最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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080 不良さん またしても巻き込まれる(笑)

公開日時: 2021年4月26日(月) 21:35
更新日時: 2022年11月14日(月) 21:30
文字数:2,807

●前回のおさらい●


 今の日本の音楽業界では、どうにも使い勝手が悪い嶋田さん。


さて、彼の腕前を生かすには、どうすれば良いのか?

それが今、倉津君に明らかにされる!!

(まぁ冷静に考えたら、当たり前の事なんですけどね(笑))

「だからよぉ」

「『だからよぉ』とか言う前に、ちょっとは考えろ、この蛸助。普通に考えても、今の状況じゃ、嶋田さんには海外に行って貰うのがベストだと思わねぇか?だから、山中は『本人次第』って言ったんだよ……わかるか?」

「なんで海外に行くんだよ?」

「オマエ、それ、新しいボケか?」

「ちげぇよ!!」

「えぇかマコ?海外やったら日本の悪い噂はペイやろうが」

「あっ……」

「ほんで、あれだけの腕前があんねんやっやら、お前が心配するまでも無く、あの人やったら、直ぐにスカウトされる。逆に言えば、元々あの人の演奏は日本向きやなかった。だから秀は、海外に行く事を薦めとったんや」

「じゃあ、嶋田さんは、音楽を続ける可能性が有るって事か?」

「そう言うこった。……まぁ、最後にどうするかを決めるのは本人次第だがな」


人が悪い……いや、人が悪すぎる。

そんな綿密な計画が有るんなら、最初から、そう言えば良いじゃねぇか。


なんで遠回しな言い方をする必要が有るんだよ。



「オマエ等って、本当に性格悪いよな。そこまで行ったら感心するわ」

「悪いな。オマエだったら、ひょっとして『嶋田さんとやる』とか言い出ださねぇかな、って思ってよ。ちょっと先延ばしにしてみたんだよ」

「・・・・・・」


ハイ正解。


お前の心理読み正解。



「黙っとるところを見たら、マジで考えとったみたいやな」

「るせぇよ!!けどよぉ、結局、なんも言えなかったがな」

「まぁそんなもんや」

「しかし、崇秀。お前って、意外と優しいのな」

「勘違いするなよ。俺の仕事は、顧客に満足して貰うのが一番だ。だから、別に情に流されてこんな事をやってる訳じゃない。……これは、れっきとしたビジネスの話だ」


また、直ぐにそう言う捻くれた事を言うだろ、コイツは。


褒めてやってるんだから、偶には、素直になれって言うの。



「また素直じゃねぇこったな」

「まぁな。つぅか、実際、あの人は埋もれさせるには惜しい人材だからな。俺の海外進出の『刺客』にはうってつけなんだよ」

「オッ、オマエって……」

「なぁ~にな。これなら、お互いに悪い話じゃないだろ。それに嶋田さんが海外進出を考慮してくれるなら、その渡英費は俺が全額負担する。あの人には色々世話になってるし。まぁ『刺客』に金を出すのは当たり前の事だからな」

「ホント、オマエって良い奴なんだか、悪い奴なんだかな」

「おぉ、そうや秀」

「んあ?なんだよ?」

「そう言えば、嶋田さんの弾く曲って何やねん?後、順番は?」

「ほぉ、なんか面白い事を思い付いたみたいだな。……なにを企んでる?」

「なぁに、ちょっとした餞別や。……俺も、そこのアホ男に感化されたみたいやな」


なっ、なにをする気だ、コイツ等?


またロクでもねぇ事を考えてるんじゃねぇだろうな。


嫌な予感……



「悪くねぇな。因みにだが、嶋田さんの出番は1部のオオトリの前。出番までの残り時間は2時間。メンバー無しのソロ。曲はセックス・ピストルズの『Anarchy In the U.K.』……出来るか?」

「セックス・ピストルズって事はパンクか……まぁ、なんとかなるやろ」

「言うと思ったよ。……ほらよ、倉津。おまえもやんだろ」

「はぁ?」


やっぱりな。


コイツの事だから、山中の話が出た時点から嫌な予感はしてたんだが。

マジで俺にもやらさせる気だったんだな。



「なんだよ倉津?オマエは、知り合いに餞別もやれねぇほど、オマエのベースは音は腐ってんのか?」

「あぁはい、はい。わかったよ。やりゃ良いんだろ、やりゃ。けど、どうなっても、知らねぇぞ」

「どうだって良いんだよ、んなもん。大体にして大した問題ですらねぇ」

「なんでだよ?」

「セックス・ピストルズのシド・ビシャスなんざ、ロクにベースが弾けねぇくせに世界ツアーしたんだぜ。それに比べりゃ、こんな小さい箱の出来事なんざ、話が小さ過ぎて、誰の記憶にも残らねぇよ」


はい?



