●前回のおさらい●
困った性欲大魔王・ゼンちゃんを見事に撃退したステラさん。
だが、そんなステラさんを見た美樹さん達は、彼女に恐怖を感じてしまった。
「だよね。……正直、さっきのは、ちょっと引くよね」
「確かに、なんか『あそこまでしなくても』って感じは有るね」
「うん、ちょっとね」
その言葉を聞いたステラは、美樹さん達から目を逸らして、少し俯く。
あぁ……けど、これは仕方が無いよな。
男同士なら、こう言った事があったとしても『スゲェ!!』とかで全部済んじまうんだが。
女の子が、男相手に、あんな事をすりゃあ、普通の女の子だったら怖いと感じるのは、なにもおかしい事ではない。
彼女達の反応は、至って正常な反応だ。
故に、誰も彼女達を責められる訳が無い。
ステラが、どういう気持ちで、こんな事をしたのかは知らないが、今の現状を見れば、ただの一方的な、無慈悲な暴力にしか見えないもんな。
ステラが如何に『トラウマ』を持っていようと、それは、それに気付いた者にしか解らない事。
今日、ステラに出逢ったばかりの美樹さん達に、それをわかれって方が難しい。
でも、なんか可哀想だな。
コイツは、無意味に、そんな酷い事をする奴じゃないんだけどな。
俺としては、ステラの『トラウマ』に、早く気付いてやって欲しい。
「そぉ?私は、別に、そうは思わなかったけどなぁ」
美樹さん達の意見に反して、奈緒さんが、ステラのフォローに廻った。
どうやら彼女は、ステラの弁護するにあたって、何か思い当たる節が有るらしい。
だったら此処は、彼女に任せた方が良さそうだな。
男の俺が、何を言っても、感覚の違う女の子に上手く伝わらないケースが多い。
それに奈緒さんは、こう言った事に、何故か慣れてる節がある。
だから、俺は余計な事は口出しせずに、彼女を見守るのが正解だと思えた。
「なんで?あぁ言うの、奈緒は怖くないの?」
「全然。寧ろ、私は、こんなの日常だと思うけど。……確かに、さっきのステラの行為には、やり過ぎ感は否めないけど。男から身を守る為の自己防衛だと思えば、有りなんじゃない」
「けど、明らかに喧嘩を売ったのは、ステラの様に見えたけど。……それじゃあ、自己防衛とは言えないんじゃないの」
「そぉ?だったら、その前に美樹達が言った言葉は『喧嘩を売ったものじゃない』と言い切れる?私なら、あっちの方が腹が立つと思うけどなぁ」
「けど……それだと、その時点で、怒っても、おかしくないんじゃない?彼は怒ってなかった様に思うけど」
「それ……ちょっと違うかな」
「なにが?」
「私の考えだと。ステラは、彼の怒りの矛先を、自分に向けたんだと思うよ」
「なんで、そんな必要性があるのよ?」
「簡単だよ」
そっか……この話って、そこまで深い話だったんだな。
けど、ステラの奴が、他人への怒りまで自分に向け様としてる、とまでは思ってもみなかった。
アイツに、そんな心理が隠されていたとはな……
「良い?基本的に怒りって言うのはね。徐々に蓄積されて行くものなの。最初は、そんなに怒ってなくても、罵倒される数が増えれば増える程、怒りはドンドン蓄積されて行く。もしそうなったら、どうなる?女に罵倒されて黙っている男なんて、早々居ないよ」
「言ってる意味は解るけど。彼の怒りが、私達に向くとは限らないじゃない……違う?」
「そうだね。元香の意見は、なにも間違ってないね。けど……じゃあ、もし、罷り間違って、自分に向いた場合はどうするの?対応出来る?」
「そりゃあ1人じゃ対応出来無いけど。此処には、みんな居るし、兄貴君も居る……大丈夫だと思うけど」
「そこが、ステラと、私達の違いなんじゃない?この子だけは、1人で対処出来る確証があった。だから暴言を吐いてまえ自分に怒りを向けさせた……『私達に被害がいかない様に』ね」
「あっ……」
「もし、これで納得出来るんなら、今度からステラの事を、ちゃんと見てあげてね。口は悪いけど、ステラは、そう言う無駄な暴力を振るう子じゃないからさ」
矢張り、奈緒さんは周りを良く見ている。
