●前回のおさらい●
向井さんに『アンプが欲しい』っと言われただけで有頂天になり、アンプを買いに行くという失態を演じてしまう倉津。
そんな状況下で、どうにも部屋に戻りにくくなった真琴は、無謀と解りつつもアホなカラオケボックスの店員に山中を呼んで貰う事にした。
そして……
アンプの用意も出来たし。
向井さんがベースを弾く為に用意した別室を取る事も出来た。
だが、初対面である向井さんの為に、この些かやり過ぎた行為の為に『彼女に変に下心があると邪推される』のが嫌だったので、此処のアホ店員を使って山中を呼び出そうとしているんだが……
このアホで、本当に大丈夫か?
俺の指示通り『山中君、マコが呼んでたぞ』ってちゃんと伝えれるのだろうか?
いざ、勝負!!
『ガチャ』
「山中君。まこガ呼ンデタゾ」
ぎゃあぁ~~~!!
予想に反する事無く、このアホ店員はやらかしやがった。
壊れたテープレコーダーが再降臨。
これはまさに、歴史は繰り返されるっていい例だな。
しかしまぁ、アホなのかアイツは……
なんの会話も無しに、イキナリそんな事だけを伝える馬鹿が何処に居るんだよ?
あぁ、目の前にいたわ。
眩暈してきた。
「あっ、あっ、そっ、そりゃどうも」
そりゃあ山中も、そんな反応にもなるはな。
幾ら奴が遊び慣れてるとは言え、こんな脳味噌の枯れ切った馬鹿店員には、早々当らねぇだろし。
コイツ、マジで勘弁してくれ。
このオカシナ店員に、動揺を隠せない山中は行動が遅い。
そこに再び……
「まこガ呼ンデタゾ」
メカ!!
オマエは、もぉなにも喋らなくて良い!!
……頼むから、もぉ黙っててくれ。
「あぁ……そやな。急がなな」
「まこガ……」
ロボ!!
オマエは、懲りずにまだ言うか!!
死ね!!死ね!!マジ死ね。
腹かっさばいて、直ぐ死ね。
俺が『峰打ち』で介錯してやるから、苦しみながら死にやがれ!!
「「「「「あはっははっははは……」」」」」
そんな折、何故か、部屋にいる全員に笑いの神が光臨した。
そんな光景を目の当たりにして、俺は目を白黒させていたんだが。
まぁそりゃあ、そうなるのも頷けなくもないよな。
あんだけ壊れたテープレコーダーみたいに同じ事ばっかり言ってりゃあ『天丼』効果抜群だろうから、この状況を笑わねぇ方が、どうかしてるってもんだ。
いや、寧ろ、今まで、よく我慢したと思うぞ俺は……
「面白かったか?まぁそう言う事だから、山中君、マコが呼んでるよ」
えっ?なんだ?
どういう事だ?
ロボが、自分の意思で話し出したぞ?
オイオイ……ひょっとして、あのアホ店員。
今までの話し方は『仕込み』で、本心では、ただ単にみんなを笑わせたかっただけなのか?
もしそうなら、もぉ訳わかんねぇな。
「う~っす」
だがそんな俺の心配をよそに。
今度は、山中もちゃんと反応して、扉から出てきた。
もぉなんなんだよ、これ?
