●前回のおさらい●
キッチリと辻褄を合わせる為に、真実を語ろうとした眞子に対して。
その真実に危険性を感じ、それさえも一切聞かずに許してしまった倉津君。
その器の差に……
そんな事があったので、気持ち的には事が万事解決して嬉しい反面。
自分の不甲斐無さに、気持ちが少し落ち込む羽目に成らざるを得なかった。
この結果から言える事があるとするならば。
結局の所、私は去年から今日まで色々出来た気に成って調子に乗っていたけど、そんなものは、ただの『虚構』でしかなかったのだろう。
目先の技術の向上にだけ囚われて、色々と大事な物を失い続けていたに過ぎなかった。
これじゃあ、まるで1年前と、なにも変わってない。
上辺だけ綺麗に固められた張子の虎のまま、なに1つとして成長がない。
中身が空っぽのままだ。
気付かぬ内に私は、そんな傲慢で自己中心的な最低な人間に成っていた様だ。
そんな気持ちが支配してる中。
真琴ちゃんは、私にもお酒を注いでくれて、気持ち良く乾杯をしてくれている。
だから私は、せめて、その気持ちにだけには応えようとして、入れて貰ったバカルディーを一気に飲み干した。
でも、お酒の力を借りても、一向に気分は晴れないままだった。
「オッ、オイ、眞子。そんな無茶な飲み方して、オマエ大丈夫なのかよ?どうかしたのか?」
「うぅん、なんでもないよ。なんでもない。ただね。ちょっとホッとして気が抜けちゃったのかな?それで一気にね」
「そうなんか?なら、良いけどよ」
また心配してくれてるよ。
さっきまで、あんな話をしてたのに、それを微塵も感じさせないし……
それだけに、なぁ~~んか自分が虚しい。
「ねぇ、真琴ちゃん、それはそうとしてさぁ」
「うん?なんだよ?」
「仲直りして貰った立場で、こう言う事を聞くのもなんなんだけど、今後って、どうするつもりなの?」
「う~~ん。急に今後どう?って聞かれてもなぁ。大体にしてオマエ、なにについての今後だよ?」
「あの、えぇっと、例えば音楽とか」
こんな状況だし、なにかお礼の1つもしないと私の気が済まない。
だからまずは、張子の虎である私でも、少しは役に立つであろう音楽。
このままなにもかも借りっ放しの状態だなんて、ホント情けないからね。
なにか1つでも、此処で協力出来る事が有れば嬉しいんだけどね。
「音楽か……音楽なぁ。あぁ、そう言えばあれだな」
「なになに?なにかあるの?」
「あぁ、まぁ、何かあるかって程の大した話でもねぇんだけどな。モジャと一緒に新しい音楽サイトを立ち上げるって話は出てるな」
えっ?
えっ?えっ?えっ?
えぇ~~~!!なにそれ?
いつの間に、そんな壮大な計画が持ち上がってたの?
ちょ、ちょっと、ちょっと、ちょっとホント運待ってよ!!
なになに?そうやって私1人だけポツ~~ンっと置いてかないでよ!!
ただでさえ崇秀さんや、奈緒ネェが、遥か遠くに突き進んで行ってるんだから、真琴ちゃんまで、急に遠くに行かないでよ!!
やだやだやだやだ!!
「えっ?えっ?えっ?ちょっと待って、ちょっと待って。それって、どういう事なの?」
「いや、まだ、どうもこうもねぇんだけどな。今日な【無名】のライブに行ってよ。その後の打ち上げ途中で、偶然モジャに逢ってよ。その時に突然決まった話だから、ホント、まだなにも決まってない状態だ」
「えっ?でも、細川君から概要位は聞いたんだよね」
「まぁなぁ」
「どっ、どんな感じなの?」
ヤバイ、ヤバイ。
ぼぉ~~っとしてたら、本当、みんなに置いて行かれちゃうよ。
ヤダヤダ!!
そんな情けなくも悲しい存在になるのは嫌だぁ!!
「いや、どんな感じって言われてもなぁ。なんつぅか、簡単に言えば、崇秀に敵対する組織を作ろうって話なだけだ」
「えっ?えっ?崇秀さんと敵対しちゃうの?それって、今回の件が原因で?」
「まぁなぁ。初めは、多少そう言う考えもあったんだがな。今は全然ねぇよ。つぅか、別に友達関係を解消しようとか、そう言う話でもねぇんだわ」
「どっ、どっ、どう言う事?」
「まぁ、なんつぅかな。元々よぉ。俺は、音楽で崇秀に勝ちたい訳なんだけどよぉ。あの馬鹿は、俺が1人で戦っても勝てる様な相手じゃないのは、オマエも十分承知の上だろ」
「うんうん」
「それに伴って、人を集めなきゃ勝てないのも、自動的に解るよな」
「うんうん。勿論、そうなるよね」
「けどな。その人集めをするのにGUILDを使っちまったら、結局はアイツの掌の上で踊らされてると同じになっちまう訳だろ。だったら、そう成らない為にも、自分達の音楽サイトってもんを、モジャと一緒に立ち上げようってだけの話なんだよ」
うわっ!!なにそれ!!
なんか思ってた以上に本格的な話なんだね。
それに、此処まで細川君が真琴ちゃんと一緒に動くって事は、なんか本腰を入れて『崇秀さん討伐令』を発令する気なんだ。
でも、どうしよう?
真琴ちゃんに協力してあげたい気持ちは大いにあっても、私は崇秀さんの彼女でもある訳だし。
私の立場上、ドッチに付けば良いんだろ?
「そっ、そうなんだ。あぁでも、そんな話を私にしちゃって大丈夫なの?」
「うんなもんぐらい構わねぇよ。どうせ、いずれは解る事なんだからよ。気にする程のこっちゃねぇな」
しかも、なんか自信有りな感じだね。
この程度の情報漏洩じゃ、ビクとも動じないって感じがヒシヒシと伝わってくるね。
こりゃあ、真琴ちゃんも細川君も本気の本気なんだね。
「そうなんだ」
「あぁ、問題無いな。なんならオマエも一緒にやるか?」
「えっ?」
「いやな。オマエの立場上、別に強制するつもりはねぇんだけどよぉ。オマエも『崇秀を倒してみたい』って願望があるなら、一緒にやらねぇか?って言ってるだけの話だ」
「それって、私に崇秀さんを裏切れって事?」
「そうじゃねぇよ。これは悪魔で『音楽だけの話』だ。プライベートは、なにをしてても干渉はしねぇよ」
うぅ……微妙。
恩返しする上で、提案としては悪くないとは思うんだけど。
そんな個人的な理由で、今まで散々お世話に成ったGUILDをアッサリ見限るのも、人として、どうかと思うしねぇ。
借りも返さずに、お世話に成りっ放しで、さよならだけするって言うのも……ねぇ。
しかも、この言い分だったら、特別、私が必要って訳じゃ無さそうだしなぁ。
話を聞いちゃっただけに、これは、どうしたもんだろう?
今回も最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪
自身の精神的な成長のなさに苦悩する眞子。
そんな折、倉津君からの新しい音楽サイトへの誘い。
さぁ、立場上、色々と難しい立ち位置にいる眞子は、この提案に、どう対処するのか?
……ってな感じで、今回のお話は終わったのですが。
この結果如何では、今後の眞子の成長にも関わってくる問題なので。
此処は1つ、一時的な感情に流されずに、キッチリと考えてから行動に移して欲しいものですね。
さてさて、どう転がるのか?
次回は、その辺の眞子の揺れ動く心境を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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