最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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133 不良さん、死闘を繰り広げる

公開日時: 2021年6月19日(土) 00:21
更新日時: 2022年11月24日(木) 16:10
文字数:4,005

●前回までのあらすじ●


 嶋田さん家に、バンドの現状報告に来た倉津君。


そして、その行動を起こす為に、嶋田さん家のチャイムを押した。

『ピンポーン』



「は~い、どなたぁ?」

「ぶっ!!」


そう来ますか!!


嶋田さんが、勝手に1人暮らしをしてると思い込み『彼女が家に来てる』って発想は、全く考えてなかった。


どうにも自分を基準に物事を考えてしまう俺には『まずにして、自分の家に彼女が来る』なんて発想がない。

第一にして、ヤクザの本家に喜んで遊びに来る女なんざ居ねぇ。

だからきっと、そんな物好きは、金に目が眩んだ馬鹿な女ぐらいのもんだろうしな。


そして、この瞬間、俺は、一般人との感覚のズレを思い知らされた瞬間でもあった。



……しかしまぁ、なんとも、これは予想外の展開だったな。

いつもながら、後先考えずに即行動する自分にはホトホト呆れ果てる。


そんな風に心の準備が出来ていなかった俺は、此処で無駄に動揺する。

……かと言って『此処で黙ってる方が、余計に不審だよな』っと言う事にも、漸く気付く事に成った。



「どっ……どなた?」


その証拠に彼女の声は、さっきとは打って変わって、早くも不信感が滲み出て、なにやらビクビクした感じすら見受けられる。


とっ、兎に角だな。

このまま黙ってたら、イキナリ、警察に通報されそうな勢いだ。


何でも良いから、早くなんか言わねぇと……



「あっ、あの、おっ、俺」


……ハイ、しょぼい。


相も変らず俺は、頭の中で、ある程度の思考が纏まったとしても、それを咄嗟に言葉に変換する機能を持たない。

まったく持って、随時、対処出来無い体質なんだろう。


現にドモルは、声も上ずるは……もぉ情けねぇったらありゃしねぇな、マジで。



「アアノ=オオレさん?」


はっ、はぁ?


突然、何を言い出すかと思えば、何言ってんだ、この人?

ドア越しの女性が変な事を言ってきたぞ。


『アアノ=オオレ』なんて名前、日本中の何所を探しても滅多に居ないぞ。

いや、寧ろ、そんな名前の奴いるのかすら危うい様な名前だな。


天然か?


