最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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114 不良さん 新たな提案を受ける

公開日時: 2021年5月31日(月) 00:21
更新日時: 2022年11月20日(日) 14:13
文字数:4,073

●前回のおさらい●


 理屈もへったくれもない、かなり無茶は方法ではあったが。

倉津君の真剣な気持ちが伝わって、奈緒さんがバンドに戻る事を了承してくれた。


だが、それだけでは、まだ終わりでは無かった。


そこに崇秀が現れてしまったから……

「『たっ、崇秀』じゃねぇよ。楽屋で、いつまで待っても来ねぇから、わざわざ出向いて見りゃ、ラブコメ本番中だと?……なんだそりゃあ?クスリとも笑えねぇ酷いジョークだな」

「えぇ……今、何時だよ?そんなに時間経ってたのかよ」

「あぁ経ってたな。余裕で一時間以上経ってるぞ」


ヤバイな。

崇秀は、異常なまでに時間に五月蝿い。

それこそ、一分どころか、秒単位で怒る。


兎に角、コイツの時間への執着心は異常だ。


まいったなぁ。



「あっ、あのよぉ……少しぐらいは、時間まけてくれるよな?」

「はぁ?なに甘えた事を言ってんの、オマエ?TIME・UPに決まってんだろ。終了だよ終了」

「うげっ」


最悪だなコイツ。


幾ら時間を守る事が大事とは言え。

少しぐらいなら、まけてくれても良いじゃねぇかよ。


まぁ言っても無駄だろうけどな。



「……っと言いたいところだが。今回に限っては、葉緑体が必死に頑張ったから、まけてやる。盛大に感謝しろ」


奇跡か?

崇秀が時間をまけてくれたぞ。


取り敢えずだが、馬鹿の気が変わらねぇ内に、感謝したフリだけでもしておこう。


もうこれ以上、面倒臭いのは、お断りだ。



「あぁそうかよ、そうかよ。そりゃあ、ありがとうよ」

「ほぉ、成長したもんだ。オマエでも感謝出来んだな」


一度、気が変ったら、オマエはしつこいから、時間短縮の為を思って感謝してやったのに、なんて言い草だよ。


オマエも、少しは気を使えボケ。



「うるせぇよ。……んな事より、俺は約束守ったぞ。これからどうすんだよ?」

「さぁ~てね、どうすっかな?俺の思い描いてた構図と、少し予定が変わったからな」

「なんだよ?どういう事だよ?」

「うん?あぁオマエの説得なんぞで、向井さんが戻って来るとは思わなかった。所謂、予想外って奴だな。だから、今後の計画に、少々ズレが生じたまでのこった。まぁ大した問題じゃ無いがな」

「あの……やっぱり……私がバンドに戻るのは迷惑でしたか?」


あのなぁ崇秀。

折角、奈緒さんが『戻って来てくれる』って言ってのに、なに言ってんだよ。


可哀想に、俯いて話してるじゃないか。



「うんにゃ。計画なんざ上手くいかねぇ程おもしろい……それに、そのお陰で、別に面白い事を思いついた。だからソイツに変更する」


なに、何事も無かった様な話し方をしてるんだよ?


ろくでもない。


それに計画が頓挫したくせに、コイツ、やけに楽しそうじゃねぇかよ。

どういう神経してんだ?



「仲居間さん、なにするつもりなんですか?」

「なぁ~にな、大したこっちゃねぇ。向井さんと、アリス、この2人のボーカルを基準にしたバンドを作る。……それだけのこった」

「なんだそれ?意味わかんねぇぞ?」

「オマエねぇ。ホントに、こんな簡単な事もわかんねぇのか?オマエって、信じられねぇぐらい馬鹿なんだな」

「んなもん、わかるかぁ!!」


なにを企んでやがる?

それにオマエは、何故、そんなにニヤニヤしている?



