第二十九話『ライブ前の試練・結果編』始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ
029【ライブ当日の試練・結果編】
昨晩……いや、もぉ寧ろ、この出来事自体は、今朝の出来事だったと言うべきなんだろうか?
なんと言ってもだな。
正確に寝むりに付いた時間なんか、全く記憶にないもんでな。
今現在の俺には、時間と言う概念がイマイチ欠落してる状態なんだよ。
まぁ、そんな感じに成ってしまったのは他でも無い。
奈緒さんに教えて貰った勉強法の一環である、テストの暗記と、ライブの練習を兼ねた演奏に没頭しすぎて。
時間が経つのも忘れる位、必死に楽器をかき鳴らし。
暗記物を憶えるまで、何度も暗記をする為の歌詞を唄い詰めたんだから、これはもぉしょうがない。
この、いつ終わる事もないエンドレスな時間を、体力の続く限り続けていたのが、時間の概念を消し去ってた理由だ。
だがな。
幾ら勉強の内容を憶える為に必死に成ってたとは言え、俺達も、ただの人間。
体力が無限に続く筈も無く。
気付けば俺は、奈緒さんに借りたベース(Fresher/Personal Bass)を腹の上に乗せたまま、床で大の字になり。
山中はドラムセットに突っ伏したまま、ピクリとも動かない状態に成っていた。
しかも、お互いのMDからは、まだ音源が流れたままの状態で、熟睡していた訳だ。
けどな、この状態、よく考えれば、こうなって当たり前の事だよな。
なんて言っても、此処2日間程、バンドの練習でオールが続いてたし。
その後に、この奈緒さん式の勉強法で、ライブの練習なんかをしながらオールなんかしたら、こうなるのは必定ってもんだろ。
流石にだな。
山中が、幾ら体力があるとは言っても、限界を超えちまったら、体の方が演奏を拒絶しちまったみたいだしな。
今じゃ、奴も起きる気配も無く爆睡している。
それ程までに、この三日間のハードなスケジュールで、俺達の疲労はピークに達していた。
もし、この後、追試なんて物が無かったら、何もかもを忘れて、今日1日眠り続けたい気分だ。
***
だが、眠りながらも、そんな風に思ってる俺を、誰かが邪魔する様に声を掛けてきた。
誰か知らねぇけど、少しは空気読めよな……
「クラ……君は、いつまで、そうして寝てるつもりなのよ。もぉ朝なんだから、いい加減起きなよ」
「もぉ……うっせぇなぁ。……俺ぁ疲れきってんだ。もぅ少し寝かせろ。……死んじまう」
ホント、誰かは知らねぇが、今だけは起すなよな。
そうやって俺を無理に起しても、不機嫌の大噴火を起して、余計な被害を喰うだけだぞ。
ワザワザ親切で起してくれてるのに、アンタも、そんな目に遭いたくはねぇだろうに。
だから起すな。
それが、お互いの為ってもんだ。
「もぉ、なにが眠いよ。昨日、散々、学校でも、勉強もせずに居眠りばっかりしてたくせに、どの口が、そんな事を言うのよ?」
「あぁ、もぉ、うっせぇなぁ。そんなの関係ねぇだろ。眠いもんは眠いんだよ。オマエが、誰だかシラネェけど、次、起したら、ただじゃおかねぇぞ」
そう言う訳だから、起すなっての。
しまいにゃあ……ブッ殺すぞ!!
・・・・・・
……あれ?
いや、ちょっと待てよ。
でも、この声……
「ハァ~~~……全くもぉ、君は、しょうがない子だなぁ。この寝ぼ助だけは……起・き・て・ク~ラ、もぉ朝だよぉ」
耳元で、聞き覚えのある優しい声が、俺に囁く。
……っと同時に、柑橘系のさわやかな香りが、俺の鼻腔を擽った。
「……奈緒……さん?」
いや、間違いなく奈緒さんだ。
この、彼女特有の柑橘系の香りが、眼を瞑ったまんまの状態でも、彼女だと認識させる。
・・・・・・
……あぁそうか。
そう言えば昨日、奈緒さん家で、奈緒さんと素直の2人に、色々勉強を教えて貰ってたんだっけ……じゃあ、起きねぇとマズイな。
って、そんな場合じゃねぇよ。
奈緒さんを、朝一から怒らせたら大変だな!!
そう感じた瞬間、俺の顔に片手を宛がい、唇に、何か柔らかいモノが押し当たってくる。
こっ……これって。
ひょっとして……噂の『モーニングキッス』って奴か?