まぁ、目的は達したんだから、それはそれで良いか(´Д`)ハァ…
『ガチャ』
「悪ぃな山中。急に変なのを送り込んじまって」
「イヤイヤ、面白かったでぇ。あのにぃちゃん中々やるやん」
「いや、アイツの場合、そんな高級なもんじゃねぇよ。多分、ただの大ボケだぞ」
「まぁそう言う捉え方もあんなぁ……まぁえぇは、そんな事より、ワザワザ俺を呼び出して、何の用や?どないかしたんか?」
イカンイカン、アホ店員のせいで本題を外す所だった。
「いやな。用ってのは他でもねぇんだよ。なんか、さっきよぉ、勢い良く飛び出したまでは良かったんだが、なんかそれだけに中に入り難いんだよな」
「まぁ、そやわなぁ。あれは確かに頂けんわなぁ。コンパ中に一番やっちゃイケン事やもんなぁ」
「・・・・・・」
「頼んだ本人の向井さんは、そらえぇやろうけど、どうしても、他の女の子が白けてまうからなぁ」
「……だよなぁ」
困った。
山中の言いたい事は解っちゃいるけど、それだけに困った。
まぁ本来なら、自分で解決する所なんだろうけど。
今まで俺にはコンパの経験がないから、どうして良い物やらサッパリだ。
だから、コンパ魔神・山中様よぉ、此処は1つ助けてくれよ。
さっき席替えするの、直ぐに賛成してやっただろ。
そんな困り果てた俺を見た山中は……
「しゃあないやっちゃなぁ。まぁ1つだけやったら手はあんで」
「マジか!!」
「……但し、当然、この方法にはリスクも伴うねんけどな」
やっぱりな。
タダで助かるほど、世の中そんなに甘くねぇよな。
俺だって、そんな事ぐらい解ってるよ。
けどまぁ、現状を打破する為にも、此処は山中を頼るしかなさそうだな。
「まぁこの際だ。リスクは仕方ねぇ。どうやんだ?」
「マコ。オマエ、このまま向井さん連れてエスケープせぇや。後の事は、俺が何とかしといたるさかい」
「へっ?そっ、そんなの無理だろ。第一、向井さん、ぜってぇ来ねぇよ」
「アホかオマエ?」
「なんでそうなんだよ?」
「鈍感も程々にせぇ。あの子、本気でオマエに気があんで」
はぁ?何言ってんだ、オマエ?
あんな美人な向井さんが、俺なんかに気が有る訳ねぇだろ。
第一、あの子が興味あるのは、あの変な名前のベースだけだろ。
オマエさぁ、何をどうしたら、そんな考えになる訳?
アホちゃうか。
「はぁ?」
「『はぁ?』ってなんや?それ、新しいボケか?」
「ボケじゃねぇつぅの!!」
「性質悪。オマエなぁ、よう考えてみぃよ。あの子、俺が話しても、全く反応せぇへんかってんぞ。それやのに、オマエとだけは無駄にぺらぺら喋っとったやないか。そんだけでも、十分に気が有る証拠になるやろうに」
「いや、あれはベースに興味が有っただけじゃねぇのか?」
「ちゃうちゃう。ベースの話なんか、ただの切欠や。興味が無かったら、普通はあそこまでオマエと話し込まへんって」
「なんか良くわかんねぇけど、そんなもんなのか?」
「そやな」
ただ話してただけなのに、そんな心理が交錯してんだな。
意外に深いんだな、コンパって……
俺の中でのコンパってもんは、テッキリ、ただ単に女の子と話して、楽しい時間を過ごすだけだと思ってた。
いやいや、ホント深いな。
「さて、解説は終わりや……ほんで、どないすんねん?」
「なぁ、山中」
「なんや?」
「リスク無くねぇか?」
「はぁ……ホンマ、オマエは、何処までもめでたいやっちゃなぁ」
「だってよぉ。全然リスクねぇじゃねぇか」
「アホぬかせ。リスクはキッチリあんで」
「だから、それって、なんなんだよ?」
ないだろ。
そりゃまぁ、向井さんとの件が上手く行く事を前提にしないと、全然話にもなんねぇがよぉ。
オマエの話っぷりだったら、向井さんは、俺と一緒に来てくれる可能性が高い訳だろ。
だったら、全てが御の字じゃねぇか。
この話にリスクなんてもんは、なにも感じねぇんだけどな。
「あのなぁ、マジでよう考えぇや。この行為には、ちゃんとリスクあるやろが」
「だからねぇって」
「はぁ~~~もぉオマエだけは……えぇかマコ」
「おぅ」
「オマエが向井さんとエスケープかますって事はな、それ=清水さん諦めるって事や。オマエ、今んトコ、両方とも上手い事いっとるねんで。そこ……解ってるか?」
あぁそうか、そう言う事か。
山中の説明を聞いて、漸く、奴の言うリスクの意味が解った。
けど、そうなると、どうしたもんだ?