「少しは考えろ」

「わかるかよ!!ねぇ奈緒さん」

「えっ……あの……クラ、急に振らないでよ」

「オイオイ、まさか向井さんまで『わかんねぇ』とか言うんじゃねぇだろうな」

「・・・・・・」


突然の話し過ぎて、奈緒さんも解らないらしい。


……って言うか、オマエの頭の中で考えてる事なんぞ、誰もわかんねぇよ。



「もぉ、勘弁してくれよぉ~。良いか?今までの会話の中で、ヒントは沢山出してるぞ」

「ヒントだと?……オマエの言った事なんざ『奈緒さんと、アリスを中心にしたバンドを作る』って言っただけじゃないかよ」

「あぁそれだ、それ。なんだ、わかってんじゃねぇか」

「いや、だからよぉ」

「オマエは、ホトホトアホだな。……寧ろ、なんで、そこまでわかってて、最後まで行き着かねぇんだよ。オマエさぁ、糞甘いコーヒー牛乳飲み過ぎて、酷い成人病に掛かって、早く死ねば良いのにな」


わからねぇ程度で、酷い言われ様だ。


つぅか、この年で糖尿病なんぞに成りたくねぇわ!!



「オマエねぇ」

「……まぁ葉緑体相手だから、所詮は、こんなもんか」

「あぁ、そうですなぁ。降参だ降参。さっさと教えろ」

「あぁまぁ、説明するのは構わねぇがよぉ。……オマエ等、それで良い訳?俺の思惑通りになっちまうぞ」


崇秀の奴が、あまりにもタイミング良く会話に入ってきたもんだから忘れていたが……よくよく考えれば、約束を守ったんだから、なにもコイツの言う事を聞く事は無いな。


……かと言ってだ。

この馬鹿が、何を考えてるのか興味が無い訳じゃねぇ。


どうすっかな?



「良いも糞も有るか。聞いてダメなら却下だ」

「あっそ」


いとも簡単に納得した。


……って言う事は何か?

『自分の話に喰い付かない筈は無い』とでも踏んでいるのか?


もしそうなら、自信過剰にも程があんぞ。



「んじゃま、軽く説明してみっか」


当然……崇秀は、とんでもない事を言い始める。



「じゃあ、まず確認な。……バンドのメンバーって、基本、何人だ?」

「あぁ?人数だと?」

「あぁ、人数だ」

「普通だと、ボーカル・ギター・ドラム・ベース・シンセ……多くて5人ぐらいのもんじゃねぇのか?」

「まぁそうだな。普通そんなもんだな」

「なにが聞きたいんだよ、オマエ?」

「うん?……いや、それって『誰が決めたのかなぁ?』って思ってよ」

「常識だろ。……人数が多過ぎたら……その、あれだ。ギャラが安くなるから必要最低限に抑えるのが基本だろ」

「まぁそうだな」


これまたアッサリ納得。


確かに、さっき金儲けの話をしていたんだから、納得するのはわかるが……意味は、サッパリわかんねぇ。



「だから!!なんなんだよ、オマエは?訳のわかんねぇ事バッカリ聞きやがって」

「そこから、よく考えてみろよ。自ずと答えは出て来る筈だぞ」

「はぁ?」

「良いか?今のオマエの話を基準に考えたら。バンドをやってる奴は『音楽で生計を立てたい奴』が大半だ」

「だろうな」

「それと合わせて、向井さんと、アリスを基準にしたバンドを作る理由を考えてみろ」

「なんだそりゃ?訳わかんねぇ」

「まだわかねぇみたいだな?……仕方ねぇ。オマエじゃ埒があかねぇ。向井さんはどうだ?」

「イマイチわかんないけど、1つ気になる事が」

「それそれ」


奈緒さんは、なんも言ってねぇつぅ~の。



「あの……まだ、なにも言って無いんですけど」

「いいや。今の話で、なにか違和感を感じたんなら、多分、それで合ってる。……言ってみ」

「あぁ……多分だけど、メンバーをシャッフルするんじゃないかなって」

「シャッフル?」

「ふ~ん。理由は?」


あっ……俺だけ無視しやがった。



「う~ん。これも恐らくなんですけど。まずさっきの話で『お金を稼ぐ=飽きさせない』って方程式が成立してる訳でしょ。それで『飽きさせない=違うメンバー』。そうしたら『違うメンバー=音楽の幅』『音楽の幅=色々なジャンルの曲』『色々なジャンルの曲=お金を稼ぐ』が成立すると思うんですけど」

「うん。話が早い。ほぼ正解」

「ほぼかぁ。……じゃあ後、有るとしたら、アリスと、私を競わせる為ってところかな」

「うん、殆ど正解。後は、何を競うかを考えれば簡単」

「う~ん、なんだろ?競う対象かぁ」

「『占有権』って言えば、わかるかな?」

「あっ!!そうか、クラの占有権か」


はぁ?なんで此処で俺の話が出て来るんだ?


