●前回のおさらい●
ベースを必死に練習してる不良さんを、からかう崇秀。
その行為が、余りにも腹が立ったので。
崇秀にベースの『運指運動』が出来たら、自分の本音を教えると言う賭けをしてしまう。
その結果は如何に!!
俺の向井さんに対する本音を聞きたきゃ、この『運指運動』をやってみろよ。
一見、簡単そうに見えるがな。
これがやってみると、意外と難しい物だから。
これを条件にして、鬱陶しいオマエを撃退してやる。
「なんだよ、なんだよ。出来ねぇからって、早くも言い訳か?崇秀ともあろう者が、やけにミットモネェ事をほざきだしやがったな」
「チッ……じゃあ、そこまで言うなら、そのベースを貸せよ」
「ほらよ」
フハハハハハ……アホが、簡単に俺の口車に乗りおって!!
変なプライドにでも火が着いたか?
だがそいつは、きっと、オマエを地獄に落とす地獄の業火だ。
たっぷり、その火に焼かれ黒焦げになって死ね。
んっ?
それにしても馬鹿秀の奴、俺が渡したベースを、やけに慎重に弄くってやがんな。
なんかあんのか?
「……おい、倉津」
「なんだよ?早くも、ギブアップ宣言か?」
「いやっ、そうじゃなくてな。このベース、チューニングが狂ってて半音ズレてるぞ」
「はぁ?」
なんだよ、その言い分は?
何でオマエに、そんな事が解るんだよ?
……って、オイオイ。
まさかとは思うがコイツってベースが弾けたりするのか?
そんな話、今の今まで一回も聞いた事もないぞ。
「『はぁ?』じゃねぇよ。これから楽器弾こうって奴が、半音のズレも気に成らねぇなんて、どう言う神経してんだよ?ッたく、しっかりしろつぅのな」
「ちょ……」
「あぁそれと、序に言っとくがな。こういう事は、早目に覚えた方が良いぞ。ズレた音で覚えちまうと、後で修正すんのに、結構、苦労するからな」
「ちょ……オマエ、まさかベース弾けんのか?」
「んあ?ベースなんて一回も弾いた事ねぇよ」
「そっ、そうか」
ビックリさせやがって。
その物言いだったら、一瞬、ベースが弾けるのかと勘違いしたじゃねぇか。
脅かすなよな。
「んじゃあ、軽くやるぞ」
「あぁ、やってみろよ」
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……
♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……
うぇ?うぇうぇうぇ?
なっ、なんだよそりゃあ?
なんでオマエは、そんな簡単に運指運動が出来んだよ。
奴の指は、まるでネックを這う様な動かせやがるし。
しかも4弦キッチリ、音も外す事無く全部弾き終えやがった。
ありえねぇ。
「んじゃあ、序に、こう言うのは、どうだ?」
♪♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪♪・♪……
こっ、これは……これは、カラオケBOXで、向井さんが弾いてた奴じゃねぇか!!
なんでコイツが、これを弾けるんだ?
もぉ意味が解らん。
「っとまぁ、いい加減な感じで悪いんだが、大体、こんなもんじゃね?」
「ちょ!!オマッ!!……汚ぇぞ!!なにが一回もベースを弾いた事が無いだよ!!こんなもん明らかに、ベース弾けねぇなんて嘘じゃねぇかよ!!」
「はぁ?俺は嘘なんか言ってねぇぞ。現にベースを弾くのは、今日が初めてだ」
「んな訳あるかぁ!!ベースを初めて弾いた奴が、急に、あんなPLAY出来る訳無いだろ」
「オマエなぁ。話は良く聞けな」
「うっ、うん?なっ、なにがだよ?」
嫌な予感。
「確かに俺は、ベースは弾いた事ねぇって言ったけどな。ギターを弾いた事がねぇなんて、一言も言った憶えはねぇぞ」
「んが?」
「なにが『んが?』だよ。良いか倉津。弦楽器を弾く時の基本動作ってのは、ギターも、ベースも、そんなに変わんねぇの。後は、どこをどう押さえて、どう弾くかさえ解ってれば、大体の弦楽器は弾ける。要は、応用力さえ有れば大差は無いって事だな」
ベースは弾いた事無いが、ギターは弾けるって……なんだよそれ?
信じられねぇ。
どこまで汚ねぇ奴なんだ。
コイツの性格の悪さに人間不信になりそうだぜ。
けどよぉ。
あんま言い訳とかしたくねぇんだけどよぉ……どう考えても、こんなもん詐欺じゃねぇか?
「さてさて、俺は約束を守ったぞ……あれ?そう言えば、お前も、俺になんか約束してなかったっけ?」
コイツだけは……なんて厚かましくも、ふてぶてしい野郎だ。
詐欺紛いの事をしておいて、約束云々をオマエが言うか?
呆れた精神の太さだな。
けどまぁ、罷り也にも、弾いた事には変わりはないよな。
チッ、だったらしょうがねぇ。
話すよ、話しゃ良いんだろ、話しゃ!!
