●前回のおさらい●
今の日本の音楽業界では、どうにも使い勝手が悪い嶋田さん。
さて、彼の腕前を生かすには、どうすれば良いのか?
それが今、倉津君に明らかにされる!!
(まぁ冷静に考えたら、当たり前の事なんですけどね(笑))
「だからよぉ」
「『だからよぉ』とか言う前に、ちょっとは考えろ、この蛸助。普通に考えても、今の状況じゃ、嶋田さんには海外に行って貰うのがベストだと思わねぇか?だから、山中は『本人次第』って言ったんだよ……わかるか?」
「なんで海外に行くんだよ?」
「オマエ、それ、新しいボケか?」
「ちげぇよ!!」
「えぇかマコ?海外やったら日本の悪い噂はペイやろうが」
「あっ……」
「ほんで、あれだけの腕前があんねんやっやら、お前が心配するまでも無く、あの人やったら、直ぐにスカウトされる。逆に言えば、元々あの人の演奏は日本向きやなかった。だから秀は、海外に行く事を薦めとったんや」
「じゃあ、嶋田さんは、音楽を続ける可能性が有るって事か?」
「そう言うこった。……まぁ、最後にどうするかを決めるのは本人次第だがな」
人が悪い……いや、人が悪すぎる。
そんな綿密な計画が有るんなら、最初から、そう言えば良いじゃねぇか。
なんで遠回しな言い方をする必要が有るんだよ。
「オマエ等って、本当に性格悪いよな。そこまで行ったら感心するわ」
「悪いな。オマエだったら、ひょっとして『嶋田さんとやる』とか言い出ださねぇかな、って思ってよ。ちょっと先延ばしにしてみたんだよ」
「・・・・・・」
ハイ正解。
お前の心理読み正解。
「黙っとるところを見たら、マジで考えとったみたいやな」
「るせぇよ!!けどよぉ、結局、なんも言えなかったがな」
「まぁそんなもんや」
「しかし、崇秀。お前って、意外と優しいのな」
「勘違いするなよ。俺の仕事は、顧客に満足して貰うのが一番だ。だから、別に情に流されてこんな事をやってる訳じゃない。……これは、れっきとしたビジネスの話だ」
また、直ぐにそう言う捻くれた事を言うだろ、コイツは。
褒めてやってるんだから、偶には、素直になれって言うの。
「また素直じゃねぇこったな」
「まぁな。つぅか、実際、あの人は埋もれさせるには惜しい人材だからな。俺の海外進出の『刺客』にはうってつけなんだよ」
「オッ、オマエって……」
「なぁ~にな。これなら、お互いに悪い話じゃないだろ。それに嶋田さんが海外進出を考慮してくれるなら、その渡英費は俺が全額負担する。あの人には色々世話になってるし。まぁ『刺客』に金を出すのは当たり前の事だからな」
「ホント、オマエって良い奴なんだか、悪い奴なんだかな」
「おぉ、そうや秀」
「んあ?なんだよ?」
「そう言えば、嶋田さんの弾く曲って何やねん?後、順番は?」
「ほぉ、なんか面白い事を思い付いたみたいだな。……なにを企んでる?」
「なぁに、ちょっとした餞別や。……俺も、そこのアホ男に感化されたみたいやな」
なっ、なにをする気だ、コイツ等?
またロクでもねぇ事を考えてるんじゃねぇだろうな。
嫌な予感……
「悪くねぇな。因みにだが、嶋田さんの出番は1部のオオトリの前。出番までの残り時間は2時間。メンバー無しのソロ。曲はセックス・ピストルズの『Anarchy In the U.K.』……出来るか?」
「セックス・ピストルズって事はパンクか……まぁ、なんとかなるやろ」
「言うと思ったよ。……ほらよ、倉津。おまえもやんだろ」
「はぁ?」
やっぱりな。
コイツの事だから、山中の話が出た時点から嫌な予感はしてたんだが。
マジで俺にもやらさせる気だったんだな。
「なんだよ倉津?オマエは、知り合いに餞別もやれねぇほど、オマエのベースは音は腐ってんのか?」
「あぁはい、はい。わかったよ。やりゃ良いんだろ、やりゃ。けど、どうなっても、知らねぇぞ」
「どうだって良いんだよ、んなもん。大体にして大した問題ですらねぇ」
「なんでだよ?」
「セックス・ピストルズのシド・ビシャスなんざ、ロクにベースが弾けねぇくせに世界ツアーしたんだぜ。それに比べりゃ、こんな小さい箱の出来事なんざ、話が小さ過ぎて、誰の記憶にも残らねぇよ」
はい?