「ちょ!!ベースが弾けねぇのに世界ツアーだと?なんだよソイツ。有り得ねぇだろ」

「ほな後は、その辺の事に詳しい奈緒ちゃんに説明して貰おか」

「あっ……」


話に入り難かったんだろうか?

他のバンドとの話が終わった奈緒さんが、少し離れた所からコチラを見ている。


すみません。

話に熱中し過ぎて気付きませんでした。



「ほんだら後は、よろしゅう頼んまっさ」

「んじゃあな。俺も、ちょっくら山中と練習してくるわ。……しかしまぁ、また面白くなって来やがったな。『アレ』の実装もまだだったし、この序で、ちょっと試してに使ってみっか」

「なんやねん『あれ』って?」

「後で教えてやるよ」

「ちょ、崇秀。オマエ……」


それだけ言い残して、奴等2匹は光速で去っていく。


ゴールドセイントか、オマエ等は……


そして、ふと机の上を見ると。

勿論、崇秀は用意周到に『タブ譜』を置いて行っている。


何所まで、人の心理を読んでんだよ、アイツは……


そんな風に嫌そうな顔をしながらタブ譜を見ていると、そこに奈緒さんがチョコチョコとやって来る。



「クラ……仲居間さん達と、なんの話してたの?」

「なんの話って言うか、いつもの無茶ブリですよ」

「えっ?無茶ブリって、どういう事?」

「あぁ、さっき知り合った嶋田さんって人の餞別に、この曲をやるそうなんですよ。……しかも俺を含めて」

「どれ?」

「これッス」


取り敢えず、奈緒さんにタブ譜を見せてみる。


この曲、知ってるかな?



「The Sex Pistolsの『Anarchy In the U.K.』かぁ」

「そうなんッスよ。俺、この曲を聞いた事もねぇッスから、かなりヤバいんッスよ」

「あぁ、大丈夫、これなら私弾けるよ」

「まじッスか!!じゃあ、俺の代わりに奈緒さんが出て下さいよ」

「それは無理……わからないの?」

「なんでッスか?」

「私も嶋田さんの事はよく知ってるけど。これはクラからの餞別なんでしょ。だったら一緒に弾いてあげる事は出来ても、私だけステージに上がる事は出来無いんじゃない?」

「はぁ~~……ですよね」


仕方が無い。

取り敢えずだが、やるだけやってみるしかないみたいだな。


……自信ねぇなぁ。


つぅか、今日1日で、何曲覚えさせるつもりだよ。

あんまり河豚味噌を酷使したら、知恵熱出して、簡単に北海道近辺まで脳味噌が吹き飛んで行っちまうぞ。



「それにね。ピストルズのベーシスト・シド・ビシャスだって、決して上手いと言えるベーシストじゃなかったしね。……有り有り♪」

「あぁそれ、それなんですよ!!」

「えっ?」

「そのシド・ビシャスって奴、ベースもロクに弾けないのに世界ツアーまでしたって言うじゃないですか。それって、どういう奴なんッスか?」

「う~ん、そうだね。……ちょっと時間が無いから、取り敢えず、その辺については練習するスタジオに移動しながら話そっか?」

「ウッ、ウッス」


この期に及んで練習と、謎の男シド・ビシャスについて聞く為にも、ライブハウスの外に出てスタジオを目指す。


しかし、どう考えてもおかしな話だよな。


ソイツ何者だよ?


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


山中君や奈緒さんと共に倉津君は、嶋田さんに餞別を渡す為。

少々強引な様にも見えましたが、また新たに曲を憶える羽目になりましたね。


中々皆さん、スパルタでいらっしゃる(笑)


だが流石の倉津君も、その無謀さ加減には少々尻込みしてる様子。


そこに登場したのが。

その餞別で演奏するつもりの曲の元に成ったバンドの謎のベーシスト『シド、ヴィシャス!!』


しかも彼は、ろくにベースが弾けないのに、世界ツアーをしたと言う謎の人物だった。


いったい彼は何者なのか?


それは次回、奈緒さんが説明します(笑)

(ノω'*)ノ■ポイッ←丸投げ作者。


なので、また良かったら遊びに来て下さいね(*'ω'*)ノ

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