ステラの行動から、そこまで考えるとはな……
現に、奈緒さんがフォローしてからと言うもの。
普段通りステラの毅然とした態度は、なにも変わらないが、少し照れた様に顔を赤らめている。
これは動かぬ証拠だ。
それに比べて、俺ときたら……
調子に乗って、喧嘩や『頭突き』の解説をしてみたり。
ステラの事を勝手に『トラウマ持ち』だと判断してみたり。
ゼンのフラれる姿を面白がって見ていたり……奈緒さんとは大違いだ。
たった2つしか奈緒さんとは年が変わらないと言うのに……なさけねぇな。
「あっ、あの、ステラ……さっきは怖いとか言って、ごめんね」
「いえ、一向に構いませんよ。私自身、あまりしつこい男は好きじゃありませんから。あの行為の大半は、自分の感情によるものです。ですから、美樹が謝る様な事はなにもありませんよ。それに私自身、相手に対して恐怖感を植え付けていた訳ですから、誰が見ても怖がって頂かないと意味がありませんしね」
「あっ、あたし達の事……嫌いになってない?」
「なりませんよ。何故、そんな事を疑問に思うのですか?」
「だって……あたし、ステラの事なにも見てなかったし」
「それは仕方が有りませんよ。美樹達が、私の事を知らないのと同様、私も美樹達の事を良く知りません。そう言うモノは時間を掛けて、ゆっくり育てて行くものですからね。……それに、さっき知り合ったばかりの私達が、それを理解しあうのは不可能に近い……ですから、これからも私と仲良くして頂けますか?」
「うん……勿論!!」
「そうですか。では、今後も宜しくお願い致します」
「こちらこそ」
これで1つの蟠りが解けたな。
お互いが、お互いを、1つづつ色々な面を知って、ゆっくり確実に親交を深めるか……
良いな、そう言うの……
けど……この話って、奈緒さんにとったら、辛い話かもしれないな。
ステラと、美樹さん……いや、此処に居る奈緒さん以外の人間には、これからもタップリと、そうやって親交を深めていく時間が与えられているが……彼女には、もう、それが殆ど無い。
奈緒さん……辛いだろうな。
現に奈緒さんは、和解したステラと美樹さん達4人組が、仲良く話してる姿を、少し寂しそうな顔で見ている。
そんな彼女を見ると、俺は、無性に自分の無力さを恨みたくなる。
でも、口先や、心でそう思ったところで、俺には、彼女を救う手立てを、なに1つとして持っていない。
幾ら家が金持ちだろうが、4億なんて大金を払う事なんて到底無理だし、実際、彼女もそれを望んでいない。
結局、どう足掻いた所で、此処に居る連中では、それを回避する事は不可能な訳だ。
―――悲しくなる現実だ。
「よッ、馬鹿津。なに女の子に囲まれて時化た顔してやがんだ?」
「崇秀……」
俺が、奈緒さんの心境を考えて凹んでいると、此処に居る筈もない崇秀が、なんの前触れもなく現れた。
このパターン。
此処で魔王が現れるって事は……この俺の情けない現状を打破出来る、なにか策でも持っていると言うのか?
コイツは、神様が、そう言う風にしているのかは知らないが、いつも俺が困った時に、必ず現れてくれる。
俺は崇秀の出現に、密かに、なにかを期待し始めていた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
これにて、第四十話『女の子と言う生き物』のお話はお仕舞なのですが。
ステラさんの見解を見事に読み切り、美樹さん達を説得した奈緒さん。
ステラさんと美樹さん達の友情を、少し寂しそうに眺めているシーンは、何とも言えない雰囲気でしたね。
そして、そこに現れた崇秀……また一波乱起こりそうな状況ですね(笑)
なので次回からは第四十一話『魔王降臨と、もう1つの告白』をお送りしたいと思います♪
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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