●前回のおさらい●
楽器店に到着したので、早速、素直ちゃんのシンセを見てみよう(*'ω'*)ノ
「まぁ、んな事より素直」
「あっ、はい」
「シンセ見ようぜ。気に入ったのが有ったら、試し弾きする位の時間は有るだろうからな。……知ってるか?楽器を買うのに、これは重要な事なんだぞ」
「そっ、そうなんですか?」
「あぁ楽器には、どうしても、当たり外れが有るからな。試し弾きするのはデフォだ」
「そうなんだぁ」
素直を感心している様だが、これは、奈緒さんの受け売りをしているに過ぎない。
けど、折角だから『例の奴』も言ってみるか……
「なぁ素直。序に忠告するがな……」
「あっ、はい」
「当たったと言っても、シンセは2台貰えないからな」
「くすっ……わかってますよ」
あぁヤッパうけるな。
万民にウケるネタを考えるなんて、奈緒さん、流石だな。
そんな事を考えている内に、素直は、シンセを恐々と触りながらセレクトし始めた。
此処で少し時間が経つ。
***
そうやって俺は、素直から、やや離れた位置で、その姿を眺めていたんだが、此処で奇妙な事が起こり始めていた。
なにやら、どこかの小学生みたいなガキが素直に近付いて行き、説教を始めた。
なんだ、あの餓鬼?
「おねぇさん、そんなオドオド触ってたんじゃ、シンセの良し悪しなんて、なにも解らないよ」
「えっ、あっ、あっ、あの、ごめんなさい」
んで、素直の奴、訳も解らずガキに謝ってるぞ。
なにやってんだよアイツ?
「別に謝らなくて良いんだけどさぁ。どうせ試すんなら、キッチリ鍵盤を押さえて、弾いた方が良いじゃないかなって思うんだけど」
「あっ、はい……ごめんなさい。でっ、でもね、ぼっ、僕、上手く弾けないから」
「ぼっ、僕?おねぇさん、まさか男?」
「あぁ女」
「ふ~ん、変なの。そんなに可愛い顔してるのに『僕』って言うんだね……変なの」
「あぁうん……クセなの」
「そっかぁ。くせなのかぁ。じゃあ、仕方ないよね。まぁ、おねぇさん可愛いから、それも似合うか」
「あっ、ありがとう」
「ぷっ」
ホント、何やってんだアイツ?
ガキ相手に、なにをそんなに照れてんだよ?
それにしても、あのガキ……なんか小さい時の崇秀みたいだな。
見るからに、将来、女誑しになりそうだな。
まっ、面白いから、もぅ少し観察するか。
「ところで、おねぇさん、名前は?俺、氷村龍斗ね」
「あっ、あの、僕は、有野素直」
「素直おねぇちゃんかぁ……おねぇさんに、ピッタリの良い名前だね」
「あっ、ありがとう」
「じゃあ、折角、知り合ったんだから。素直おねぇさんには、僕がお薦めのシンセを、特別教えてあげるよ」
「ほっ、ほんと……あっ、ありがとう」
「コッチ来て」
「あっ、うん」
「ぷっ……ぷぷっ……」
……ダメだ。
店内に響き渡るぐらいの勢いで笑っちまいそうだ。
ガキに、完全に支配されてるぞアイツ。
見てらんねぇな。
けど、取り敢えずは面白いので、もう少し観察……もぅ少しだけな。
「あぁそうだ。素直おねぇちゃん、予算は幾らぐらいのが良いの?」
「あっ、あの……僕、シンセサイザーの値段とかあんまり知らないの。それじゃあダメかな?」
「そっかぁ。じゃあ、あんまり高いのも買えないね」
「えぇっと、龍斗君のお薦めの物は、そんなに高いものなの?」
「まぁね。俺も一応、今日、それを買いに来たんだけどね」
ガキの買い物か……なら、まぁ精々見積もっても2~3万程度だろうな。
しかしまぁ、ホント、楽器買うのを嬉しそうにしてやがるな。
きっと、どこかの馬鹿と同じで、シンセの値段も知らずに、親に2万ほど渡されて喜び勇んで店に来たんだろうな。
ホント、この餓鬼、崇秀にそっくりだな。
まぁけど、コイツは、アイツほど無茶苦茶な事はしないだろうがな。
「龍斗君は、どれを買うつもりなの?」
「うん?俺が買うつもりなのは、これだよ」
そう言ってガキは、なんだか高そうなシンセサイザーを指差す。
オイオイ、オマエ、それって、金額見てねぇんじゃねぇの?
