●前回までのあらすじ●
嶋田さんとの話し合いが一段落したのも束の間。
そこで決まった事を、色々と奈緒さんに伝えようと思い、彼女の居場所を虱潰しに探して見たもの、彼女の所在が解らない。
そして最終的に残った選択肢で『奈緒さんが用事があると言った横浜』か『国見さんのスタジオ』に成るが、時間的にも両方に行くのは厳しい。
そんな中、国見さんが、自分の父親と知り合いだったことを思い出し。
国見さんの連絡先を聞こうと思って、実家に電話を掛けてみると……
くそ~~~!!早く出ろ!!
誰でも良いから、早く電話位出ろよ!!
マジで時間がねぇんだよ!!
プルルルルル……ガチャ!!
コール3回目にして誰かが電話に出た。
この切羽詰った状態の時に、3回もコールさせんな!!
静流さんは、ちゃんと1コールで電話に出てくれたって言うのによぉ!!
「はい、倉津ぅ~」
そんな風に心で文句を垂れていると、最初に電話口に出たのは玄さんの様だ。
先程、遠藤に電話した時に話した『ですかい』って言葉を使う、ウチの組の幹部のオッサンだ。
「あぁ玄さん?俺だけど、親父居る?」
「おぉ、坊じゃないですかい。こんな時間に、どうしたんですかい?おやっさんに、なんか用ですかい?」
「まぁ大した用じゃねぇんだけど。どうしても親父に聞きたい事があってな。悪いが、早く代わってくれ」
「そうですかい。けど、坊、残念ですが、おやっさんなら今居やせんぜ」
「チッ!!あの馬鹿親父、急ぎだって時に、何所行きやがったんだ?また新しい女の所か?」
エロ親父は、節操無く、何所や彼処に女を作っている。
ヤクザの組長だけに、マジ最低な男だ。
そんな親父が家に居ないって事は99%女の所の筈だ。
ホント最悪だ。
コレじゃあ、捕まえ様がねぇじゃねぇかよ。
「いやいや、違いますぜ、坊。おやっさんは、遠藤の親分さんと会合が有るとかで、先程、出て行きやした」
遠藤の所だと……
っと成ると、また俺の知らない所で、厄介な話になってる感じだな。
この玄さんの話からは、ドブみてぇな、イヤな臭いがプンプンしてやがる。
しかも、そんな所に出向いたんなら、今日中に家には帰って来ねぇ確率が高いな。
チッ……あの糞親父、マジ使えねぇな。
偶には、世間の役に立てよな。
「あの野郎だきゃあ~~~。またややこしい事に首を突っ込んでやがるな。……まぁ良いや、代わりにお袋いるか?」
「あぁ、奥様なら、ご在宅ですぜ」
「あぁじゃあよぉ。それで良いや。取り敢えず、お袋に替わってくれ」
「へいへい、承りやした。少々お待ちを」
玄さんは、筋肉の付いた重い体をドスドスっと言う音を響かせながら、廊下を渡っていく。
それで、やや離れた位置から、矢鱈とデカイ声で『奥様』『奥様』とお袋を呼ぶ。
……んで、回線をそちらに廻して、お袋が電話口に出る。
あぁ因みになんだがな。
『お袋』とは言っても、今から電話に出るのは、義理の母親でな。
俺の本当のお袋は、病気で遠の昔に死んじまって居ねぇ。
まっ、今はどうでも良い話だな。
「真琴さん?」
「あぁ友美さんか?急で悪いんだけどよぉ、国見ってオッサンの連絡先わかんねぇか?」
賭けだ。
最近、ウチに嫁いで来た所の友美さんが、国見のオッサンの連絡先を知ってる確率は、かなり低いんだが。
けど今は、これしか方法はない。
ダメなら、また2択地獄だ。
「国見さん?国見さんって、音楽をやられてる国見さんですか?」
ビンゴ!!
友美さんのこの言い様だったら、如何にも知ってそうな雰囲気だな。
「あぁ!!ソイツ、ソイツ。ソイツで間違いねぇ」
「あっ、その方の連絡先なら存じてますよ」
「マジか!!」
マジでビンゴだビンゴ!!
