●前回のおさらい●
覚悟を決めて女子の作法に準ずる事にした倉津君。
慣れない面が多く、苦労する点も多いが、自身でも色々考える様に成って来た。
そんな感じでトイレ後、奈緒さんと少し話した後、素直ちゃんが待つであろう部屋に『単独で戻って行く』倉津君だった。
そんな調子で部屋に戻ったんだが。
どうやら素直は、まだ台所から部屋に帰って来ていない様子。
当然、誰も居ないので退屈に感じる。
(↑調子の乗って、次の獲物を探す俺)
じゃあ此処で、特に恒例でもない三択なんてものでもして、次の行動を決めてみるか。
①奈緒さんや、素直が部屋に帰って来るのを、大人しく部屋で座って待つ。
②敢えて此処で待たずに台所に行って、少し話をしながらも素直を手伝うフリをする。
③この姿になっても尚、奈緒さんのトイレを覗いて、芳香剤をブチ当てられる。
……って言うかな。
自分で3択とか、なんとかは言ってみたんだがな。
こんなもん言う前から、ハッキリと解答が決まってるよな。
なにも迷う事無く、此処は、当然③だよな。
これっきゃねぇだろ!!
―――なに?違うだろ、オマエは『芸人か!!』って?
いやいやいやいや、待て待て待て待て、冷静に考えてみろっての。
確かに、今の俺は、誰がどう見ても女の形してる超美少女だけどだな。
オィちゃんにだって、まだ、男としての性欲が沢山残っとるんじゃよ。
だから此処は一発、奈緒さんを覗いて、自身がどう言う反応に成るか?と、奈緒さんがどういう反応を示すかを確かめるべきだろ。
それにだ。
もし奈緒さんが無反応だった場合、彼女の言った様なトイレの作法が、本当に行なわれてるかも確かめられる訳じゃん。
これって、一挙両得じゃね?
……違いますね。
はい、そうですね。
じゃあ、一番順当な②で良いです。
③を諦めた俺は、そのまま台所に行こうと思ったんだが、丁度、素直が戻って来た。
「あれ?倉津さん、どこかにお出かけですか?」
あらら、素直が戻って来たのは良いが、イキナリなんとも順当な質問だな。
まぁ、この現状で、面白い質問をしろって方が無茶か。
……芸人じゃあるまいし。
……どこかの山中じゃあるまいし。
「あっ、いえ、特に何所かに行く予定はないのですが、有野さんの所に、少しお手伝いに行こうかと思っていた所なんです」
『眞子には好印象を持って欲しい』って、奈緒さんが言ってたからな。
なので俺には、知り合いを1人1人完璧なまでに篭絡していかなきゃならないって使命がある。
まず、その手始めに、目の前に居る素直を餌食にしてやる。
ゲスゲスゲスゲス……
(↑なんか久しいな)
「そうなんですか。ごめんなさい、僕がドン臭いから、余計な気を使って頂いちゃって……」
「うぅん、そう言う意味じゃなくてですね。……有野さんが作ったケーキが、どう言う物なのか、どうしても気になっちゃいまして。私、食いしん坊なんですかね?」
どう?この言い返し?
女の子ならではの、独特の言い返しじゃね?
男のままだったら『甘いものを喰いたい』なんて話じゃ、言い返しとしてもミットモネェとしか感じないかも知れないんだがな。
女の子の形なら、こう言うの可愛くね?
「そっ、そんなに過剰に期待して貰っても、僕、そんなに上手じゃないですよ」
「嘘つき……」
「えっ?」
あっ!!ヤベッ!!
素直の奴が、あまりにもツマンネェ事を言うから、つい、本性が出しちまったい。
元よりオマエさんのケーキは、鬼の様に美味い事は立証済みだし。
今回持って来てくれたお盆の上に乗ってるケーキにしたって、見るからにうまそうな見た目をしてるしな。
……っとは言え。
此処で、その事実を知らない筈の眞子が、それを口にする訳にもいかないので。
此処は1つ『嘘吐き』って言葉を上手く使って、早急に誤魔化して見せようじゃありませんか。
それで、完全に話を逸らしてやる。
こう言うピンチに関しては、我に秘策あり!!だからな。
「だって、素直ちゃん、嘘吐きじゃないですか。こんなに綺麗にデコレーションされてるケーキを作られてるのに、それが美味しくない訳ないじゃないですか」
「えっ?素直ちゃん?」
矢張り、ケーキの事より、コチラに喰い付いたな。
「えっ?あっ!!あぁ、ごっ、ごめんなさい。まだ、お友達でもないのに、私ったら、勝手に名前で呼んじゃって……ごめんなさい」
「えっ?あっ、あの、別に素直って読んで貰っても良いですよ。友達は、みんな、僕の事そう呼びますから」
「ほんとですか?……有野さん、私なんかの、お友達になってくれるんですか?」
「あっ、勿論です♪……あっ、あの、その代わり、僕も倉津さんの事、眞子ちゃんって呼んで良いですか?」
「あっ、はい。そう呼んで下さって、結構ですよ♪」
ほらな。
こう言えば、意外な程に上手く話が逸れただろ。
まぁ、そうは言っても、この作戦は『名前』が関わってる話なだけに、1人一回の限定でしか使えねぇ技なんだけどな。
女の子を名前で呼ぶって行為には、以前から少々思い当たる節が有ったんだよ。
