最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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139 不良さん、嶋田さんと揉める

公開日時: 2021年6月25日(金) 00:21
更新日時: 2022年11月24日(木) 22:34
文字数:3,109

●前回までのあらすじ●


 嶋田さんの帰宅により、ライブの概要を話す倉津君。

けど嶋田さんは、そのライブで『バンドの解散』が掛かっているにも拘らず、平然としていた。


倉津君的には、思い入れがあるだけに、そんな嶋田さんの態度を残念に感じる。

「あっ、あの、やる前から、こんな事を言うのも変なんですが。ダメだった場合は、どうするんッスか?」

「あぁ、それなら心配ないよ。……俺は、以前から、仲居間さんとは、ある契約をしてるからね」

「契約?……あの馬鹿、なにか又、勝手な事をしてるんッスか?」

「いいや、仲居間さんは、何も悪い事はしていないよ。寧ろ、俺は保険を掛けさせて貰ってる感じだね」

「それ……どう言う事ッスか?」


この言葉には、不安と言うより、なにか不信感を感じる。

なんか俺の知らない内に、マジで気分の悪い話になってる様な気がしてならない。


懸念に終われば良いが……



「解散後の話だよ」

「へっ?……ちょ…ちょっと待って下さいよ。確かに、勝手に解散を賭けた事は、俺が一方的に悪いッスけど。それは、あんまりじゃないッスか」

「そうかい?自分を保身する事は、そんなに悪い事かい?」

「そうは言いませんが。やる前から保険掛けるのは、チョット無いんじゃないッスか?」

「ふむ。倉津君は、つくづくガキだね。少し失望したよ」

「なっ!!」


失望したのはコッチの方だ。

保険なんざ掛けてるって事は、既に、負けを認めたのと同じじゃねぇかよ。


ふっ、ふざけんな!!



「その様子だと、全く納得出来無いみたいだね」

「こんなの出来る訳ないッしょ!!」

「そっか。……なら、どうやら俺は1つ勘違いをしてたみたいだね」

「なんッスか、それ」

「ハァ、自覚無しか……まぁ良い。ところで倉津君。君はさぁ、此処、上大岡で2人が一ヶ月生活するのに、幾ら掛かるか知ってる?」


また金の話か。


こんな話バッカリ、もぅ凝りごりだ。



「そんなもん知りませんよ」

「そう……因みにだけど、仲居間さんは即答したよ」

「即答した?……けっ、けど、そんなもん、保険の話とは、なんも関係ないじゃないッスか」

「大有りだよ。……俺、最初に言ったと思うんだけど、バンドするのは金の為。そう言わなかったっけ?」

「確かに、俺が嶋田さんを誘った時、そう言われましたが。そんなの、話のすり替えをしてるだけじゃないッスか」

「違うよ。金の為にバンドをする以上、金にならないバンドには用は無い。その上、解散が賭かってる様なバンドなんて、本音を言えば話にもならない。良いかい、倉津君?中学生の君には判らないかも知れないけど。生活に関わらず、人間って言うのは、何をするにしてもお金が要るんだよ。だからって訳じゃないけど。バンドが崩壊しそうになってたら、次のバンドを探すのは極当たり前じゃないのかい?俺の言ってる事、なにか間違ってる?」

「・・・・・・」

「序に、もう1つ忠告しておくけど。俺の音楽や、椿に対する想いは、君が思う様なそんな甘いもんじゃないよ」

「浩ちゃん、ちょっと言い過ぎだよ。後輩さん、まだ中学生なんでしょ。そんな事を言われても困るだけだよ」

「あぁ~~~、確かにそうだね」


今まで黙って、嶋田さんの横でチョコンと座って聞いていた椿さんが口を挟んでくれた。

そのお陰もあって、少しヒートアップしていた嶋田さんも一気に冷静になる。


勿論、俺が言う程、彼自身が、最初から怒って訳では無かった。

どちらかと言えば、ガキの様な発想をする俺を嗜めてる様な感じだ。

しかも、その中には、俺のガキみたいなバンドに対する思い込みや、女関係でバンド内を困惑させている事にウンザリしていたのが言葉の節々に出ていた。


当然、俺が招いた事だから、これを言われても仕方がない。



俺は、それでも……



「さて、まぁそんなクダラナイ話は終わりして、ライブの話の続きでもしようか?」

「……納得出来ねぇッス」


手打ちにして貰ったにも拘らず、俺は、また攻撃的な言葉を発してしまった。



「じゃあ俺は、どうしたら良いんだい?若しくは、どうして欲しいんだい?」

「嶋田さん……1つ提案が有るッス」

「なんだい?」

「今の話だと金の問題が解決するなら、俺達とバンドを続けてくれるって事ッスよね?……だったら俺が、嶋田さんを月『年齢×1万』で雇います。それなら金銭面は問題無いッスよね」

