最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

142 不良さん、衝撃の事実を知る

公開日時: 2021年6月28日(月) 00:21
更新日時: 2022年11月25日(金) 13:04
文字数:2,864

●前回までのあらすじ●


 嶋田さんとの話し合いが一段落したのも束の間。

そこで決まった事を、色々と奈緒さんに伝えようと思い、彼女の居場所を虱潰しに探して見たもの、彼女の所在が解らない。


そして最終的に残った選択肢で『奈緒さんが用事があると言った横浜』か『国見さんのスタジオ』に成るが、時間的にも両方に行くのは厳しい。


そんな中、国見さんが、自分の父親と知り合いだったことを思い出し。

国見さんの連絡先を聞こうと思って、実家に電話を掛けてみると……

くそ~~~!!早く出ろ!!

誰でも良いから、早く電話位出ろよ!!

マジで時間がねぇんだよ!!


プルルルルル……ガチャ!!


コール3回目にして誰かが電話に出た。


この切羽詰った状態の時に、3回もコールさせんな!!

静流さんは、ちゃんと1コールで電話に出てくれたって言うのによぉ!!



「はい、倉津ぅ~」


そんな風に心で文句を垂れていると、最初に電話口に出たのは玄さんの様だ。


先程、遠藤に電話した時に話した『ですかい』って言葉を使う、ウチの組の幹部のオッサンだ。



「あぁ玄さん?俺だけど、親父居る?」

「おぉ、坊じゃないですかい。こんな時間に、どうしたんですかい?おやっさんに、なんか用ですかい?」

「まぁ大した用じゃねぇんだけど。どうしても親父に聞きたい事があってな。悪いが、早く代わってくれ」

「そうですかい。けど、坊、残念ですが、おやっさんなら今居やせんぜ」

「チッ!!あの馬鹿親父、急ぎだって時に、何所行きやがったんだ?また新しい女の所か?」


エロ親父は、節操無く、何所や彼処に女を作っている。


ヤクザの組長だけに、マジ最低な男だ。

そんな親父が家に居ないって事は99%女の所の筈だ。


ホント最悪だ。


コレじゃあ、捕まえ様がねぇじゃねぇかよ。



「いやいや、違いますぜ、坊。おやっさんは、遠藤の親分さんと会合が有るとかで、先程、出て行きやした」


遠藤の所だと……

っと成ると、また俺の知らない所で、厄介な話になってる感じだな。


この玄さんの話からは、ドブみてぇな、イヤな臭いがプンプンしてやがる。

しかも、そんな所に出向いたんなら、今日中に家には帰って来ねぇ確率が高いな。


チッ……あの糞親父、マジ使えねぇな。


偶には、世間の役に立てよな。



「あの野郎だきゃあ~~~。またややこしい事に首を突っ込んでやがるな。……まぁ良いや、代わりにお袋いるか?」

「あぁ、奥様なら、ご在宅ですぜ」

「あぁじゃあよぉ。それで良いや。取り敢えず、お袋に替わってくれ」

「へいへい、承りやした。少々お待ちを」


玄さんは、筋肉の付いた重い体をドスドスっと言う音を響かせながら、廊下を渡っていく。

それで、やや離れた位置から、矢鱈とデカイ声で『奥様』『奥様』とお袋を呼ぶ。


……んで、回線をそちらに廻して、お袋が電話口に出る。


あぁ因みになんだがな。

『お袋』とは言っても、今から電話に出るのは、義理の母親でな。

俺の本当のお袋は、病気で遠の昔に死んじまって居ねぇ。


まっ、今はどうでも良い話だな。



「真琴さん?」

「あぁ友美さんか?急で悪いんだけどよぉ、国見ってオッサンの連絡先わかんねぇか?」


賭けだ。


最近、ウチに嫁いで来た所の友美さんが、国見のオッサンの連絡先を知ってる確率は、かなり低いんだが。


けど今は、これしか方法はない。


ダメなら、また2択地獄だ。



「国見さん?国見さんって、音楽をやられてる国見さんですか?」


ビンゴ!!


友美さんのこの言い様だったら、如何にも知ってそうな雰囲気だな。



「あぁ!!ソイツ、ソイツ。ソイツで間違いねぇ」

「あっ、その方の連絡先なら存じてますよ」

「マジか!!」


マジでビンゴだビンゴ!!