それがなにかって言うとだな。
女子ってな、ある程度『相手の事を気に入る』か『親密度を上げたいなぁ』って思うと『対象になる相手から名前で呼んで欲しくなる』って奇妙な習性が有るんだよ。
まぁ此処については、男の時に感じた意見ではあるんだが。
これは、女の子の同士の間でも十分通用すると踏んで、今回その技を使ってみた訳だ。
まぁ正直言えば、此処まで上手く行くとは思わなかったが、上手く、そこを突いたって訳ですわ。
「じゃあ、仲直りですね」
「はい、仲直りです」
「ふふっ」
別に、これと言って喧嘩してねぇんだけどな。
女の子の感覚じゃ、こう言うのも仲直りの一種なんだろうな。
しかしまぁ、ホント、女子の感覚ってのは色々難しいもんだな、オイ。
これを普通にこなしてるなんて、女子って生き物は大したもんだよ。
まぁこうして、意味の解らない仲直り(?)をした俺と、素直は。
ケーキセットを一旦コタツの上に置いて、2人でコタツに入り込む訳なんだが、此処も安易に考えちゃイケナイ問題がある。
奈緒さんの言ってた通り、どうやら女の子っと言うのは、色々考えなきゃいけない事が多いらしい。
では、此処での問題についてなんだが。
此処での問題は『座り方』だ。
いや……って言うのもな。
初対面の人間の前で、イキナリ女が『胡坐をかく』のは、流石にマズイだろ。
ミットモナイと言うか、杜撰と言うか……兎に角、女子が胡坐をかくなんて真似は、パンツが丸出しで見栄えが悪い。
それにコタツの中に、足をド~~~ンっと伸ばすのも頂けない。
さっきの素直のリップの話じゃないが、女子なら出来るだけ、人の足との接触も避けたい筈だからな。
勿論、本来の姿のままなら、我欲に従って、きっと、そうしてただろうが……奈緒さんの言ってた『好感度』の話が有るから、女の俺は、絶対にしちゃイケナイ。
寧ろ、好感度が関わってる以上、素直から見ても『可愛い』っと思わせなきゃならない訳だ。
けど、そうは言っても、俺、昨日まで男だった訳だろ。
あの足を横にして座る女の子独特の座り方は、今やろうとしたんだが、どうにも上手くバランスが取れそうにもないんだよな。
こう言うのに慣れてないから、直ぐに体が傾いて斜めになっちまう。
ダメだこりゃ。
『じゃあ、他にないのか?』って聞かれたら、勿論、男女共通の正座って選択肢もあるんだがな。
これはこれで、血管を圧迫して足が痺れるから、俺自身が嫌いなんだよな。
それに長時間正座で座ってて、急に立とうとしたらコケるとか間抜け過ぎるだろ。
(↑以前、お袋の法事で思い切りコケて、顔面を打った経験有り)
……っで、そんな我儘ばっかり言ってる俺が、最終的に選択したのが『とんび座り』と言う女の子特有の座り方だ。
早い話、正座をした後に、両足を外側にして、尻を床にペタンっと付ける座り方だ。
まぁ、この座り方って、スゲェ腿に負担が掛かる座り方ではあるんだがな。
床にペタンってお尻を付けて座ってるから、見た目が、兎に角キュートなんだよ。
因みにだな、何故、こんな事を知ってるかと言うとだな。
由佳が体育の授業の時に、偶に、この座り方をしてたんだよな。
そん時『由佳の奴、スゲェ可愛いな』って思ったから、今、それを実践しようとしてる訳だ。
女の子にとって『好感度』と『可愛さ』は=関係。
こう言う事ばっかり考えていては、嫉妬の対象にもなるのは否めないが。
基本的には、同姓が嫉妬する程の可愛いビジュアルが大事って事ッスな。
女の子の真似を恥ずかしがってたんじゃ、いつまで経っても『好感度なんて物は上がらない』って事でもあるッスな。
どうでも良いッスね。
はい、そうッスね。
さてさて、素直の反応や如何に(笑)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです。
こう言う文章を書いててなんですが……女子って、ホント大変そうですよね。
勿論、男性には、男性の苦労と言うものが付き纏うのですが。
女性の様に、細かい点まで気を使わなきゃいけない事を考えたら、まだかなり楽な方なのかもしれませんね。
(違うカテゴリーでは、男性の方が大変かもしれませんがね(笑))
ですが、これらのお互いの苦労を理解し合う事により。
少しづつでも、お互いが尊重し合える様な関係に成って行けると思いますので、此処で女性の苦労を書かせて頂いております。
男性の苦労に関しては、このTS編が始まるまでに、しこたま書かせて頂きましたしね(笑)
さてさて、そんな中。
倉津君の考えに考え抜いた末の解答である『トンビ座り』に対して、素直ちゃんは、どんな反応を示すのでしょうか?
まぁ、ある意味、どうでも良い様な話ではあるのですが……そこは次回の講釈。
少しでも興味が湧きましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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