●前回のおさらい●
素直ちゃんの本音を激白をされた倉津君。
その上で素直ちゃんは思い出と称して、倉津君に抱かれ様とすらしていた。
当然倉津君は、これを拒むのだが……それ以上はどうして良いか解らずに居たら。
―――サイド眞子。
なんだろう?
まだ大広間から出た所だと言うのに、真琴ちゃんの部屋から、ただならぬ異様な雰囲気が漂ってる。
これはまるで部屋に近付くなと言う……虫の知らせ?なのもしれない。
でも、それに反して、放って置く訳にもイカナイ様な気がしてならない。
それ故に私は緊張した面持ちで、真琴ちゃんの部屋に一歩一歩近付いて行った。
「……嫌い。向井さんなんか大嫌い!!消えてなくなってしまえば良いんだ!!」
そして、その予想に反する事無く。
部屋の中から聞こえてくる、素直ちゃんの奈緒ネェを恨む様な言葉。
ハァ~~~……此処は予想通り、ヤッパリ、素直ちゃん絡みで何事かが起こっている様だ。
しかも、素直ちゃんの口から『こうやって奈緒ネェを嫌う言葉』が出てる以上、矢張り、恋愛感情の縺れかぁ。
これは少々厄介だ。
でも、だからと言って、このまま放っては置けないのも事実。
何故なら真琴ちゃんはヤクザ稼業の組長の息子なのに、矢鱈と人が好いから、直ぐに感情に流されてしまう傾向がある。
だから此処は、間違いが起こる前に、なんとしても食い止めとかなきゃイケナイ。
私はそんな覚悟を決めて、部屋に居るであろう真琴ちゃんに声を掛けた。
「真琴ちゃん、いる?ちょっと用事があるんだけど入っても良いかな?」
「あぁ、いや、眞子!!ちょっと待ってくれ!!いっ、今、立て込んでるからよぉ。用があるなら後にしてくんねぇか」
「そうなの?ごめんね。……でもそれって、自分で解決出来る事なの?もしそこで、素直ちゃんを、真琴ちゃんが泣かせてるなら、私、許さないよ」
そうは言っても、恐らく、この痴情の縺れを持ち込んだのは、泣いている素直ちゃん本人だと推測される。
彼女の感情の昂ぶりから、素直ちゃんの抑制が効かなくなったのが原因だろう。
そう思えるのは、今までの素直ちゃんの行動パターン。
そこに真琴ちゃんのヘタレ具合が加われば、この予測不能な現場も、一瞬にして光景が目に浮かんでくる。
これで間違いない筈だ。
……後は、これに対して、どう対処するかだけが問題だね。
「・・・・・・」
黙りこくったね。
これで尚更、今、私が考えた推論で正しいと判断出来る。
「返答が無いなら、入るよ」
「あっ……頼む、待ってくれ眞子」
「そんなんじゃ話にならないね」
そう言うと同時に真琴ちゃんの部屋に入ったんだけど……
あぁ……まいったなぁ。
これは思っていた以上に、最悪な状況だ。
素直ちゃんは、真琴ちゃんに向けて胸を曝け出している上に……顔がボロボロに成るぐらい泣いている。
素直ちゃんが此処まで大胆な事をしてしまったと言う事は、かなり切羽詰っての行動だろうね。
しかしまぁ、素直ちゃんの感情の昂りから起こした状況だと言うのは解るにしても。
此処までの感情の昂りに成った理由って言うのは、一体、なんなんだろうね?
この2人の間に、なにがあったんだろう?