低確率での賭けだったが、どうやら友美さんは本当に知っていたらしい。


こりゃ、中々ついてるぞ。


俺にも、まだ運は残ってる様だ。



「あの、それより真琴さん。今、何所にいらっしゃるの?」

「あぁっと、悪いな、友美さん。そう言う面倒な話は後にしてくれ。今、上大岡に居るんだが。今から、まだ移動しなきゃなんねぇんだ。だから悪いが、今は友美さんと、ゆっくり話してる時間がねぇんだよ」

「あぁそうでしたか。ごめんなさい。少し心配だったもので……」


良い所のお嬢さんだった友美さんは、こんな風に、最初は毅然とした態度で俺に接するんだが、元来、彼女は気が弱い。


強引に押し切りさえすれば、後は簡単に折れる。


まぁこの辺は、ウチの馬鹿親父が借金のカタに、無理矢理自分に嫁がされた様な人だから仕方がないんだろうがな。

住む世界が違い過ぎて、まだ、このドグサレタ環境に慣れていないんだろう。


まぁ勿論、こんなもんには慣れない方が、人としては『セーフ』だがな。



「んで、早速で悪いんだけど。早く国見のオッサンの連絡先教えてくれねぇか?ホントもぉ時間がねぇんだ」

「それは一向に構わないんですけど……今コチラに、真琴さんのお友達がおみえですよ。その方は、どうされますか?」

「ツレ?誰だ?こんな時間に、一体、誰が来てるって言うんだ?」


大凡の予想は付く。


さっき馬鹿秀の家に電話した時、奴は家に居なかった。

だったら恐らくは、友美さんの言う友達って奴は『馬鹿秀』の事だろう。


まぁ、それ以前にだな。

ウチがヤクザと知ってて、こんな時間に平気で遊びに来る様な命知らずな馬鹿は、アイツぐらいのもんだ。


ってな訳で、取り敢えず、来客は馬鹿秀で確定だな。



「向井さんって方……」


あぁ、やっぱり、そうだったか。

まぁ普通に考えても、こんな非常識な事をするのはアイツ……しか……居ねぇ……よ、うっ、うん?


・・・・・・


へっ?うん?


いや、友美さん……今、なんてつった?

ひょとして『向井さん』って言わなかったか?


ってか、向井さんって……奈緒さんの事だよな?


だよな。

うん、そうだな。


・・・・・・


はぁ?はぁ~~~?


なっ、なっ、なっ、なんですと!!

なんで奈緒さんが、俺ん家なんかに来てるんですかい?


本当に、なんか有ったんじゃねぇんですかい?

奈緒さんが、俺ん家に来てるなんて、こりゃあ一大事ですぜ!!


探してる人物が『自分の家に居る』と言う、誰にも予測不可能な事態に、思い切り焦った俺は、頭の中が一瞬にして『玄さん化』して……変な言葉が横行する。


序に、お袋との言葉を断ち切って話し始めた。



「へっ?へっ?なっ、なんだって?なんで、早く、それを言わねぇんだよ?」

「ごめんなさいね。真琴さん、なにか急いでらっしゃる様だったので」


あぁ……まぁ、そうだな。



「まっ、まっ、まっ、まぁ良いや。とっ、とっ、とっ、取り敢えず悪いけど、おっ、おっ、おっ、俺が帰るまで、彼女を丁重に扱ってくれな。その人は、俺がスゲェ世話になってる人だから」

「わかりました。……あの、つかぬ事をお伺いしますが。この方は、真琴さんの彼女?」

「そっ、そんな余計な事は聞かなくて良いからよぉ。兎に角、頼んだぜ、お袋」

「あっ、はい」


いつもは『友美さん』って言うんだが、つい『お袋』って言っちまった。


まぁ別に、本人も嬉しそうな返答だったから良いんだが……


……ってな訳で。

用事が済んだので電話を切るんだが……疑問が残る。


なんでまた、急に奈緒さんが、俺なんかの家に来たんだろ?

彼女が発見出来たのも、家に来てくれたのも嬉しいと言えば嬉しいんだが、どうにも奈緒さんの行動だけが、よく解らない状況だな。


まぁなんにしても、彼女に逢わねぇと、なにも話は始まんねぇ。

兎に角、奈緒さんがウチに来た真相は全くわかんねぇけど、思い切り急いで家に帰んなきゃならねぇのだけは事実だな。



……しかしまぁ、俺が嶋田さん家に行ってる間に、一体なにが起こったんだろうか?


なんか不安しか残らねぇ~~~。


最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございますです<(_ _)>


奈緒さん、倉津君の家に居ましたね(笑)


ですが、何故こんな夜遅くに、彼女はヤクザの本家である倉津君の家に来たのでしょうか?


その謎は深まりつつも、そこは次回の講釈。


また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート