●前回のおさらい●
崇秀の件は衝撃的であったにせよ。
それを感じながらも、いつまでも俯いていられないと思い始めた眞子。
そして、そんな自身の考えの元、あまり動かない体でも早速行動に移すのだが……
「あぁ、いや、そこにあるブラシを必死に取ろうとしてたんですけどね。中々、こぉ、体が上手く動いてくれなくて。……この有様なんですよ。ははっ……」
「『ブラシ』?……なんで、今、ブラシなんかを取る必要性があるの?今は、そんな時じゃ……」
「あぁ、その、なんて言いますか『今の状態じゃ、あまりにも身嗜みがミットモナイなぁ』って思いまして。自分の姿が『余りにも酷い状態だった』もんで……」
これで、上手く伝わるかなぁ?
奈緒ネェなら、普段から『身嗜み』を重視してるから、意外と、この気持ちも解ってくれると思うんだけどなぁ。
どうかなぁ?
「ちょ、ちょっと眞子、大丈夫なの?あまりにもショックが大き過ぎて、アンタ、頭が変になってるんじゃないの?第一、今、そんな事をする余裕なんて、君に有るの?」
あぁ……此処は奈緒ネェと言えども、流石に、これバッカリはダメでしたか。
比較的、理論より、感情の方が強い女の子の感情コントロールは難しいんですね。
「あぁ、勿論、奈緒ネェの言われる通り、余裕なんて全く有りませんよ。それにまだ、全然、動揺したままですよ」
「だったら……なんで?なんで、そんなに冷静に対応してるの?」
「いや、あの、なんて言いますか。戻って来た崇秀が、今の私を見たら『愕然とするかなぁ』って。……それになにより、こんな姿を、いつまでも晒してたくないなぁって思いまして……」
「なに言ってるの?あんな事があったんだから、今はしょうがないよ。今日は無理しなくて良いと思うよ」
まぁ……そうなんですけどね。
でも、逆に言えばですよ。
今、こう言う時だからこそ、シッカリしていった方が良いんではないかと思うんですよね。
こうやって1つづつ。
いつ起こるか解らない様な緊急事態に備えて行動する事って、凄く大事だと思えますしね。
まぁ、そうは言っても……
今さっき、それに気付いたばかりではあるんですがね。
それ気付いてしまった以上、間髪入れずに『即行動』するのが筋って物じゃないでしょうか?
「一般的にはそうなんですけどね。崇秀の場合に関してのみは、そうもいかないんですよ。アイツは、それに当て嵌まらないんですよ」
「……どうして?今の現状で、そこまでする必要が……」
あぁ……奈緒ネェ、まだ冷静に成れないみたいだなぁ。
だったら、今の私の心理状態を、少し説明してみようかなぁ。
「いや。これは『タラレバ』の話になるんですけどね。ご存じの通り、あの男だけは、いつもなにを仕出かすか解らないでしょ。だから、ひょっとしたら、今日、今直ぐにでも、何食わぬ顔をして、此処に顔を出すかも知れないんですよね。……その時になって、この無様な姿に慌てるのも嫌だし。『やっとけば良かったなぁ』なんて思いたくないですからね。だから、少しでも崇秀を迎える準備を怠れないんですよ」
解りますかね?
「それ……正気なの?そんなに簡単に、さっきの事って割り切れちゃうものなの?」
いや、だから、奈緒ネェ、全然割り切れてませんって。
……って言うかですね。
今此処で、崇秀の事を完全に割り切れてたら、そんなの『愛情なんか0』じゃないですか。
しかも、ただのキチガイでしかない。
でも、こうやって強制的にでも思考を変換しないとですね。
いつまでもいつまでも、グジグジグジグジ言ってしまいそうな自分が居る訳なんですよね。
だから此処は……早々に感情を殺して、即決断、即行動に移すべき時だと思うんですよ。
いつまでも悲しんでても、しょうがないですからね。
「あぁ、いや、そりゃあ出来れば、もっと泣きたいですよ。喚きたいですよ。それにもっと言えば、意味も無く、その辺に有る物に当たり散らして、何所や彼処に投げ付けたいですよ」
「だったら、そんなに無理しなくても……泣きたい時は、もっと思いっ切り、泣けば良じゃない」
「ですね。気持ち的には、そうなんですけど。……あぁ、でもですね。その意思に反して『そんなの崇秀が求めてる私じゃない』とも同時に思うんですよね。特に私なんかは、どうしようもない馬鹿ですから。なにかを必至に頑張ってないと、私の存在価値なんて、なにも無いと思うんですよ。だから出来るだけ、そんな感情は抑えて、今は無理をしようと思います」
けど、実際は、今の奈緒ネェの言葉で、かなり揺らぎましたよ。
また……さっきの状態に逆戻りして『涙が枯れてても、泣こうかなぁ』って、一瞬、脳裏に過ぎっちゃいましたからね。
まぁ偉そうな事を言っても、基本的な部分で言えば私のメンタルなんて弱々ですからね。
「あぁ、そうなんだ」
「はい」
「……ねぇねぇ、眞子。けど、眞子の仲居間さんへの想いって、そこまで強いものなの?」
「あぁっと、そうですね。それに関しましては、今回の一件で、より一層強くなりましたね。大切な人とか、そんなんじゃなくて」
「えっ?それって……どういう事?」
「あぁ、まぁ、なんと言いますか。自分の死期が迫ってるって言うのに、私や、奈緒ネェの為に、あんな無茶までしてくれたのには、心の底から感動しました。だから、それに報いる為にも私は、崇秀の傍で、出来る限りの事して尽くそうと思ったんですよ」
「それって……好きと言うよりも『人生のパートナー』として見てるって事なの?」
あぁ……その表現、凄く良い感じですね。
まさに、そんな感じで間違ってないと思います。
って事で、凄く良かったので、これは奈緒ネェ以外の人に、どっかで使お。
「あぁ、ハッキリ言っちゃえば、そう言う事ですね。もぉ『好き』とか『嫌い』とかって言う、そう言うレベルの話じゃなくてですね。居なきゃ困る存在。言わば、今の私にとって崇秀って言う存在は、崇秀の言った通り、まさしく『半身』って言葉がピッタリなんですよ。だからお互いが、お互いに求めるものをドンドンやり遂げて行こうっと思ってますね。……っで、この『身嗜み』って言うのが、まず、その第一歩目っと言う訳です」
「ハァ~~~……凄いね、眞子。その感情って、既に恋愛の域を超越してるよ」
あり?ありあり?
このお姉さん、また妙ちくりんな事を言い出しましたね。
これって、ひょっとして……奈緒ネェ、自分の事だから、あまり気付けずに居るのかなぁ?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
人間の成長と言うのは、本当に『些細な気付き』が切欠に成ったりします。
ですが多くの人は、それに気付いても、横着をして行動に移さない。
若しくは『明日から始める』なんて言う言い訳を考え、結局、その切欠を失う事が多いんですね。
これ、凄く勿体ないんですよ。
実際『気付きが起こる事自体が、奇跡の様な貴重な体験』ですからね。
普段、普通に生きていたら、その気付きさえも見逃すのが人間と言うものですし。
なので、なにかに気付いたら、眞子の様に即行動を起こしてみて下さい。
そう言う面から成長する事って非常に多いですからね。
さてさて、そんな中。
最後の最後で、なにやら奈緒さんの言葉に引っ掛かった様ですが。
一体、眞子は、何に引っ掛かってるんでしょうか?
次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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