「あぁわかった、わかった。約束は約束だ。キッチリ話してやるよ」
「ヒヒヒ……そうこなくっちゃな」
「なにが『そう来なくっちゃ』だよ。このペテン師野郎!!」
「ペテン師なぁ?あぁ、ならペテン師で結構だ。俺は、自分の知りたい情報を引き出す為だったら手段は選ばねぇ……その見解、なにも間違っちゃいねぇぞ」
「るっせぇ」
「なに怒ってんだかな?……まぁそんな事より、早く答えろよ」
「なにがだよ?」
「惚けんなよ。俺は、向井さんを口説いちゃいけネェんだろ?なんでダメなんだよ?」
「チッ!!」
ヤッパ、こいつ相手だと、話を、はぐらかすのは難しいな。
会話のどこかで隙を作って、違う話に方向転換しようと思ったんだが……敢え無く撃沈。
口では勝てんか……
「んで?」
「んなもん言うまでもねぇ。100%決まり切ってる事だ」
「だから、それはなんだよ?」
「良いか、良く聞け。テメェみたいな『女誑しの野良犬』に、向井さんは勿体ネェからだよ」
「ほぉ~~~っ、言ってくれるねぇ。……して、その心は?」
「・・・・・・」
俺を指差しながら、そんな事を聞いて来るが、これは流石に言わねぇ。
一応は、ちゃんと答えたんだから、そこまで言う義理はネェ。
だから、なにがあっても、これ以上は言わねぇ。
俺は、硬く口を閉ざしてダンマリを決め込んだ。
「ノリ悪ッ」
「そう、易々すと毎度毎度、簡単に乗せられるかっつぅ~の」
「おっ!!スゲェ、スゲェ。倉津の馬鹿が、奇跡的に進化したぞ……誰のお陰なんだ、それ?」
また変な事を聞いてきやがったな。
でも、なんか意図する所を感じる。
いや、寧ろ、コイツからは悪意しか感じねぇ。
「チッ!!なんだよ、それ?オマエのお陰とでも言わせたいのか?」
「違ぇよ」
「じゃあなにか?向井さんのお陰だとでも言わせたいのか?」
「いや、俺は、全然そんな事は思ってねぇよ。自己進化なんてもんは、自分が気付かなきゃ出来ネェもんだしな。だから俺は、そうやって自分で思考する事を憶えた倉津自身のお陰だ、って言いたかっただけなんだがな」
「テメェは……」
「まぁそれにしても、あれだな。からかった俺は別としても、2人目で向井さんの名前が出てくるなんざ……オマエ、どんだけ向井さんが好きなんだよ」
「ほっとけ!!」
ニヤッっと、笑う崇秀の顔を見た瞬間。
俺は必至に口を押さえたが、既に言葉は発せられている。
遅かった。
結局、乗せられてるどころか、モロに「好きだ」って言っちまってるのも同然だよ。
最悪だなコイツだけは。
しかし、コイツの誘導尋問はスゲェな。
いつも、こんな風に女の子の心理を丸裸にするのか?
「まぁオマエが、そこまで向井さんが好きだって断言するなら仕方がない。俺も身を引いてやる……ありがたく思え」
いつの間にか『断言』した事になってるぞ、オイ。
まぁ、間違っちゃいねぇんだがな。
そう言う事は、あんま人前でハッキリ言うもんじゃねぇぞ、この糞ボケ。
それになによりも『身を引いてやる』もなにも、オマエ、向井さんに逢ったのって、あの日の数十分じゃねぇか。
それなのに、その言い様……ホント、厚かましい野郎だな。
「オマエ……何様だよ?」
「俺様」
「うっ!!つぅか、おまえさぁ。もぉ、さっさと死んで、一回、あの世とやらに旅立てよ。……俺が全力でサポートしてやるからよぉ」
「いらね」
「長い付き合いじゃねぇか、遠慮すんなよ」
「ったく。色ボケ野郎にも困ったもんだな。そこまでして、向井さんを守りたいかもんかネェ」
「うっさいわ!!余計な事ばっか言ってんじゃねぇぞ」
「んじゃあオマエは、俺に余計な事ばっか言わしてんじゃねぇぞ」
鸚鵡返しかよ。
「なんや、なんや、えらい盛り上がっとるやないかぁ。なに話しとんねん?俺も仲間に入れてくれや」
そんなアホな会話を崇秀と続けていたら、そこにまた余計な奴が来たよ。
山中のアホは、俺と同じクラスなんだが。
このアホ、昼飯を食い終わったのか、どこぞのオッサンみたいに爪楊枝を口に咥えてやって来やがった。
100%面倒な事になる予感しかしねぇから、オマエまでコッチ来んな!!
最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございます<(_ _)>
はい、やっぱり倉津君はやられましたね。
誰もが予想しえた、期待通りの展開だったと自負しています←すんなよ(笑)
そして追い打ちをかけるが如く、山中君までやってきました。
倉津君は、この危機(?)を乗り越えられるのか!!
勿論、乗り越えられません(断言(笑))
どうして乗り越えられないかは、次回の講釈と言う事で。
お時間がありましたら、また遊びに来てくださいね。
待ってま~~~す(*'ω'*)ノ
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