こりゃあこの人、天然だな。



「いや、あの、そうじゃなくてッスね。俺、嶋田さんのバンド仲間なんッスよ」

「浩ちゃんのお友達?」

「いや、友達って言うか。どちらかと言うと、後輩みたいなもんッスね」

「そうなんだ……あぁでもね、後輩さん。浩ちゃんなら、今、仕事に行って居ないよ」

「がっ」


クソ重たいハードケースを意気揚々と持って、スタジオから一気に上大岡。

んで、住民や、警察からの無駄な妨害に遭いながらも、嶋田さんの家まで来たのは良いが……


『嶋田さんは留守』


オイオイ、こりゃあまた惨めな結末になったもんだな。

これじゃあ、救いも何も有ったもんじゃねぇ。


ただの限度を越えたアホの極みだ。


あぁこんな事になるなら、初めっから連絡してから来りゃ良かったよ。


メモには、電話番号も書いてあったっていうのに……



究極の葉緑体である俺は、ただ、市営住宅の通路で項垂れるしかなかった。



「あぁでもね、でもね。今9時前でしょ。浩ちゃんも、もぉそろそろ仕事から帰って来ると思うよ。後輩さん、良かったら部屋の中で待つ?……外、暑いでしょ?」

「いやいやいやいや、お言葉は有り難いんッスけど。まだ素性のハッキリしない人間を、そんな簡単に部屋に入れちゃあマズイでしょ」


それ以前に、女の人と2人で居る自信がねぇ。

嶋田さんが帰ってくるまでの間、絶対に会話を繋ぐ自信がねぇ。


兎に角、部屋の中に入るのしても難問が多過ぎる。



「あぁそうかぁ~~~。そう言えばそうだね」


それにしても、あれだな。

嶋田さんの彼女らしき人は、なんとも警戒心の薄い人だな。


俺が『後輩』って、たった1言、言っただけで全面的に信用している様子。

その上で簡単に扉を開け様ともしてる。


多分、こう言う人って、強引な訪問販売してる奴にとっては、良い鴨なっちまうんだろうな。

ズカズカ家の中に上がられて、言うがままに商品を買わされちゃうんだろうなぁ。



「あぁ、でもね、でもね、後輩さん。外で待つのって暑いでしょ?」

「あぁ大丈夫ッスよ。俺(借金の取立てとかで)結構、こう言うのには慣れてますから」

「そぉ?……う~ん、けどなぁ。外で浩ちゃんの帰りを待って貰うのもなんだしなぁ……まぁ良いか、どうぞ」


『ガチャ』

1人で自己完結した後、彼女は、イキナリ、無警戒に扉を開けた。


そして、一瞬だけ俺を見て放心。


その後は、口を開く事もなく『パタン』っと言う音と共に、扉を閉めた。



ちょ……なんッスかこれ?


オイオイ、まさかとは思うけど……



「あっ、あの、ギターなら間に合ってますから。ウチには、一杯有りますから」

「はぁ?」

「あっ、あの、あの、ホント、大丈夫ですから。楽器の訪問販売とかして貰わなくても、良いギターが一杯有りますから……ホントに、ホントに大丈夫です」

「・・・・・・」


いやいやいやいや、なにを言い出すかと思えば。

俺の予想の範疇を飛び抜けた言葉を発してきたぞ。


……って言うか『ギターの訪問販売』ってなに?


そんなもん、早々有りませんから……


いや、それ以前にですな。

楽器を訪問販売する楽器屋なんて聞いた事もない。


って事は、これって、ただ単に見た目だけで判断されてるよな。

だとしたら、彼女とは扉越しに少し話しただけだが、イキナリ、酷い扱いだなオイ。


それにしても、この人……この対応からして、相当訪問販売で騙されてるな。

んで、嶋田さんには、相当、その事で怒られてるみたいだ。



「あっ、あの、おっ、俺、ギターの訪問販売員じゃないですよ」

「ほっ、ほんと?嘘つかない?」


あぁ……やっぱり思ってた。



「ほんとッス、ほんとッス。大体ッスね。俺が担いでる、このハードケースにしたって、ギターじゃなくて、ベースっすから。だから、ギターの訪問販売なんてしませんよ」

「あの……ウチ……ベースもいらないんだけど」

「あぁそうじゃなくて。これは俺のベースなんですよ。ほら、さっき、バンド仲間って言ったじゃないですか」

「うん?……あぁ、そっか、そっか。うんうん。確かに、そう言ってたね。そうだね、そうだね。……早とちりしちゃったね。ごめんなさい」


きっと扉越しで『コクコク』頷いて、納得してるんだろうな。


なんか、事この人に関してのみ、彼女の行動が手に取る様に解る様な気がするぞ。



「まぁまぁ、良いッス、良いッス。間違いは、誰にでもあるッスからね」


普通では有り得ない様な、酷い間違いッスけどね……



「ごめんね」

「良いッスよ。……んじゃまっ、そう言う事なんで。完全に身分を証明出来無い俺は、嶋田さんが帰って来るまで、此処で待たせて貰うッス」

「えぇ~~っと、えっとね。それでも良いんだけど。ヤッパリ、外暑いよね」

「これ位なんて事ないッスよ。心配する程の暑さじゃないッス」


まぁ実際は、かなり暑いんだが……


本音を言えば、先程の件を含めても、部屋の中に入れて欲しい様な気がしないでもないな……



「でも……他所の人が見たら、椿が、後輩さんに意地悪してる様に見えない?」


??


