最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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124 不良さん 驚愕の事実を知らされる

公開日時: 2021年6月10日(木) 00:21
更新日時: 2022年11月22日(火) 13:24
文字数:2,717

●前回までのあらすじ●


 バンドの事で口喧嘩に成る倉津君と山中君。

しかし、その内、倉津君は、このバンドが『崇秀の討伐』を目標としたバンドだと思い出させられる。


そして、その核心とも思える雑誌が、今倉津君の顔面に向けて飛んできた。


一体、そこには、なにが書かれているのか?

「いってぇなぁ!!なにしやがるんだ、この野郎!!」

「えぇから、黙って、それ、見てみぃ。それ見ても、まだそんな生温い事が言えんのかが楽しみやわ」

「んだよ、これ?なんの雑誌だよ?」

「アホが、ちゃんと表紙見ぃ。それは俺が取り寄せた、アメリカのインディーズ・チャートの雑誌や。68ページ……取り敢えず、なんも言わんと見てみぃ」

「うっせぇなぁ」

「ゴチャゴチャ言うてやんと、早ょ見ぃ!!」

「もぉうっせぇなぁ。ゴチャゴチャ言ってんのは、テメェだろがよぉ……ったくよぉ」


無駄口を叩きながら、ペラペラと指定されたページを目指して雑誌を捲る。


先程の説明通り、この雑誌自体は、山中がアメリカから取り寄せモノ。

故に内容は、全て英語。


なので、当然、全ては理解出来無い。

(↑会話は出来るが、単語は知らない俺)


まぁそうは言ってもだ。

この手の音楽雑誌なら、全部の意味なんて解らなくても、有る程度は写真を見れば、なにが書いてあるかは解る。


なので恐らく、大きな問題はない筈だ。


そうやって、ブツブツと文句を垂れながらも、俺は、山中に指定されたページまで、更にペラペラと捲っていく。


すると、そこには……



……なっ!!なんで崇秀が見開きのカラーページに出てやがるんだ。



「驚いたか?そやけど、その程度で驚くのは、まだまだまだ早いで。その性質の悪いビックリ箱の中身は、それだけやない。……次は77ページや」


驚きを隠せないまま、指定ページを開く。


そこには、更に違うバンドのメンバーで、また奴の写真が掲載されていた。



「なっ……なんだと?」

「まだや、まだ有るねん……最後や144ページ開いて見ぃ」


言葉通りに、再びページを進め。

ページを開いてみると、奴の3枚目の写真。


なんなんだよ、これ?

なんでアイツは、まったく異なる3つのバンドで写真を取られてんだよ?



「ちょっとは、これで眼ぇ覚めたか、ボケ?」

「こっ、こりゃあ、一体、どっ、どういうこった?説明しろ!!」

「説明も糞も無いわ。あのガキはな。アメリカに渡って、たった3ヶ月で3バンドを作り。その上、こんな雑誌に載る様なインディーズバンドまでのし上げよったんや。しかも、全米インディーズチャートの上位ランクに入るってオマケまで付けてな」

「なっ!!……あっ、あっ、有り得ねぇだろ」

「それがアイツの場合にのみ有り得るんや。正直、俺も、アイツが、此処まで徹底抗戦を仕掛けてくるとは夢にも思わんかった。まずにして『どうせアメリカでは通じへん』とか高を括ってたんが、大きな間違いやったんやな。アイツは相変わらず、一切手抜きをせん。……これでも、まだ奈緒ちゃんは下手糞やないって言うんか?俺も含めて全員下手糞なんちゃうか?」

「・・・・・・」


馬鹿過ぎる。

アイツだけは、本当に限度を知らない馬鹿だ。

音楽やエンターテイメントの世界では、他の追随を許さないアメリカで、3バンド結成しただけでも大したものなのに。

それを、たったの3ヶ月で、自分が在籍する全バンドを、きっちりインディーズまでのし上げただと。


こんなもん、常識外れも良いところだ。



「一応、それと一緒に取り寄せたライブの音源も有るぞ。……聞くか?」

「あっ……あぁ」

「これを渡す前に、先に忠告しとくぞ。秀の演奏レベルは、もぅ既に、あのライブの時のレベルや無い。遥か彼方まで行っとるで」

「なっ……んだと?」

「向こうに渡ってから、かなりハードに練習したんやろな。アイツのレベルは、もうプロレベルとか、そう言う甘いレベルの話やない。……まぁ取り敢えずは論より証拠や、それ、聞いてみぃ。そこに強烈なぐらいに嫌な真実が眠っとるから」

