●前回のおさらい●
文化祭が開催される直前だと言うのに、何故か、第二音楽室に居る倉津君。
一体、此処で、何をする気なのか?
さてさて。
本来なら、もう直ぐ、欲望渦巻く文化祭が開幕するから、2-Bの生徒である俺は、自分の教室に移動しなきゃならない所なんだがな。
俺は、此処から動く気も、教室に移動する気も更々ない。
何故なら……此処自体が、俺の出し物を演出する場所だからだ。
それにある人物の到着を、此処で待たなきゃいけないからでもある。
その人物ってのはだな。
勿論、この文化祭で演奏をする、バンド仲間のカジ&グチ。
……ではなく。
俺が待っているのは、昨晩『素直とキスをした後に、ある事を思い付いて電話をした奴』が相手だ。
実は、ソイツってな。
去年に自費で『ある物の個展』を開催して、ちょっとした借金を作っちまった奴なんだよ。
まぁつってもだな。
ソイツのした借金自体は、そんなにデカイもんじゃないんだが『学生の身分』じゃ一気に返済が出来ず、少しづつしか返していけていない状況。
金利は取られて無い様なので、着実に借金自体は減ってはいるんだが、それでも完済までは、まだ、少し時間が掛かりそうな雰囲気なんだよ。
そこで俺が、ソイツの『腕』を見込んで『ある事』を頼んだんだ。
その『ある事』ってのはな……
『1枚600円で、個人的にメイドさんと一緒に写真が撮れる』
って言う、如何にも下衆の俺が考えそうな女衒的発想の企画を成功させる為に『カメラマン』として、ソイツに頼んだ訳だ。
まぁ、そうは言ってもだな。
実際は、そんなに借金返済の手助けになる程、大きな金額が動く訳じゃないんだがな。
まずにしてだな。
①どれだけニーズがあるかも解らないし。
②それに客が来たとしても、現像料を差っ引いた金額から、モデルの女の子と金は折半。
要するに、コレガ仮に上手くいった所で、所詮は『1日、何所かでバイトするより少しマシ』程度の金しか動かないからな。
まぁまぁそれでもだ。
好きな事をしながら、少しでも金儲けが出来るなら、それはそれでOKかなって思える。
……っと、そんな訳でだ。
俺は、そいつの到着を心待ちにしている訳だ。
けど、今現在の俺だって、別に、ただボケッと待ってる訳じゃないんだぞ。
一応、その他にも電話した奴の1人(ヤッキ)から届けられた『撮影用の小道具』(店の椅子等)を使って、必死こいて撮影準備しながら待ってるんだからな。
これでも、ちゃんと働いてるんだぞ。
ちゃんとよぉ。
なんて思っていたんだが……
「あれ?クラッさん?教室にも来ずに、こんな所でなにやってんだ?……ってか、なんだ、これ?」
ゲッ!!待ち人来ずとも、期待外れな、余計な生き物が来やがった。
今回のこの金を取った撮影は、学校には無認可だし。
クラスの男子にも内緒しているから、此処の関係者以外には、あまり誰にも知られたくなかったんだがな。
けど、この秘密の場所を知られちまった以上は仕方がねぇ。
一応『熱意溢れる説得』はするがな。
ダメだった場合は、見られた以上『カジを殺す』しかないか……これ、隠密行動の鉄則。
……ってな訳でだ。
もし不幸にも、そうなった場合、カジには、運が無い自分を呪って貰うしかないって事だな。
「気にするな。タダの模様替えだ」
「うわっ、なんだ、それ?酷い言い訳だな」
くっ!!こんなにも熱意溢れる説得をしてもダメなのか!!
……なら、残念だが死ねカジ!!
……ってのは、流石に、事の見極めが出来てなく、短絡過ぎるか。
しょうがねぇ。
カジが空気を読む事を只管望んで、もう一回だけ、命を永らえるチャンスをやるか。
俺は慈悲深い男だからな。
「もぅ一回言うぞ。よく聞け……気分転換だ」
「そっ、そうか。……何故、このタイミングなのかは良くわからねぇが。敢えて、そこは聞かないで置こう」
「ほぉ、賢明だな」
チッ!!直感で何かを感じたのか、命拾いしやがったか……
しかし、まぁあれだな。
カジって、俺とバンドを組んでるだけあって、非常に物分りが良いよな。
中々こうは、上手くいかないもんだぞ。
……ただな。
こうなったとしても1つだけ、大きな問題が有るんだよな。
その『俺の眼の前に差し出してる、オマエの手』は、なんのつもりかな?
