最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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020 不良さん 賭けの結果に……(笑)

公開日時: 2021年2月25日(木) 23:14
更新日時: 2022年11月3日(木) 14:25
文字数:3,367

●前回のおさらい●

ベースを必死に練習してる不良さんを、からかう崇秀。


その行為が、余りにも腹が立ったので。

崇秀にベースの『運指運動』が出来たら、自分の本音を教えると言う賭けをしてしまう。


その結果は如何に!!

俺の向井さんに対する本音を聞きたきゃ、この『運指運動』をやってみろよ。


一見、簡単そうに見えるがな。

これがやってみると、意外と難しい物だから。

これを条件にして、鬱陶しいオマエを撃退してやる。



「なんだよ、なんだよ。出来ねぇからって、早くも言い訳か?崇秀ともあろう者が、やけにミットモネェ事をほざきだしやがったな」

「チッ……じゃあ、そこまで言うなら、そのベースを貸せよ」

「ほらよ」


フハハハハハ……アホが、簡単に俺の口車に乗りおって!!

変なプライドにでも火が着いたか?

だがそいつは、きっと、オマエを地獄に落とす地獄の業火だ。


たっぷり、その火に焼かれ黒焦げになって死ね。


んっ?

それにしても馬鹿秀の奴、俺が渡したベースを、やけに慎重に弄くってやがんな。


なんかあんのか?



「……おい、倉津」

「なんだよ?早くも、ギブアップ宣言か?」

「いやっ、そうじゃなくてな。このベース、チューニングが狂ってて半音ズレてるぞ」

「はぁ?」


なんだよ、その言い分は?

何でオマエに、そんな事が解るんだよ?


……って、オイオイ。

まさかとは思うがコイツってベースが弾けたりするのか?

そんな話、今の今まで一回も聞いた事もないぞ。



「『はぁ?』じゃねぇよ。これから楽器弾こうって奴が、半音のズレも気に成らねぇなんて、どう言う神経してんだよ?ッたく、しっかりしろつぅのな」

「ちょ……」

「あぁそれと、序に言っとくがな。こういう事は、早目に覚えた方が良いぞ。ズレた音で覚えちまうと、後で修正すんのに、結構、苦労するからな」

「ちょ……オマエ、まさかベース弾けんのか?」

「んあ?ベースなんて一回も弾いた事ねぇよ」

「そっ、そうか」


ビックリさせやがって。

その物言いだったら、一瞬、ベースが弾けるのかと勘違いしたじゃねぇか。


脅かすなよな。



「んじゃあ、軽くやるぞ」

「あぁ、やってみろよ」


♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……

♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……

♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……

♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪……


うぇ?うぇうぇうぇ?

なっ、なんだよそりゃあ?

なんでオマエは、そんな簡単に運指運動が出来んだよ。


奴の指は、まるでネックを這う様な動かせやがるし。

しかも4弦キッチリ、音も外す事無く全部弾き終えやがった。


ありえねぇ。



「んじゃあ、序に、こう言うのは、どうだ?」


♪♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪・♪♪・♪♪♪♪・♪……


こっ、これは……これは、カラオケBOXで、向井さんが弾いてた奴じゃねぇか!!

なんでコイツが、これを弾けるんだ?


もぉ意味が解らん。



「っとまぁ、いい加減な感じで悪いんだが、大体、こんなもんじゃね?」

「ちょ!!オマッ!!……汚ぇぞ!!なにが一回もベースを弾いた事が無いだよ!!こんなもん明らかに、ベース弾けねぇなんて嘘じゃねぇかよ!!」

「はぁ?俺は嘘なんか言ってねぇぞ。現にベースを弾くのは、今日が初めてだ」

「んな訳あるかぁ!!ベースを初めて弾いた奴が、急に、あんなPLAY出来る訳無いだろ」

「オマエなぁ。話は良く聞けな」

「うっ、うん?なっ、なにがだよ?」


嫌な予感。



「確かに俺は、ベースは弾いた事ねぇって言ったけどな。ギターを弾いた事がねぇなんて、一言も言った憶えはねぇぞ」

「んが?」

「なにが『んが?』だよ。良いか倉津。弦楽器を弾く時の基本動作ってのは、ギターも、ベースも、そんなに変わんねぇの。後は、どこをどう押さえて、どう弾くかさえ解ってれば、大体の弦楽器は弾ける。要は、応用力さえ有れば大差は無いって事だな」


ベースは弾いた事無いが、ギターは弾けるって……なんだよそれ?


信じられねぇ。

どこまで汚ねぇ奴なんだ。

コイツの性格の悪さに人間不信になりそうだぜ。


けどよぉ。

あんま言い訳とかしたくねぇんだけどよぉ……どう考えても、こんなもん詐欺じゃねぇか?



「さてさて、俺は約束を守ったぞ……あれ?そう言えば、お前も、俺になんか約束してなかったっけ?」


コイツだけは……なんて厚かましくも、ふてぶてしい野郎だ。

詐欺紛いの事をしておいて、約束云々をオマエが言うか?


呆れた精神の太さだな。


けどまぁ、罷り也にも、弾いた事には変わりはないよな。


チッ、だったらしょうがねぇ。

話すよ、話しゃ良いんだろ、話しゃ!!



