●前回のおさらい●
横浜で、漸く奈緒さんを見付けたまでは良かったが。
待ってる間に退屈してしまったのか、奈緒さんはそこでゲリラライブを行っていた。
そして、あまりの多くの人間が集まってしまっていたので。
早急にこの事態を収拾する為にも、その場に居た鮫島さんを捕まえて交渉を持ち掛ける倉津君であった(笑)
「ちょ……アンタ、なにすんだよ?奈緒ちゃんの唄が……」
「なにが『奈緒ちゃんの唄が』だよ。鮫島。オマエ、こんな所で、なにやってんだよ?」
「いやいや、ちょっと勘弁して下さいよ。俺、偶々居合わせただけなんッスから」
「オイ、コラ、鮫。俺だよ俺。オマエ、なにビビってやがんだよ?」
「うん?……あぁ、なんだオマエかよ。スーツなんか着てるから、本物の筋もんかと思ったぞ」
うん。
まぁ君の意見は、強ち、間違ってはいないがな……
一応、言っておくぞ。
『失礼な!!』
「誰が筋もんだ!!」
「オイオイ、その言葉は、自分の姿を鏡で見てから言えよ。……それ、どこからどう見ても、完璧に『ヤ』の付く職業の人だぞ」
はい……ですよね。
実は、失礼でも、なんでもないッスよねぇ。
俺もな、自分の姿を家の姿見で見た時、この格好で外に出るのは、一瞬『辞めようかな』って躊躇したぐらいだもんな。
赤の他人のオマエに言われて再確認したがな。
確かに、こりゃあ、まごう事無き『ヤ』の付く職業の人だ。
因みに『ヤ』の付く仕事ってのは『薬剤師』の事だよな。
立派な仕事だよな。
違いますね。
厚かましい事を言って、すんません。
「……まっ、まぁ良い。そんな事よりよぉ。この後の事態を、なんとか収拾してくれよ」
「そりゃあ、まぁよぉ、奈緒ちゃんの為だって言うなら吝かじゃねぇけど。なんかメリットは有るのか?まさかオマエ『タダで助けてくれ』とか言わねぇよな」
「なんだよ?意外とセコイなオマエ」
「セコくねぇし。事態を収拾させてやるんだから。報酬を要求するのは、至極当たり前だろうが」
ケチ!!
「……あぁもぉ、わかった、わかった。しょうがねぇ奴だなぁ。だったらこれやるから、これで勘弁しろ」
「なんだこれ?豪くチャチなチケットだな。なんのチケットだよ?」
俺は鮫島に、明日の『文化祭のチケット』を手渡した。
しかも、このチケットは『フリーパス』で時間外でも裏門から入れるし、学校のどこのイベント会場にもフリーで入れる特殊な奴。
これはこれで、マニア垂涎の中々レアなチケットだと思うだがな。
まぁ言うて、本当はこれ、身内に渡す奴なんだけど。
どうせ身内で渡す奴なんていないから、後で捨てようと思って。
学生服のポケットからスーツのポケットに入れ替えただけの代物なんだけどな。
こんなんじゃダメか?
「ぶっ!!こっ、これ、オマエ……ちょ!!どこで手に入れたんだよ?俺が、結構、根回ししたのにも関わらず、手に入らなかった代物だぞ」
そうなんか?
けどまぁ、本人が喜んでるみたいだし。
如何にも価値を知ってる様な顔をして、このまま鮫島との交渉を続けてみるか。
「あぁっと、入手ルートについては、一切、関知するな。けど、これなら、十分な報酬になんだろ」
「いやはや、オマエって、マジで良い奴だな。そう言う事なら全面的に協力させて貰うぜ!!俺に任せとけよ相棒!!」
「オイオイ、解り易く現金な奴だな……」
この後、奈緒さんが唄い終わると。
鮫島with親衛隊が、俺との約束を果たす為に、上手く、この事態の収拾を図ってくれた。
んだがな……
止せば良いのに……奈緒さんは、悪戯ティンカーベル同様の悪い癖が発動して、この後も『とんでもない奇行』を始めるんだよ。
彼女が、なにをしたか?って言うとだな。
曲の終了後、フラっと何気に立ち上がったと思ったら……金が満タンに入ったGUILDのハードケースを徐に抱えて、フラフラと、コンビニまで持って行き。
入ってる現金を、全額募金箱にブチ込んだんだよ。
万券とかも、容赦なく全額だぞ全額!!
