちい家だけど、どうぞ」
少し彼女は照れた様に、そう言った。
山中、素直、俺の3人は、奈緒さんに促されるまま、家にお邪魔する事にした。
「「「お邪魔しま~す」」」
「どうぞ。その辺にある椅子にでも適当に座って」
「ウッス……って、奈緒さん!!」
「うん?急に、なに?なに大きな声を出してるのよ?吃驚するじゃない」
「えっ?……いや、なにやないって、奈緒ちゃん」
「だから、なにがよ?」
「……カッコイイ」
「はい?……なにが?」
俺達3人が、奈緒さんの家に入ってから目撃したもの。
それは、この家の外観からは想像も出来無い様な光景だった。
まず家の中に入って、直ぐに眼に付いたのが『壁』
外観の昭和風の佇まいからは想像も出来無い様な『全面剥き出しのコンクリート造り』
その壁には、数箇所にわたり、ミッドセンチュリーらしき電飾が据え付けられている。
そして、第二に目に付くものは『床』
木製ウッド調のパネルが、床一面に綺麗に敷き詰められており、土足のまま入室出来る。
そんな床の上には、所々に『デザイナーズ・チェアー』を配置。
中央付近には『テーブルが3つ』
……これも、かなり高そうな物だ。
それに剥き出しの壁には『マーカス・ミラー』のポスターをはじめとするミュージシャンのポスターや、昔の映画のポスター等が多く貼られ。
更に壁際には、小さなバーカウンターと、1台の『エレクトリック・ダーツ機』
……しかも、このダーツは、コインを投入する業務用のもの。
最後に一番驚いたのは、多種類の楽器が置かれている事だ。
軽く見ただけで、ベース1本・ドラムのフルセット1台・キーボード1台、それにギターも1本置いてある。
なんなんだ?この異常なまでの金の掛け様は?
まるで渋谷とかに有りそうなショップじゃねぇか。
全然、生活感が無いぞ。
「なに?どうかしたの?なんか変?」
……っと本人は、この状況に対して、なにも感じていない様だ。
「あの……向井さん、これ、全部、自分で買ったんですか?」
「違うよ。殆ど貰い物だよ。……中学の時の友達が、自分の家じゃ置けない私物を、勝手に此処に置いて行った結果。しかも、その中にはね。建築業に就職した奴が居てね。部屋を勝手に改装。それでいつの間にか、こんな感じになっちゃったのよ。ホント、困ったもんだよ」
「そやけど奈緒ちゃん。楽器や調度品は、まだ解るけど。なんで『業務用のダーツ』まであんねんな?」
「あぁそれ。それも貰い物。中学の時に、よく出入りしてたゲーセンが潰れた時にね。店長からタダで貰ったのよ。当時は喜んだけど、今となったら、なんで貰ったのか、よくわからないんだけどね。……良かったら、カズいる?」
「いらん、いらん。こんなもん、家に置いたら床抜けてまうわ」
「だよね」
しかしまぁ、貰ったとは言え、潰れたゲーセンの店主ってのも、何考えてんだ?
店が潰れたからって、そんなもん普通は、人にあげねぇだろ。
「向井さん、向井さん。この椅子って……」
再び素直が、奈緒さんを呼ぶ。
素直も、山中同様、豪くテンションが上がってる。
これじゃあまるで、初めて遊園地に連れて来られた子供みたいだ。
……にしてもだな。
素直って、こんな表情もするんだな。
驚きだ。
普段の素直なら、もっとこぅ、どこか『お堅い感じ』が有るんだけどな。
「あぁそれね。それはイームズのコピー。友達でそう言うのを造るのが、凄く好きな子がいてね。引っ越し祝いにくれたのよ。だから、それは、結構、気に入ってるかな。あぁ因みにだけど、テーブルも、その子が作ったものだね」
「わぁ~~~っ、良いなぁ」
うおっ、奈緒さんのツレって、ハンパなく格好良いんだな。
椅子とかテーブルとか作れるツレなんて、早々作れないぞ。
いやはや、それにしてもなんだねぇ。
格好良い人には、格好の良い連れが集まるもんなんだな。
それに引き換え、俺のツレと来たら……馬鹿バッカ。
んじゃま、満を持して俺も、そろそろ質問してみっかな。
「あの、奈緒さん」
「なになに?みんなして、なんで、そんなに質問攻めなのよ?ちょっと変な物は有るけど、普通に家じゃない」
「「「えぇぇぇえぇぇぇ~~~ッ!!」」」
「うん?」
とうとう出たよ……無自覚症って悪い病気が。
あのねぇ奈緒さん。
こんな格好の良い家に住んでる人なんか、早々いませんよ。
それに、全然、普通じゃねぇし!!
「さてさて、質問タイムは終わり。そろそろ勉強しよっか」
俺の質問タイムは?
