最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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634 眞子の決断と悪夢再来

公開日時: 2022年11月2日(水) 00:21
更新日時: 2023年9月12日(火) 11:38
文字数:2,521

●前回のおさらい●


 崇秀と奈緒さんの【眞子を庇う為】の言動により。

一旦、バラバラな方向に向いてしまったバンドのメンバー。


だが、その張本人である崇秀にその意図を聞き、更にアレンジされた奈緒さんの曲を渡された眞子は……

 そんな崇秀を見送りながら……私は、心の中で、ある大きな決意をしていた。


『直ぐにでも奈緒さんの所へ、このアレンジされた曲を持って行ってあげよう』


そう思っていた。


勿論、これは、崇秀に対する裏切り行為だと思われても仕方がない話ではあるんだけど。

矢張り、後々奈緒さんが困る様な真似だけは、絶対なにがあってもしたくはないんだよね。


だから……私は、崇秀を裏切った。


崇秀の姿が見えなくなった瞬間。

私はMDを握り締めて、奈緒さんの楽屋に向って、ひた走った。


***


 『はぁ……はぁ……』っと、少し息を切らせながら、楽屋の到着するや否や、なにも考えず、直ぐに扉を開いた。


『ガチャ』



「奈緒さん!!」

「うん?あぁ、眞子、どうかしたの?そんな血相まで変えて」

「あっ、あの、これを!!これを、なにも言わずに聞いて下さい。お願いします」


楽屋に入るなり深々と頭を下げて、お願いを申し出る。


これは、奈緒さんが変に頑固だから、普通に頼んでも聞き入れてくれないと思っての配慮。

流石にこうしたら、奈緒さんも無碍には断れないだろう、と言う打算も込みの話ではあるんだけどね。


今は時間が無いから、兎に角、全てを急ぐ必要があった。



「イキナリ入って来て、なに?どういうつもりなのよ眞子?」

「兎に角、時間がないんです。お願いですから1度だけでも聞いて下さい」

「だから、ちょっと待ってって。落ち着いて眞子。話が見えないから、対応に困ってるんだけど。第一なんなの、そのMD?」

「あの、これは、昨晩、崇秀がアレンジした奈緒さんの新曲です」

「ふ~~~む、私の新曲ねぇ。けど眞子、どうして君が、そんなものを持ってるのよ?」

「さっき崇秀に貰いました。……あぁ、でも、あの、誤解しないで下さい。私は、奈緒さんと敵対したい訳じゃないんです。私、出来れば、奈緒さんのライブを良いライブにしたいんです。……だから……あの……その……」


必死に頼み込んではみたものの……ダメかな?


こんな程度の説得じゃあ、奈緒さんは話を聞いてくれないかな?



「良いよ。……聞かせて」

「奈緒さん♪」

「あははっ……正直言うとね。眞子が入って来た時、そうじゃないかなぁって思って、ちょっと期待しちゃってたのよね。それに仲居間さんが、私の書きたくもなかったショウモナイ曲を、どんな風にアレンジしたのかも気になるし。……だから、聞かせて眞子」