しかも、奈緒さんの後ろを、興味本位で付いて来てるファンの目の前でな。
こんな余計な真似をするからだな。
ファンの奴等が、また妙に盛り上がっちまってよ。
奈緒さんを囲んで、小1時間ほど離さなくなっちまったんだよな。
……ほんで、約1時間後、奈緒さんが、ウチの家の車に乗るまで、ファンとの交流を図っていた。
故にファンの方々も、これに満足したのか、最後まで奈緒さんを見送って、車が見えなくなるまで手を振っていた。
この奇行により、また奈緒さんの信者が増えた様な気がする。
しかしまぁ、この人って、やっぱ、人と感覚が全然違うよな。
さっきの『路上ライブ』にしても、そうなんだが。
そこで出た利益を『コンビニの募金箱に全額ぶち込む』なんて真似、普通の芸能人だったら絶対にしねぇぞ。
ほんと無茶苦茶だよ、この人だけは。
***
そんな想いを持ちながら、何所に行くとも決めていない車を走らせていると、横で奈緒さんが『クスクス』笑っていた。
「くすくす。面白かったね、クラ」
「奈緒さん!!」
「なによぉ。そんな怒んないでよ」
「いや、別に怒ってる訳じゃないんッスけどね……」
「それにさぁ。大体にして、君が直ぐに、私を見付けてくれないから悪いんだよ。直ぐに見付けてくれてさえすれば、あの事態は避けれたんだからさ……だから、これは全面的に君が悪いの」
「いぃ~~~!!いや、確かに、そう言われりゃ、そうッスけど。あれッスよ奈緒さん。『思い出の場所』と『待ってる』だけじゃ。そんなに直ぐにわかりませんって」
「そぉかなぁ?私に言わせれば、それは愛が足りない証拠だよ。愛がね」
ぐっ!!
そうストレートにハッキリと言われるとだな。
今回は『浮気の件』が有るだけに、大きな心当たりが有り、非常に心苦しいな。
「すんません」
「ふふっ、良いよ良いよ。最終的には、クラが、ちゃ~んと私の事を見付けてくれたんだから、満足だよ満足」
ぐむぅ~~~!!
そんな満面の笑みで、そんな事を言われたら、俺はなんも言えん。
ってか、なんで奈緒さんは、いつも、こうやって笑ってられるんだろうか?
それに、俺に逢いに来てくれた理由も、半分は解っているが、半分は未だ不明のまま。
解らない也にも、せめて、此処だけぐらいは、ちゃんと確認しとかないとな。
「あぁっと、それより奈緒さん……」
「ねぇねぇクラ。久しぶりにさぁ、赤レンガ倉庫に行きたい」
「えっ?いや、でも……」
「行きたい。連れて行って」
「あっ……はぁ」
俺が確認の話をする間もなく、奈緒さんは、何故か、赤レンガ倉庫に行く事を促してきた。
俺は……彼女の真意が全く見えないまま。
彼女の意見に沿って、赤レンガ倉庫を目指して車をひた走らせた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
結局、奈緒さんに振り回されっぱなしの倉津君ですが。
今回も倉津君に非があるので、これはもぉ逆らい様がありませんね(笑)
さてさて、そんな中。
奈緒さんの要望通り赤レンガ倉庫にやって来た2人なのですが。
此処では、一体、なにが起こるのでしょうか?
それは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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