●前回のおさらい●
序章から続いてきた素直ちゃんの倉津君への片思い。
その終止符を打つ様な行為をした眞子は、今後の2人の事を考える為に……
……それから更に5分。
私は今後の事等を物思いに耽りながら、まだ風呂の中に居た。
素直ちゃんと、真琴ちゃんの今後の関係を考えると、まだまだ不安要素が山積みに残されているからだ。
だからまずは自分自身の頭の整理をつける為に、少し1人で考える時間を作り、まだ此処に居るのだと思う。
そうやって1人で湯船に浸かっていると……
「ヤッパリ、まだ此処に居たか。……眞子、アンタ、一体、素直になにを言ったの?」
イキナリ奈緒ネェが風呂に入って来たと思ったのも束の間。
必要以上の言葉を交わさず、イキナリ核心に迫る様な言葉を口にしてきた。
この予想外の出来事に対して私は、少しの動揺したものの。
それと同時に、この話を奈緒ネェにする覚悟は出来ていたので、即座に返答する事にした。
「素直ちゃんには……悪いとは思いましたけど。在りのままのヤクザの実態を教えてあげました。それだけですよ」
「そっか。とうとうそれを素直に教えちゃったんだ。……だから素直は大部屋に戻って来て直ぐ、みんなには聞こえない様な小声で、私に『今までごめんなさい』って謝って来た訳ね。わかった。これで全ての合点がいった」
やっぱり奈緒ネェは理解力が高いなぁ。
ヤクザの本質を話せば、一般的な人間がどういう反応をするのかを理解してるだけに、私が一言話しただけで、大体の予想が出来ちゃうんだもんなぁ。
それに、思った以上に素直ちゃんの対処も早かったみたい。
こちらも、さっき私が『ここを出て行く前に笑顔を見せてくれ』って言った言葉の意味をよく理解した上で行動してくれてるのが良く解る。
あの素直ちゃんに願った言葉には『大部屋に戻った後も冷静に対処してね』って意味も含まれてたからね。
「そうだったんですね。あの後、そんな事があったんだ」
「そうだね……でも、眞子、その話をするには、まだ少し時期尚早だったんじゃない?」
「……そうでしょうか?私は、今でも遅いぐらいだったと思いますけど」
確かに今回の一件は、早急過ぎたと言わざるを得ない状況ではあったかもしれない。
この解決方法を使うにしても、まだまだ問題が山積みに残されている以上、別に今である必要性は何所にも無かったのだろうしね。
でも、逆に言えば、今回のこの機会はヤクザの本質を話すには最高のタイミングではあったと思う。
いくら問題が山積みであっても、この機を逃したら素直ちゃんの真琴ちゃんに対する気持ちがズルズルと長引くだけだったし、いつまでも、こう言う精神衛生上よくない関係を続けるのは、お互いの為にも、あまり良い事だとは思えなかったしね。
だから私は、誰が何と言おうと……今さっき、あの話を素直ちゃんに話した内容に関しては、なにも後悔などしていない。
「眞子は、そう言う判断を下しちゃったんだ」
「そうですね。お節介が過ぎたのも事実かも知れませんが。私は、素直ちゃんを諦めさせるには、丁度良い機会だったと思ってヤクザの話をさせて貰いました。これ以上、彼女に、真琴ちゃんを想わせるのは無駄な時間を費やさせるだけだったし、少し危険だとも感じていましたので」
「そうかぁ。時間の無駄かぁ。……でもまぁ、そこは解らなくもないけど。危険って言うのは、なにが、そんなに危険だったのよ?」
隠し事をしても、なにも始まらないから、此処で全てを明らかにしておくべきなんだろうね。
それに奈緒ネェは、真琴ちゃんに対して絶大な信頼と自信を持ってるだけに、事こういう事に関しては危機感が薄い。
追い込まれた女が、なにをするか解らないっと言う事を、余り理解していない様に思う。
「あぁ、それですか。それなら、素直ちゃんが本気で真琴ちゃんと肉体関係を持とうとしたからですよ。これは、本当に色んな意味で危険です。変に組の者に認識されても困りますしね」
「そうだね。……でも、素直って、そこまで追い込まれてたんだね」
「気付いてなかったんですか?」
「まさかね。多少なりとも気付かない方が、どうかしてるってもんでしょ」
そうかぁ。
私が言うまでもなく、奈緒ネェは薄々気付いてはいたのかぁ。
でも、だったら疑問が……
「じゃあ、なんで、今まで素直ちゃんを放置してたんですか?」
「そんなの決まってるじゃない。何があっても、私に対するクラの想いが揺るがないからよ。……眞子なら、その辺は、よく解るでしょ」
そう言いながら奈緒ネェは、掛け湯をしてから浴槽に浸かってきた。
「あぁ、どうでしょうか?正直言えば、そう言う真琴ちゃんの感覚は、あんまり、もぉ私には解らない感覚ですかね。確かに、それを崇秀に置き換えた場合、その気持ちが見え隠れする部分はあるんですけど。少し奈緒ネェの時とは感覚が違うんですよ」
「似た様な感覚に陥ってはいるけど、感覚が違うって……どう感覚が違うって言うの?」
