最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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119 不良さん 楽器屋で変な子供に遭遇する

公開日時: 2021年6月5日(土) 00:21
更新日時: 2022年11月21日(月) 13:13
文字数:3,259

●前回のおさらい●


 楽器店に到着したので、早速、素直ちゃんのシンセを見てみよう(*'ω'*)ノ

「まぁ、んな事より素直」

「あっ、はい」

「シンセ見ようぜ。気に入ったのが有ったら、試し弾きする位の時間は有るだろうからな。……知ってるか?楽器を買うのに、これは重要な事なんだぞ」

「そっ、そうなんですか?」

「あぁ楽器には、どうしても、当たり外れが有るからな。試し弾きするのはデフォだ」

「そうなんだぁ」


素直を感心している様だが、これは、奈緒さんの受け売りをしているに過ぎない。


けど、折角だから『例の奴』も言ってみるか……



「なぁ素直。序に忠告するがな……」

「あっ、はい」

「当たったと言っても、シンセは2台貰えないからな」

「くすっ……わかってますよ」


あぁヤッパうけるな。

万民にウケるネタを考えるなんて、奈緒さん、流石だな。


そんな事を考えている内に、素直は、シンセを恐々と触りながらセレクトし始めた。


此処で少し時間が経つ。


***


 そうやって俺は、素直から、やや離れた位置で、その姿を眺めていたんだが、此処で奇妙な事が起こり始めていた。


なにやら、どこかの小学生みたいなガキが素直に近付いて行き、説教を始めた。


なんだ、あの餓鬼?



「おねぇさん、そんなオドオド触ってたんじゃ、シンセの良し悪しなんて、なにも解らないよ」

「えっ、あっ、あっ、あの、ごめんなさい」


んで、素直の奴、訳も解らずガキに謝ってるぞ。


なにやってんだよアイツ?



「別に謝らなくて良いんだけどさぁ。どうせ試すんなら、キッチリ鍵盤を押さえて、弾いた方が良いじゃないかなって思うんだけど」

「あっ、はい……ごめんなさい。でっ、でもね、ぼっ、僕、上手く弾けないから」

「ぼっ、僕?おねぇさん、まさか男?」

「あぁ女」

「ふ~ん、変なの。そんなに可愛い顔してるのに『僕』って言うんだね……変なの」

「あぁうん……クセなの」

「そっかぁ。くせなのかぁ。じゃあ、仕方ないよね。まぁ、おねぇさん可愛いから、それも似合うか」

「あっ、ありがとう」

「ぷっ」


ホント、何やってんだアイツ?

ガキ相手に、なにをそんなに照れてんだよ?


それにしても、あのガキ……なんか小さい時の崇秀みたいだな。

見るからに、将来、女誑しになりそうだな。


まっ、面白いから、もぅ少し観察するか。



「ところで、おねぇさん、名前は?俺、氷村龍斗ね」

「あっ、あの、僕は、有野素直」

「素直おねぇちゃんかぁ……おねぇさんに、ピッタリの良い名前だね」

「あっ、ありがとう」

「じゃあ、折角、知り合ったんだから。素直おねぇさんには、僕がお薦めのシンセを、特別教えてあげるよ」

「ほっ、ほんと……あっ、ありがとう」

「コッチ来て」

「あっ、うん」

「ぷっ……ぷぷっ……」


……ダメだ。

店内に響き渡るぐらいの勢いで笑っちまいそうだ。


ガキに、完全に支配されてるぞアイツ。

見てらんねぇな。


けど、取り敢えずは面白いので、もう少し観察……もぅ少しだけな。



「あぁそうだ。素直おねぇちゃん、予算は幾らぐらいのが良いの?」

「あっ、あの……僕、シンセサイザーの値段とかあんまり知らないの。それじゃあダメかな?」

「そっかぁ。じゃあ、あんまり高いのも買えないね」

「えぇっと、龍斗君のお薦めの物は、そんなに高いものなの?」

「まぁね。俺も一応、今日、それを買いに来たんだけどね」


ガキの買い物か……なら、まぁ精々見積もっても2~3万程度だろうな。


しかしまぁ、ホント、楽器買うのを嬉しそうにしてやがるな。

きっと、どこかの馬鹿と同じで、シンセの値段も知らずに、親に2万ほど渡されて喜び勇んで店に来たんだろうな。


ホント、この餓鬼、崇秀にそっくりだな。


まぁけど、コイツは、アイツほど無茶苦茶な事はしないだろうがな。



「龍斗君は、どれを買うつもりなの?」

「うん?俺が買うつもりなのは、これだよ」


そう言ってガキは、なんだか高そうなシンセサイザーを指差す。


オイオイ、オマエ、それって、金額見てねぇんじゃねぇの?

