●前回のおさらい●
由佳ちゃんのお姉さんがバイト先に、コーヒーの道具を借りに行く間。
倉津君の運転する車内で、かなり仲良く成って行く由佳ちゃんと、真上さん。
そんな良い雰囲気の中、借りた道具を教室まで持って行くと、そこでは……これはダメ過ぎるだろっと言う状況が舞っていた。
『真上さんが親切心で持ってきてくれた、彼女が大切にしている紅茶の道具が、何者かによって破壊されていた』
これを見た倉津君と、由佳ちゃんは大激怒するが。
そんな彼等の姿を見た、当の被害者である真上さんは、どう思うのか?……
「あっ、あの、大谷さん。そんなに怒らなくて良いんですよ。これは陶器ですから、軽い衝撃でも壊れる事が有りますから」
「えっ?」
「へっ?」
クラス全員を威圧を続ける由佳に対して、真上さんが、まるで何事も無かった様に、そう言う風に声を掛けた。
しかも、その言葉の中には『この一見に関して、全てを不問にする』『全てを許す』って言う言葉さえも含まれている。
真上さん、あんなに大切にしてた道具なのに……
俺も由佳も、流石に、この真上さんの言葉には面食らって唖然とした。
勿論、クラスの奴等も、驚きのあまり眼を白黒させている。
「そっ、そんな訳……そんな訳ないじゃない!!仮にそうだとしても、一気に全部が割れるなんて変だよ。絶対、この中の誰かが、わざと壊したに違いないって!!」
「そうですね。そうなのかも知れませんね。ですが、証拠が無い以上、それは疑うべきじゃないですよ。疑う方も、疑われる方も、気持ちの良いものでは有りませんからね。……ですから、もう犯人探しなんて辞めにしましょう」
こう言う『普通の人間には言えない様な慈愛に満ちた言葉』が、自然に出て来るんだよな、この人は。
けど、もし犯人が居るとすれば、この言葉に、心の痛みが止まらない筈だ。
これで心が痛まない様だったら、それはもぉ人間として終わってる。
それ程までに真上さんの言葉は、相手に突き刺さってる筈だ。
「王家さん……そんなの、そんなの人が好過ぎるよ。大切な物を壊されたんだから、もっと怒れば良いじゃない」
「ですが、壊れたものは、壊れたものですから……嘆いても、怒っても、返っては来ません。でしたら、偶然、物が壊れた程度の事で怒る必要なんてないんですよ。それにですね……」
「そっ、それに?」
「陶器が壊れてしまった代わりに、それ以上に大切な物を得る事が出来ました。なので私には、もぉそれで十分なんです」
えっ?ちょ……まさか、この人……その言い方するって事は。
オイオイオイオイ。
真上さんが言う『大事にしていた道具を壊されて得た物』って、あれの事じゃないだろうな!!
……嘘だろ。
「大切な陶器が壊されたのに、王家さんは、一体、何を得たって言うの?」
「大谷さんです」
「えっ?あっ、あたし?」
「はい、そうですよ。大谷さんです」
やっぱりだ!!
「なっ、なんで?なんで、そうなるの?」
「大谷さんが、まるで自分の事の様に怒ってくれました。私、それが一番嬉しかったんです。ですから、それでもう十分に満足なんです。それ以上に求めるなんてものはありません。なので逆に、陶器が壊れる事によって、私が得をしたのかも知れませんね」
しっ……信じられねぇ!!
マジで、平然と、こんな事を言う人が居るんだな。
由佳が自分の為に怒ってくれた事を嬉しく感じ。
今回の『陶器破壊事件』の真相すら暴かずに、全てをチャラにしてしまうなんて……
それ処か、ニッコリとほほ笑んで満足までするって……どうやったら、こんな寛大な精神に成れるんだ?
この年で、こんな思考に辿り着けるなんて、既に人の域を超えてるぞ!!
マジで真上さんの精神は神だよ!!
「王家さん……そんなの、人好過ぎだって。そんな事を言われたら、もぉ怒れないじゃない」
「じゃあ『もぉこれで、犯人捜しはお御仕舞い』と言う事で、宜しいですか?」
「宜しいも、糞も、王家さんが良いって言ってるんだから、もぉこれ以上なんて続けれる訳ないじゃない」
「折角、怒って頂いたのに、こんな結果になって、すみません」
「はぁ~~~、もぉ~~~、馬鹿過ぎるよ。この人」
「はい。私、馬鹿なんです」
うわぁ~~~、スゲエな。
最初の一瞬だけは、流石に『ムッ』とした表情が出たものの。
それ以降の真上さんは、そんな素振りを一切見せずに、終始一貫して『笑顔』だったのも、そうなんだが……あんなに大激怒していた由佳の毒気まで、完全に抜いちまったよ。
……ってか。
この光景を目の当たりにした周りの連中も、心当たりが有る無しは別にして、完全に沈黙しちまったな。
それに、そんな周囲の奴等の姿を見たら、人って『責められる』よりも『許される』方が辛いのかもなって実感せざるを得ないな。
人の精神を崩す『罪悪感の植え付け方』に、こんな方法が有るとはな。
まさにこれは『目から鱗の方法』と言って良いんじゃないか?
こりゃあもぉ『完全にまいった』としか言い様がない。
あのキチガイの崇秀でさえも、こんな慈愛に満ちた思考には行き着かないかも知れない、っとすら感じちまったよ。
そんな日常では有り得ない壮絶な光景の中、とうとう……
「ごっ、ごめんなさい。……紅茶の道具を割ってしまったのは、私です」
あぁ~あっ、真上さんの坊主の説法にも似た言葉で、とうとう犯人が、自ら名乗りを上げちゃったよ。
きっとあの様子じゃあ『自身の良心の呵責』に耐えれなくなったんだな。
まぁ、被害者である真上さんから、あぁ言う『人を疑わない慈愛に満ちた言葉』を投げかけられたら、そうもなるわな。
……っとは言え。
真上さんの慈愛に満ちた言葉が、クラス全体に広がってしまっているので、その自白した女生徒を見るクラスメイトの目は冷たい。
それはもぉ『世界一のクズ人間でも見る様な眼差し』が、彼女に集中している。
まぁこれ自体は自業自得なんだが。
この状況、真上さんは、一体、どうするつもりなんだろうな?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
真上さんの『慈愛に満ちた寛大な心』
この精神を見せ付けられた者は、必ずしも『彼女の味方に成ってしまう』
これも彼女が持つ『人を惹き付ける魔性の一環』なのでしょうね。
しかも本人は、これを当たり前の様に言ってしまうのですから、本当にこの子は『天然』で恐ろしい子です(笑)
さてさて、そんな中。
とうとう良心の呵責に耐えられなくなった犯人が、自らの罪を自白したのですが。
真上さんは、一体、どの様な態度で彼女に接するのでしょうね?
次回は、そこをメインに書いて行きますので。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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