最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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198 不良さん、夏休み前に少し不安に成る

公開日時: 2021年8月23日(月) 00:21
更新日時: 2022年12月4日(日) 15:08
文字数:3,709

●前回までのあらすじ●


 倉津君問題を解決してくれたステラさん。


その後、残った疑問を解消していきましょう。

「真琴」

「なんだよ?まだなんかあんのかよ?」

「アナタが、素直さんに答えた回答で、もぅ一点不明瞭な事が増えたのですが。もぅ1つお聞きして良いですか?」

「今度はなんだよ?あんまややこしい事は聞くなよ。俺、これでも病み上がりなんだぞ」

「そんなものは知った事じゃ有りません。さて、質問ですが、どうしてアナタは、素直さんには他の良い人を宛がおうとしてるのに、向井さんに対しては、アナタのままなんですか?彼女もアナタ如きが、付き合っていいレベルの人間とは思えませんが」


『知った事じゃ有りません』ってオマエねぇ。


まぁ良いか……一応、答えてやるが、多分、俺と奈緒さんの関係は、他人にはよくわかんねぇぞ。



「あぁ?奈緒さんは良いんだよ。俺のもんだから……それに、俺自身も奈緒さんのモノだから、お互い、そう言うのは関係ねぇの」

「なんですか、それ?言ってる意味が、よくわかりませんが」

「良いんだよ、それで。此処だけは、他人が干渉する所じゃねぇの」

「そうですか……まぁその辺は、2人がお付き合いしてる上での決まり事の様なので、深く干渉はしませんが。なんだか奇妙な関係が成り立ってるんですね」


まっ、そんなもんだろうな。



「あの、ステラさん。僕も、アナタに質問があるんですが、良いですか?」

「なにか?」

「あの……突然、こんな事を聞いて申し訳ないんですが。ステラさんって、お幾つなんですか?」


おぉ、そう言えばそうだよな。

俺も気になってたんだが、色々有りすぎて、スッカリ忘れてた。


マジで、ステラって幾つなんだ?



「私ですか?私は15歳ですよ……それがなにか?」

「えっ?じゃあ、僕より1つ上なだけなんですか?」

「そうですが……私、そんなに老けて見えますか?」

「あぁ違うんです、違うんです。僕なんかと違って『凄くしっかりしてる人だなぁ』って思って」

「あぁ、そう言う事ですか……だったら、そう見えるのは、多分、私に両親が居ないからじゃないですか。私は、生まれた時から孤児院で育ちましたからね」

「えっ?あっ、あの……ごっ、ごめんなさい」

「どうして謝るんですか?私の出生に同情されたんですか?」

「そう言う訳じゃ……イヤな事を思い出させたかもって思って」

「心配要りませんよ。あまり、そう言った事は気に止めてませんから。それに孤児院の先生も、とても厳しい方達ではありましたが、大変良くして頂ました。私は幸せだったと思ってますよ」

「そっ、そうなんですか」


幸せか……難しいよな、こう言うのって。


俺の家は金持ちの家だが、職業は最低のヤクザ。

金には困らないが『幸せか?』って聞かれたら、多分そうじゃないと思う。


素直の家も金持ちだが。

自分の娘を引き篭りの息子の変わりに、男と偽って中学校に通わせるような見栄っ張りな家族。

娘の気持ちを完全に無視してる時点で、こんな家庭環境じゃ幸せとは程遠い。


奈緒さんの場合は、ごく普通の一般的な家庭だが。

どういう理由かまでは知らないが、家族関係が上手くいってない。

家族が一緒に住めない時点で、決して幸せとはいえない。


山中の家はよく知らない。

どうでも良い。

大丈夫だ。

アイツは馬鹿だから。


崇秀の家は、決して金持ちではないし、ほぼ片親と言って良い程、父親が帰って来ない。

だが、アイツは場合は、何故か幸せに感じる。

静流さんは、アイツに対して理解力がある母親だし、アイツ自身も母親想いだ。

ある意味、バラバラ家庭環境な癖に、何故か家庭円満な家だ。


そう考えると幸せなんて、自分で構成していくもんなんだろうな、って思える。


これに関しては、ステラも、崇秀に良く似た境遇なのかもしれないな。


兎に角、コイツ等は、本当に強い。


おぉそう言えば、嶋田さんも、そんな感じだな。

ギタリストって、みんな、そんな奴が多いのか?



「よぉ。ところでステラ」

「今度は、なんですか?」

「オマエさぁ。音楽やって、なんか最終目標とかあんのか?」

「どうして、そんな事を聞くんですか?」

「いや、格好を付ける訳じゃねぇんだけどよぉ。なんか協力出来る事はねぇかなっと思ってよぉ」

「そうですね。……敢えて言うなら『大きなお世話』ですね。第一ポンコツのアナタが、私になにが出来るって言うんですか?私は、どちらかと言えば、そちらの方が興味有りますね」