「ん~~~。悪くない提案だけど。お断りさせて貰う」

「なんでッスか?さっき金の問題だって言ったじゃないッスか!!」

「残念だけど。倉津君の提案より、仲居間さんの提案の方が好条件なんだよ」

「クッ!!幾らッスか?アンタ、一体、幾ら欲しいんッスか?」


金で信用を買う様な真似はしたくない。

……けど、此処まで、嶋田さんが金に固執するなら、そう言うやり方も否めない。


何を言っても嶋田さんが居なければ、バンドは成立しない。



「ハァ、あのねぇ倉津君。確かに、君の言ったお金で、十分一ヶ月の生活費にはなるよ。けど、それじゃあ、もう1つの条件である『音楽』の話は、何所に行ってしまったんだい?それに、今のままのバンドで上手くいくもんなのかい?俺は『音楽も妥協しない』って、さっき言った筈だよ」


調子の良い事を言うんだな。



「アンタなぁ、セコイ事を言ってんじゃねぇぞ。この間のライブの時、音楽を辞めるとかウンヌンカンヌンぬかしてたよな。それを、金が出るとなった瞬間から、イキナリ厚かましくなるんだな」

「当たり前じゃないか。君が、俺に交渉を持ち掛けてる以上、相手からギリギリのラインを引き出すのは当然でしょ」

「腐ってるよアンタ!!嶋田さんには失望した。もっと音楽に対して真剣な人だと思ってましたよ!!」

「後輩さん……浩ちゃんを悪く言わないで。後輩さんは、全然、浩ちゃんの本心がわかってないよ」

「えっ?」

「椿、余計な事は言わなくていい」

「言う!!絶対に言うもん!!浩ちゃんは何も悪く無いもん!!」

「ちょ……椿」


涙を眼に一杯溜めながら、手をワナワナさせ。

真っ赤な顔をして、椿さんは、突然キレ始めた。


俺には、何故、彼女が怒ってるのか、全く解らない状況。


そうやって、椿さんの豹変に呆気にとられている内に、彼女は戸棚から大量のファイルを取り出し、それを一気に、全部、俺に投げつける。


それは俺の全身に思い切りブチ当たり、床には大量の紙が散乱する。



「後輩さん、それ、なにか解る?……それはねぇ、浩ちゃんが、後輩さんと逢ってから、毎日一生懸命書き溜めた曲だよ」

「へっ?……なっ!!そんな馬鹿な……」


慌てて、床に落ちた紙を何枚か拾い上げると、そこにはビッシリと曲が書き込まれていた。


その後も、他の数枚拾ってみるが、こちらにも、完全に出来上がった曲がビッシリ書き綴られている。



「浩ちゃんはね。人が好いから、後輩さんに逢った時から『いつかバンドの役に立つだろう』って言ってね。毎日毎日仕事が終わってからも、疲れた体で、全然寝ないでコツコツ、それを書いたんだよ」

「嘘だろ……」


なっ……なんだよ、これ?

嶋田さんは、バンドや音楽を金としか見ない『金の亡者』じゃないって言うのかよ。


何でこんな真面目に、俺達のバンドの事を考えてるんだよ?



「椿は嘘なんか言わないもん。それにねぇ『後輩さんを鍛える』って言ってライブに連れて行った時、浩ちゃん一回でも後輩さんからライブのお金貰った?」

「あっ……」


確かに……嶋田さんは、1度たりとも俺にライブの料金を請求しなかった。

それにチケットも、当然の様に、いつも事前に準備してくれていた。



「あのお金はねぇ。浩ちゃんが毎日の食費を削って作ったもんなんだよ。後輩さんは、それを知ってたの?……浩ちゃんはねぇ、そう言う人なの!!謝れ!!浩ちゃんに謝れ!!後輩さんなんか、全然、良い人じゃないよ!!浩ちゃんに謝らないなら出て行け!!二度と此処にも来るな!!」


俺は……嶋田さんの、一体なにを見てたんだろうか?


彼は、いつも全力で。

俺……いや、バンド自体をサポートしてくれてるじゃないか。


それなのに俺は……


最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>


倉津君の、あまりな発言に、椿さんが怒っちゃいましたね。

まぁ確かに、どんな状況であろうと、信用している筈のバンド仲間には口にしちゃいけないセリフでしたね。


そりゃあ、怒られるわ(笑)


そんな中、次回は、どうなって行くのか?


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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