最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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870 孤独に苛まれる1人の時間が訪れた時には……

公開日時: 2023年6月25日(日) 00:21
文字数:2,558

●前回のおさらい●


 崇秀の心配をしつつも、自身の行く道が見えてきた眞子。

だが、その決意とは別に、奈緒さんが去ってしまい1人に成った病室では……

 ……ほんの少しだけ騒がしくなってしまった、奈緒ネェとのお互いを気遣った時間が終わり。

病室でポツンっと1人になった瞬間、思い出した様に私の気が滅入り始めていた。


奈緒ネェが病室を去った事で、病室には私以外誰も居なくなり、なんとも言い難い孤独感に苛まれている証拠なのだろう。


今は……こうして1人で居る事が、私はなによりも怖い。


特に今回の様な崇秀の話があっただけに。

『このまま……もぉ誰にも逢えなかったら、どうしよう?』

そんな非常に悲しくも、孤独に苛まれた気持ちだけが、心を支配して行く。


そうやって時間が経つ毎に、ドンドンドンドン気持ちが落ちていく。


……こんな気持ちを紛らわす為にも。

せめて、私の真正面にでも、鏡が有れば良かったんだけどなぁ。


この馬鹿みたいなパイナップル頭でも見てれば、少しは気も楽になれたはずなのに。


そう思いながらも、ベットの中で少ししか動かない体をモソモソとして動き。

奈緒ネェの言い付け通り、寝る準備を始めた。



そんな折……



「あぁ、向井さん。夜の回診に参りました」


あっ……こんな時間に誰が来られたのかと思ったら、看護師さんだ。

しかもこの看護婦さんは、私に問答無用で鎮静剤を打ち込んだ、あの看護師さんだね。


あぁ、でも……別に、今となっては、なにも恨んでる訳じゃないんだよ。


だってさぁ、あれは、職務を全うする為の正当な行為。

あの時おかしく成っていたのは、寧ろ、私の方だったからね。


だから、お詫びの意味も込めて、せめて此処は笑顔で対応させて貰おう。



それになによりも……『今は、誰でも良いから、誰かと接していたい』



「ご苦労様です。……あぁ、それと、先程は取り乱して申し訳ありませんでした。色々とご迷惑をお掛けしました」

「あぁ、いえいえ。職務とは言え、少し強引なやり方になってしまいましたからね。コチラの方こそ、ごめんなさいね」

「そんな、そんな。お陰様で、冷静になれましたから。今は感謝してますよ」


あぁ……なんかまた、自然に媚売ってるね。


完全に、これ、染み付いちゃってるなぁ。


まぁ……けど、もぉ良いか。

何処まで行っても、これが私、向井眞子なんだし。



「……あの」

「あぁ、はい、なんですか?」

「あの、突然で失礼な話なんですが。向井さんって、確か有名なミュージシャンですよね」

「有名?あぁ、いやいや、私は全然有名なんかじゃないと思いますよ。ただ、人より多くライブを廻らされてるだけなんで」


俗に言う『ドサ周り』です。

しかも、毎回毎回休暇が殆ど無い、鬼の様なスケジュールを組まれだけの、非常に可哀想な扱いしかされない人です。


そんな使い捨ての様な待遇しかして貰えない人なので、別に有名人でもなんでも有りませんよ。



「そんな事ないですよ。ネットや、TVで取り上げられる程の有名人ですよ」


また異な事を……


私の知らない所で、また、なにか良からぬ事が起こってる様子だね……これは。


それが変な噂じゃなきゃ良いけど……


……まぁ、そんな不安に駆られている間に、看護師さんは扉付近から私に近付いて来てくれて、職務を全うする為に、体温計を胸ポケットから出して体温を計り。

それと同時に、脈を計り始めてる。


……っで、今現在、あまり体が動いてくれない私はガンジーさん状態なので、なすがままなので、話だけを続けさせて貰う。



「えぇっと……ネットは、なんとなく解りますけど。TVって、なんの話ですか?」

「あぁ、そうかぁ。向井さんは昏睡されていたから、ご存じないんですね」

「えぇっと、あの、なんですかね?その不安しか過ぎらない感じの言葉は……」


なんだろう?

この迸るだけのヤナ予感は……



「あぁ、いえ。そう言った悪い噂ではないんですよ。脳出血になってるのにも関わらずライブを続けた向井さんが、全米で放映されてるミュージック系のTVで大きく取り上げられて、今、全米中で話題になってるんですよ」

「あの……それ……本当ですか?……あの、先に言って置きますけど。私、そんな大層な人間じゃないですよ。頭が悪いから、なにも考えずにライブしてただけなんで……」

「あぁ、いえいえ。そう言う問題ではなくてですね。脳出血をされているのにライブをするなんて、医学的な検知で見た場合、通常じゃ有り得ない様な奇跡的な話なんですよ。ですから、今の向井さんは、音楽業界的な物だけに留まらず、医学的な検知でも注目されているんですよ」


えぇ……また此処でも化物扱いですか。


いやまぁ、此処まで来たら、確かに私はなにかしろの化物なんでしょうけど。


それにしても、なんか悲しい扱いだなぁ……一応、これでも女の子なんですけど。



「あぁ、なんでですかね。そう言われても、ちっとも嬉しくないんですけど」

「えっ?でも、形はどうあれ注目されてるんですから、ミュージシャンとしては良いんじゃないんですか?」

「あぁいや、なんと言いますか。私、別に有名になりたくて、音楽やってる訳じゃないんですよ」

「へっ?有名に成りたい訳じゃないんですか?」

「ですです。寧ろ、皆さんと一緒に楽しく演奏が出来て、お客さんと一体化出来れば、それでOKなんで。……だからですね。あんまり、それを邪魔する様な、余計な事はして欲しくないんですよね」


シガラミ嫌い……


監視されるの嫌い……


好き勝手自由に演奏してたい……


それになにより、まだまだしたい事が沢山あるから、音楽だけに束縛されるのとか嫌だし。


だから、そんな風に話題だけが先行するのって一番嫌なんだよね。



「むっ、向井さんって、少し変わった人なんですね」

「なっ、なんでですか?普通ですよ」

「そうですかぁ?でも、普通だったら、どんな形であれ有名になったら喜びませんか?私なら、そう思いますが」

「あぁ……その辺は、あんまり気にしてないですかね。有名じゃなくても良いですし」

「どうしてですか?」


あぁ……看護師さん。

体温と、脈を計り終えたら、ベットの横にある椅子に座り込んじゃったよ。


この様子からして、なんか私の話に興味でも持ってくれたのかなぁ?



でも今は、少しだけでも1人で居たくないから、この看護婦さんの行為は凄く有り難いね。


なのでまぁ、折角なので、此処等辺の話をキッチリさせて貰おうかなぁ。


さっきのしがらみなんかの話もそうなんだけど。

私が音楽をやってても、有名に成りたい訳じゃない本当の理由って奴を……(笑)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


どれだけ決意をしても、メンタルはそう都合良く働いてくれないもの。

それが人間と言うものですから、その類に漏れず、眞子も1人に成って少し気落ちしてるみたいですね。


そして、そんな孤独を癒せるのは、矢張り人との対話。


これがあると、逆に人間は見栄を張っている事が出来ますしね。


さてさて、そんな中。

眞子が『別に有名に成りたい訳じゃない』っと言う話を、看護婦さんにしている訳なのですが。

何故眞子は、特別有名に成りたい訳ではないのか?


次回は、その辺の理由を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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