「えぇっと、なんて言うか、揺るがないって言うより、揺るげないんですよ」
「揺るがないじゃなくて、揺るげない?」
「ですね。もっと解り易く言えばですね。今は、崇秀に捨てられるのが怖いって感覚の方が勝ってますからね」
「あぁ、眞子って、そう言う感覚に成っちゃってるんだ」
「そうですね。崇秀との付き合いの場合、揺るがないのがデフォルトぐらいじゃなきゃダメなんですよ。じゃなきゃ、一瞬にして、今まで有った幸せが全部逃げちゃいそうで……崇秀との関係が終わったら、私自身の人生も終わっちゃいそうな感覚ですね」
そうなんですよね。
崇秀と付き合うと言うのは、本当に難しい。
まぁ私自身、別に他の男性に目移りする様な真似をする気はないですし、崇秀自身が、私に特別なにかを求めて来る訳じゃないんだけど。
奈緒ネェと付き合ってた時みたいに、必要以上には甘えた考えばかりもしていられないんですよ。
まぁ崇秀は、私がどんなにダメな女に成っても、見捨てる様な真似はしないのも良く解ってるんですが。
それでも『嫌われたらどうしよう?』って感覚が強く働いてしまい。
『私がダメな女に成ってしまったら、崇秀とのお付き合いは即終了されてしまう』
そんな感覚が大いにして、今の私の中には存在してしまっている。
「ちょっと眞子。仲居間さんとの付き合いって、そこまで辛い恋愛なの?だったら私、2人の付き合いには賛成出来無いんだけど」
「いえいえ、全然辛くなんか無いんですよ。基本的に崇秀は優しいですからね。寧ろ辛い想いなんか1度もした事が有りません。……でもですね。だからって甘えてバッカリも居られないのも事実なんですよ。崇秀は、私に対して、常に対等な立場を要求して来ますから。……奈緒ネェの時みたいに甘やかしてくれるからって、甘えてる時間が無いんですよ」
「そっかぁ。……でも、私って、そんなに甘い?そうでもないと思うんだけど」
「う~~~ん。正直言っちゃえば、奈緒ねぇは大甘ですよ」
あぁ……かなり素直ちゃんの話から逸れて来てるけど。
奈緒ネェは、意外と自分が見えてない所があるから、少しだけこの話を継続させて貰おう。
それに一応だけど、素直ちゃんの件で伝えなきゃいけない事は、最低限なら伝えたしね。
奈緒ネェなら、そこから自身の思考で昇華してくれるだろうし。
「えっ?私って、甘い処か、大甘なの?」
「あぁ、はい。だって奈緒ネェは、私がなにをやらかしても、いつも大きな気持ちで、それ等を全部を飲み込んでくれたじゃないですか。だから奈緒ネェとの付き合いって言うのは、私自身の逃げ道が無限大に有ったんですよ。……当時の私は、そんな奈緒ネェの気持ちに、いっぱい甘えさせて貰っていましたしね」
これは本当に、自分の口から言うのも情けない話なんだけどね。
いつも私は『奈緒ネェがなんとかしてくれる』『奈緒ネェなら許してくれる』『奈緒ネェなら全部飲み込んでくれる』って、密かに思っていた部分があったから、ナンデモカンデモ、奈緒ネェに我儘を言っていた。
でも……それは大きな勘違いだった。
奈緒ネェは、いつも私の為に無理をしてくれていただけに過ぎなかった。
それに真琴ちゃんの時だけじゃなく。
私がこの姿に変わった後も、ズッと変わらずに好きで居てくれたからこそ。
いつも心配してくれて、気遣ってくれて、全てを無理矢理にでも飲み込んでくれていただけに過ぎなかった。
私は、そんな奈緒ネェの優しい気持ちを目の当たりにして、初めて自分の愚かさに気付かされた。
それと同時に、自分が目一杯甘やかされてる事にも気付かされた。
だから、私の個人的な見解では……以前の私同様、今の真琴ちゃんも甘やかされてると言う認識に至るって話。
奈緒ネェは……そんな優しくも、甘い人だから。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
いっけすれば、この話、素直ちゃんの話から、やや逸れてしまってる様に見えるのですが。
実は、この素直ちゃんの想いを、此処まで引っ張らせたのは「奈緒さんが持つ倉津君への絶大な信頼こそが、その責任の一端」でもあったりしますので、眞子は、そんな奈緒さんに注意をする為に、こういう話を続けてる訳でもあったりします。
実際、奈緒さん自身も、その倉津君に対する絶大な信頼の元『良かれ』と思って『倉津君を賭けた賭け』などをしており。
無意識の内に他の女の子を煽ってる部分がなかった訳でもないですしね。
さてさて、そんな中。
奈緒さんの甘さを、話に織り交ぜて注意してる眞子なのですが。
この後も、終始、眞子が主導権を握ったまま物語は進んでいくのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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