第七話スタートです(*'ω'*)ノ
007【不良とベースの関係】
太古の昔から、暇なオッサンや、家事しかする事の無いオバはんの話は長いと相場は決まっている。
こう言う手合いは1度喋りだしたら、最後。
自分が納得して話を終えるまで、永遠に口を休める事を知らない蟻地獄。
しかも、話が一息ついたと思ったら、直ぐ様また別の話を始めてきやがる始末。
まさに最悪な負の連鎖だ。
恐らくプロのゲーマーでも、此処までのぷよぷよみたいな連鎖は出来ないだろう。
そんで、基本的に運の悪い俺は、今日、偶々、そう言う暇な人間に当たってしまったらしい。
早い話だな。
このオッサンもその例に漏れず、異様に話が長いんだよな。
俺に、なんの興味があって、そんなクソ話を長々とするのかは知らないが『親父の近況や』なんかを聞いたり、『昔の武勇伝』の話したりする訳なんだが、このクソ面白くもない話が永遠に繰り返されてる。
しかも、気付けば、何度も同じ話をしているループ状態。
すこぶるウザイんだが。
本人は酒が入って相当楽しいのかして、そんな俺の気持ちはお構いなし。
既に、同じ様な話が続く状態で、一時間近く経過している有様。
なぁ……一体、なんの嫌がらせなんだよ、コレ?
もぉ、誰か助けてくれよ。
「あぁそうか、そうか、利久も良い息子を持ったもんだ。立派、立派」
「だからよぉ、オッサン。もぉ、その話は、さっきもしただろうが」
「おっ?そうだったか?ハハハハハハ……」
なにを笑ってやがるんだよ?
そんな風に笑ってる暇があったら、もぉサッサと死んでくれよ。
頼むから、満タンに重油が入ったドラム缶に、頭から突っ込んで窒息死してくれ。
そうすれば、その無限に開く口も閉じるだろうに……
因みに奈緒さんは、俺の横でクスクス笑い続けてる。
この人……こんなキャラだったか?
「ところでよぉ、オッサン。さっきから俺なんかとペチャクチャとダベッてて良いのか?バンドの練習があんじゃねぇの?」
「イヤイヤ、今日は、利久の息子が訪ねて来てくれたんだ。そんな事を今更やってられるか」
「オイオイ、あのなぁ、オッサンよぉ」
「なんだ?」
「そう言う身勝手な我儘はいけねぇぞ。みんな、その為に時間を割いて、此処に来てんのによぉ。そりゃあ、あんまりなんじゃねぇか?」
「なんだ?豪く真面目な奴だな。利久の息子とは思えない真面目さだ。……イヤイヤ、感心感心」
ほっとけ。
別に真面目な訳じゃねぇけどよぉ。
オッサンのしてる行為って、人として……いや、大人として、どうなんだよ?
どう考えても、ダメ人間の象徴だろ。
アンタがそんなんだから、あんなクズ店員が育つんだぞ。
ちょっとはその辺んを自覚しろ、自覚。
「んな事に感心してねぇで、練習しろ」
「そんな硬い事を言うなよ、少年。人生お気楽な部分が無いと、肩が凝っちまうぞ」
空になっていた俺のコップにビールを注ぎながら、そんな事を言う。
ったく、俺は、まだ中学生だぞ。
良い大人が、堂々とガキに酒勧めてんじゃねぇぞ。
そう思ったので、コップに入ったビールを一気に飲み干し、俺は立ち上がる。
「生憎、俺は肩凝りじゃねぇんでな。少し肩が凝ってる位で、丁度良いんだよ」
「おぉ!!良い飲みっぷりだな。……じゃあ俺も」
オッサンも、俺を真似て一気にビールを飲み干す。
いや、そう言う事を言ってるんじゃねぇよ。
誰が、一緒に成って一気飲みをしろって言ったよ。
普通に考えても、そうじゃねぇだろうに。
「ダメだ、この親父。……全く動く気配すりゃ、ありゃしねぇ」
「ぷっ……クラ、もぉ諦めた方が良いよ。こうなったら国見さんは梃子でも動かないから」
「はぁ~~~、もぉマジッスか?しかしまぁ、困った親父ッスね。どうすりゃあ、まともになるんッスか?」
「う~~~ん。そんな風に、家族の話が嫌なんだったら、楽器の話でもしてみたら、どう?」
「うぇ、この親父にですか?」
「うん。国見さん、楽器の知識が、かなり豊富だよ……騙されたと思って聞いてみたら」
「はぁ~~~、そうッスか」
失礼な話なんだけどな。
今の奈緒さんの言葉って、意外に信用出来無いんだよな。
どこか、からかわれてる気がしてならない。
若しくは、罠に嵌められてる様な気がしてならないんだよな。
「うん?」
