最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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第七話 不良さんとベースの関係

033 不良さん 絡まれる(笑)

公開日時: 2021年3月10日(水) 23:12
更新日時: 2022年11月6日(日) 23:23
文字数:3,153

第七話スタートです(*'ω'*)ノ

007【不良とベースの関係】


 太古の昔から、暇なオッサンや、家事しかする事の無いオバはんの話は長いと相場は決まっている。


こう言う手合いは1度喋りだしたら、最後。

自分が納得して話を終えるまで、永遠に口を休める事を知らない蟻地獄。

しかも、話が一息ついたと思ったら、直ぐ様また別の話を始めてきやがる始末。


まさに最悪な負の連鎖だ。

恐らくプロのゲーマーでも、此処までのぷよぷよみたいな連鎖は出来ないだろう。


そんで、基本的に運の悪い俺は、今日、偶々、そう言う暇な人間に当たってしまったらしい。


早い話だな。

このオッサンもその例に漏れず、異様に話が長いんだよな。

俺に、なんの興味があって、そんなクソ話を長々とするのかは知らないが『親父の近況や』なんかを聞いたり、『昔の武勇伝』の話したりする訳なんだが、このクソ面白くもない話が永遠に繰り返されてる。


しかも、気付けば、何度も同じ話をしているループ状態。


すこぶるウザイんだが。

本人は酒が入って相当楽しいのかして、そんな俺の気持ちはお構いなし。

既に、同じ様な話が続く状態で、一時間近く経過している有様。


なぁ……一体、なんの嫌がらせなんだよ、コレ?


もぉ、誰か助けてくれよ。



「あぁそうか、そうか、利久も良い息子を持ったもんだ。立派、立派」

「だからよぉ、オッサン。もぉ、その話は、さっきもしただろうが」

「おっ?そうだったか?ハハハハハハ……」


なにを笑ってやがるんだよ?

そんな風に笑ってる暇があったら、もぉサッサと死んでくれよ。

頼むから、満タンに重油が入ったドラム缶に、頭から突っ込んで窒息死してくれ。


そうすれば、その無限に開く口も閉じるだろうに……


因みに奈緒さんは、俺の横でクスクス笑い続けてる。


この人……こんなキャラだったか?



「ところでよぉ、オッサン。さっきから俺なんかとペチャクチャとダベッてて良いのか?バンドの練習があんじゃねぇの?」

「イヤイヤ、今日は、利久の息子が訪ねて来てくれたんだ。そんな事を今更やってられるか」

「オイオイ、あのなぁ、オッサンよぉ」

「なんだ?」

「そう言う身勝手な我儘はいけねぇぞ。みんな、その為に時間を割いて、此処に来てんのによぉ。そりゃあ、あんまりなんじゃねぇか?」

「なんだ?豪く真面目な奴だな。利久の息子とは思えない真面目さだ。……イヤイヤ、感心感心」


ほっとけ。


別に真面目な訳じゃねぇけどよぉ。

オッサンのしてる行為って、人として……いや、大人として、どうなんだよ?


