最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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395 壊れた陶器は戻らない

公開日時: 2022年3月8日(火) 00:21
更新日時: 2022年12月28日(水) 15:23
文字数:2,155

●前回のおさらい●


 由佳ちゃんのお姉さんがバイト先に、コーヒーの道具を借りに行く間。

倉津君の運転する車内で、かなり仲良く成って行く由佳ちゃんと、真上さん。


そんな良い雰囲気の中、借りた道具を教室まで持って行くと、そこでは……これはダメ過ぎるだろっと言う状況が舞っていた。


『真上さんが親切心で持ってきてくれた、彼女が大切にしている紅茶の道具が、何者かによって破壊されていた』


これを見た倉津君と、由佳ちゃんは大激怒するが。

そんな彼等の姿を見た、当の被害者である真上さんは、どう思うのか?……

「あっ、あの、大谷さん。そんなに怒らなくて良いんですよ。これは陶器ですから、軽い衝撃でも壊れる事が有りますから」

「えっ?」

「へっ?」


クラス全員を威圧を続ける由佳に対して、真上さんが、まるで何事も無かった様に、そう言う風に声を掛けた。

しかも、その言葉の中には『この一見に関して、全てを不問にする』『全てを許す』って言う言葉さえも含まれている。


真上さん、あんなに大切にしてた道具なのに……


俺も由佳も、流石に、この真上さんの言葉には面食らって唖然とした。

勿論、クラスの奴等も、驚きのあまり眼を白黒させている。



「そっ、そんな訳……そんな訳ないじゃない!!仮にそうだとしても、一気に全部が割れるなんて変だよ。絶対、この中の誰かが、わざと壊したに違いないって!!」

「そうですね。そうなのかも知れませんね。ですが、証拠が無い以上、それは疑うべきじゃないですよ。疑う方も、疑われる方も、気持ちの良いものでは有りませんからね。……ですから、もう犯人探しなんて辞めにしましょう」


こう言う『普通の人間には言えない様な慈愛に満ちた言葉』が、自然に出て来るんだよな、この人は。


けど、もし犯人が居るとすれば、この言葉に、心の痛みが止まらない筈だ。

これで心が痛まない様だったら、それはもぉ人間として終わってる。


それ程までに真上さんの言葉は、相手に突き刺さってる筈だ。



「王家さん……そんなの、そんなの人が好過ぎるよ。大切な物を壊されたんだから、もっと怒れば良いじゃない」

「ですが、壊れたものは、壊れたものですから……嘆いても、怒っても、返っては来ません。でしたら、偶然、物が壊れた程度の事で怒る必要なんてないんですよ。それにですね……」

「そっ、それに?」

「陶器が壊れてしまった代わりに、それ以上に大切な物を得る事が出来ました。なので私には、もぉそれで十分なんです」


えっ?ちょ……まさか、この人……その言い方するって事は。


オイオイオイオイ。

真上さんが言う『大事にしていた道具を壊されて得た物』って、あれの事じゃないだろうな!!


……嘘だろ。



「大切な陶器が壊されたのに、王家さんは、一体、何を得たって言うの?」

「大谷さんです」

「えっ?あっ、あたし?」

「はい、そうですよ。大谷さんです」


やっぱりだ!!



「なっ、なんで?なんで、そうなるの?」

「大谷さんが、まるで自分の事の様に怒ってくれました。私、それが一番嬉しかったんです。ですから、それでもう十分に満足なんです。それ以上に求めるなんてものはありません。なので逆に、陶器が壊れる事によって、私が得をしたのかも知れませんね」


しっ……信じられねぇ!!

マジで、平然と、こんな事を言う人が居るんだな。


由佳が自分の為に怒ってくれた事を嬉しく感じ。

今回の『陶器破壊事件』の真相すら暴かずに、全てをチャラにしてしまうなんて……


それ処か、ニッコリとほほ笑んで満足までするって……どうやったら、こんな寛大な精神に成れるんだ?

この年で、こんな思考に辿り着けるなんて、既に人の域を超えてるぞ!!


マジで真上さんの精神は神だよ!!



「王家さん……そんなの、人好過ぎだって。そんな事を言われたら、もぉ怒れないじゃない」

「じゃあ『もぉこれで、犯人捜しはお御仕舞い』と言う事で、宜しいですか?」

「宜しいも、糞も、王家さんが良いって言ってるんだから、もぉこれ以上なんて続けれる訳ないじゃない」

「折角、怒って頂いたのに、こんな結果になって、すみません」

「はぁ~~~、もぉ~~~、馬鹿過ぎるよ。この人」

「はい。私、馬鹿なんです」


うわぁ~~~、スゲエな。

最初の一瞬だけは、流石に『ムッ』とした表情が出たものの。

それ以降の真上さんは、そんな素振りを一切見せずに、終始一貫して『笑顔』だったのも、そうなんだが……あんなに大激怒していた由佳の毒気まで、完全に抜いちまったよ。


……ってか。

この光景を目の当たりにした周りの連中も、心当たりが有る無しは別にして、完全に沈黙しちまったな。

それに、そんな周囲の奴等の姿を見たら、人って『責められる』よりも『許される』方が辛いのかもなって実感せざるを得ないな。


人の精神を崩す『罪悪感の植え付け方』に、こんな方法が有るとはな。


まさにこれは『目から鱗の方法』と言って良いんじゃないか?


こりゃあもぉ『完全にまいった』としか言い様がない。

あのキチガイの崇秀でさえも、こんな慈愛に満ちた思考には行き着かないかも知れない、っとすら感じちまったよ。



そんな日常では有り得ない壮絶な光景の中、とうとう……



「ごっ、ごめんなさい。……紅茶の道具を割ってしまったのは、私です」


あぁ~あっ、真上さんの坊主の説法にも似た言葉で、とうとう犯人が、自ら名乗りを上げちゃったよ。


きっとあの様子じゃあ『自身の良心の呵責』に耐えれなくなったんだな。


まぁ、被害者である真上さんから、あぁ言う『人を疑わない慈愛に満ちた言葉』を投げかけられたら、そうもなるわな。


……っとは言え。

真上さんの慈愛に満ちた言葉が、クラス全体に広がってしまっているので、その自白した女生徒を見るクラスメイトの目は冷たい。

それはもぉ『世界一のクズ人間でも見る様な眼差し』が、彼女に集中している。


まぁこれ自体は自業自得なんだが。

この状況、真上さんは、一体、どうするつもりなんだろうな?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


真上さんの『慈愛に満ちた寛大な心』

この精神を見せ付けられた者は、必ずしも『彼女の味方に成ってしまう』


これも彼女が持つ『人を惹き付ける魔性の一環』なのでしょうね。

しかも本人は、これを当たり前の様に言ってしまうのですから、本当にこの子は『天然』で恐ろしい子です(笑)


さてさて、そんな中。

とうとう良心の呵責に耐えられなくなった犯人が、自らの罪を自白したのですが。


真上さんは、一体、どの様な態度で彼女に接するのでしょうね?


次回は、そこをメインに書いて行きますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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