俺は、目を瞑りながらも、急激に、奈緒さんを意識する事に成った。
そして、その後……俺の鼻腔から、さわやかな香りが消えた。
自然に、心拍数は上がり……
息が出来無いくらいに、心臓は高鳴っていく……
・・・・・・
あっ、あれ?
息が出来無いって言うより、どちらかと言うと息が苦しいぞ?
……って言うか、こりゃあ息が出来てねぇ。
「ううぅうぅ~~~ん、ううぅぅううぅ~~ん」
俺は、必死に手足をバタつかせて抵抗を試みる。
……が、完全に鼻を摘ままれた上に、口で口を塞がれ、俺の呼吸器からは、全く酸素が入ってこない。
しっ……死ぬ!!死ぬ!!
早朝一番から、軽く死ぬ!!
いや、軽く死ぬどころか、100%マジで死ぬ!!
このままじゃ、息が詰まって、窒息死は免れない。
だっ、誰か助けてくれ……
……死~~~~ぬ~~~~~!!
「プハァ~~~」
開放された口と鼻からは、一気に朝の新鮮な空気と、奈緒さんの柑橘系の香りが侵入して来た。
今の俺は、窒息から免れた為、自然に涙目になり。
クラクラした頭を押さえながら、周りを見渡すぐらいしか出来無い。
すると、あるものが目に付く。
俺の真横で、クスクス笑っている奈緒さんだ。
もぉこの人だけは……朝から、なんちゅう、非常識な事をするんだ。
……マジで、死ぬかと思ったッスよ!!
「はい、おはようクラ。漸く、お目覚め?」
「いやいや、奈緒さん。今のは目ぇ覚ますどころか、永遠に寝ちまうところでしたよ……朝っぱらから、殺す気ですか」
「なに言ってんのよ。君が何回起しても、全然、起きないから悪いんでしょ」
何回起しても起きなかった?
俺は、奈緒さんの言った言葉から、今の現状を把握しようと試みる。
・・・・・・
……あぁ、なるほどな。
以前学校でもあった、山中が俺を起した時みたいに、10分ぐらい色々な方法で起しても、俺が文句を言うバッカリで、一向に起きる様子が無かったんだな。
それで奈緒さんは、最終手段を発動したって訳か。
だったら、朝から奈緒さんに申し訳ない事したな。
そんな風に俺は、自分の寝起きの悪さを、少し反省した。
「あの、奈緒さん……そんなに、何回も起しても起きなかったんッスか?」
「うぅん。2回起しただけだけど」
「・・・・・・」
たった2回って……どんだけ気が短かいんッスか!!
普通だったら、もう何回か位は起してくれても、罰は当たらないと思うんッスけど。
まぁ、そうは言ってもだな。
今回に限っては、反省を継続だ。
俺が寝起きが悪いのと、中々起きないのは、何所まで行っても事実だしな。
少し寝惚けた頭のままで俺は、奈緒さんの顔をジッと見ながら、反省を継続する事にした。
「なに見てるのよ?君、ひょっとして怒ってるの?」
「いや、全然、怒ってないッスよ。寧ろ、奈緒さんのモーニング・キッスで起きれたんで、天国にも昇る気分ッス。文句の言い様がない朝ッスね」
「君って奴は、ホントにもぉ……そぉ言うところだけは、妙に敏感なんだね。流石、エロ虫だよ」
誰がエロ虫ッスか!!
朝から、勢い良く毒を吐くなぁ。
にしても、奈緒さんが言う『~虫』って言うの、久しぶりに聞いたな。
此処最近、全然言わなくなってたもんな。
なんか、妙に新鮮だな。
「まぁ、事実そうッスから、別にエロ虫でも良いッスけど……」
「ねぇクラ、君、大丈夫?今日、なんか妙に悟ってない?」
「いやいや、全然、悟ってなんか無いッスよ。寧ろ、逆っすよ逆。奈緒さんのチュ~で、この腐れ頭が、いつもの倍以上に寝惚けてんじゃないッスかね」
「『チュ~』って……」
あっ、なんか知らんが照れたぞ。
『キッス』って言うと欧米風で感じが良いけど、奈緒さんにとっては『チュ~』じゃエロイ感じなのか?
小さい事だが、意外とニュアンスが違うもんなんだな。
それにしても奈緒さんって、変な所で反応するんだな。
おもしれ。
なら、ちょっと、からかってみるかな。
またしても俺は、出来もしない馬鹿な事を考え始めていた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
昨晩は、本当によく頑張ったみたいですね。
そして、その翌朝には奈緒さんの強烈なモーニングキッス。
死にかけてましたね(笑)
さてさて、そんな中、また出来もしない「からかい」をしようと企む倉津君なのですが……上手く行くのか?
それはまた次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!