●前回のおさらい●
素直ちゃんが寝ぼけて、倉津君にキスをしてしまった事で発生したキス問題。
だが、それが彼女にとってのファーストキスだったので、この問題は更に過熱の一途を辿る。
そして、その場で明かされた素直ちゃんの『夢』
それは『大好きな人に、大好きと想われ乍ら、ファーストキスをされたい』っと言う夢だった。
だが、こんな歪な形で、その願いが叶ったとは言え。
余りにも、そんな素直ちゃんを不憫に思ってしまった倉津君は、悪い事だとは理解しつつも……彼女の願いを叶えてしまう。
ある意味、最悪の展開です。
「すっ、すまん……」
「くすっ……少しビックリしました。でも、一瞬でも、こんなに僕を愛してくれて、ありがとうございますね。僕、ヤッパリ、真琴君の事が大好きみたいです。……だって、こんなに嬉しい事は、生まれて初めてなんで」
「素直……」
端的に、今の自分の感想を笑顔で答える素直。
俺は、そんなコイツを見ながら、今、自分のしでかした事を省みていた。
勿論、やってしまった事を、今更トヤカク言うつもりは無い。
これは、俺が全て自分自身の意思で、素直にやった事だから、素直に非は無い。
何故なら……辞め様と思えば、いつでも辞めれた筈だし、最初から、やらないと言う選択肢もあった筈だからな。
それを敢えて、してしまったのだから、これは俺だけの咎でしかないからな。
けどな。
1つだけ……敢えて、1つだけ言い訳をするとしたらだな。
『こんなに想ってくれている子の大事な思い出を無碍に扱えるか?』
それにだ。
『こんな小さな願いを叶えてやれないなんて、男として有り得るか?』
俺は、そんな素直を見て『叶えてやれない』なんてのは、到底無理な話だった。
勿論、これは、自分を正当化してるのも確かだし、浮気の言い訳をしてる情け無い奴に見えるのも重々承知した上での話だ。
それにもし……上辺だけを見て、この状況を耐えきれるって言う奴が居るなら『そいつは、こう言った場面に出くわした事が無い奴だ』と思う。
こればっかりは、この心境に成らなければ、今の大事な彼女を裏切ってまで、自ら浮気をする理由なんて、絶対に解らないと思うしな。
けど……最後に言って置くが『俺は、浮気した事は認める』
それに、この出来事は、なに1つ包み隠さず『奈緒さんに必ず報告する』
此処は、浮気した人間のケジメだ。
「でっ、でも、ごっ、ごめんなさいですね。僕が我儘を言っちゃったから、こんな事になっちゃって……本当は、こんな事を頼んじゃいけなかったのかも知れない……」
「ハァ、もう良いって。俺は、素直とキスをしたかったから、やっただけの事だ。それに、この事は、素直には悪いが、包み隠さず奈緒さんに報告する。……だから、嫌な想いをしなきゃいけないのは、お互い様だ」
「そんな事だけで、僕は許されるんでしょうか?」
「許されねぇだろうな。奈緒さんとの関係も拗れるだろうし、顔も合わせ難くなる。それだけの事を俺達はしちまったんだからな。これは、丸々受け入れるべき事だ」
「そう……ですよね」
非が有っても、非が無くても、これだけは、起こってしまった事実だから避けては通れない道だ。
いや……避けて通っちゃいけない道だ。
結局、この事が有って、奈緒さんが言っていた『一人だけが傷つく事は無い』って話は立証される事になった。
『浮気=関わった人間、全員が傷付く羽目になってしまう』っと言う、彼女の方程式が、完全に成立してしまったんだからな。
本当に、奈緒さんの言い分は、いつも正しいな。
けど、此処からが本当の勝負だ。
事実はどうあれ、素直の責任を出来るだけ軽減してやらないとな。
「なんだよ、その面。オマエも、その覚悟が有って、俺に願いを言ったんだろ。だったら、そんな情けない面すんなよ。俺も、奈緒さんに対する罪悪感で潰されそうなんだからよ」
「うっ、うん。けど、向井さんは、なにも悪くないのに『不快な思いをさせちゃう』って思うと、正直、喜べないものですね。……うぅん、喜んじゃいけない。今更だけど、僕……なんで、あんな事を頼んじゃったんだろ。……ごっ、ごめんなさい。ごめんなさい」
「ったく、今更泣くなよな……しょうがねぇ奴だな、オマエは」
「えっ?」