見るからに高そうなもんを指差してやがるぞ。



「えっ?」


そして素直も、驚きを隠せない様子だ。



「なんだ?どうかしたのかよ、素直?」

「うぉ!!ヤクザだ」

「・・・・・・」


いや、先に言っとくが……怒らねぇよ。

別に、こんな事位で、イチイチ怒らねぇよ。


子供は素直なもんだ。

俺がそう見えても、おかしくはないし。

まぁそれに俺は、限りなく、それに近い存在だからな。


だから、怒らねぇよ。



「ゴホッ、ゴホッ……うっ、うん。っで、何があったんだ?」

「いえ、この子が買うって言った商品を見て驚いていたんです」

「なんだよ?なにをそんなにビックリしたんだ?」

「金額が……」

「はぁ?」


まぁ一見すれば、確かに高そうなものだが、見た目より安いなんて事もよくある。


つぅか、大体、高々ガキの買うものだろしな。


俺は、そう思いながら、軽く金額を確認する。


金額は約300,000円って書いてある。



「なんだよ、3万じゃねぇか?まぁガキの買い物にしては、良い金額の買い物だが、別に、そんなビビる程の金額じゃねぇだろ」

「まっ、真琴君……一桁違う」

「はぁ?」

「おにぃさん、3万でシンセ買うなんて、それ、どんなボケ?そんな安物、俺、買わないよ」

「はぁ?」


再度値札を確認すると30万……いや、正確には298,000円って書いてあるんだが、こんなもん殆ど30万じゃねぇか。


なに考えてんだ、このガキ?


オマエは2万しか持ってないんだぞ!!

(↑勝手な決め付け)



「まぁ、そうは言っても、このシンセは型落ちだし。交渉次第では、もぅちょっとは、まけて貰えると思うんだけどね」

「オマエ、なに言ってんの?ガキが、そんな金有る訳ないだろ」

「ハァ……おにぃさんって、見た目と違って、意外と常識人なんだね」

「いや、普通に考えても無理だから」

「そんな事ないよ。ガキだって頑張れば、意外とお金を稼げるもんなんだよ」


へっ?



「はっ?はっ、はぁ?」

「おぉ……これはまた、なんとも順当な反応だね。でも、これは、何もおにぃさんがおかしい訳じゃない。俺が、少し特殊な環境で育ってるだけだからね」

「あの、ごめんね。変な事を聞くけど、龍斗君家は、お金持ちなのかな?」

「まぁ、金持ちと言えば、金持ちだけど。別に、親にたかったお金で楽器を買う訳じゃないよ。あくまで買うのは、自分で稼いだ金」

「いやいやいや、ガキが金を稼ぐなんて、早々出来無いだろ」

「まぁね。それも順当な考えと言えるね。……でも、実際は、結構、可能なもんなんだよ」


ヤクザの息子でもないのに、どうやってぇ?



「あぁもぉ、わかった、わかった。100歩譲って、オマエが金を稼いでるとしよう。じゃあオマエは、んな高いもの買えるほど、なにやってるって言うんだよ?」

「服飾コーディネーター、若しくはトータル・コーディネーター」

「はぁ?」


いやいやいや、そんな仕事、ガキに出来る仕事じゃないだろ。


それにコーディネーターって言やぁ、人気のある職種だから、下済み期間も長い筈。

オマエみたいなガキが、そんな簡単になれる職業でもないだろに。



「ハァ……まぁ信じないか……まぁけど、普通は、そんなもんだろうね」

「いや、だってよ。おかしいだろ」

「じゃあ、論より証拠。このシンセサイザーを使って、音をコーディネートしてみせようか?」

「はぁ?」


音をコーディネート?


意味が解らん?


ガキは、それだけ言うと、シンセの前に座り、華麗な指捌きで音を奏で始めた。


♪~~~♪~~♪~~~


しかもその音……

素直の心境を奏でた様な音で、俺に対する恋愛感情みたいなものが伝わってくる。


なんだコイツ?

これは俗に言う『音で空間をコーディネート』したって事か?



「おねぇちゃんの、おにぃちゃんに対する気持ちを曲にしてみたんだけど……こんな感じで、どぉ?」

「すっ、凄い……」

「良かった。満足して貰えて嬉しいよ」


いや、なんだよ、その笑顔は……ガキのする表情じゃねぇぞ。


コイツ、マジで小さい崇秀だ。

けど、これで、コイツが自分で金を稼いだって言うのも頷けなくは無い。


それにしても、1つ気になったんだが、なんで、このシンセに拘ってるんだろうか?


多分、ここまで何でも出来るガキだったら、それは、それなりに理由がある様な気がするんだが……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


矢張り、平穏無事に買い物が終わる筈もなく、また変な子供に絡まれてますね。


この変な事に巻き込まれる吸引力は、まさに『ダイソンの掃除機並み』ですな(笑)


さてさて、そんな中。

変な子供である龍斗君が選んだシンセの正体とは、どれ程のものなのでしょう?


次回、その性能が明らかに成ります!!


なので、また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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