厚かましいとは俺も思うんだが、2人とも可愛いし、性格も悪くない訳だろ。
故に、今の段階では、下心とか云々を抜いたとしても、どっちらかを諦めるなんて勿体無い事は出来無い。
つまり『俺は両方と仲良くしたい訳だ』
あぁ勿論そうは言っても『2又』なんて、厚かましい事は考えてないぞ。
俺は、山中や、崇秀みたいに器用でもないし、2人の女の子と同時に付き合うなんて失礼な真似は、絶対に、やっちゃイケナイ。
幾ら、俺がヤクザの息子だからと言っても、最低限のモラルはある。
女を泣かす様な真似をするのは、最低の男のする事だ。
(まぁ残念な事に、ツレには沢山そう言う奴がいるが……)
……かと言ってだな。
今、この瞬間に『清水さんを諦め切れるか?』っと聞かれたら……綺麗事を言ってる割に、多分、無理な訳だ。
さて、この場合どうしたもんかなぁ?
「マコ。お悩みの様やから、1つだけ忠告したるわ」
「おっ、おぅ。なっ、なんだよ?」
「昔の偉い人は上手い事言うたもんやで。『二兎を追うもの一兎も得ず』……言うてる意味解るか?」
「クッ……」
嫌な例えだな。
しかも、妙にリアリティが有って、その事が自分に降りかかりそうな感じだ。
「あぁもぉ、しゃあないヤッチャなぁ。取り敢えず、向井さん呼んだ後、俺が上手い事言うといたるさかい。それでエスケープするんか、戻って来るんかは自分で考えとけ」
「あぁ」
「心配すな。後で戻って来ても大丈夫な様にしといたるさかい」
「なんか、すまんな。迷惑掛ける」
「かまへん、かまへん。コンパ初心者には辛い場面や。俺も、散々、秀に助けられたからな」
「マジか?」
「あぁ大マジや。アイツは、俺なんかが達せられるレベルやないからな……正に、コンパの申し子や言うても過言やないで」
なんだよ、その『コンパの申し子』って……馬鹿秀って、そんなにスゲェのか?
これ程までにコンパの経験値が高い山中が、そこまで言い切るって事は、相当すげぇんだろうけど。
山中以上の技量なんて、もぉ想像もつかねぇな。
なんか、アイツおっかねぇな。
「まぁそう言うこっちゃから、取り敢えず戻るわ」
「あぁ」
それだけ言い残して、山中は部屋に戻って行った。
そして俺は、扉から中の様子を窺う。
「あれ?真琴は?」
「あん?あぁマコやったら、なんや秀に用事が有るらしい言うて、今そっちに行っとるわ」
「そうなんだぁ。それで山中は何してたの?」
「野暮な事を聞きなや……眞子の伝言序に、うんこしとったんや、うんこ」
「最悪。汚いなぁもぅ」
「アホ言いなや。汚いから出すんやろ。そんなもん溜めても、なんの得になる言うんやな?」
「まぁそうだけどさぁ」
「なんや、カッしゃん、便秘なんか?」
「違っ……」
「そうなんやったら、最初からそう言いや。良かったら便秘の薬あんで。これ飲んだら、もぅ速攻で、うんこブリブリやで。カッしゃんの堅いウンコも大量放出やで」
「死ねぇ~~~!!」
山中は、樫田に俺の状況を上手く話をしながらも、俺の戻る場所を確保してくれた。
ただそのせいで、思いっ切り樫田に殴られていた様だな。
悪いな山中。
後で、この恩は、きっと返すぞ。
まぁそれにしてもなんだな。
なんて会話だよ、それ?
最後まで読んで下さりありがとうございましたぁ(*'ω'*)
有頂天になって「向井さんに頼まれたアンプを買いに行く」失態を犯し。
『部屋に戻り難くくなった』っと言うお題は、山中君によって解消されましたね。
良かったですね(笑)
さて、そうやって問題は解決しましたが。
実はまだまだ問題が山積みになっている事に、倉津君は気付いているのでしょうか?
そこは次回の講釈で(*'ω'*)ノ
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