低確率での賭けだったが、どうやら友美さんは本当に知っていたらしい。
こりゃ、中々ついてるぞ。
俺にも、まだ運は残ってる様だ。
「あの、それより真琴さん。今、何所にいらっしゃるの?」
「あぁっと、悪いな、友美さん。そう言う面倒な話は後にしてくれ。今、上大岡に居るんだが。今から、まだ移動しなきゃなんねぇんだ。だから悪いが、今は友美さんと、ゆっくり話してる時間がねぇんだよ」
「あぁそうでしたか。ごめんなさい。少し心配だったもので……」
良い所のお嬢さんだった友美さんは、こんな風に、最初は毅然とした態度で俺に接するんだが、元来、彼女は気が弱い。
強引に押し切りさえすれば、後は簡単に折れる。
まぁこの辺は、ウチの馬鹿親父が借金のカタに、無理矢理自分に嫁がされた様な人だから仕方がないんだろうがな。
住む世界が違い過ぎて、まだ、このドグサレタ環境に慣れていないんだろう。
まぁ勿論、こんなもんには慣れない方が、人としては『セーフ』だがな。
「んで、早速で悪いんだけど。早く国見のオッサンの連絡先教えてくれねぇか?ホントもぉ時間がねぇんだ」
「それは一向に構わないんですけど……今コチラに、真琴さんのお友達がおみえですよ。その方は、どうされますか?」
「ツレ?誰だ?こんな時間に、一体、誰が来てるって言うんだ?」
大凡の予想は付く。
さっき馬鹿秀の家に電話した時、奴は家に居なかった。
だったら恐らくは、友美さんの言う友達って奴は『馬鹿秀』の事だろう。
まぁ、それ以前にだな。
ウチがヤクザと知ってて、こんな時間に平気で遊びに来る様な命知らずな馬鹿は、アイツぐらいのもんだ。
ってな訳で、取り敢えず、来客は馬鹿秀で確定だな。
「向井さんって方……」
あぁ、やっぱり、そうだったか。
まぁ普通に考えても、こんな非常識な事をするのはアイツ……しか……居ねぇ……よ、うっ、うん?
・・・・・・
へっ?うん?
いや、友美さん……今、なんてつった?
ひょとして『向井さん』って言わなかったか?
ってか、向井さんって……奈緒さんの事だよな?
だよな。
うん、そうだな。
・・・・・・
はぁ?はぁ~~~?
なっ、なっ、なっ、なんですと!!
なんで奈緒さんが、俺ん家なんかに来てるんですかい?
本当に、なんか有ったんじゃねぇんですかい?
奈緒さんが、俺ん家に来てるなんて、こりゃあ一大事ですぜ!!
探してる人物が『自分の家に居る』と言う、誰にも予測不可能な事態に、思い切り焦った俺は、頭の中が一瞬にして『玄さん化』して……変な言葉が横行する。
序に、お袋との言葉を断ち切って話し始めた。
「へっ?へっ?なっ、なんだって?なんで、早く、それを言わねぇんだよ?」
「ごめんなさいね。真琴さん、なにか急いでらっしゃる様だったので」
あぁ……まぁ、そうだな。
「まっ、まっ、まっ、まぁ良いや。とっ、とっ、とっ、取り敢えず悪いけど、おっ、おっ、おっ、俺が帰るまで、彼女を丁重に扱ってくれな。その人は、俺がスゲェ世話になってる人だから」
「わかりました。……あの、つかぬ事をお伺いしますが。この方は、真琴さんの彼女?」
「そっ、そんな余計な事は聞かなくて良いからよぉ。兎に角、頼んだぜ、お袋」
「あっ、はい」
いつもは『友美さん』って言うんだが、つい『お袋』って言っちまった。
まぁ別に、本人も嬉しそうな返答だったから良いんだが……
……ってな訳で。
用事が済んだので電話を切るんだが……疑問が残る。
なんでまた、急に奈緒さんが、俺なんかの家に来たんだろ?
彼女が発見出来たのも、家に来てくれたのも嬉しいと言えば嬉しいんだが、どうにも奈緒さんの行動だけが、よく解らない状況だな。
まぁなんにしても、彼女に逢わねぇと、なにも話は始まんねぇ。
兎に角、奈緒さんがウチに来た真相は全くわかんねぇけど、思い切り急いで家に帰んなきゃならねぇのだけは事実だな。
……しかしまぁ、俺が嶋田さん家に行ってる間に、一体なにが起こったんだろうか?
なんか不安しか残らねぇ~~~。
最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございますです<(_ _)>
奈緒さん、倉津君の家に居ましたね(笑)
ですが、何故こんな夜遅くに、彼女はヤクザの本家である倉津君の家に来たのでしょうか?
その謎は深まりつつも、そこは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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