見るからに高そうなもんを指差してやがるぞ。
「えっ?」
そして素直も、驚きを隠せない様子だ。
「なんだ?どうかしたのかよ、素直?」
「うぉ!!ヤクザだ」
「・・・・・・」
いや、先に言っとくが……怒らねぇよ。
別に、こんな事位で、イチイチ怒らねぇよ。
子供は素直なもんだ。
俺がそう見えても、おかしくはないし。
まぁそれに俺は、限りなく、それに近い存在だからな。
だから、怒らねぇよ。
「ゴホッ、ゴホッ……うっ、うん。っで、何があったんだ?」
「いえ、この子が買うって言った商品を見て驚いていたんです」
「なんだよ?なにをそんなにビックリしたんだ?」
「金額が……」
「はぁ?」
まぁ一見すれば、確かに高そうなものだが、見た目より安いなんて事もよくある。
つぅか、大体、高々ガキの買うものだろしな。
俺は、そう思いながら、軽く金額を確認する。
金額は約300,000円って書いてある。
「なんだよ、3万じゃねぇか?まぁガキの買い物にしては、良い金額の買い物だが、別に、そんなビビる程の金額じゃねぇだろ」
「まっ、真琴君……一桁違う」
「はぁ?」
「おにぃさん、3万でシンセ買うなんて、それ、どんなボケ?そんな安物、俺、買わないよ」
「はぁ?」
再度値札を確認すると30万……いや、正確には298,000円って書いてあるんだが、こんなもん殆ど30万じゃねぇか。
なに考えてんだ、このガキ?
オマエは2万しか持ってないんだぞ!!
(↑勝手な決め付け)
「まぁ、そうは言っても、このシンセは型落ちだし。交渉次第では、もぅちょっとは、まけて貰えると思うんだけどね」
「オマエ、なに言ってんの?ガキが、そんな金有る訳ないだろ」
「ハァ……おにぃさんって、見た目と違って、意外と常識人なんだね」
「いや、普通に考えても無理だから」
「そんな事ないよ。ガキだって頑張れば、意外とお金を稼げるもんなんだよ」
へっ?
「はっ?はっ、はぁ?」
「おぉ……これはまた、なんとも順当な反応だね。でも、これは、何もおにぃさんがおかしい訳じゃない。俺が、少し特殊な環境で育ってるだけだからね」
「あの、ごめんね。変な事を聞くけど、龍斗君家は、お金持ちなのかな?」
「まぁ、金持ちと言えば、金持ちだけど。別に、親にたかったお金で楽器を買う訳じゃないよ。あくまで買うのは、自分で稼いだ金」
「いやいやいや、ガキが金を稼ぐなんて、早々出来無いだろ」
「まぁね。それも順当な考えと言えるね。……でも、実際は、結構、可能なもんなんだよ」
ヤクザの息子でもないのに、どうやってぇ?
「あぁもぉ、わかった、わかった。100歩譲って、オマエが金を稼いでるとしよう。じゃあオマエは、んな高いもの買えるほど、なにやってるって言うんだよ?」
「服飾コーディネーター、若しくはトータル・コーディネーター」
「はぁ?」
いやいやいや、そんな仕事、ガキに出来る仕事じゃないだろ。
それにコーディネーターって言やぁ、人気のある職種だから、下済み期間も長い筈。
オマエみたいなガキが、そんな簡単になれる職業でもないだろに。
「ハァ……まぁ信じないか……まぁけど、普通は、そんなもんだろうね」
「いや、だってよ。おかしいだろ」
「じゃあ、論より証拠。このシンセサイザーを使って、音をコーディネートしてみせようか?」
「はぁ?」
音をコーディネート?
意味が解らん?
ガキは、それだけ言うと、シンセの前に座り、華麗な指捌きで音を奏で始めた。
♪~~~♪~~♪~~~
しかもその音……
素直の心境を奏でた様な音で、俺に対する恋愛感情みたいなものが伝わってくる。
なんだコイツ?
これは俗に言う『音で空間をコーディネート』したって事か?
「おねぇちゃんの、おにぃちゃんに対する気持ちを曲にしてみたんだけど……こんな感じで、どぉ?」
「すっ、凄い……」
「良かった。満足して貰えて嬉しいよ」
いや、なんだよ、その笑顔は……ガキのする表情じゃねぇぞ。
コイツ、マジで小さい崇秀だ。
けど、これで、コイツが自分で金を稼いだって言うのも頷けなくは無い。
それにしても、1つ気になったんだが、なんで、このシンセに拘ってるんだろうか?
多分、ここまで何でも出来るガキだったら、それは、それなりに理由がある様な気がするんだが……
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
矢張り、平穏無事に買い物が終わる筈もなく、また変な子供に絡まれてますね。
この変な事に巻き込まれる吸引力は、まさに『ダイソンの掃除機並み』ですな(笑)
さてさて、そんな中。
変な子供である龍斗君が選んだシンセの正体とは、どれ程のものなのでしょう?
次回、その性能が明らかに成ります!!
なので、また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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