最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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047 不良さん ベーシストとドラマーで悩む

公開日時: 2021年3月24日(水) 20:55
更新日時: 2022年11月8日(火) 22:28
文字数:3,014

●前回のおさらい●


 奈緒さんの山中に対する冷たい態度の理由が判明。

しかしそれは、完全に奈緒さんの『関西人に対する偏見』でしかなかった(笑)


だから、その間違いを指摘して、一見、奈緒さんと山中の仲を取り持つ様な事を言う倉津君だが。

実は、その言葉とは裏腹に『山中が奈緒さんに変な興味を持たない様に仕向けていた』


『そのままでも、その内、山中も気付くでしょう』とか言って。


そしてその結果、山中君は、再び奈緒によって『その場で凍らされる(笑)』

 此処に入るまでの間、チョコチョコと奈緒さんの天然はあったが、漸く会場内に入った。

そして、そんなライブハウスの中には早くも約100人近くの人間が居り、会場内はかなり騒然としている。


……っとは言ってもな。

実際、作業をしている人間は20~30人程度。

後の人間は、作業の邪魔になら無い様に、端で座り込んでいるのが大半。


しかしまぁ、なんなんだコイツ等は?

なんとも言えねぇ様な奇妙な光景が広がってるもんだな。



「奈緒さん、あの人達はなんッスか?」

「あぁ、あの人達はね。……んっ?ちょっと待って、クラ。今また私の事を『さん付け』しなかった?」

「いっ、いや、俺、今ちゃんと、奈緒って言いましたよ」

「あっ、そぅ?じゃあ、ごめん」


感付くなぁ。

奈緒さん、此処に何か感じるものがあるのかして、やけに『呼び捨てする』に拘りがある様な感じがするな。


だったら、出来るだけ気をつけた方が良さそうだな。



「えぇっと、ごめん。じゃあ、話を戻すね」

「ッス」

「えぇっと、なんだっけ……あっ、そぉそぉ、あの人達はね。オーディション待ちの人なのよ」

「オーディション?オーディションって事は、なんか有名なプロデューサーでも此処に来てるんッスか?」

「正解……って、此処は言ってあげたいんだけど。そこは、ちょっと違うかな」

「はぁ、違うんッスか」


???

どういう事だ?

この場合のオーディションって言えば、通常考えられるのは、まぁ、ライブに参加する人を決めるもんだよな。

そんでそれを決めるのが、プロデューサー。

でも、奈緒さんの言い分だと、コレは『ちょっと違う』と……


なんのこっちゃ?


……ってかな、それ以前の問題として。

そのプロデューサーが不在なんだったら、なんで尚更、そんなオーディションみたいなもんが、あの馬鹿のライブ如きであるんだ?


意味が解らん。



「そうだね。……ってかね。その前提の話として、実は、仲居間さんのライブってね。全部が全部、基本【乱入制】なのよ」

「はぁ?なんッスか、その訳の解らんライブは?ってか!!人のライブに乱入したらダメでしょ」

「普通はね。普通なら、そう思うよね」

「そうッスよね。……けど、奈緒さんが、そう言うって事は、あの馬鹿のライブは、普通じゃないと」

「うん、そう言う事」

「でも、どういう事なんッスか?」

「あぁ、なんて言ったら、わかり易いかな……」

「なんなら、俺が、その辺を説明しようか?」

「馬鹿秀」

「なっ、仲居間さん!!」

「どぉ~もっ」


馬鹿秀は着ているTシャツをドロドロにしながら、作業場からコチラにヒョコヒョコと音を立ててやって来た。



「オイオイ、つぅか、オマエ、何やってんだ?ライブの主催者が、なんでそんなドロッドロッになってんだよ?」

「んあ?んなもん決まってんだろ。主催者だからこそ先陣を切って働かなくて、どうすんだよ?アホなのかオマエわ?」

「あっ、あの、仲居間さん。こっ、この間は、どうもありがとうございました」

「んあ?なんの事?……あぁバンドの件ね。どぉ?上手くやってる?」

「あっ、はい。お陰さまで、国見さんには良くして貰ってます」

「そいつは良かった。つぅか、国見さん所のバンドはレベル高いからなぁ……なかなか良いドラマーが見つからなくってね。コチラこそ、向井さんが国見さんとこのバンドに入ってくれて大助かりだよ」

「いえ、そんな」


はぁ?

いやいや、ちょっと待て、ちょっと待て。

オーディションの話から逸れたのは、別に構いわしねぇんだけどよ。


それ以前の問題として、奈緒さんってベーシストじゃねぇのか?

なんで、奈緒さんがドラマーだなんて話が出てくるんだよ?


でも、確かに今、馬鹿は、ドラマーってハッキリ言ったよな。


あれ?なんかおかしいぞ?