……って、言ってても仕方が無いか。
今日は勉強する為に、ワザワザ集まったんだし。
俺の質問は、また今度の機会にでもさせて貰うとするか。
「ウッス。そうッスね」
「ほな、始めよか」
「あっ、はい」
「うわっ、みんな、返事に協調性が無いなぁ……まっ、いっか。あっ、そうだそうだ、此処で勉強するのも落ち着かないでしょ。奥でやろ奥で」
そう言って奈緒さんは、相も変らず、平然と奥へと続く扉を開くんだが……なんか知らんが、妙に嫌な予感がするぞ。
そう思いながらも扉を潜ってみると、案の定、嫌な予感は当たった。
この部屋は、先程の部屋とは打って変わって純和風な部屋の作り。
中央には、家具調の高そうな机が置かれ、その周りには座椅子が6脚。
床の間には、なにやら高級そうな掛け軸まで飾られている。
この人……どこまで、人を驚かせたら気が済むんだ?
他の2人も、あんぐりしてるぞ。
「先に言っとくけど、大半が貰い物ね、貰い物」
「さよか……そやけど1個だけ、1個だけ質問や」
「なによカズ?」
「奈緒ちゃんのツレって、みんな、金持ちなんか?これだけのもん、早々、人ん家には置いていかんやろ」
「さぁどうだろうね?みんな、そういうの、あんまり気にしてなかったから、よくわかんないなぁ……あぁけど、みんなで派手に遊んでたのは、遊んでたよ」
「なんや。ちゅう~事は、あれかいな。奈緒ちゃんも、派手な格好で渋谷とか練り歩いてたクチかいな」
「うぅ……触れてはいけない人の過去に」
ぷっ!!奈緒さんでも、そんな流行に流されるんだな。
なんかこう、もっと頑なに自分のスタイルを貫いてるもんだと思ってた。
にしても……ぷっ!!
「アハハハハハ……マジかいな。奈緒ちゃんにも『若気に至り』とかあんねんな」
「あっそ。そう言う事を言うんだ。……じゃあアリスに、これあげる」
山中を睨みながら奈緒さんが、素直に向って放り投げられたのは、例の山中デスノート。
そして放たれたノートは放物線を描いて、狙った様に素直の手元にキッチリ届く。
それを確認した奈緒さんは、満面の笑みを浮かべた。
また意地の悪い事を……
しかし、あのノート、いつの間に自分の鞄の中に入れたんだ?
奈緒さんは、物体を瞬間移動でも出来るのか?
「えっ?なんですか、これ?」
「見て良いよ♪そのノートには、カズからの、君への熱い想いがタップリ描き込まれてるから」
「へっ?ちょ!!……そっ、それは、アカンって!!アリス、見んとってくれ!!」
山中の静止は受け入れられず、素直は、何気なくページをペラペラと捲っていく。
そして、例のページに差し掛かって瞬間。
素直の動きが『ピタッ』っと、完全に止まった。
「……山中君、酷い」
「ちゃ!!ちゃうんねんって!!誤解や誤解!!悪気は無いねんって!!……別に、アリスの胸がデカイとか思てへんって、思春期には、よぅ有る話やねんって!!」
「僕の胸……こんなに型崩れしてない」
「へっ?」
「えっ?そこなんだ」
思わぬ方向に話が転がったもんだな。
まさかこの状況下で、デッサンの話になるとは夢にも思わなかった。
しかしまぁ、素直って、本当に天然だな。
「だって、これ、酷いですよ。そりゃあ確かに、僕の胸は左右対称じゃないですけど。幾らなんでも僕、ここまで酷くないですよ」
「いや、素直……そこじゃないだろ」
「真琴君、どうしてですか?」
「オマエ……それ、裸描かれてるんだぞ」
「アホか!!いらん事を説明せんでもえぇちゅうねん!!気付けへんかってんから、余計な事を言うな!!」
「あっ、ホントだ……酷い」
「それと序に、その横のセリフ読んで見ろよ」
「あっ、はい」
素直なだけに、素直なこったな。
「酷い。……向井さん、僕、こんな事は思ってませんよ」
「えっ?あっ、そこも、そこなんだ」
「それに、男の子には解らないだろうけど。胸なんて大きくたって、肩が凝るだけで何も良い事なんてないんですよ」
「いや……見栄えが」
「ははっ……一回で良いから、そんなセリフ言ってみたいよ……」
1度、素直のオッパイを見て。
自分のオッパイを『ペタペタ』しながら、奈緒さんは、そんな言葉を吐いた。
……そして凹んだ。
「なんでですか?こんなの、ホントに重いだけなんですよ」
「ははっ……ははっ……」
壊れた。
奈緒さん、結構、胸の事を気にしてたんだな。
でも、大丈夫ッス。
そんな心配は必要ないッス!!