どう考えても、ダメ人間の象徴だろ。


アンタがそんなんだから、あんなクズ店員が育つんだぞ。

ちょっとはその辺んを自覚しろ、自覚。



「んな事に感心してねぇで、練習しろ」

「そんな硬い事を言うなよ、少年。人生お気楽な部分が無いと、肩が凝っちまうぞ」


空になっていた俺のコップにビールを注ぎながら、そんな事を言う。


ったく、俺は、まだ中学生だぞ。

良い大人が、堂々とガキに酒勧めてんじゃねぇぞ。


そう思ったので、コップに入ったビールを一気に飲み干し、俺は立ち上がる。



「生憎、俺は肩凝りじゃねぇんでな。少し肩が凝ってる位で、丁度良いんだよ」

「おぉ!!良い飲みっぷりだな。……じゃあ俺も」


オッサンも、俺を真似て一気にビールを飲み干す。


いや、そう言う事を言ってるんじゃねぇよ。

誰が、一緒に成って一気飲みをしろって言ったよ。


普通に考えても、そうじゃねぇだろうに。



「ダメだ、この親父。……全く動く気配すりゃ、ありゃしねぇ」

「ぷっ……クラ、もぉ諦めた方が良いよ。こうなったら国見さんは梃子でも動かないから」

「はぁ~~~、もぉマジッスか?しかしまぁ、困った親父ッスね。どうすりゃあ、まともになるんッスか?」

「う~~~ん。そんな風に、家族の話が嫌なんだったら、楽器の話でもしてみたら、どう?」

「うぇ、この親父にですか?」

「うん。国見さん、楽器の知識が、かなり豊富だよ……騙されたと思って聞いてみたら」

「はぁ~~~、そうッスか」


失礼な話なんだけどな。

今の奈緒さんの言葉って、意外に信用出来無いんだよな。


どこか、からかわれてる気がしてならない。

若しくは、罠に嵌められてる様な気がしてならないんだよな。



「うん?」


澄ました顔して『うん?』とか言ってるけど、奈緒さんの目が完全に笑ってる。


こりゃあ、確実に、俺を嵌める方向の目だ。


けどまぁ、奈緒さんも楽しんでるみたいだし。

ウチの糞親父の昔話を聞かされるよりかは、楽器の話しをした方が、幾分かはマシか。


取り敢えずだけど、騙される事を前提に、オッサンに話を振ってみるか。



「なぁオッサン、急にで悪いんだが。一度、俺のベース見てくんねぇか?」

「あぁ?別に良いぞ。どらどら貸してみろ」

「ほらよ」


アッサリ了承しやがったので、俺の持って来たZemaitisをケースごと渡す。


オッサンはそれを受け取りながら、ケースを見ただけで感心する。



「ほぉ。Zemaitisとはな。最近の学生は金持ちだな」


いつもの反応だな。



「そんな事は良いからよ」

「あぁそうだな」


扱いが慣れてるのか、オッサンのベースの扱いは、少し乱雑だ。

ベースの本体を出したら、ケースは、そのまま放置している。


俺なんか、いつもケースすら慎重に置くのにな。



「ほぉ、こりゃ凄いな。フルオーダーか」

「はぁ?」

「なんだ、その様子じゃ知らないのか?」

「はぁ」

「コイツはな、Zemaitisのフルオーダーベースだ」

「そっ、そうなのか?」


って、その前に。

フルオーダーって、なんだ?


客が独自に注文して作られた商品って認識で良いのか?


そんな安易な感じで良いのか?



「あぁ、間違いない。Zemaitisは、殆どベースを作っちゃいないからな。……まぁトニー爺さんが作ったオリジナルみたいだから、最低5~600万は下らないだろうな」


うげっ!!

このベースって、そんな値段なのかよ!!


フルオーダーしたベースってのは、そんなにするもんなのか??


つぅか。

あのカツアゲした馬鹿学生、100万程度の商品って言ってなかったか?


オイオイだとしたら、自分の持ち物の価値ぐらい、ちゃんと知っとけつぅのな。

それが解ってたら、幾らなんでも、俺も無理に奪い取ったりはしねつぅのによ。


いや、あの時かなり不機嫌だったから、それでも尚、奪い取ったかもしれんがな。



「はぁ~~~」

「なんだ、どうかしたか?」

「べっ、別に、なんでもねぇよ」

「そうか……まぁ良い。オイ、一樹、アンプと、シールド持って来い」

「うぃ~っす」


一樹と言うのは、どうやら、さっき俺が締め上げた馬鹿店員みたいだな。

カウンターの方から、あのどうしようもなく、だらしない声が聞こえた。


そんで少しすると、カウンターの方から、アンプを持った奴がやって来た。



「オジサン、アンプ持ってきたッスよ」

「はぁ……、お前は、本当に役に立たないな」

「はぁ?なんでッスか?」

「このベースを弾くのに、こんな安物のアンプ持って来て、どうするんだ?」

「いや、どうするも、こうするも……これが一番軽かったもんで」

「あぁ、もう良い。アンプはワシが取りに行くから、オマエはもぉカウンターに戻ってろ」

「うっす、オジサン」


オッサンは、一樹の持って来た軽いアンプを持ちながらカウンターに戻って行く。


そんで、その場に取り残された俺と奈緒さんはと言うと……



「凄いね、クラ」

「はぁ?」

「まさかとは思っていたんだけど、そのベースって、本当にオリジナルだったんだね」

「あぁ、コイツの事ッスか?」

「そう。……けど、なんで前の所有者は、初心者のクラに、これを譲る気になったんだろ?そこら辺で売ってる安物のベースとは、比べものにならない様な物なのにね」


ヤバイな。

この様子だと、なんか、奈緒さんは薄々感づき始めたかも知れないな。


どうやら早急に、誤魔化す必要性がありそうだ。

(↑カツアゲした商品だから焦ってる俺)


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>

第七話スタートでございます。


……っで、早速、自分の悪行(カツアゲ)が仇となって、災厄が降りかかろうとしてますね。

まさに因果律の輪に落ちた自業自得なアホ。

まるで救いがないスタートを切りました(笑)


さて、この自業自得な場面。

彼は一体、どうやって乗り越えるのでしょうか?


そこは次回の講釈。


ま~~~たねぇ~~~(*´▽`*)ノ

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