●前回のおさらい●
崇秀の件で思いっきり泣いてしまった眞子と奈緒さんは、矢張り身嗜みがボロボロ。
特に眞子はボロボロなのだが、奈緒さんもかなり酷い状態なので、そこを指摘してみると……
「……でもさぁ。こんなに泣いたのって、ホント久しぶりだもん」
「ですね」
「こんな風にミットモナイ姿を眞子に晒すなんて、自分でもビックリしてるよ」
「あぁ、そこは大丈夫ですよ。私は、なにも見てませんから」
ヤッパ、嫌なんだ。
……って言うか。
それに気付いてしまった以上、身嗜みが気に成るのは女性の性と言っても過言じゃないですもんね。
だから、今日の見た事は、全て見なかった事にして置きますね。
心の中にだけ留めて置きます。
「また、そんな事を言って。そうやって、自分の髪を先に梳かして貰おうと思ってるんじゃないの?」
「あぁ、いえいえ、流石にそんな我儘は言いませんよ。奈緒ネェから、先にどうぞ。私は、昏睡明けの病人って事なんで、まだ誤魔化しが利きますけど。……お見舞いに来てくれた奈緒ネェがそれじゃあ、流石にマズイでしょ」
「まぁ……ねぇ」
「だったら、先に、自分からやっちゃって下さい。……その後、時間が有ったら、セットをして貰えたら嬉しいですけど」
「そぉ?……じゃあ、悪いけど、先にやっちゃうね」
「あぁどうぞ、どうぞ。幾らでも、納得行くまでやって下さい。……あっ、でも、出来ればですね。そこのブラシだけは取って貰って良いですか?自分でも出来る範囲は頑張ってみようと思いますんで」
プルプル震えるだけの握力の全く無い手ですが、それでも出来る限りの抵抗だけは試みてみます。
いつまでも身嗜みを整えるのに、迷惑を掛ける訳にも行きませんしね。
それに、ひょっとしたら、この行自体が『少しはリハビリ効果が有る』かも知れませんので、まずは自分で頑張ってみます。
「アンタ、本気で、その手で……やるつもりなの?」
「あぁ、はい。……本当は、今直ぐにでも、自分で綺麗に成りたいんですけど、多分、今日はどうやっても無理だと思うんですね。でも、出来る限り、人の助けは借りない様にしていきたいと思ってますんで」
「好きな男の為とは言え。……よぉ、やるよ」
「すみません。……馬鹿で、力が抜けないのが私なんで。基本は、全部全力投球になっちゃうんですよね」
「ふふっ。わかった、わかった。それじゃあ、ちょっと待ってね」
「あぁ、はい」
そう言って奈緒ネェは、自分の鞄からハンカチを取り出して、それから私の指定したブラシを持たしてくれ。
その取り出したハンカチを使って、ブラシと、私の手を固定してくれた。
『ブラシが手から落ちない為の配慮』
これは、今の私にとっては非常に有り難い配慮だね。
ただ持ったんじゃあ、馬鹿みたいにポロポロ落しそうだからね。
ホント、どんな時であっても、奈緒ネェは瞬時に気が利く人だなぁ。
「はい、じゃあ、これでOK。後は、出来るだけ頑張ってみ。……愛しのダーリンの為にね。ぷぷっ……」
からかわないの。
「あぁ、はい。頑張ります♪」
「うわっ!!なにこの子、なんかムカツクんだけど」
「……からかうからですよ」
「ハァ~~~、まぁ、経緯はどうあれ。付き合い初めのカップルだから目を瞑るけどね。……でも、眞子。一生のお願いだから、この間の美樹みたいな事にだけはならないでよ。あれはないわよ」
「御心配には及びませんよ。それは100%ないと思いますんで」
「……って言うと?」
「だって私、自分が可愛いって自覚が有りますし、それなりの自信も持ってますからね。あぁ言う真似だけはしないと思いますよ」
「うわっ、ヤナ女……」
「ですよ」
……って、自分を過大評価してないと、自信がドンドン萎んじゃうんですよ。
そう言う深い深い自己暗示を掛けて置かないと、不安で堪らないんですよね。
……だって、私の相手って、あの崇秀ですよ。
こう言っちゃあなんですがね。
あの男は、エディさんみたいに子供っぽくもないし、カジ君みたいに軽い感じじゃないし、真琴ちゃんみたいに馬鹿じゃないんですよ。
そんなパーフェクトな男が、私の彼氏なんだから。
口だけでも、こうやって自分に自信を持っとかないと……心に掛かる重圧で『ぷちっ』って、嫌な音を立てて潰れちゃいますよ。
だから『こうやって自信を持つ』って言う行為は、崇秀と付き合う上での必要事項って事だと思いますよ。
「ハァ……アホ臭ッ。やってらんないわ。髪梳いて来よ」
「はいは~~い。いってらっしゃ~~い」
「なんか妙に腹が立つね。……今日の君」
……ごめんなさい。
そう言って奈緒ネェは、簡単に、手櫛でササッと髪を整えて。
病室に付いている小さな鏡を見ながら、コチラも、簡単に顔を綺麗にする。
それで、そこからは、自分の鞄を持って、一旦病室を出ていった。
多分あの様子じゃ、水が使えて、大鏡のあるトイレに向かって行ったんだろう。
そんな奈緒ネェを見送った後。
私自身は、微妙にしか動かない手をプルプルと震わせながら、髪を梳かそうと必死になるんだけど。
あれれ?……ブラシって、こんなに重たかったっけ?
まるでベットに引っ付いたみたいに、ピクリともブラシを持った手が上に上がらないんですけど。
マジでブラシだけの重さで、1mmたりとも手が動いてくれないんですけど?
・・・・・・
うわ~~~ん!!
今さっき奈緒ネェに『出来る限りは自分で頑張る』とか言って大見得切った所なのに、この無様な有様。
これじゃあ、セット処か、なにも出来無い様な状態じゃん!!
それに今、なにかの間違いで、崇秀がヒョッコっと現れたら、どうするのよ!!
嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!
こんな屈辱的な姿、絶対に崇秀には見せられないって!!
嫌だぁ~~~!!
お願いですから奈緒ネェ!!早く帰って来てえぇ~~~~!!
体が、こんなプッスンプゥな状態だと、流石に何も出来ないよぉ~~~!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
無理です……無理なのです(笑)
覚悟を決めたからと言って、都合良く体が動き出すと思ったら大間違い。
流石にトロール並みの脅威の回復力を持つ眞子をもってしても、これは常識的に考えても無理。
矢張り、動かない体を動かすには、どうやってもリハビリが必要ですからね。
まぁでも、こうやって目標があった方が、今後のリハビリが捗る可能性が上がるのも事実。
なので、全く、この覚悟が無駄に成っているって言う訳ではないんですけどね。
さてさて、そんな中。
最後の眞子の願いは奈緒さんに届いて、彼女は早期に戻って来てくれるのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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