●前回のおさらい●
女子会が如何なるものかの説明と、それに対する倉津君の心境をお伝えしただけの回でしたぁ(笑)
そして、その説明が終わったぐらいに。
とうとう素直ちゃんが、奈緒さんの家に上がってきますです。
さぁ、女子会の始まりだ!!
「向井さん、お邪魔しま~す」
「どうぞ。……は良いんだけどね、素直。家の中が昨日の散らかったままになってるのよ。それでも良ければ、どうぞ」
「あっ、はい、大丈夫です。お邪魔しま~す。……んしょ」
玄関口に有る全員の靴を綺麗に揃えながら素直は、いつもの様に気持ちの良い挨拶を発する。
だが……彼女はまだ、自らの手で悪夢の扉を開いた事に気が付いていない。
何故なら今の素直は、なにかの用事で、奈緒さんの家を訪れたに過ぎないからだ。
故に、今後此処で開催される『女子会』っと言う名の悪夢の事を、まだ、なにも知らされていない。
哀れなスケープ・ゴート(生贄)は、なにも知らずに奈緒さんに先導されて、この部屋に到着する。
「あっ、えぇっと、こんにちわ。お邪魔してます」
「こんにちわ」
どうやら素直は、部屋の中に入るなり、眞子と言う見知らぬ異形の存在に気付いたらしい。
お互いが挨拶をする傍ら、軽く会釈を交わす。
この様子からして、ファースト・コンタクトでの、お互いの印象は悪くない様だ。
「あのぉ、向井さん、こちらは?」
「うん?あぁごめん、ごめん、素直は、この子の事、初対面だったよね」
「あっ、はい」
「紹介するね。この子はね。クラのご親戚の子なのよ。今、ちょっと訳有りでね、私の家で預かってるのよ」
「あっ、そうなんですか。あの、僕、有野素直って言います。ご親戚の真琴君には、いつも、お世話になってます」
「こちらこそ、はじめまして、倉津眞子です。ご高名な有野さんに、お逢い出来るなんて、とっても光栄です。田舎者ですが、宜しくお願いしますね」
「あっ、はい。こちらこそ」
眞子が自らの手を差し出し、素直に握手を求めると。
素直は、ご機嫌な様子で、眞子の手を取って握手の応える。
……にしても、凄いな、眞子の奴!!
(↑早くも状況説明に飽きて、感情的に話し出す俺)
イキナリ初対面の素直を褒め殺しにして、ハートをガッチリキャッチしやがったよ。
大したもんだな。
流石、俺の分身だけの事はあって、ズカズカと相手の懐に踏み込んで行きやがる。
「綺麗な手。……あの、不躾な質問なんですけど、倉津さんは、どちらのご出身なんですか?」
「出身は秋田の能代です。有野さんは、ご存知ですか?」
ほぉ、眞子の出身地は秋田なんだ。
此処は重要そうだから、忘れない様に心にメモしとこ。
セーブ、セーブ( ..)φメモメモ
……あぁそう言えば、今、眞子が言った『能代』って言えば、確かウチの死んだお袋の実家が有る所だよな。
出身地を、そこに設定したって事は、その辺にあやかってるのかな?
「あっ、はい。能代と言えば、風力発電が、凄く盛んな地域ですよね」
「あっ、そうです、そうです。良くご存知ですね。……あぁ、なんか嬉しいな。凄い田舎なのに、有野さんに知って頂いてるなんて、夢にも思いませんでした」
「田舎だなんて、そんな。僕、この間、ユニットのライブで能代に行った所なんですよ。凄く良い所でした」
「そうですか。地元を褒めてくれて、ありがとうございます。とても嬉しいです」
「あぁ後、後。僕、時間が有る時に、1人で米代川の方にも行きましたよ」
「米代にも行かれたんですか。そちらは、どうでしたか?」
「あぁ、はい。川の周りに自然が多くて、凄く綺麗でした。……僕、感動しちゃいました」
「そうですか。そんな風に有野さんに、秋田を満喫して頂けて良かったです」
なぁなぁ、この知識量。
眞子の方が、俺なんかよりズッと賢くないか?
俺、そんな情報に興味ねぇから、全然知らないし。
つぅかな。
ホント、眞子って狡猾に相手の心に入って行くよな。
幾つか言葉を交わすだけで、素直のテンションが妙に上がってるぞ。
まぁその分、奈緒さんは、眞子が、なにを言い出すか解らないからドキドキ・ハラハラしてるみたいだけどな。
「ところで素直。今日は、なにか用事?」
「あっ、ごめんなさい、向井さん。倉津さんと話が弾んじゃって……つい」
「良いよ、良いよ。……っで、ホントに、どうしたのよ?なんかあったの?」
ドキドキ・ハラハラする嫌なスリルに嫌気がさしたのか、奈緒さんは話を転換させ、攻勢に出た様だ。
このまま素直の用事の話に流れ込み、出来るだけ眞子から素直の興味を逸らさす算段だな。
流石、奈緒さん、この辺は、素直の性格を、よく心得てらっしゃる。
素直って、意外とドン臭いからな。
基本的に単純だし……
「そうなんですよ。聞いて下さいよ、向井さん」
ほら、みろ、アッサリ眞子から気が逸れた。
……って言いたい所なんだが。
あれ?素直の奴、この言い分だったら、用事って言うより十中八九愚痴っぽい感じだな、こりゃあ。
にしても、なんの愚痴だ?