「……眞子ちゃん」
「ハァ……うんうん。なにも言わなくても、全部解ってるよ。いっぱい我慢してたんだね。もぉ無理しなくて良いんだよ、素直ちゃん」
「あっ、あぁ……うわ~~~ん」
まずは宥めてから事情を聞こうと思ったんだけど、此処で更に泣いちゃったか。
まぁ、この状況じゃ、そう成っても仕方がないよね。
素直ちゃん自身、もう最大限まで自分の気持ちを真琴ちゃんに伝えた上での結果なんだろうしね。
「眞子……俺……」
「あぁ、大丈夫。今の状況を見ても変な誤解はしてないから、そこは心配御無用。お互いの話が喰い違ってたんでしょ」
「あっ、あぁ……」
そっか。
当てずっぽうで言ったんだけど、その当てずっぽうすら当たっちゃったか。
でも、問題が『話の食い違い』っと言う風に定義された以上、まったく解決出来ない訳でもない筈。
それに話の流れ次第では、違う意味での、今まで鬱積していた懸念材料も消せそうだ。
「うん、わかった。じゃあ、もぉ黙ってて」
「あぁ……すまん」
しょうがないよ。
これはHが好きなだけの馬鹿な男でもなきゃ、解決し難い話だもんね。
誰よりも友達を大切に想ってる真琴ちゃんには、度台無理な問題だよ。
「素直ちゃん、泣かないで」
「えぐっ、えぐっ……」
「私にも、素直ちゃんのその気持ち、良く解るよ」
「解らないよ。……眞子ちゃんには、僕の気持ちなんて解らないよ。眞子ちゃんは、みんなに慕われてるし、好きな人にも愛されてる。そんな眞子ちゃんに、惨めな僕の気持ちなんか解る筈がないよ」
まぁ、私の普段の行いからして、そう捉えられても、おかしくはないかぁ。
事実、私は、誰よりも幸せな人間だと、自認してる部分すらあるからね。
でも、例えそうであっても、素直ちゃんは1つだけ間違ってるよ。
「解るよ。私だって、素直ちゃん同様、崇秀に嫌われない様に努力してるもん。どれだけ毎日、怖い日々を送ってる事か」
「えっ?」
「私だって怖いの。素直ちゃんと同じで怖いの。女の子なら、誰でも好きな人には嫌われたくないもんね」
「えっ?眞子ちゃんでも、そんな風に思うの?」
「そりゃあ、思うよ。特に私は、人一倍臆病な人間だからね。本当は全てが怖い。その中でも、崇秀に嫌われる事は、なによりも一番怖い。これは人なら、誰しもが持ってる感情だよ」
「あっ……」
「だからね。此処で、なにが有ったか、ゆっくりで良いから話してみて。私で良かったら相談に乗るから」
もう一度、自分の想いの丈を、全部、私に向かって吐き出しちゃって良いんだよ。
そうすれば、一人でズッと悩んでるより、少しは気も楽になるからさ。
大分、心の蟠りが溜まってるんでしょ。
「……眞子ちゃん」
「うん。心配しなくても良いから、言ってみて」
どうぞ。
……って思ってたのに。
「眞子。……だったら俺、席外した方が良いか?」
ハァ……もぉ、このバカタレ。
今此処で、当事者である真琴ちゃんが席を外してどうするのよ?
それじゃあ、なにも解決しない処か、話が進展すらしないでしょ。
折角、色々な事が解決するチャンスなんだから、大人しく此処に居なさい。
「逃げるな!!女が覚悟を見せて話をしようとしている時に、都合良く男が逃げるな!!男なら逃げずに、素直ちゃんの話を全部聞け!!」
「……眞子ちゃん」
「あっ……すっ、すまん」
「うん。解れば宜しい。逃げても、問題は後から追い駆けて来るだけだからね。此処は、絶対に逃げちゃいけない場面だよ」
「……そうだな」
良し!!
これで、全ての準備は整った。
後は、素直ちゃんの話の持って行き方次第だね。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
真菜ちゃんと帰ってきた際に、倉津君と素直ちゃんから出て居た異様な雰囲気を感じ取った眞子。
取り敢えずは、大広間での最低限のタスクをこなした上で、倉津君の部屋に向かったのですが……矢張り、最悪な状況が展開されてましたね。
……とは言え。
眞子の登場により、少しは素直ちゃんも冷静さを取り戻したのか、やや通常モードに戻ったみたいなので。
此処からは、彼女の感情を変に逆撫でしない様にしながら、話を纏めて行くしかなさそうな雰囲気でもあります。
さてさて、それは上手くいくのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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