俺、奈緒さんの掌サイズのオッパイの大きさ好きッスよ!!
「あのさぁ。そろそろ勉強しよっか……これ以上は耐えられそうにないよ、私」
「えっ?あの、僕、何か気に障る事でも……」
「あぁ良いの、良いの。アリスは、気にしなくて良いんだよ」
「でも……」
顔は笑ってるけど、眼がぜんぜん笑ってないし、血管が浮いてますよ奈緒さん。
「しかし、奈緒ちゃんにとったら痛烈な一撃やったな」
「ピキッ!!(怒りマーク)……カズ……なにが?」
「なんや?それこそ自分の胸に聞きいや……もし気付いて、傷付いたら慰めたるで」
また、勇者・山中が光臨したよ。
なんでこの勇者は、こんなにアホなんだろうな?
また裸のくせに、スズメ蜂の巣を、素手で突つく様な真似しやがって。
此処まで行くと、エクストリーム(命知らず)自殺志願者だな。
つぅか……マジで死ぬぞ、オマエ。
「慰める?誰が?誰を?」
「そんなもん、俺以外、何所に適任者が居んねんなぁ?」
「あっそ、じゃあカズ。そんな君に、1つだけ良い事を教えてあげるよ」
「なんや?」
「……元を正せば、オマエが、全部悪いんじゃぁあぁぁぁ!!」
「なんでやぁあぁあぁあぁぁぁ?」
奈緒さんは、瞬間的に、素直からイワク憑きのノートを強奪。
再び、それを手にした奈緒さんは。
徐に丸め、引き攣った笑みを浮かべたまま、山中を容赦なく何回も何回もぶん殴った。
そうは言っても、ノートを丸めているだけなので『ポコポコ』と可愛いらしい音しか鳴らない。
「痛い痛い痛い……」
だが、可愛らしい音に反して、実際、山中が受けているダメージは大きく違う。
ドラムを叩く様に、思い切り手首のスナップを利かせて、奈緒さんが殴っているからだ。
しかもよく見たら、ピンポイントで狙った様に、ノートの角で、山中を殴ってる。
あれは痛いわ。
ノートで殴っただけなのに、山中は、瞬時にズタボロにされる。
これを見た俺は、山中が、少し哀れだとは思った。
……が、敢えて、口を出さず、傍観者を決め込む事にした。
下手な事を言って、コチラに飛び火が来るのは、絶対にお断りだからだ。
メラゾーマの様なメラを喰らいたくない俺の、最低限の『保身』だ。
それにしても奈緒さん『元を正せば、山中のせいだ』って言いましたが、実際、その原因を作ったのは……実は、奈緒さんですよ。
まぁ口が裂けても、そんな事は、絶対に言わないがな。
絶対にメラゾーマ級のメラが来るから……
若しくは、肉体言語系『ポコポコ』で『ボコボコ』が来たんじゃ、シャレにもなんねぇしな。
素直も、この光景には、俺の横で、完全に言葉を失っている。
『向井奈緒・魔王モード』は、それ程までに恐ろしいものだ。
「すっ……すみませんでした……もう2度と生意気な事は言いません……それに胸の……」
「……黙れ」
『ポコ』
最後に聞こえた、その音と共に、山中の口からは一切の言葉を発しなくなった。
正に『ウィザードリィ』の『クリティカル・ヒット』だ。
ご愁傷様。
首を刈られたんじゃ、確実に、ご臨終です。
カント寺院で『灰』にでもなってくれ。
「はぁ、スッキリした。これで気分も良くなったし。さて、そろそろ勉強しよっか。……クラ、カズ始めるよ」
「ウッ……ウッス」
「……」
―――死人に口無し。
「カズ……返事わ?」
「ひゃい」
「うん、良い返事。じゃあ、サクサク始めるよ」
―――死人でも口有り。
奈緒さんの恐ろしさを、その身で体験した男は、矢張り、何かが違う。
瞬時に、その身を起して返事をした。
だが、これで山中も、俺同様『奈緒さんの犬』だな。
人の事を散々犬呼ばわりした事を、身を持って後悔しろ。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございますです<(_ _)>
しかしまぁ、奈緒さんの家は凄いですね。
しかも交友関係も広いらしく、やり手な友人ばかりみたいです。
あぁただ、奈緒さんのお友達は、ほぼ全員が年上です。
同い年の友達は、樫田千尋ちゃんと、清水咲ちゃんしか居ませんのであしからず(笑)
さてさて、そんな凄い家の中で勉強が始まる訳なのですが。
奈緒さんは一体、アホの倉津君に、どう言う勉強の仕方を教えるつもりなんでしょうね?
そして、その効果とは如何に!!
少しでも気に成ったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
あっ、余談なのですが。
私は、この勉強の仕方で、学生時代テストで70点ぐらいは取れてたので、そこそこは使えると思いますよ(笑)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!