「あぁわかった、わかった。約束は約束だ。キッチリ話してやるよ」

「ヒヒヒ……そうこなくっちゃな」

「なにが『そう来なくっちゃ』だよ。このペテン師野郎!!」

「ペテン師なぁ?あぁ、ならペテン師で結構だ。俺は、自分の知りたい情報を引き出す為だったら手段は選ばねぇ……その見解、なにも間違っちゃいねぇぞ」

「るっせぇ」

「なに怒ってんだかな?……まぁそんな事より、早く答えろよ」

「なにがだよ?」

「惚けんなよ。俺は、向井さんを口説いちゃいけネェんだろ?なんでダメなんだよ?」

「チッ!!」


ヤッパ、こいつ相手だと、話を、はぐらかすのは難しいな。

会話のどこかで隙を作って、違う話に方向転換しようと思ったんだが……敢え無く撃沈。


口では勝てんか……



「んで?」

「んなもん言うまでもねぇ。100%決まり切ってる事だ」

「だから、それはなんだよ?」

「良いか、良く聞け。テメェみたいな『女誑しの野良犬』に、向井さんは勿体ネェからだよ」

「ほぉ~~~っ、言ってくれるねぇ。……して、その心は?」

「・・・・・・」


俺を指差しながら、そんな事を聞いて来るが、これは流石に言わねぇ。

一応は、ちゃんと答えたんだから、そこまで言う義理はネェ。

だから、なにがあっても、これ以上は言わねぇ。


俺は、硬く口を閉ざしてダンマリを決め込んだ。



「ノリ悪ッ」

「そう、易々すと毎度毎度、簡単に乗せられるかっつぅ~の」

「おっ!!スゲェ、スゲェ。倉津の馬鹿が、奇跡的に進化したぞ……誰のお陰なんだ、それ?」


また変な事を聞いてきやがったな。


でも、なんか意図する所を感じる。

いや、寧ろ、コイツからは悪意しか感じねぇ。



「チッ!!なんだよ、それ?オマエのお陰とでも言わせたいのか?」

「違ぇよ」

「じゃあなにか?向井さんのお陰だとでも言わせたいのか?」

「いや、俺は、全然そんな事は思ってねぇよ。自己進化なんてもんは、自分が気付かなきゃ出来ネェもんだしな。だから俺は、そうやって自分で思考する事を憶えた倉津自身のお陰だ、って言いたかっただけなんだがな」

「テメェは……」

「まぁそれにしても、あれだな。からかった俺は別としても、2人目で向井さんの名前が出てくるなんざ……オマエ、どんだけ向井さんが好きなんだよ」

「ほっとけ!!」


ニヤッっと、笑う崇秀の顔を見た瞬間。

俺は必至に口を押さえたが、既に言葉は発せられている。


遅かった。

結局、乗せられてるどころか、モロに「好きだ」って言っちまってるのも同然だよ。


最悪だなコイツだけは。


しかし、コイツの誘導尋問はスゲェな。

いつも、こんな風に女の子の心理を丸裸にするのか?



「まぁオマエが、そこまで向井さんが好きだって断言するなら仕方がない。俺も身を引いてやる……ありがたく思え」


いつの間にか『断言』した事になってるぞ、オイ。


まぁ、間違っちゃいねぇんだがな。

そう言う事は、あんま人前でハッキリ言うもんじゃねぇぞ、この糞ボケ。


それになによりも『身を引いてやる』もなにも、オマエ、向井さんに逢ったのって、あの日の数十分じゃねぇか。

それなのに、その言い様……ホント、厚かましい野郎だな。



「オマエ……何様だよ?」

「俺様」

「うっ!!つぅか、おまえさぁ。もぉ、さっさと死んで、一回、あの世とやらに旅立てよ。……俺が全力でサポートしてやるからよぉ」

「いらね」

「長い付き合いじゃねぇか、遠慮すんなよ」

「ったく。色ボケ野郎にも困ったもんだな。そこまでして、向井さんを守りたいかもんかネェ」

「うっさいわ!!余計な事ばっか言ってんじゃねぇぞ」

「んじゃあオマエは、俺に余計な事ばっか言わしてんじゃねぇぞ」


鸚鵡返しかよ。



「なんや、なんや、えらい盛り上がっとるやないかぁ。なに話しとんねん?俺も仲間に入れてくれや」


そんなアホな会話を崇秀と続けていたら、そこにまた余計な奴が来たよ。


山中のアホは、俺と同じクラスなんだが。

このアホ、昼飯を食い終わったのか、どこぞのオッサンみたいに爪楊枝を口に咥えてやって来やがった。


100%面倒な事になる予感しかしねぇから、オマエまでコッチ来んな!!


最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございます<(_ _)>


はい、やっぱり倉津君はやられましたね。

誰もが予想しえた、期待通りの展開だったと自負しています←すんなよ(笑)


そして追い打ちをかけるが如く、山中君までやってきました。


倉津君は、この危機(?)を乗り越えられるのか!!

勿論、乗り越えられません(断言(笑))


どうして乗り越えられないかは、次回の講釈と言う事で。


お時間がありましたら、また遊びに来てくださいね。

待ってま~~~す(*'ω'*)ノ

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