「ちょ!!ベースが弾けねぇのに世界ツアーだと?なんだよソイツ。有り得ねぇだろ」
「ほな後は、その辺の事に詳しい奈緒ちゃんに説明して貰おか」
「あっ……」
話に入り難かったんだろうか?
他のバンドとの話が終わった奈緒さんが、少し離れた所からコチラを見ている。
すみません。
話に熱中し過ぎて気付きませんでした。
「ほんだら後は、よろしゅう頼んまっさ」
「んじゃあな。俺も、ちょっくら山中と練習してくるわ。……しかしまぁ、また面白くなって来やがったな。『アレ』の実装もまだだったし、この序で、ちょっと試してに使ってみっか」
「なんやねん『あれ』って?」
「後で教えてやるよ」
「ちょ、崇秀。オマエ……」
それだけ言い残して、奴等2匹は光速で去っていく。
ゴールドセイントか、オマエ等は……
そして、ふと机の上を見ると。
勿論、崇秀は用意周到に『タブ譜』を置いて行っている。
何所まで、人の心理を読んでんだよ、アイツは……
そんな風に嫌そうな顔をしながらタブ譜を見ていると、そこに奈緒さんがチョコチョコとやって来る。
「クラ……仲居間さん達と、なんの話してたの?」
「なんの話って言うか、いつもの無茶ブリですよ」
「えっ?無茶ブリって、どういう事?」
「あぁ、さっき知り合った嶋田さんって人の餞別に、この曲をやるそうなんですよ。……しかも俺を含めて」
「どれ?」
「これッス」
取り敢えず、奈緒さんにタブ譜を見せてみる。
この曲、知ってるかな?
「The Sex Pistolsの『Anarchy In the U.K.』かぁ」
「そうなんッスよ。俺、この曲を聞いた事もねぇッスから、かなりヤバいんッスよ」
「あぁ、大丈夫、これなら私弾けるよ」
「まじッスか!!じゃあ、俺の代わりに奈緒さんが出て下さいよ」
「それは無理……わからないの?」
「なんでッスか?」
「私も嶋田さんの事はよく知ってるけど。これはクラからの餞別なんでしょ。だったら一緒に弾いてあげる事は出来ても、私だけステージに上がる事は出来無いんじゃない?」
「はぁ~~……ですよね」
仕方が無い。
取り敢えずだが、やるだけやってみるしかないみたいだな。
……自信ねぇなぁ。
つぅか、今日1日で、何曲覚えさせるつもりだよ。
あんまり河豚味噌を酷使したら、知恵熱出して、簡単に北海道近辺まで脳味噌が吹き飛んで行っちまうぞ。
「それにね。ピストルズのベーシスト・シド・ビシャスだって、決して上手いと言えるベーシストじゃなかったしね。……有り有り♪」
「あぁそれ、それなんですよ!!」
「えっ?」
「そのシド・ビシャスって奴、ベースもロクに弾けないのに世界ツアーまでしたって言うじゃないですか。それって、どういう奴なんッスか?」
「う~ん、そうだね。……ちょっと時間が無いから、取り敢えず、その辺については練習するスタジオに移動しながら話そっか?」
「ウッ、ウッス」
この期に及んで練習と、謎の男シド・ビシャスについて聞く為にも、ライブハウスの外に出てスタジオを目指す。
しかし、どう考えてもおかしな話だよな。
ソイツ何者だよ?
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
山中君や奈緒さんと共に倉津君は、嶋田さんに餞別を渡す為。
少々強引な様にも見えましたが、また新たに曲を憶える羽目になりましたね。
中々皆さん、スパルタでいらっしゃる(笑)
だが流石の倉津君も、その無謀さ加減には少々尻込みしてる様子。
そこに登場したのが。
その餞別で演奏するつもりの曲の元に成ったバンドの謎のベーシスト『シド、ヴィシャス!!』
しかも彼は、ろくにベースが弾けないのに、世界ツアーをしたと言う謎の人物だった。
いったい彼は何者なのか?
それは次回、奈緒さんが説明します(笑)
(ノω'*)ノ■ポイッ←丸投げ作者。
なので、また良かったら遊びに来て下さいね(*'ω'*)ノ
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