●前回のおさらい●
奈緒さんが病室から出て、まずは自分の身嗜みを整えに行ってる間。
眞子も動かない手で、必死に身嗜みを整えようとするけど……やはり無理。
そこで、奈緒さんの早期の帰還を願うが……
……でも、そんな私の切実なる願いも虚しく。
奈緒ネェが病室に帰って来たのは、余裕で1時間以上経ってからのご帰還だった。
しかも、このお姉さん……どうやって病院の許可を得たのかは知らないけど、明らかに病院の風呂場を借りた様子。
人がブラシも動かせずに苦しんでるって言う時に、なに、自分だけ、石鹸の良い匂いをさせて帰って来てるんですか!!
最悪だよ!!
「お待たせ。じゃあ早速、眞子も綺麗にしてあげるね。まずは髪から綺麗にしよっか?」
「ぷぅ!!……そうですね」
「うん?なになに?なにをそんなに膨れてるのよ?」
あぁっと……そうですね、そうですね。
此処で膨れて、拗ねてちゃダメですよね。
この後、髪を梳いて綺麗にして貰う立場なんだから、此処で文句を言っちゃダメだよね。
いっぱい文句を言うなら、せめて、身嗜みを整えて貰ってからにすべき……だよね。
じゃないと、このまま放置されちゃう。
「あぁっと、別に拗ねてる訳じゃないんですが。ちょっとですね。奈緒ネェから、石鹸の良い匂いがして羨ましいなぁって……」
「あぁそっか、そっか、そう言う事か。ごめんごめん。直ぐに眞子も綺麗にしてあげるから、許してね」
反省して頂けたんで。
じゃあ此処からは拗ねずに、文句も一切合切言わない方向にしますね。
その代わりですね。
普段以上に綺麗にしてくれる事を希望します。
いや……切に願います。
「あっ、はい。宜しくお願いします♪」
「はぁ、そう言う所は、ホント、可愛いよね、君って……」
「そりゃあ私は、奈緒ネェの妹ですからね。そんなの当然ですよ当然♪」
「ホント、よく言うよ」
そう言いながらも、私の手にしたブラシを、そのままに。
奈緒ネェは、私の手を持って、ゆっくりと髪を梳かしてくれる。
これは、まだ殆ど力が入らない私に対して「少しでも感覚を取り戻させようとする」彼女なりの配慮なんだろうね。
あぁ……それにしても、一ヶ月も昏睡してた割には、やけに髪の滑りが良いね。
それに、髪を梳いて貰ってて初めて気付いたんだけど、そんな自分の髪から凄く良い匂いがする。
あれ?でも、なんでだろ?
昏睡してる間なんて、どうやっても風呂になんか入れる訳がないから、こんなに髪の滑りが良くなる事なんてない筈なのになぁ。
何か変ですね。
「あぁ~~~あっ。良いよねぇ、眞子は……」
そう思ってた矢先、奈緒ネェは、なにを思ったのか、突然そう呟いた。
あの、それって、一体、どう言う事なんでしょうか?
……
「なっ、なにがですか?」
「うん?なんだ、アンタ気付いてないの?自分の髪から、凄く良い匂いがするでしょ」
「あぁ、いや、それに関しましては、今さっきから妙に気にはなってたんですが、なんなんですか、これ?」
「それはね。仲居間さんが、毎日、君の髪の手入れしてくれてたから、そんな良い匂いがするんだよ」
「えっ?」
「ホント、羨ましい限りだわ」
「えっ?えっ?……それ、本当ですか?」
「ホント、ホント。この一ヶ月、毎日毎日、丁寧に手入れして、眞子が、いつ目覚めても良い様にしてくれてたんだよ。この贅沢者」
あぁもぉ、そう言う理由だったんですね。
ってか、あの男は、神仏の類ですか?
そして、女性が気になる事なら、なんでもお見通しですか?
『美と音楽の神様』に寵愛されてる男に、そんな事して貰えてたなんて、それはもぉ私にとったら反則ですよ。
……でも、気遣ってくれて、心から『ありがとう』だね。
凄く嬉しい……
「ふふっ、ふふふっ」
「なになに?何をそんなにニヤニヤして笑ってるのよ?気持ち悪いわよ」
「良いですよぉ~~。気持ち悪いって言われても良いですよぉ~~。だって、こんなにも幸せな気分なんですも~~~ん」
「ははっ……はい、出来上がり」
「あっ、ありがとうございます」
早いなぁ。
流石『身嗜み女王』の奈緒ネェだ。
こうやってお喋りをしながらでも、私の、どこをどうすれば良いかを完璧に把握してくれてるのかして、物凄く手際が良い。
これは、奈緒ネェの美意識が高いだけに出来るであろう所業なんだろうけど。
この手際の良さは、今後の為にも私も見習わなきゃね。
「あぁ、そうれはそうと眞子」
「あいあい」
「因みになんだけどさぁ」
「あっ、はい」
なんでしょうか、女王陛下?
「私は、仲居間さんと違って、これ位しか出来無いから、仲居間さんが帰って来てくれるまで、この髪形にしかしてあげられないからね。ごめんね」
なにをおっしゃいますやら。
女王陛下にセットして頂いているだけでもありがたい事なのに、それに対して、なんの文句が有りましょうや。
平民の私が、そんな贅沢は申しませんよ。
陛下にセットして頂いただけでも、感謝ですよ感謝。
「あぁそんな、そんな。ありがとうございます」
「……ハイ、じゃあ鏡ね。退院まで、この髪型だから気に入ると良いね」
うっ、うん?
この奈緒ネェの態度は、何かおかしいですね。
なんでこんなにも親切な女王陛下様が、そんなに私を見てニヤニヤしているんですかね?
いやホント、なんで?
そんな不穏な雰囲気を醸し出しながら。
私の前に鏡を出して、髪型をチェックする様に言って来てくれるんですかね?
なんか、此処に来てヤナ予感が……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
なにやら、不穏な空気が流れている様ですが。
こう言う時の奈緒さんは、女王陛下ではなく、悪戯好きのティンカーベルな可能性が高い。
そんな訳で、果たして眞子は、どんな髪形にされているのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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