「あっ、あぁ」


俺は、山中の言葉に一瞬躊躇しながらもMDを受け取った。


正直、あれだけ脅されたんだ。

聞く事に対して、かなりの抵抗感がある。

……が、聞きかねぇと始まらねぇから、嫌々だが聞き始める。



その音源は、ライブ音源らしく。

まず最初はザワザワとしたオーディエンスの声がする。


少し時間を置いて、バンドのボーカルが一曲目をコールする。


当然、此処からは大きな盛り上がりになり。

一瞬、客の声しか聞こえなくなるが、再度、此処でボーカルがコールをする。


よくは聞き取れなかったが、どうやら1曲目は『HIT&AWAY』っと言った、題名の付いた曲らしい。


激しい演奏から始まる所を見ると、ジャンルはパンク。


勿論、パンク系の曲だけに、その歌詞がまた最悪だ。

題名通り『HIT=叩く』『AWAY=逃げる』

即ち『通り魔』若しくは『ノックアウト強盗』の様な奴の犯罪者心理を唄った歌。


のっけから、金持ちに対する殺意が唄われている。


更に、一番のサビの部分では、観客がボーカルに合わせて『HIT!!』と叫び。

2番では『KNOCK・OUT』と叫ぶ。


高々MDから聞いてるだけなのに、客の盛り上がりと臨場感が恐ろしい程に伝わってくる。


だが、その臨場感とは別に、歌を唄っているボーカルは、正直大した事は無い。

コイツの歌は、まだノリだけを追求して必死に叫んでいるだけであって、とても上手いとまでは言えるレベルではない。


レベル的に言えば、素直や、奈緒さんのかなり下。

100%素直や、奈緒さんの方が上手いと言って過言ではない。


同じ様に、ベース・ドラムも、どこにでも居る様な極々平凡なレベル。

最低限度ボーカルよりは上手いレベルだとは認識出来るが、どこをどう聞いても、別に、これといった特色もなく、ただ少し上手いだけ……それだけのレベルに過ぎない。


勿論、これらも、山中や、奈緒さんの敵では無く、酷く下のレベルの演奏だ。


総称するとだな。

このバンド自体は、インディーズに出る程の実力がない下手糞なバンド。

どちらかと言えば『高校の文化祭レベル』のヘッポコ・バンドだ。



ただなぁ……それでも、このバンドは、全米インディーズチャートに入っている。


その理由は言うまでも無く。

そんなレベルの低いバンドに有っても、アイツが異彩を放っているからだ。


この程度の低い、素人に毛が生えた程度のバンドなのにも関わらず、奴がギター弾くだけで、その糞みたいな下手糞な演奏が、簡単に変化する。

奴の演奏しているパートだけは、プロのミュージシャンがフォローしてるのかと思わせる位、下手糞な他のメンバーの音が底上げし、理由も解らず、何故か上手く聞こえる。


更に、今までの奴ならば、演奏で『風景』を見せたり、簡単な心情を伝える事位しか出来なかったのにも関わらず。

この曲を聴くだけで『通り魔』や『ノックアウト強盗』がしたくなる程の抑えきれない衝動が、あの時以上に押し寄せてくる。


現に俺自身、今、人を殴りたくて堪らない。



渡米して3ヶ月。

奴の表現力が格段に上がっているのだけは確かだ。


化け物め……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


エグイですねぇ。

崇秀は、一切の容赦もなく、徹底抗戦を仕掛けて来ましたね(笑)

その上、ギターの腕前も、以前とは比べ物に成らないぐらい上がってる。


これを聞かされて倉津君は、一体、どうするのでしょうか?


そしてそれは、恒例に成りました、次回の講釈。

また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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