「ん」
「残念だがカジ。俺は、手相を見る趣味はないんだが……」
「ん!!ん!!」
「あのなぁ、もぅ一回言うぞ。今の俺には、手相を見た所で、凄惨なオマエの未来しか見えないんだがな」
「ん……チッ!!なぁんだよ、ケチ臭いなぁ、クラッさん。どうせ悪どい事をして儲けるつもりなんだろ。ちょっとぐらい分け前くれたって良いじゃんかよぉ」
「う~~んとな。君はアホか?」
「なんでだよ?こんな怪しげなもんをワザワザ作ってるんだから、それ、相応の金が動くんじゃないのか?」
「あ~~ほっ。学校の文化祭で、そんな大金が動く訳ねぇだろ。それに今回、俺には一切合切、金は入って来ねぇよ」
「なんでだよ?クラッさんが動いて、金が0とか有り得なくね?」
「あのなぁ。今回のこれは、基本的に奉仕なんだよ。だから俺は0円キャンペーンだつぅの」
奈緒さんや、真上さんに学んだ『人助け』や『奉仕の心』を、シンプルに実地する。
これぞ!!賢者・和製クルーグマンのやり方だ。
「おい、クラッさん。……『奉仕』って言葉の意味を解って使ってるか?クラッさんが『0円キャンペーン』って言葉以上に使っちゃいけない言葉なんだぞ」
「オマエ……マジで一回、凄惨な未来って奴を見てみるか?」
オイオイ、酷い誤解だなカジ君。
俺は、奈緒さんや、真上さんに、その言葉の意味を、いつも体現して貰ってるから、良い意味でも、悪い意味でも、身に沁みて、よ~~~~くわかってんだよ。
だから、おぃちゃんを舐めちゃいけないよ。
「はいはい、わかったよ。脅されたんじゃ堪ったもんじゃない。口止め料の件は諦めるよ。その代わり、此処で、なにするかぐらい教えてくれよな」
「う~~~~んとな。聞くな」
「あぁそう。折角、俺が、そこまで妥協案を出したって言うのに、そんな事を言っちまうんだ。あぁそう……俺、奈緒ちゃんと、クラッさんの関係。予想だけで、みんなに言っちゃおうかなぁ」
「おいおい、カジ君。それは『お互いの為に無し』って、話じゃなかったか?それに、オマエにだって『弱味』があんだぞ。そこを忘れるなよ」
此処に来て保険解除か?
こんなツマラナイ事を知る為だけに、オマエは自爆する気か?
このWガンダムに乗ってるヒイロ=ユイめ!!
『自爆する』ってか?
「解ってねぇなぁ、クラッさん。実に解ってねぇ。クラッさんの言う、その『弱味』ってのは、実は、俺には、なんの効力もねぇんだよなぁ」
「はぁ?なんでだよ?困るのは、お互い様だろうに。それに、こんな事の為に、千尋を犠牲にして良いのかよ?」
「『犠牲』だって?……くくっ、いいや、全然違うね」
「なにがだよ?なにが違うって言うんだよ?」
「考えてもみろよ。まずにして『奈緒ちゃん』と『千尋先輩』じゃ。失礼だが、知名度に明らかなまでに開きが有り過ぎる。それに俺は、話題になっても、そんなに悪くない」
「なんでぇ?」
「そりゃあ、クラッさん、あれだよ。話題になったらなったで、千尋先輩も、俺を意識するかもしれないじゃん。それって、ある意味ラッキーじゃね?」
「ぐっ!!」
そうか……そう言う風に考えるか。
確かに、千尋を狙って一撃必中を打ち込もうとしているカジなら、そう言う風に捉えても、おかしくはないか。
なるほどなぁ。
「その点、クラッさんは、圧倒的に不利だよな」
「なっ、なんでぇ?」
「だって考えてもみろよ。世間の奴等に、奈緒ちゃんに男なんか居る事が知れたら、奈緒ちゃんの人気がガタ落ちすんだぞ。それでも良ければ、どうぞどうぞ」
「がっ!!」
あっ、あれ?
なんか知らんが、いつの間にか、圧倒的に不利な立場になった事を自覚させられちまったな。
けど、この程度の話なら大丈夫だ。
何故なら、カジは男だから『俺にはある必殺技』が使えるからな。
男ってだけで、俺には『暴力』って最終兵器の使用許可が下りてるのも同然だ。
後、参考までに言っておくがな。
『ドラム缶を抱えて相模湾に沈める』って処刑方法も、一応はあるぞ。
良かったらオマエ、コッチもチャレンジしてみるか?
「さぁどうする?此処で、なにが行なわれるか教える気になったか?」
「えぇっとだな。……盛り上がってる所、非常に悪いんだが。永遠に口を封じる方向だな」
「ぶっ!!イキナリ最終手段かよ!!」
イキナリ最終手段だ!!
「長い様で、実に、短い付き合いだったな、カジ。……バンドの練習……本当に愉しかったぞ」
「わかったよ!!わかった、わかった!!急に、そんな風にシンミリ言うな。もぉなにも聞かねぇからよ」
「チッ……殴り損ねたか」
「本気だよ、この人……」
100%ゴリ押しの暴力だが……これにて一件落着!!
(↑頭が悪いから、言い返せなかっただけの俺)
一瞬、そう思っていたのだが……
『ガラッ』
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
秘密を知ってしまったイケメンのカジ君の撲殺に失敗したようですね(笑)
まぁでも、学校に無許可でやっている以上。
お金を動く事が表沙汰に成らない方が良いので『秘密を知る者が少ない方が良い』っと言うのも事実。
こう言う事は、人知れずコッソリしなきゃいけませんからね。
……っとまぁ、そんな訳で。
倉津君の『熱意ある説得』で、無理矢理納得させられたカジ君なのですが。
そこに、扉が開く音が!!
さぁ、この後なにが起こるのかは、次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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