「勿論♪あっ、あの、奈緒さん」

「うん?なに?」

「私も、貰って直ぐに此処まで来たんで、まだ聞いてないんですよ。だから、奈緒さんと一緒に聞いても良いですか?」


ははっ……

また、片一方づつのイヤホンで聞きたいな……なんて思ってるんだけど。


流石に此処は、公共の場だから女同士じゃ不味いか。


ちょっと残念。



「うん。じゃあ一緒に聞こっか。勿論、いつもの聞き方でね♪」


MDに接続されているイヤホンの片方を私に手渡しながら、奈緒さんはそう言ってくれた。


やった♪



「あっ、はい」


イヤホンを貰うと、直ぐに奈緒さんの横にチョコンと座って体を寄せる。

そんで、そんで、奈緒さんの肩に、顔を乗せてみる。


ふふっ、幸せ♪



「あの~~~、眞子。……気持ちは解るんだけど。それは、流石に逆じゃない?せめて、その女の子ポジションだけは、私に譲ってよ」


ははっ……ごめんなさい。


調子に乗りすぎました。


ごめんなさい。



「ははっ……ですね」


なんて、ライブまでの緊張感が全くないまま、幸せを満喫してたりする。



……でも、そんな幸せな時間も此処までだった。


MDのスタートボタンを押した瞬間。


-♪--♪-♪-♪-------♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪……


奈緒さんが作った『売る為だけの曲』が、恐ろしい様な変貌を遂げ。

アレンジされた曲が耳から一気に突き抜けて、脳全体に一瞬にして襲い掛かってくる。


余りの衝撃的な音に、瞬時に『頭の中が真っ白』になっていく……


それは、なにもかもが吹き飛ばされそうになるぐらい恐ろしい音だった……


***


 ……私と、奈緒さんが、意識を取り戻した時には。

崇秀によってアレンジされた新曲である2曲が、完全にMDから流れ終わった後。


ただ……曲のインパクトや、メロディーラインは、その真っ白になった頭の中に、忘れないぐらい『記憶』されている。



『何故か3曲目だけは、入っていなかったけど……』




「なっ……なにこれ?……あんな適当に作った曲が、どうやったら、こんな風になるのよ?……やっぱり、どうかしてるよ、あの人……」


曲を聞き終えた奈緒さんは、完全に茫然自失になりながら、そう小さくそう呟いた。


完全に正気を失ってる。


それ程までに深刻なダメージを与え。

多大なインパクトを、頭に残す様な曲に変貌していた。


兎に角、普通の演奏じゃ出来無い様なテクニックが、ふんだんに織り交ぜられていた。


それになにより、一番恐ろしいのは、崇秀が演奏している訳ではなく。

ただのパソコンの打ち込みレベルで、これだけの音を表現している事。


矢張り崇秀は、全てに於いて尋常じゃない。



寧ろ、こんな曲を崇秀に弾かせて大丈夫なものなんだろうか……っと言う不安すら過ってしまう。



「眞子……ダメだ」

「えっ?」

「これはもぉ、カズといがみ合ってる場合じゃないよ。……私、カズに頭を下げてでも、このMDを聞かせないと不味いと思うの」

「あっ、あぁ、はい、そうですね。わっ、私もそうだと思います」

「じゃあ眞子、序に聞くけど、曲は頭に残ってる?ちゃんと憶えれた?」

「あっ、はい。……嫌なぐらいに鮮明に残ってます。だから、そこは大丈夫です」


この崇秀がアレンジした曲を聞いた瞬間から、思わぬ方向に事態は急転直下を迎えた。


そして奈緒さんは、慌てて山中君を探しに外に飛び出し。

私は、その間にもベースを手に取り、懸命にアレンジされた新曲を再現しようとするけど……


これが中々上手くいかない。


なんて言っても。

この崇秀によってアレンジされた曲は、普通の演奏の仕方じゃ、どうやっても補いきれない部分が多岐に渡ってある。


こんな演奏の難易度が高い曲、今までに聞いた事もないのだから。


でも……どうしても、それを再現したい私は懸命に練習を続けた。



本番まで後……もぉ30分しかないと言うのに……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第二十九話【ARENA-back stage】は、崇秀によりトンデモナイ爆弾が投下され。

事態が急転直下を迎えながらも、お仕舞に成るのですが……如何だったでしょうか?


……っで更に、これすらも『崇秀の計算の中にあった事』だと言ったら、皆さんは、どう思われますか?


そうなんですよ。

事実、この企画を始めた理由を、本人は眞子に『突発で考えた企画』だと言っていたのですが。

此処まで用意周到に下準備をしている以上【これは突発なんかではなく】全てが、あの異端児の掌の上での話。


なので崇秀が言った『突発の意味』は、この企画を始める為の『切欠』として揉め事を起こしたのが『突発だった』ってだけの話なんですね。


あのイカレポンチは……本当に恐ろしい男なんですよ(笑)


さてさて、そんな眞子達が困窮した状況の中。

次回からは、第三十話の【Dancing-Marionette】っと言うお話が始まる訳なのですが。


この不気味なタイトルの意味する所は、一体、何なのか?

そして眞子達は、崇秀のアレンジした曲を奏でる事が出来るのか?


その辺を次回は書いていきたいと思いますので。

少しでも気にして頂けましたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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