「オマエって……ほんと、可愛気ってもんが無い女だな」

「そうですか?私、結構、自分では可愛いと思いますが……可愛くないですか?」


うぅ……


そりゃあオメェ……見た目だけで言やぁ、相当、可愛い部類だろうな。


けど、オマエの場合、幾ら、見た目がそう見えても『中身が、あまりにも半腐れ』じゃねぇか。


それを差っ引きゃ……まぁ、可愛いな。


まぁあれだ。

オマエの場合は、神様の悪戯が過ぎた感じの可愛さだから、ある意味、絶妙なバランスが取れてると思うぞ。



「まぁ、顔は可愛いんじゃねぇの……中身は最悪だけどな」

「そうですか。では、私は人生の勝ち組なんですね」

「なんでそうなるんだ?オマエ、どんな神経してんだ?」

「女性は、顔が良いだけで勝ち組なんですよ。知らなかったんですか?低脳どころか知能すら無いんですね」

「あぁ、でも、確かに、そうだよね。君も、素直も可愛いから、女としては、凄く得だよね」

「……嫌味ですか?」


そりゃあ、嫌味だわ奈緒さん。



「えっ?なんで?」

「ハァ……向井さんの家には鏡が無いんですね。向井さんも女性なのですから、早急に鏡ぐらいは買われた方が良いですよ。それとも、私が買って差し上げましょうか?」

「えっ?家に鏡なら、沢山有るけど」

「では、絶対、自覚がありますよね。……そう言うの、凄い嫌味ですよ」

「えっ?だってステラさんも、素直も可愛いじゃない。なにが嫌味なのよ?それに私、自分の容姿で損してるなんて、一言も言ってないけど」

「それは、それで凄い自信ですね。どれだけ自信過剰なんですか?」

「全開だよ、そんなの。……だって、ステラさんも、素直も、クラに告白しても、クラは私を選んだんでしょ。だったら、私が一番可愛いに決まってるじゃない」

「クスッ、ほんと嫌味な人ですね。ですが私は、そう言うハッキリした人は好きですよ」

「そぉ……ありがと」


2人して笑ってら……


奈緒さんと、ステラって、思った以上に相性が良いんだな。


まっ、ある意味似た者同士ではあるからな、わからなくもないか。



「さぁ~てと、クラのお見舞いにも飽きた事だし、そろそろ帰ろっか。……素直、少しウチに寄ってく?」

「あっ、はい。もぅ少し、向井さんとお話したい事も有りますし」

「だね」

「じゃあ、私も、そろそろお暇します。ポンコツの修理をするのは、私の仕事じゃ有りませんからね」

「うん?あれ?ステラさんは、ウチ寄ってかないの?」

「えっ?でも、そんな急に、お邪魔しちゃ迷惑じゃないですか?」

「そんな小さい事は気にしない、気にしない♪なんなら泊まっていっても良いよ」


奈緒さん。

ホント、何所までも気遣いをする人だな。


これも、ステラに疎外感を与えない為の考慮なんだろうな。



「えっ?いえ、流石にそこまでは」

「あれ?言ってなかったっけ?確か、言ったと思うんだけどなぁ?」

「なにをですか?」

「私1人暮らしだから、別に、誰が来ても迷惑じゃないって言わなかったっけ」

「そう言えば、先程そんな事を言われてましたね」

「まぁ……気が乗らないなら、それはそれで良いんだけどね。本当の事を言えば、少し、君に、確かめて置きたい事が有るのよ」

「なんですか、それ?私のなにを確かめたいんですか?」

「楽器の腕」


なるほど、そう来ますか。


こりゃあまた、なんとも奈緒さんらしくも理に適った誘い方だな。



「では、今からスタジオに行くんですか?」

「いや、それがね。うちの家って防音が効いてるから、スタジオ要らずなのよ。だから、ウチの家にさえ来てくれたら、イラナイお金は掛からないって寸法なのよ」

「あぁ、そう言う事ですか……では、少しだけ、お邪魔させて頂きます」

「うん、OKOK。じゃあ早速行こっか……じゃあね、クラ、早く怪我治すんだよ」

「ウッス」


そう言って、奈緒さんは出て行った。



「真琴君、入院してるのにお騒がせして、ごめんなさい。早く良くなって下さいね」

「だな。奈緒さんと、ステラが一緒じゃ、オマエも大変だろうけど、頑張れよ」

「あっ、はい」


まっ、良い感じだろ。


今は、変に意識しない方が良さそうだしな。



「・・・・・・」

「なんだよ?」

「くすっ……」

「オイ、コラ、なに笑ってんだよステラ」

「ありがと真琴。これで漸く、バンドが出来る。ホントありがとう……じゃあね」


??


……うん?


なっ、なっ、なっ、なんだ?

急にステラが、俺に微笑んで感謝していきやがったぞ。


なんだ怖いな。



……けど、アイツ、笑うとスゲェ可愛いんだな。


ズッとそうしてりゃ良いのによ……


けどな。

あんな笑顔を見せられたら『結構、あれでも無理してんだなアイツ』って思っちまうよな。


決して、アイツは悪い奴じゃないからな。



まぁしかしなんだな。

ステラと、奈緒さんと、素直が仲良くなった以上、バンドとしての活動はドンドン激化していきそうだな。


下手すりゃあ、この夏休み、休暇になんねぇぞ。


これから大変になりそうだな、コリャ。


早く、体治そ。


最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>

これにて第三十五話『女女女とポンコツ』は終了に成ります。


ちょっと長い話に成ってしまったのですが。

ある程度、倉津君と奈緒さんの恋愛について清算して置きたい部分がありましたので、ご了承ください(笑)


さてさて、そんな中、次回からは……

第三十六話『最強の助っ人』が始まります。


その助っ人とは、一体、どの様な助っ人なのか?

バンド関係者なのか、それとも……


ってな感じで、また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)

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