「オイ、崇秀」

「んだよ?」

「奈緒さんってベーシストだよなぁ」

「いや、違うぞ。向井さんは、バリバリのジャズ・ドラマーだぞ」

「いやいやいやいや、俺、奈緒さんにベース習ってんだけど」

「はぁ?俺、ドラムでバンド募集を受けてるんだけど」

「なんだ、どういう事だ?」


あれ、なんだ、この変な喰い違いは?



「あぁ、ごめん、クラ……実は、私、黙ってたんだけど。本業はドラムなのよ。でもでも、誤解しないでね。ベースの弾き方は、嘘言ってないから」

「はぁ」

「あぁ、なるほどな。そう言う事な。倉津、オマエ、勘違いしてるぞ」

「なにをだ?」

「いやな。前にネットで、向井さんにベースの弾き方を聞かれた事が有るんだよ」

「あぁ」

「それでまぁ、オマエも知っての通り、当時の俺はベースを触った事が無かったから、一応、ギター的な弾き方を教えた訳だよ」

「ほぉほぉ」

「まぁ、此処からは、俺の勝手な推測なんだが……多分、向井さん、その後、独学でベースの弾き方を憶えたんじゃないかな?って。この子、スゲェ音感が良いからな……違った?」

「あっ、はい、それで合ってます」


なんだ?

じゃあなにか?

奈緒さんは、馬鹿と同じやり方でベースを弾いてたって事か。


って事は何か?

……崇秀が奈緒さんの師匠で、奈緒さんが俺の師匠って事は、俺は仲居間一門って事か?


うわっ!!嫌だぁ~~~!!

その事実、かなり嫌過ぎるなぁ。


そんなおかしな一門には、死んでも入りたくねぇぇえぇ~~~!!



「っで、どれ位、弾ける様になったの?」

「あっ、そんな。仲居間さんに聞いて貰える様なレベルじゃないです……はい」

「そっ。すみません。誰かシールド持って来て」

「えっ?えぇえぇえぇぇ~~~っ!!」


こりゃあ完全に、この場で奈緒さんにベースを弾かさせる気だな。


しかしまぁ、何をするにも強引だよなコイツって……


作業場から馬鹿の指示に従って、一人の作業員が慌ててシールドを持ってくる。



「ウッス。シールド持って来たっすよ」

「あぁ、作業中なのに、すみません。ありがとうございます」

「大丈夫ッスよ……あぁそれと、今日分の大まかな設営は終わりましたんで、残りは明日の朝にでもやりますね」

「そうッスか。んじゃあ、今日はご苦労様です」

「じゃあ、俺等、これで上がりますんで、仲居間さんも、ご苦労様でした」

「お疲れ様~~~ッス」


今、作業員との会話で、設営は終わったって言ってたよな。


なら、コイツのこった、絶対に奈緒さんをステージに上げるぞ。



「ステージ出来たんだってさ、向井さん」


ほらな。

案の定、言いやがったよ。



「えっ」

「なになに、こんな隅っこでベースを弾くより、ステージの上で弾いた方が気持ち良いでしょ」

「えっ?えっ?いやいや、そんなの無理ですよ。心の準備が……」

「はいはい、なに言ってんだかね。……まぁ良いや。取り敢えず、その前に、他の奴等にライブの説明しなくちゃいけないから、向井さんは、その間に、心の準備とやらをしておいてくれりゃあ問題無い。……んじゃな」

「ちょ!!えっ?えぇぇえぇぇ~~~っ!!」


崇秀は、それだけ奈緒さんに言い残すと、ダッシュで走り去り。

その勢いのまま、ステージの上まで一気に駆け上がる。


んで……



「は~じっま~~るよぉ~~~~」


そう言って『パンパン』っと二回ほど手を叩く。

そうするとだな。

その二拍に呼応するが如く、ライブハウスの端に座り込んでいた奴等が、楽器を片手に立ち上がり、素早く動き出す。


その動きは、とてもミュージシャンとは思えない機敏な動きだ。

我先にと言わんばかりに、ステージの周りに集まっていく。


……にしても、まぁ、崇秀が呼んでる以上、そうやって集まるのは良いんだがな。


なんなんだよ、その先公がガキを集める様な呼び声は?


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


今回から、崇秀のライブの話をしようと思ったのですが。

その前に、奈緒さんのベースの件で、話が終わっちゃいましたね(笑)


次回からは、ちゃんと説明いたしますので、お許しください_( _´ω`)_ ←寝土下座(笑)


そんな訳で次回からは。

そんな反省点を踏まえた上で、本格的に『崇秀の特殊ライブ』にスポットを当てていきたいと思います。


また良かったら、遊びに来て下さいね(*'ω'*)ノ

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