●前回のおさらい●
崇秀の心配をしつつも、自身の行く道が見えてきた眞子。
だが、その決意とは別に、奈緒さんが去ってしまい1人に成った病室では……
……ほんの少しだけ騒がしくなってしまった、奈緒ネェとのお互いを気遣った時間が終わり。
病室でポツンっと1人になった瞬間、思い出した様に私の気が滅入り始めていた。
奈緒ネェが病室を去った事で、病室には私以外誰も居なくなり、なんとも言い難い孤独感に苛まれている証拠なのだろう。
今は……こうして1人で居る事が、私はなによりも怖い。
特に今回の様な崇秀の話があっただけに。
『このまま……もぉ誰にも逢えなかったら、どうしよう?』
そんな非常に悲しくも、孤独に苛まれた気持ちだけが、心を支配して行く。
そうやって時間が経つ毎に、ドンドンドンドン気持ちが落ちていく。
……こんな気持ちを紛らわす為にも。
せめて、私の真正面にでも、鏡が有れば良かったんだけどなぁ。
この馬鹿みたいなパイナップル頭でも見てれば、少しは気も楽になれたはずなのに。
そう思いながらも、ベットの中で少ししか動かない体をモソモソとして動き。
奈緒ネェの言い付け通り、寝る準備を始めた。
そんな折……
「あぁ、向井さん。夜の回診に参りました」
あっ……こんな時間に誰が来られたのかと思ったら、看護師さんだ。
しかもこの看護婦さんは、私に問答無用で鎮静剤を打ち込んだ、あの看護師さんだね。
あぁ、でも……別に、今となっては、なにも恨んでる訳じゃないんだよ。
だってさぁ、あれは、職務を全うする為の正当な行為。
あの時おかしく成っていたのは、寧ろ、私の方だったからね。
だから、お詫びの意味も込めて、せめて此処は笑顔で対応させて貰おう。
それになによりも……『今は、誰でも良いから、誰かと接していたい』
「ご苦労様です。……あぁ、それと、先程は取り乱して申し訳ありませんでした。色々とご迷惑をお掛けしました」
「あぁ、いえいえ。職務とは言え、少し強引なやり方になってしまいましたからね。コチラの方こそ、ごめんなさいね」
「そんな、そんな。お陰様で、冷静になれましたから。今は感謝してますよ」
あぁ……なんかまた、自然に媚売ってるね。
完全に、これ、染み付いちゃってるなぁ。
まぁ……けど、もぉ良いか。
何処まで行っても、これが私、向井眞子なんだし。
「……あの」
「あぁ、はい、なんですか?」
「あの、突然で失礼な話なんですが。向井さんって、確か有名なミュージシャンですよね」
「有名?あぁ、いやいや、私は全然有名なんかじゃないと思いますよ。ただ、人より多くライブを廻らされてるだけなんで」
俗に言う『ドサ周り』です。
しかも、毎回毎回休暇が殆ど無い、鬼の様なスケジュールを組まれだけの、非常に可哀想な扱いしかされない人です。
そんな使い捨ての様な待遇しかして貰えない人なので、別に有名人でもなんでも有りませんよ。
「そんな事ないですよ。ネットや、TVで取り上げられる程の有名人ですよ」
また異な事を……
私の知らない所で、また、なにか良からぬ事が起こってる様子だね……これは。
それが変な噂じゃなきゃ良いけど……
……まぁ、そんな不安に駆られている間に、看護師さんは扉付近から私に近付いて来てくれて、職務を全うする為に、体温計を胸ポケットから出して体温を計り。
それと同時に、脈を計り始めてる。
……っで、今現在、あまり体が動いてくれない私はガンジーさん状態なので、なすがままなので、話だけを続けさせて貰う。
「えぇっと……ネットは、なんとなく解りますけど。TVって、なんの話ですか?」
「あぁ、そうかぁ。向井さんは昏睡されていたから、ご存じないんですね」
「えぇっと、あの、なんですかね?その不安しか過ぎらない感じの言葉は……」
なんだろう?
この迸るだけのヤナ予感は……
「あぁ、いえ。そう言った悪い噂ではないんですよ。脳出血になってるのにも関わらずライブを続けた向井さんが、全米で放映されてるミュージック系のTVで大きく取り上げられて、今、全米中で話題になってるんですよ」
「あの……それ……本当ですか?……あの、先に言って置きますけど。私、そんな大層な人間じゃないですよ。頭が悪いから、なにも考えずにライブしてただけなんで……」
「あぁ、いえいえ。そう言う問題ではなくてですね。脳出血をされているのにライブをするなんて、医学的な検知で見た場合、通常じゃ有り得ない様な奇跡的な話なんですよ。ですから、今の向井さんは、音楽業界的な物だけに留まらず、医学的な検知でも注目されているんですよ」
えぇ……また此処でも化物扱いですか。
いやまぁ、此処まで来たら、確かに私はなにかしろの化物なんでしょうけど。
それにしても、なんか悲しい扱いだなぁ……一応、これでも女の子なんですけど。
「あぁ、なんでですかね。そう言われても、ちっとも嬉しくないんですけど」
「えっ?でも、形はどうあれ注目されてるんですから、ミュージシャンとしては良いんじゃないんですか?」
「あぁいや、なんと言いますか。私、別に有名になりたくて、音楽やってる訳じゃないんですよ」
「へっ?有名に成りたい訳じゃないんですか?」
「ですです。寧ろ、皆さんと一緒に楽しく演奏が出来て、お客さんと一体化出来れば、それでOKなんで。……だからですね。あんまり、それを邪魔する様な、余計な事はして欲しくないんですよね」
シガラミ嫌い……
監視されるの嫌い……
好き勝手自由に演奏してたい……
それになにより、まだまだしたい事が沢山あるから、音楽だけに束縛されるのとか嫌だし。
だから、そんな風に話題だけが先行するのって一番嫌なんだよね。
「むっ、向井さんって、少し変わった人なんですね」
「なっ、なんでですか?普通ですよ」
「そうですかぁ?でも、普通だったら、どんな形であれ有名になったら喜びませんか?私なら、そう思いますが」
「あぁ……その辺は、あんまり気にしてないですかね。有名じゃなくても良いですし」
「どうしてですか?」
あぁ……看護師さん。
体温と、脈を計り終えたら、ベットの横にある椅子に座り込んじゃったよ。
この様子からして、なんか私の話に興味でも持ってくれたのかなぁ?
でも今は、少しだけでも1人で居たくないから、この看護婦さんの行為は凄く有り難いね。
なのでまぁ、折角なので、此処等辺の話をキッチリさせて貰おうかなぁ。
さっきのしがらみなんかの話もそうなんだけど。
私が音楽をやってても、有名に成りたい訳じゃない本当の理由って奴を……(笑)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
どれだけ決意をしても、メンタルはそう都合良く働いてくれないもの。
それが人間と言うものですから、その類に漏れず、眞子も1人に成って少し気落ちしてるみたいですね。
そして、そんな孤独を癒せるのは、矢張り人との対話。
これがあると、逆に人間は見栄を張っている事が出来ますしね。
さてさて、そんな中。
眞子が『別に有名に成りたい訳じゃない』っと言う話を、看護婦さんにしている訳なのですが。
何故眞子は、特別有名に成りたい訳ではないのか?
次回は、その辺の理由を書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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