確かに、奈緒さんも素直も、俺も事を好きでいてくれてるのはわかっている。

……かと言ってだ。

今回の事で、此処まで酷い目に遭った俺は、二度とそんな気は起こさない。


『奈緒さんLOVE』に生きる。


……っとなればだ。

この計画は、意味を成さない様な気がするんだが……訳わかんねぇ?



「そう言う事。流石は女子だな」

「いっ、嫌な感じ」

「だろうな」

「奈緒さん……どういう事ッスか?」

「仲居間さん最悪だよ」

「なにがッスか?コイツが最悪なのは、今に始まった事じゃないッスよ」

「あのね、クラ。今は、そう言う事を言ってるんじゃないんだよ。……この人が最悪なのはね。『私と、アリスの恋心を利用する』って言って明言してるのよ」

「いや、なんッスか、それ?最悪にも程が有りますよ。……けど、それは無理な話ッスよ。俺は、二度と浮ついた気持ちにはならないッスから」


これで問題は無いと思うんだが……



「ありがと……でもね。私、前にも言ったけど、人より嫉妬深いのよ。クラが浮気しないって、わかってても、納得出来なかったりするのよ」


まぁ奈緒さんヤキモチ焼いてくれますからね。



「それでね。わかってても一緒に居なきゃ疑っちゃうのよ。『クラが、アリスに靡くかも』とか思っちゃうのよ」

「はぁ」

「じゃあ、どうすれば良いと思う?」

「いや、俺と、奈緒さんが一緒にバンドすりゃ良いじゃないですか?」

「そこよそこ。……仲居間さんが、意地悪な事を考えてる部分は」

「はぁ?」


わからん。



「良いクラ?この人は、私と、アリスのどちらかにしか、君を付けないつもりなのよ。バンドを分けるって言い出したのは、そのせい。売れた方にしか、君と一緒の時間を作らせない。……酷い話だよ」

「いや……じゃあ、崇秀の話に乗らなきゃ良いじゃないですか?」

「クラ……私が負けず嫌いなの知ってるでしょ。『やらない』なんて言ったら、この人、絶対『自信無いんだ』とか言うに決まってるじゃない」


あぁ確かに、そうですね。

崇秀なら100%そう言うでしょうね。


うん?ちょっと待て。


って事はなにか?

ウチのバンドのメンバーには、誰にも拒否権は無いって事じゃないのか?


このバンドのメンバーは、嶋田さんを除けば、全員が全員『負けず嫌い』

特に山中なんて、人に馬鹿にされるのが嫌いだから100%ムキになるに決まってる。


それに素直は、平気で『俺と奈緒さんが別れるのを待つ様な女』

俺と一緒に居るだけで『満足』とか言い兼ねない。


序に言えば、この条件には『ギャラ』の話も絡んでくる。

そうなれば自ずと、嶋田さんの目標である『音楽で生計を立てる』って目的も果たせる。


このシャッフルでメンバーを決める条件は、簡単に、全員のライバル心を煽れるし、それに伴うギャラも入ってくる。


『儲け』と『ヤル気』の両立。

瞬時になんちゅう事、考えんだコイツは……


キチガイか!!


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


またしても、妙に理に適ったシャッフルと言うややこしい案件を持って来られましたね(笑)


倉津君は、この提案をどう受け止めるのでしょう?

そして、そのやり玉に挙げられた奈緒さんも、どういう対応を取るのか?


それは次回の講釈(笑)

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

(今回、長くてすみません( ;∀;))

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