最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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250 不良さん、考えていた方向とは違う方向に話が進む

公開日時: 2021年10月14日(木) 00:21
更新日時: 2022年12月12日(月) 16:03
文字数:4,166

●前回のおさらい●


 海岸にあるライブ会場に向けて移動するバスの中で、突然「此処に居る女子全員を芸能人にする」っと言い出した崇秀。


全員が、彼の言動に呆気に取られる中、なにやら、素直ちゃんには意見がある様です(笑)

「あっ、あの、そうじゃなくて、企業側が、なんでそんな大金を、僕達に払う気になったんですか?」

「アリス……オマエって、ほとほと馬鹿なんだな。相手側が、それだけの価値がオマエに有ると踏んだから、オマエに金を出すに決まってんだろ。そんな事も解んねぇのか?」

「けど……僕に、そんな価値なんてないです」

「ハァ~~~、もぉどうしょうもないな、このアホアリスだけは……。あのなぁ、オマエの自己評価なんぞ、企業側にとっちゃあ知ったこっちゃねぇんだよ。出したいって言ってんだからグダグダ言わず貰っとけ」

「でも……」

「面倒臭ッ!!そこまで言うならオマエ、相手側と無料で契約したら良いじゃねぇかよ。そうすりゃあ、無駄な金を使わずに済んだ企業側も大喜びだしな。……あぁひょっとしたら、浮いた金を、オマエの宣伝費に使ってくれるかもしれねぇぞ。考え方に寄っちゃあ、それも悪くない戦略かもしれねぇな」

「・・・・・・」


まぁそうだな。

崇秀の意見は、なにも間違っちゃいないな。


相手の心意気を買って素直が無料契約をすれば、また相手側も、素直の心意気を買う可能性がなくもない。


まぁ、こう言うケースは極稀なケースなんだが、本当に無くはないからな。



「さてと。盛り上がってきた所で、じゃあ、次の話に行ってみようか?」

「まだ、あるんだ」

「あ・た・り・前……この企画って、結構な額の金が動いてるから。実際の所『あまり』失敗出来無い状況なんだよな」

「あっ、あの、仲居間さん……今『結構な金額』って言ったけど。一体、幾らぐらいのお金が掛かってるんですか?」

「まぁそうだな。……大体だけど軽く見積もっても4~5億って処じゃないか?一応、中継車も来てる様な8000人規模のイベントだからな」

「はっ、8000!!……あぁダメだ。緊張してきた」

「うん?なんでだ?美樹さん達って、普段から人前でダンスしてたんだろ。別に、こんな程度の事で緊張する事なんかなかろうに」

「あの、仲居間さん……路上と、8000人じゃ、規模が」

「はぁ?規模?規模がなに?」

「えぇ~~~~っ!!だって8000人ですよ」

「ハァ?だから、さっきから、なに言ってんの?10人だろうと、100人だろうと、8000人だろうと、ソンナモン一緒じゃねぇか。なにが違うって言うんだよ。アホ臭い」

『『『『『『『えぇ~~~~~ッ!!』』』』』』』

「はぁ?」


そんな眉間に皺を寄せてもな。

オマエの意見は、絶対に罷り通らないぞ、崇秀。

そんなな、馬鹿な話が罷り通るのは、ブッ壊れてて、修復不可能な神経の持ち主のオマエぐらいのもんだ。


寧ろ、どうやったら、そんな思考に辿り着くのか俺も知りたいわ!!



「わかんねぇなぁ。……みんな、普段から、人に注目される様な事をやってんだろ。だったら、普通は、そんなもん、なにも気にならねぇだろに。規模なんて関係ねぇじゃん。そんなもん一緒だよ一緒」

「この人、ホントにブッ壊れてる」

「オイオイ、豪い言われ様だな。……大体にしてさぁ、緊張なんてして、どうすんだよ?何のメリットが有るんだ、それ?」

「その意見……アンタ、マジで壊れてるよ。メリットとか、そう言うんじゃなくて、普通の人間なら、自然と緊張するのが当たり前なんじゃないの」

「あっそ……じゃあ、それで良いんじゃね。緊張して、折角、聞きに来てくれてる観客に、ヘッタ糞で失礼な音を聞かせて、後々、後悔すりゃ良いんじゃねぇの。……俺なら、そんな無様な真似は、絶対に御免だけどな」

「だからぁ、あのねぇヒデ。誰だって緊張なんかしたくないわよ。けど、緊張なんて勝手にするもんなんだから仕方が無いじゃない」

「なんだよ、なんだよ。此処は馬鹿の集落か?あのなぁ、それを克服する為に、オマエ等はステージに上がってきたんじゃねぇのか?それが出来無い様な奴は、最初から、どんなステージであっても上がるべきじゃない。例え、それがさぁ『路上』であっても『素人コンテスト』であろうと関係ねぇんじゃねぇの?それこそ『プロ・アマ』問わず、どんな所であっても、1度でもステージに上がった以上、それを見た観客は、ソイツに期待するのは当たり前。それを踏まえて、観客に応えてやるのが俺達の仕事なんじゃねぇの?」


まぁ、正論なんだけどなぁ……


人間の精神って、そんな簡単に割り切れる程、器用には出来てねぇ様な気がするんだが……



「確かに、それはそうだけど……」

「ふ~~~ん。じゃあ辞めっか?緊張程度で前が向けない様な奴は、芸能人には向かない。この企画自体、辞めにすっかな」

「ちょ、ちょっとヒデ。それじゃあ、アンタが大損害を被るじゃない」

「損害なぁ……まぁ良いんじゃねぇの?高々1億や2億程度の賠償金で済むなら、そんな大した損害でもねぇしな」

「1億、2億って……」

「はぁ?たかがその程度の金で、俺の信用を買えると思えば、そんなもん安いもんだ。金は簡単に稼げるが、信用を取り戻すのは、失った時間の倍以上時間が掛かる。なら、俺は、金で物を済ますね。当然だろ。それにな……」

「それに?まだなんか言いたい事があんの?」

「あぁ有るぞ。それに俺が、オマエ等の演奏時間を自分自身で使えば、自分の知名度をもっと上げるチャンスだしな。だから、これ自体は、寧ろ、なんの問題もない。ハッキリ言っちまえば、俺は、オマエ等より遥かに良い演出や、演奏を観客にしてやる自信が有るからな。だから、オマエ等が辞めようが、何しようが、なんの問題もねぇの」

「・・・・・・」


沈黙する千尋に反して、奴は自信満々だ。


まぁコイツの場合は、完全に精神が壊れてるから、緊張も無く、普段通りの演奏が可能だ。

そして、もしそうなれば、あの恐ろしい様なギターの表現力でアッサリ観客を魅了するだろう。


だからこれは、本人の言う通り、そんなに難しい事じゃない。


―――やっぱコイツって、根本からして違うな。



「あの、仲居間さん」

「んあ?今度は向井さんか……なんだい?」

「あの……私個人としては、このイベントに参加したいんだけど。それはOKなの?」

「カイちゃん?」

「でしたら、私も参加させて貰います。最初から、そのつもりでしたし」

「ステラも?」


鉄の心臓コンビである奈緒さんと、ステラは、なんの躊躇も無しに、崇秀のイベント参加を表明した。



「だよな。普通そうだよな。やっぱ向井さんと、ステラは良く解ってるな……無駄が無い」

「あぁそう言うんじゃなくて……折角、仲居間さんから、知名度を上げる為の良い機会を与えて貰ってるんだから、それを利用させて貰おうかなっと思って」

「良いんじゃね、そういうの。そうやって、自分から何かに挑戦しないと、成功の扉なんて、絶対に開かないからな」

「ですよね。……けど、本心は、そこじゃないんですけどね」

「なるほどな。みんなで楽しめる、少ない時間を共有したいって事か……それも悪く無いな」

「まぁそんな感じですね。……素直が居て、ステラが居て、それに咲や千尋も居てくれる。その上、椿さんや、美樹さん達まで一緒に居てくれたら、これ以上の良い思い出なんて、一生掛かっても、私なんかには出来ませんからね。……だから、仲居間さんを利用させて頂きます」