『チュッ』
俺は再び、素直の唇を軽く奪った。
「えっ?真琴君?」
「まぁ、罪の意識は消えねぇだろうが。少しは、これで、気持ちを軽減する事は出来るだろ」
本当は、この『キス』だけで、全てを解って貰えると有り難いんだがな。
これで解って貰えない様じゃ、また余計な説明までしなきゃいけないからな。
「これ……どっ、どういう意味ですか?」
「あのなぁ、今回の1件は、俺が一方的に素直にやった事だ。だからオマエが気に病む事はねぇの」
「へっ?……ダッ、ダメですよ、そんなの。僕がお願いした事なのに、それじゃあ真琴君が、全部悪いみたいな言い方になっちゃいますよ」
「それで良いんだよ」
「全然、良くないです!!」
はぁ~~、ヤッパ、わかんねぇか……
「良いんだよ。だってよぉ、俺は、ズッとオマエの事も好きだったんだからよ」
「えっ?」
「ハッキリ言っちまえば、奈緒さんと付き合ってるのに、オマエをネタにして、何回、千刷りをこいた事か、わかったもんじゃねぇ。それが偶々、今回に限ってはキスに発展しちまっただけに過ぎない。……俺の心の浮気は、ずぅ~と以前から有ったって話だ」
「そんなの……嘘ですよ。真琴君が、僕を庇う為に言ってる嘘です」
嘘じゃねぇんだけどな。
真上さんの件も然りなんだけど。
自分が可愛いと思った奈緒さん以外の女子達でも、今までに一杯抜いた。
これも、全て現実だ。
けどまぁ、ちょっと話に箍が外れ過ぎてるのも、強ち間違ってなさそうだな。
この辺の匙加減をキッチリ見極めて、話を進めないとな。
「なんも嘘じゃねぇよ」
「嘘です……違います。真琴君は、そんな人じゃないです」
「あのなぁ素直。そりゃあな。『奈緒さんを一途に想ってる』ってのは、事実無根の本当の話だけどな。俺に好きな奴が他に沢山居ても、おかしくはないと思うぞ。俺は、聖人君主の類じゃねぇし、どこにでも居る様な馬鹿中学生だ。早い話、オマエの期待する様な立派な人間じゃないって事だよ」
「だったら、どうして、今まで我慢出来たんですか?辻褄が合わないですよ」
「うん?結論を言ってしまえば『奈緒さんが好きだから』だ。けど今回は、素直の魅力に、俺の抑制力が負けた。結局、これは全部俺のせいだ。俺の意思が弱かったって事だな」
「そんなの詭弁です」
ふむ、矢張り、男女間での感性から生じる誤差の修正は難しいもんだな。
奈緒さんだったら、こう言う理屈を、結構、直ぐに理解してくれんだけどな。
まぁつってもだな。
奈緒さんは比較的、男性思考に近い考え方を持ってる部分が多いから、瞬時に理解出来るだけなのかも知れないけどな。
それにだ、奈緒さんに比べれば、素直は良くも悪くも女性思考が強いから、こう言う理屈は理解し辛くなる可能性が高いんだろうな。
この辺については、各々の個人差があるから、一概になんとも言えないけどな。
なら……
「そうか。じゃあ、そこまで言い切るんだったら、オマエ、今から此処で、俺に抱かれてくれるか?」
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
今回に至っては倉津君、本当に、よく頑張ってますね。
素直ちゃんの罪悪感を軽減させる為に、全力で自分の非がある理由を作って行ってますからね。
普通なら、此処までは出来ない。
でも、これは、倉津君也に、素直ちゃんを大事な仲間だと認識してる証拠なんでしょうね。
『素直ちゃんと付き合って彼女にしてあげる事は出来なくても』素直ちゃんと、奈緒さんが揉めない様にだけはしている訳ですからね。
奈緒さんを裏切る様な悪い真似をしたのだけは間違いないですが。
何をどうすれば、あまり誰も傷付かないかを考える思考だけは、立派だと思いますです。
っで、まぁ、そんな中。
大問題に成る様な『そこまで言うなら、オマエを、此処で抱いて良いか?』っと言う発言をした倉津君。
これは一体、どう言う意味があるのか?
それは次回の講釈。
そこが少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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