澄ました顔して『うん?』とか言ってるけど、奈緒さんの目が完全に笑ってる。
こりゃあ、確実に、俺を嵌める方向の目だ。
けどまぁ、奈緒さんも楽しんでるみたいだし。
ウチの糞親父の昔話を聞かされるよりかは、楽器の話しをした方が、幾分かはマシか。
取り敢えずだけど、騙される事を前提に、オッサンに話を振ってみるか。
「なぁオッサン、急にで悪いんだが。一度、俺のベース見てくんねぇか?」
「あぁ?別に良いぞ。どらどら貸してみろ」
「ほらよ」
アッサリ了承しやがったので、俺の持って来たZemaitisをケースごと渡す。
オッサンはそれを受け取りながら、ケースを見ただけで感心する。
「ほぉ。Zemaitisとはな。最近の学生は金持ちだな」
いつもの反応だな。
「そんな事は良いからよ」
「あぁそうだな」
扱いが慣れてるのか、オッサンのベースの扱いは、少し乱雑だ。
ベースの本体を出したら、ケースは、そのまま放置している。
俺なんか、いつもケースすら慎重に置くのにな。
「ほぉ、こりゃ凄いな。フルオーダーか」
「はぁ?」
「なんだ、その様子じゃ知らないのか?」
「はぁ」
「コイツはな、Zemaitisのフルオーダーベースだ」
「そっ、そうなのか?」
って、その前に。
フルオーダーって、なんだ?
客が独自に注文して作られた商品って認識で良いのか?
そんな安易な感じで良いのか?
「あぁ、間違いない。Zemaitisは、殆どベースを作っちゃいないからな。……まぁトニー爺さんが作ったオリジナルみたいだから、最低5~600万は下らないだろうな」
うげっ!!
このベースって、そんな値段なのかよ!!
フルオーダーしたベースってのは、そんなにするもんなのか??
つぅか。
あのカツアゲした馬鹿学生、100万程度の商品って言ってなかったか?
オイオイだとしたら、自分の持ち物の価値ぐらい、ちゃんと知っとけつぅのな。
それが解ってたら、幾らなんでも、俺も無理に奪い取ったりはしねつぅのによ。
いや、あの時かなり不機嫌だったから、それでも尚、奪い取ったかもしれんがな。
「はぁ~~~」
「なんだ、どうかしたか?」
「べっ、別に、なんでもねぇよ」
「そうか……まぁ良い。オイ、一樹、アンプと、シールド持って来い」
「うぃ~っす」
一樹と言うのは、どうやら、さっき俺が締め上げた馬鹿店員みたいだな。
カウンターの方から、あのどうしようもなく、だらしない声が聞こえた。
そんで少しすると、カウンターの方から、アンプを持った奴がやって来た。
「オジサン、アンプ持ってきたッスよ」
「はぁ……、お前は、本当に役に立たないな」
「はぁ?なんでッスか?」
「このベースを弾くのに、こんな安物のアンプ持って来て、どうするんだ?」
「いや、どうするも、こうするも……これが一番軽かったもんで」
「あぁ、もう良い。アンプはワシが取りに行くから、オマエはもぉカウンターに戻ってろ」
「うっす、オジサン」
オッサンは、一樹の持って来た軽いアンプを持ちながらカウンターに戻って行く。
そんで、その場に取り残された俺と奈緒さんはと言うと……
「凄いね、クラ」
「はぁ?」
「まさかとは思っていたんだけど、そのベースって、本当にオリジナルだったんだね」
「あぁ、コイツの事ッスか?」
「そう。……けど、なんで前の所有者は、初心者のクラに、これを譲る気になったんだろ?そこら辺で売ってる安物のベースとは、比べものにならない様な物なのにね」
ヤバイな。
この様子だと、なんか、奈緒さんは薄々感づき始めたかも知れないな。
どうやら早急に、誤魔化す必要性がありそうだ。
(↑カツアゲした商品だから焦ってる俺)
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
第七話スタートでございます。
……っで、早速、自分の悪行(カツアゲ)が仇となって、災厄が降りかかろうとしてますね。
まさに因果律の輪に落ちた自業自得なアホ。
まるで救いがないスタートを切りました(笑)
さて、この自業自得な場面。
彼は一体、どうやって乗り越えるのでしょうか?
そこは次回の講釈。
ま~~~たねぇ~~~(*´▽`*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!