奈緒さん家にワザワザ相談しに来るって事は、今の芸能活動に何か不満でも有るのか?
だとしたら、なんだ?
「なになに?どうしたの?」
「あのですね。向井さんは、2B-GUILDの伊藤さんって知ってますか?」
「2Bの伊藤?……あぁ、舞歌の事ね。うん、よく知ってるよ。その舞歌が、どうかしたの?」
「あの子……僕に信じられない様な事するんですよ」
なんだなんだ?
伊藤の奴……素直に一体なにをしたんだ?
素直がこう言う愚痴を言うのは珍しい事だから、これって、相当ヤバイ話なんじゃねぇのか?
だとしたら、オイオイ、マジでヤメテくれよ。
そう言う伊藤の黒い部分は、あんまり聞きたくねぇよ。
アイツ、良い奴だし。
「うん?『信じられない事』って、なにされたの?」
「あの、実はですね。伊藤さん。僕が何度も『やめて』って言ってるのに、僕が居ない間に、いっつも勝手に僕のリップ使うんですよ。信じられなくないですか?」
はい?
リップとな?
・・・・・・
いやいやいやいや、何事かと滅茶苦茶警戒してたのに、寄りに持って、そんなしょうもない話なのか?
つぅか、それぐらい別に良いじゃん。
そりゃあまぁ、リップは使われた分は減るだろうけど、ちょっと位なら貸してやっても良いんじゃねぇの?
……意外とケチだな。
……って言うか。
素直の奴、そんなツマンネェ事を言いに、ワザワザ地元から上星川まで出張って来たのか?
そんな事するぐらいなら、往復の電車賃で、リップ……2本ぐらい買えね?
「あぁ、そりゃあダメだね。特に潔癖症の素直には、それをしちゃいけないよね」
「ですよね。僕が、他人の唇が付いたリップとか使えなくなる事を知ってる筈なのに。伊藤さん、いっつも、それを無視して使うんですよ。もぉ、ホント腹が立つ」
お怒りだな。
しかも、豪く安い物で怒ってますな。
「そりゃあ災難だったね。……あぁ、だったらさ素直。こういうのはどぉ?」
「どういうのですか?」
「前以てリップを2本買っといてね。1本に唐辛子とか塗っちゃうのよ。それを舞歌が無断で使ったら、きっと、唇がパンパンに腫れ上がって、収録どころじゃなくなるよ」
「あっ、それ、良いですね。うんうん、今度、早速やってやろ」
嘘……素直って、そんな事を平気でする様な子だったんだな。
普段の大人しい素直から思えば、考え付かない様な衝撃の事実だな。
「あぁ、でも、素直。間違っても、君が自分で使ったらダメだよ」
「ですね。……僕、ドン臭いから、解る様に目印を付けて置いた方が良いですかね?」
「そうだね。……あぁそうだ、そうだ、そう言えば素直。リップで思い出したんだけど、新商品のリップ有るよ。いる?」
「あぁ、本当ですか。見せて下さい、見せて下さい」
「良いよ。ちょっと待っててね。……えぇっと、確か、この辺に置いたんだけどなぁ……あれ、どこだったっけな?」
素直との話を一旦打ち切って、化粧台の下をゴソゴソと一生懸命リップを捜し始めた。
けどな……奈緒さん、今の俺を同性としかみてないのか。
コッチに向いてるお尻を隠すべきスカートが上にズリ上がって、その中のパンツがチラチラ見えてんだよな。
普段なら喜んで、必至に覗き込んで見ようとする所なんだが……今は悲しい気分になるんで、少しはパンツを隠して下さい。
奈緒さん、お願いだから、こんな形でも、ちょっとは俺を男だって認識しちくり。
……って、奈緒さんが、そうやって必至のリップを捜索をしていると。
素直は、まだ眞子に興味が有るのかして、この隙を突いて、再び、眞子に話し掛けて行った。
あららぁ、これじゃあ奈緒さんの思惑が……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
本作も、この547話をもちまして、毎日更新を続けながらも1年半を迎える事が出来ましたぁ♪
パチパチパチパチ!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/
こうやって長く連載を続けさせて頂けるのも、読んで下さっている皆様のお陰。
その感謝の念を持ちまして、これからも慢心する事無く邁進して行きたいと思いますので、今後も、どうぞ、よろしくお願い致しますです<(_ _)>
……っで、そんな風な気持ちで書かれた本編の方なのですが。
女子会第一の刺客として素直ちゃんが登場したまでは良かったのですが。
その用事の、あまりにもショウモナイ内容に、倉津君は唖然とする羽目に成ってしまいました。
ですが、多くの女子は『誰かに愚痴を聞いて貰い、共感して欲しい』と言う気持ちが強く出る面があり『情報を共有したがる』っと言う習性がありますので、この素直ちゃんの行動は、女性として極有り触れた行動だったりするんですね。
そんな一般的な女性の行動原理を、倉津君に学んで欲しくて。
今回のお話を書いたのですが……倉津君本人は、あまりその事には気付いていない様ですね(笑)
困ったものですわ。
さてさて、そんな中。
奈緒さんがリップを探してる隙に、素直ちゃんが再び眞子に話し掛けて行く様なのですが。
初対面の眞子に対して、どの様な話を持ってくるのでしょうか?
それは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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