あれ?あれあれ?

今、この人、自分の事を自分の名前で言ったな。


それって女の子では、よくある事なのか?


妙な違和感を感じるなぁ。


それよりも、さっきから気になってたんだが、この人の話の仕方って、やけに子供っぽいよな。


この人……一体、幾つなんだ?

ひょっとして、俺より年下だったりするんじゃねぇか?



「全然、大丈夫ッスよ。意地悪してる様になんか、全然見えないッスよ」

「そぉ……かな?」

「あの……序に、つかぬ事を窺いますが。椿さんって、お幾つですか?」

「うん?椿は20歳だよ……どうして?」


二十歳ですと!!

すげぇ子供っぽい人だな、オイ。

しかも、その喋り方で、二十歳って事は……俺どころか、奈緒さんより年上じゃねぇか!!

しかもしかも、女性って、一般的に、年齢聞かれるのを嫌がる傾向が有るって言うのに、なんの抵抗も無く素直に答えてるし。


ホント、なんか変わった人だな。



「いや~、あの~ッスね。実は、さっき扉が開いた一瞬しか見てなかったんで、良く解らなかったんんッスけど、椿さん、かなりお若く見えたもので」


そうは言ったが、本当は、顔の確認なんて出来て無い。

だが、多分、この調子だと、容姿も子供っぽい筈だ。


容姿は、言動と似るって言うからな。


そうやって勝手な決め付けをしながらも、椿さんとの話を続ける。



「あぁそうかぁ、椿って、子供っぽいもんね」

「なんか、すんません」

「全然、全然。よく言われるし」


なんかなぁ。

きっと扉の向こうじゃ、スゲェ笑顔で応対てるんだろうな、この人。


扉からポワポワと、花でも出てきそうな感じだぞ。



「あのね、後輩さん、後輩さんって良い人みたいだから。もぉこの際、中に入って貰っても大丈夫な気がするの。……後輩さんは、どう思う?」

「いや、俺に聞かれても困るんッスけど。勝手に、男を部屋に上げたら、後で嶋田さんに怒られませんか?」

「うん。多分、浩ちゃんね。後輩さんだったら怒らないと思うんだぁ」

「あぁ……そうッスか?じゃあ、すんませんけど。ヤッパ、外は暑いんで、中で待たせて貰って良いッスかね?」

「うん、良いよ」


そう言って、再び扉を開ける準備をゴソゴソと始めた。


この様子からして。

恐らくは、さっき、俺の容姿に、かなり吃驚して、鍵を閉めた上にチェーンロックまでしていたのだろうな。


やけに時間が掛かる。


そんで、直ぐに扉が開くのかと思ったら……何故か、チェーンロックされたままの状態で、扉が少し開き。


隙間から眼だけが、こちらをジッと見ている。


なんだ?


今度はなんだ?



「あっ、あのね、後輩さん、本当にギター売らないよね」

「売らないッス!!」

「うんうん。だよね、だよね。信用して無い訳じゃないんだよ。確認ね確認」

「・・・・・・」


絶対、信用してねぇな。


明らかに信用されてねぇ~~~。


多分、俺の口調と、容姿が一致しないんだろうな。


まぁこれは仕方が無いこった。

……っと言いながらも、少し俯いた気分になる。


そんな俺は、溜息交じりに、顔も俯いていた。



んで、この会話の途中『ガチャ』っと扉が再び開く。


そこには思わぬものが飛び込んできた。


最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>


死闘の始まり……それは嶋田さんの彼女である『上条椿さん』との死闘だった(*'ω'*)ノ


なんか変な子ですね(笑)


そして次回。

死闘の末、漸く開いた扉で、倉津君は、一体何を見て驚いたのか?


それは次回の講釈。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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