●前回のおさらい●
バレたら「脱税」に成りかねない、少々危険な香港経由のルートを辞めさせ。
国にもシッカリと認めている、脱税に成らない『やや黒い正規ルート』を、真上さんに提案した倉津君。
その言葉に、大きな義理を感じた真上さんは『ありがとうございます……私、この身に変えても、倉津さんに、この借りをお返させて頂きますね』っと言い出したので、これは真上さんの性格上危険だと感じた倉津君は、少し言葉を添える事にした。
「あのねぇ真上さん。そんな重い事を言う人には、このルートは教えませんよ」
「おっ、重いですか?私の言ってる事は、そんなに重いですか?」
「重いですよ。滅茶苦茶ヘビーでしたよ。一瞬、宮仕えしてるサムライかと思いましたよ」
「サムライですか……」
「そうッス。サムライっす。って言うか真上さん。友達なんだから、もっと気楽な感じで良いんじゃないですか?持ちつ持たれつって感じで」
「あっ、ですが……」
正にこの辺は『3つ子の魂100まで』だな。
きっと、昔から、こう言う性格ままで育って来たから、この程度の簡単な理由じゃ納得出来無いんだろうな。
兎に角、こういう所は頑固だ。
「ここで反抗したら、真上さんの事を『真上ザムライ』って呼びますよ」
「えっ?」
「駅だろうと、街中だろうと、真上さんを見つけたら『真上ザムライさ~~~ん』ってデカイ声で呼びますよ。それでも良いんッスか?」
「そっ、それは、ちょっと……」
「だったら言う事を聞いて下さい。じゃないと、本当にやりますよ」
「意外と意地が悪いんですね」
「そうッスよ。真上さんみたいな人に、意地悪をするのが大好きです」
「何故でしょうか?そう言われますと、なんだか無性に口惜しいですね」
あっ!!これは、なんか非常に不味い導火線に火を着けたんじゃないか俺?
この人の本質って、確か、奈緒さんに似てたよな……
って事は、あれか?あれだな。
きっと、このパターンからして『わかりました。今回の件は、倉津さんのご好意に甘えて、私が折れます……ですが、倉津さんが困った時は、全力でバックアップさせて頂きますね』って言うだろうな……多分。
「あの、真上さん……」
「……わかりました」
うわっ!!来た!!
「本当に、ありがとうございます。では、厚かましいとは思いますが、倉津さんのご好意に甘えさせて頂きますね。本当に、ありがとうございます」
あれ?素直に受け入れた。
あっ、あれ、おかしいなぁ?
まさか真上さんが、こうもアッサリと納得するなんて思いも寄らなかったよ。
そんな風に、とんだ拍子抜けを喰らった俺は、真上さんの顔をジッと見ていた。
すると彼女は、不思議そうな顔をして、俺に言葉を投げ掛けてくれた。
「あっ、あの?なっ、なにか?」
「いっ、いや、別に……」
この様子じゃ、これは、ボケやツッコミの類は無さそうだな。
って事は、意外と奈緒さんとは、似て非なる性格って事か?
「まぁまぁ、なんでもないッス」
「そうですか」
「ところで真上さん。今日は、これで終わりッスか?」
「大凡の部分では、おしまいですよ」
「って事は、まだなにか残ってるんッスか?」
「いえいえ、今からする事は、急ぎのものではないんですよ。倉津さんのお陰で早く用事が済みましたので、この時間を利用して、少しTシャツの新しいデザインを考えようかと思いましてね」
この人、まだ仕事をする気なんだ。
本当に、する事の多い人だな。
よくこんな調子で、毎日生活出来てるよな。
感心するわ。
「あの、差し支えなかったら見せて貰って良いッスか?」
「本当は企業秘密なんですけど、倉津さんになら構わないですよ」
そう言って真上さんは、パソコン(当時Windows96)を立ち上げた。
そして、そのパソコンは、長い時間『カリカリカリ……』っと、ハードディスクの読み取り音が続く。
この長さから言って、かなり容量を使っている様だ。
***
……待つ事7分。
ドンだけ容量使ってんだよ、この人!!
こんな立ち上がりが遅いパソコンは初めて見たぞ!!
……っと怒っても仕方が無いので、画面に集中する。
そして、真上さんは1つのフォルダーを開けた。
そこには、Jpegで保存された大量のデータが表示された。
「凄い量ッスね」
「すみません。どうにも貧乏性なもので、試作や、没にしたデザインも、消すのが惜しくて、ついつい全部保存してしまうんですよ。それで、この有様なんですよ」
「なるほど、それはまたクリエーターらしいクセっすね」
「面目ないです」
良くある話なんだけどな。
例え、デザインを描くのに失敗しても。
それが没にすべきデザインだと解っていても。
『これって、いつか使えるんじゃないかな』って思って、ついつい保存しちゃう癖がクリエーターにはあるんだよなぁ。
なので、その真上さんの気持ちは良く解ります。
まぁ、ハードディスクを圧迫するだけの典型的なダメな思考のパターンではあるんだけどな。
俺は、そう思いながらも、一枚の没デザインに興味がそそった。
「真上さん……それも没デザインッスか?」
「あっ、はい、少し気に入ったデザインだったのですが。Tシャツのデザインに合わなっかたもので、没にしました」
「そうッスか……それ、ちょっと立ち上げて貰って良いですか」
「あぁはい、構いませんよ」
一枚の絵が、画面上に立ち上がる。
確かに彼女の言った通り、Tシャツのデザインとして使うには、少しなにか物足りない感じがする。
だが、逆に言えばな、なにかインパクトのある物を付け足せば、良い様な気もする。
俺は、徐に鞄からノートと鉛筆を取り出し、画面のデザインを模写。
そこから、幾つかのパーツを付け足したりしてみた。
「なにをされてるのですか?」
「いや、あの、ちょっと付け足し」
「えぇっと、どんな感じになりましたか?」
「……不気味になりました」
「不気味に?……差し支えなければ、見せて貰っても良いですか?」
「あぁ、良いッスけど。素人絵だから期待しないで下さいよ」
何も考えずに、ノートをそのまま真上さんに渡してみる。
すると真上さんは、思った以上に笑い始めた。
いや、あの……幾ら下手だからと言っても、そんな笑わんでも(´;ω;`)ブワッ
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
2人で、なんだか楽しそうにやってますね。
まぁ、そうは言っても倉津君はアホな事はしますが、浮気をする様な子ではないので、この辺は意外と安心なのかもしれませんね(笑)
……っでまぁ一見すると。
こう言う場面って、文化祭とは全然関係ない話を書いている様に見えるとは思うのですが。
その実、こう言う『人間関係の構築』こそが、文化祭の準備を潤滑に進める最短の方法。
ご機嫌取りをしている訳ではないのですが。
『手伝ってくれている人に対しての恩義を返す様にしていけば、相手も、その気持ちに応えてくれるかもしれない』って言う法則もあるんですね。
まぁ、倉津君の場合は……ただの天然でしょうけど(笑)
さてさてそんな中。
倉津君の改良したデザインを見て、笑い始めた真上さん。
一体、何故、こんなに彼女は笑ってしまったのでしょうか?
そこの謎にたいする解答は、次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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