「なるほど、なるほど。そりゃあなんとも、模範的な解答だな」


崇秀のアホが最後にイラン事を言ったが、奈緒さんの意見は正当だ。


特に、こう言ったデカイイベントを個人でやる事は、相当なコネや資金がないと難しい。

だから、無条件で参加した方が得だと思う。


それにだ。

奈緒さんに、こう言う言い方をされれば、他の女の子達も、なし崩しに『了承』せざるを得なくなる。


ホント、そう言う処は良く理解してるよな、この人は。


あぁ因みになんだが……俺は、最初から不参加なんて事は一切考えてなかった。

少人数のライブハウスですら、あれだけの臨場感が有るんだから、大人数の前で……しかも野外で演奏したら、滅茶苦茶気持ち良さそうだからな。


だから黙って、ズッと、みんなの動向をを見守ってたんだよ。



「模範的な解答って……」

「いやいや、模範解答って表現であってると思うぞ。向井さんの気持ちがグッっと伝わる良い回答だったからな。……向井さん自身も、そのつもりがない訳でも有るまいし」

「そこ……言う必要なくないですか?」

「まぁなぁ」


崇秀の奴、今、敢えて、口に出して言ったな。


これによって、コイツは、みんなの逃げ口を塞いで『やらない』の選択肢を消しやがった。


けど、少し強引過ぎるのも事実だな。

こう言う言い方をされると、反論の声が上がらない訳でもないからな。


此処でもぅ一押しする何かが無いと、上手く行かない様な気がする。



「でしょ。折角、上手く誘い水を流したのに……ホント、余計な事を言ってくれますよね」

「ほぉ、して、その心は?」


反省しない奴だな。

笑いながら、奈緒さんに向って、そんな事を言ってやがるよ。



「別に、なにもないですけど。……仲居間さんが損をするのを見逃せなかっただけですから」

「なるほど、そう来るか」

「そう来るかも、なにも、こういった浜辺の野外イベントなら、女性客よりも、圧倒的に男性客の方が多いじゃないですか。だったら、男の仲居間さんが1人で演奏するより、私達、女性陣が唄った方が盛り上がる可能性は高い。もし、それが上手くいけば、そっちの方が、仲居間さんが信用を獲得するポイントが大きくなる。……私は、そう感じましたけど……違いますか?」

「あってるよ」

「だったら、そんな偉そうな態度をとってないで、ちょっとは、みんなに頼んだら、どうなんですか?……私は、仲居間さんの事を、そう言う効率的な人だと思ってますが……どうですか?」

「なるほどなぁ。そりゃあ、それでおもしれぇや」


いや……奈緒さん、それは、ちょっとおかしくないですか?


確かに、この企画を立ててくれたのは崇秀だから、そう言った意見が有っても、おかしくはないですが……

幾ら『信用獲得ポイント』が大きいとは言え、今の奈緒さんの言い分だと、崇秀に、全部、負担が行く事になると思いますよ。


それに、元々崇秀に頼んだの俺ですし……


流石にそれは……



あぁイカンイカン。

そうこう考えてる内に、崇秀の馬鹿も、奈緒さんの意見が面白いと感じたのか、頭を下げる気満々になって来やがった。


このまま放置したら、絶対に頭下げるぞ、コイツ。


どっ、どうすっかな?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


崇秀のぶっ壊れが加速する中。

奈緒さんの「イベントを成功させたいのなら、ちゃんと頼むべき」と言う意見を聞いた崇秀は、みんなに頭を下げようとしてますね。


でも、本当に、それで良いのか倉津君?


さて、そんな中。

次回は、そんな倉津君が、この状況をどう考えるのかが見物です。


なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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